今までですと神夏ギルの中にいる英雄王との会話だったり、通信越しでの会話だったりなどに用いていましたが今回の話においては
「〜〜」→日本語での会話 士道が聞いて理解可能
『〜〜』→英語での会話 士道が聞いて理解困難
となります。
それを踏まえてご覧ください
それではどうぞ
「……おはよ」
「おはよう神夏」
「神夏さんおはようございまっす!」
次の日、目を覚ますと既に他2人は起きていた。
相変わらずの時差ボケだぁね。これ、連休明け大丈夫かな。
「ふぁあ…士道、殿町。朝ごはんどうする?一応下のレストランに行けば食べれるけど」
「そうだな、どうせだから食べに行くか。殿町もそれでいいか?」
「勿論」
適当に髪を整えて財布などの貴重品を持って食堂へGO。勿論隣の部屋にいる3人も引き連れて。
その間も日本人が珍しいからか色々な客に話しかけられた。私が殆ど対応してたけど。
『いい1日になるのを願ってるぜ!』
『どうも〜』
だけどまあ、大半が普通にいい人で、なんなら色々お土産くれたりするしで好印象な人が多かったなぁ。
「ん、ここのホテルは当たりだね。不味くない。さすがは高級かつ旅行者向けホテル」
「高級ホテル⁉︎確かにやたらいいホテルだなとは思ってたけど⁉︎」
「うん。ちょっと値が張ったけどいいホテル探して良かったよ」
朝からみんなでワイワイとご飯を食べ、今日はどこへ行くのか、何を見るのか、何を食べに行くかなど話が尽きない。みんな私の故郷を好いてくれて嬉しい限りだね。
「それで、今日はどうするの?」
「バッキンガム宮殿から観光する予定ですよ。それからはまた、昨日のルイスさんにお願いしていい感じに案内してもらおうかなって」
「うん、いいんじゃないかな。…あ、だけど私と士道だけちょっと、後から合流することになると思う」
「え?」
「ごめんね殿町。私の叔父さんと叔母さんに会いに行くんだ。ちょっと連絡を取り合ってたんだけど、彼氏云々の話になって……その、顔を見せに来い!って昨日からうるさくてね。だから…ちょっと黙らせにいく」
実際は、違うけどその辺は士道に予め説明して話を合わせるように言ってあるから多分、大丈夫。
殿町と前原さん?がすごい悲しそうな顔をしてるけど、ごめんね。
「ルイスさんに付いてて貰うから大丈夫だと思うけど、それでも慢心せずに、ちゃんとルイスさんの言うことを聞くこと。いい?特にそこの双子。間違ってもやらかさないでよ」
「どう言う意味よっ!」
「否定。やらかすのは耶倶矢であり私ではありません」
「夕弦の方が酷いこと言ってない⁉︎」
「それじゃあルイスさん、4人のことお願いします」
「お願いされました。それでは『頑張ってくださいね』
『……何を?』
『結婚の報告に行くんですよね?』
『行かないよ!』
『はっはっは〜ジョークですよ。…本当に、気をつけてくださいね。辛いと思いますが、私たちがいます。それを忘れないでください』
『…知っています。心配をかけるつもりはありません。でも、ありがとうございます』
からかわれながら殿町や八舞姉妹と別れ、士道と共に歩き出す。
両親が眠る墓へ。
「……」
「ル、ルナ。大丈夫か?」
「うん…だ、大丈、夫」
心臓がバクバクと鳴る。
だんだん呼吸ができなくなる。
あの時の光景がフラッシュバックする。
今すぐ逃げ出したくなる。
だけどそんなことは許されない。それに……自分で決めたことを今更捻じ曲げる気は、逃げる気は無かった。
自分への戒めでもあり……何よりこれ以上王様に格好悪いところを見せるわけにはいかない。
『お客さん。着いたよ』
『どうも』
タクシーに乗り、両親の墓のあるところまで連れて行ってもらう。
ロンドンより少し南方に下ったところの、私の故郷の近くに。
