デート・ア・ライブ 黄金の精霊   作:アテナ(紀野感無)

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56話 転校生

「神夏・M(ミラ)・ルシフェルと言う。イギリスの生まれだ。名前から察してもらえる通り神夏ギルとは姉妹でね。仲良くしてもらえると助かるな」

 

突如来た転校生の自己紹介にクラスの大半がザワザワと騒いでいた。

しかしその中の4人は険しい顔をしていた。

 

「呼ぶときは長いだろうからルシフェル、ルシとでも呼んでくれ。僅かとはいえ君達と共に良い時間が過ごせることを祈ってるよ」

 

猫被っているのか、ルシフェルは人受けのいい笑顔を見せ、それによりクラスの約半数からの黄色い声を受けていた。

そして担任に促され肩書き上は姉妹である神夏ギルの横へ何食わぬ顔で座る。

 

「やあ姉君。少しの間だけどお世話になるよ。何をそんなに険しい顔をしているのかは知らないが、ここでくらい普通に笑ったらどうだい?せっかくの美人な顔が台無しだぜ?胸も控えめなのにソレだとモテるものもモテないよ」

 

「ぶっ飛ばすぞお前」

 

「おお怖い怖い。士道。私の姉様が酷いこと言うんだがどう思う?」

 

「え?えーと…」

「黙れよルシフェル。今の士道は『私の』だ。いくらお前とは言え手を出したら…」

 

「ふふふ。『私の』ねぇ。少し前と随分違うじゃないか」

 

ルシフェルに指摘された神夏ギルは思わず口を手で塞ぎ僅かに頬を赤くした。その様子が面白かったのか小さく笑っていた。

 

「クク…冗談さ我が宿主神夏ギル。今の私は一介の生徒にすぎない。余程のことがない限りこの生活を壊そうなんて思っていないさ」

 

「その前にお前を串刺しにしてやってもいいんだよルシフェル」

 

「戯言を。人間の王如きに精霊の力を封じられてる君に出来るとは思えないな。おっと、授業開始らしい。姉妹喧嘩はまた後でやるとしようか」

 

「……良いよ。完膚なきまでに殺し尽くしてやる」

 

「おお怖いねえ」

 

 

 

 

 

「おいおい姉君。寝てて良いのかい?」

「……」

 

「先生。我が姉君はいつもこんななのかい?」

 

「え、ええ。何度か注意はしてるんだけど本人の体質でどうしても眠くなっちゃうとかで。成績はいいからあまり強く言えないんですけど…」

 

「ふーむ。わかった。教えてもらおうと思っていたがコレとは……五河士道、代わりに教えてもらえるかい?」

「お、俺か?いいけど……」

「ダメ。私が教えるから」

「起きてるじゃないか姉君。どうしたんだい?愛しの五河士道がとられるとでも思ったのかい?」

「何?教えてほしくないの?」

「冗談さ。そうだ姉君。別に取り合うんじゃなくて私と姉君との共有財産にして仕舞えばいいんじゃないか?」

「一旦黙れお前」

 

 

「あのー、授業中なんですけど…」

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

「大丈夫か?」

「ノ、ノープロブレム‥とは言い難いかな…」

 

めちゃくちゃ気分が悪い。ルシフェルと変に言い争っていたのもあるけど、それ以上に私にだけ霊力を当ててくるからほぼ生身な私にとってはとてつもなく辛い。

 

「士道!昼餉を食べよう!……神夏ギルも一緒にどうだ」

 

「んにゃ、私は気分悪いから保健室行くよ。悪いね十香」

 

「それなら連れて行こうか?」

 

「いやいいかな。一人で行けるから。……何ルシフェル」

 

クスクスと笑い声が聞こえてきてそれの発生源へ目を向けると悪戯がバレてしまったかのような笑みでこちらを見てくる。

 

「別に何もないさ。あの姉君に友達ができたかと思うと感慨深いだけさ」

 

「んじゃ保健室行ってくる。士道、十香達は任せた」

 

「おう。……本当に大丈夫か?」

 

「大丈夫大丈夫。体だけは頑丈だから」

 

 

 

 

 

 

 