『だけどなんでこんな所に?ここは数年前の事故で何もないぜ?』
『その事故で両親が亡くなってね。そのお墓参り。そのついでに彼氏の紹介をしに来た』
『なるほどな…しっかり話してこいよ』
『ありがとう。良い1日を』
『そちらもな』
運転手に料金とチップを渡し、タクシーから降りる。辺りを見渡してみると運転手の言うとおり、建物が半壊していたり全壊していたり、一部は直っていたりはしてるけどあまり手が入っていない。
それ以外はパッと見、綺麗だけどそれだけで人の気配なんて殆どない。それこそ私の向かうお墓に数人いる程度。
「……」
「……」
いくつか墓石を見て回り、一つ、見えてきた事実が。
「(ははっ、なるほど。
墓石に刻まれている日付が全て同じ。つまりはそういうことだろう。
ここの墓石の数=私の殺した人の数ってことだ。ざっと見積もって100人は超えていそう。
「(思った以上に、くるなぁ)」
そんな自責の念を抑え込み、いくつも並ぶお墓の中のうち一つ、【KAMIYA】と刻まれた墓石の前に立つ。
覚悟は決めていたはずなのに
自分の罪を目の前にした途端、過呼吸が起きて息が出来なくなる。
「……」
士道はそんな私の背中を無言で撫でてくれ、完全にではないけどなんとか呼吸ができる程度までおさまった。
「ありがと」
「コレくらいなんともない。なんならずっとしようか?」
「却下。流石に恥ずかしい」
にやけながらそう言ってくるから半目で返す。
「でも…本当にありがとう。……うん、もう、大丈夫」
「そうか」
改めて自分の両親の墓石へ向き直る。
予め買ってきた一輪の花をそばにあった花瓶へ入れ、手を合わせる。
「……お父さん、お母さん。久しぶり。って、どの口がって思ってるのかな。まあ、うん。実際そう思われてもしょうがない程の親不孝者なのは、自覚してる。…そんな自分を少しでも変えたいって、そのためにやるべき事を全部やろうと思って来たんだ。それでまずは…お父さん達に謝りたくてここまで来たんだ」
何度も 何度も 深く深呼吸をして心を落ち着かせ 言葉を紡ぐ。
「お父さん、お母さん。本当に、ごめんなさい。
あの時、2人の気持ちなんか何も考えずに、勝手に泣いて、勝手に遠くへ行って、その挙げ句に手を出してはいけないものに手を出して、2人を、みんなを…。
本当なら、大量殺人者として裁かれてもおかしくないよね、こんなダメ娘。
だけど今はやることが、やらなきゃいけないことがあるから、悪いけど私の罪を償うのはそれらが全部終わってからになる。きちんと、やるべき事を全部やってから、また会いにいくから。もう少しだけ、待ってて。
……ああ、そうそう。それとは別件でね。1人紹介したい人がいるんだ。私、今は日本の高校に通ってるんだけどそこで出来た彼氏。五河士道って言うんだけど、めっっっちゃお人好し。私が向こうで死ぬほど辛くて自暴自棄になった時に見捨てずにずっと付き添ってくれてね。それから付き合う事に。……マイラ以外となんて、って思ってたから、自分でも驚いてる。士道も、何か伝える?」
「あ、ああ。そうだな…。えーと、初めまして。ルナと交際している五河士道と言います。ルナには…すごく振り回されてはいますが、それでも俺はルナと出会えた事に感謝しています」
「やだなー、やめてよ恥ずかしい」
「本当に思ってるからな」
「だからそれをなんの恥じらいもなしに言い切るのをやめい」
「神夏は不器用なところもあるけど、優しくて、想いやりもあって、それでいて…」
「だぁあ!やめいやめい!むず痒い!それよりも!他にいう事はある?」
「…ルナのお父さん、お母さん。ルナのことは、俺が必ず、守ります。貴方達の代わり…は烏滸がましいけど、それでも絶対に、ルナを悲しませたりしません」
と、耳を覆いたくなるようなキザな言葉を言って、最後に手を合わせて両親のお墓参りは一旦終わり。……で、ここに来るまでに一つ、見逃せないものが置かれていたから、そっちにも行かざるを得ない。
少し戻り、あるお墓の前で止まる。
そこに刻まれていた文字を見て士道が心配そうにこっちを見てくる。
「ルナ?ここって…」
「うん、マイラ・カルロスのお墓だね。やっぱりというか、表向きは死んでる扱いなんだよね。……複雑だよ。ちょっと前までは殺したいほど憎くてしょうがなかったはずなのに、今となっては……そんな感情も抱けない。もう自分でもアイツに何をしたいのか、何を求めてるのか、全くわからない」
少なくとも確実なのは
私が恋焦がれたマイラと修学旅行先で戦ったマイラは同一人物。
「令音さんにお願いしてね、マイラについて調べてもらったんだ。ここで出会っていたマイラと修学旅行先でDEMの手先として出てきたマイラは同一人物。だけど、少なくとも私が精霊と成った時までは、マイラはDEMと関わっていない。そんな記録はDEMにも無かったらしいんだ。だけど私の記憶だとマイラは少なくとも
狂三からの情報と、士道の妹を自称していたマナについて情報を貰えたからこそ辿り着いた可能性。
「マイラ・カルロスは洗脳されている?だからルナのことを…」
「ま、可能性だよ。もしかしたらの話。洗脳されているのかもしれないし洗脳されていないのかもしれない。…仮に洗脳されていないとしたら私の手で殺すだけ。もし洗脳されていたのなら……アイツは私のせいで狂ったも同然。だから私が救う」
「もし助けれるなら、その時は俺も手伝うよ」
「…ははっ。そっちはそっちで、もしかしたらDEMへの憎悪に身を任せてしまう、とても醜い私が出てくるかもしれないよ?」
「その時は止めるだけさ。絶対に目を離さないよ」
「…自暴自棄になって暴れて、士道も、他のみんなも纏めて攻撃しちゃうかもよ?」
「絶対にそんなことはさせない。自暴自棄になったとしたら止めるだけさ」
「……邪魔だって、士道を真っ先に殺すかもよ?」
「ちょっとやそっとじゃ死なねえよ。腹をルナに貫かれても生きてたんだぜ?」
「……また、反転するかもよ?」
「その前にお前に巣食う絶望を俺が取り除くだけだ」
私の言葉へ、士道が間髪入れずに返してくる。まるでそれが当然とでもいうように。
「…ははっ」
そんな士道の物言いに思わず笑う。
「…うん、そうだったね。君はそういう人間だったね。わかった。期待、してるよ」
「ルナから期待なんて、俺も随分株が上がったもんだな」
「失敬な。元々株自体はあったよ。ただ私にとってどうでもよかっただけで」
「酷いな⁉︎」
「事実だもの。…1つだけ聞いてもいいかい?」
「ん?どうしたんだ急に改まって」
ずっと思っていた疑問を、ふと聞いてみたくなり士道へ問いかける。
「…今更なんだけど、なんで士道はそんなに私に構うの?恋人云々だって、別れたって事にして無かった事にして仕舞えばいいのに。
精霊を救うという君の言葉を、覚悟を今更どうこう言う気は無いし、私は君に封印されるのが嫌だってはっきり言ってあるのに。……これから、もしかしたら命のやり取りをしなきゃならないかいしれない、そんな場に君を巻き込んでしまうかもしれないのに。
なんでそんな私を、ずっと気にかけるの?」
「大切だからだ」
私の率直な疑問に、士道はこれまた即答する。
「大切?」
「ああ、俺にとってルナのいない日常はもう考えられないからな。琴里がいて、十香がいて、四糸乃がいて、折紙がいて、令音さんがいて、殿町やクラスのみんながいて、タマちゃん先生がいて、ルナがいる。そんな日常がとても大事で大切で大好きだから。理由なんてそれだけだ」
「……」
(神夏が大切だからに決まってるだろ?理由なんてそれだけさ)
「(嗚呼…理由がわかった。嘗てのマイラと、同じだからか)」
「ルナ?」
「ん、ごめんごめん。士道の考えはわかった。ありがとね。…だけど士道。私だからいいけど、安易にそういうことは言わない方がいいよ?でないと嫉妬深い十香や折紙に刺され…る……」
本当に、本当に偶然だった。顔見知りがいた。けどそれだけなら別に何も思わなかった。
その顔見知りが、嘗てイギリスにいた頃の友達だった。
「?……〜っ!」
そして向こうも私に気づいたらしく、勢いよくこっちに向かってきた。そして何かを言う前に1発ビンタされる。
『なんでアンタがここにいるのよ!』
『…お墓参りに、来てたんだよ』
『どのツラ下げて来てんのよ!この疫病神!』
『…ごめん。すぐに消えるよ』
『そうやってすぐ逃げる!何一つ変わってないじゃ無い!』
『…ごめん』
『しかも男連れときたわ!アンタにとってマイラは所詮その程度の人だったって証拠じゃないこのビッチ!』
またもやペシンと、とてもいい音が私の頬で鳴る。痛い。けど、それ以上に胸が苦しくなる。
『何か言ってみなさいよ!結局何も言わないまま逃げるわけ⁉︎』
『…うん、ごめんね。もう、いなくなるから。次からもう、来ないから』
『〜〜…っ!マイラもマイラよ!なんで…なんでこんな女なんかに…』
もう一度手が振りかざされる。避ける気も、気力もなくただ目を瞑る。嫌だとかそういう気持ちはなく、むしろ私への罰としては極軽いものだなという考えさえあった。
「…?」
「ナニヨ!ジャマ!」
だけど3発目のビンタはいつまで経っても来ず、不思議に思い目を開けると士道が私の前に立っていた。
「それ以上ルナに手を出したら俺が許さない」
「アンタ!関係ナイ!」
「士道、いいよ好きにやらせて。…
「ルナにとっちゃそうかもしれないけど、俺が嫌なんだ。だから…悪いけど、これ以上ルナに手を出させない」
「…!ナニモ、ナニモシラナイ!クセニ!ドーセ、オマエモ!コイツニ…」
つたない日本語で士道へ何かを言おうとしていたが、士道の顔を見て言い淀んでいた。ギリ‥と歯軋りするような音が聞こえ、また口を開く。
「…ッ、コンナゴミ女のボーイフレンドッテ言ウナラ、ドーセオ前モ…」
「ルナはゴミ女じゃない。…確かに少し個性的だけど、俺なんかには勿体無い、とても可愛らしい女の子だ」
「…ッ!コウカイ、スルヨ!」
そう言いながらマイラのお墓に花を添え、激しく怒りながら帰っていった。
「ルナ、大丈夫か?」
「大丈夫だよ。悪いね、巻き込んじゃって」
「いや、それは構わないんだけど……あの人は?」
「こっちにいた時の友達…だった人。マイラとよく一緒に居た…」
「…そう、か」
士道はそれ以上何も聞かないでくれた。私にとってはそれだけで充分ありがたかった。
「それじゃあ、殿町達と合流しにいこう。…本当に、ありがとうね。付き合ってくれて」
「これくらいお安いご用だ」
「…これはこれはメイザース執行部長サマ。ご機嫌麗しゅう。私のような者に何のご用で?」
「仕事です、マイラ・カルロス。拒否権はありません」
「だろうな。…んで、アンタの横にいるそいつはなんだ?隠し子か?」
「仕事に関係ある、とだけ言っておきましょう」
「ふーん。で?何をしろと?」
「今からとある場所へ来てもらいます。そこで何をされようとも耐える、ただそれだけです」
「…?」
サブタイトルあったほうがいい?
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あったほうがいい
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無くてもいい