「……そろそろかな」

「ん?どうしたんだルシフェル」

「何を企んでるのだ」

「いや何もないさ。それと……我が同胞はいい加減睨むのやめてくれないかい?」

「断る!お前から目を離すと碌な事にならないのは理解している!」

「非道いなあ。何もする気はないよ。この楽しい空間を自ら壊すようなことはしないさ。

 

 

……今は、ね」

 

 

 

 

 

 

「やあ鳶一折紙。こうして話すのはいつぶりなのだろうね」

 

保健室に入ると同時、白髪のAST鳶一折紙に話しかける。今にも殺してやると言った目で見てくるがそれは流そう。

 

「要件は何」

「そう邪険にしないでくれ」

「お前達精霊の言葉を信用する価値はない」

「それを言われると頭が痛い。仮にも今の私は普通の人間と大差ないんだけど」

 

実の親を殺されてるのだから無理もないのだろうけど。にしたつてクラスメイトなんだから少しくらいあるんじゃないのかな。

 

「早く本題を言って」

 

「急かさないで…と言いたいけどそうも言ってられないのも事実だし。単刀直入に言わせてもらうとするよ。

 

鳶一折紙。----------」

 

私の言葉で鳶一折紙の顔が引き攣っていた。信じられない、そんな感情が露骨に出ている。

 

「……っ、ふざけてるの?」

 

「ふざけてないさ。マジメもマジメ。大真面目さ」

 

「あなたにどんな利益があるというの」

 

「無いね。強いて言うならアイツの裏にいるとある奴を引き摺り出せるかも、というあたりだけどそれはできなくてもいい。私の最優先目的はさっき話したこと。それだけ」

 

「理由は?」

 

「理由?そんなもの対峙した君が一番よくわかってるんじゃないの?アイツは殺すべき存在だって」

 

「……」

 

「それにさっきの話を呑んでくれるなら、これ、あげるよ」

 

「…それは?」

 

ジャラと音を鳴らしながら見せたものを怪訝そうな目で見てくる。それを気にせずに説明を続ける。

 

「見たことあるでしょ?なんせ君が壊した事のあるものなんだから。それに君の悲願とやらを達成させるために一番欲してやまないものでもあるはずだよ?精霊の力を封じ込めるこの鎖は」

 

「……〜〜っ、考え、させて」

 

しばらく葛藤していたが小さく捻り出したような声でそう答え、前向きな答えが得られただけでも満足なので一旦は話を切り上げようかな。

 

「勿論。だけど時間は殆どない。それだけは念頭に置いててくれよ?でないと、最悪の事態になりかねないからね。崇宮真那にも同じような話はするつもりだからそのつもりでね」

 

「何故?私だけだと力不足と言いたいの?」

 

「違う違う。戦力はひとつでも多いに越したことはないからね。ただそれだけ」

 

「……わからない。お前の話が本当なら、何故そうもソレにこだわるの」

 

「なんでと言われても、それが最善だと信じてるからね。……話はコレで終わりにしよう。じゃあまたね。良い返事を期待してるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜???〜

 

「これはこれは、親愛なる母君。不要の荷物である私に一体なんの御用で?」

 

【……君は、何をしたいんだい?】

 

「はて?何と言われてもね。そんなもの決まりきってるじゃないか」

 

【その為だけに、こんなことをしようとしてるの?】

 

「私が何をしようが勝手だろ?私にとっちゃ士道さえいれば他はどうなろうが知ったこっちゃない。ソレに関して母君に言われる筋合いはないね」

 

【はあ…一体誰に似たのだろうね】

 

「さあ?私は誰にも育てられた記憶がないからね」

 

【君や彼女を見てるとつくづく思うよ。不穏分子は早めに消しておくべきだって】

 

私に話しかけてきたナニカは愚痴だけを溢したかと思えば目の前から消えた。引きこもりらしく一生引きこもってれば良いものを。

 

「……おっ?第一号の完成かな?さてはて、楽しくなってきたね」

 

目の前に零れ落ちたソレは崩れることなく立つ。うんうん、ひとまずは成功と言えるかな。

これを見た時の神夏ギルや他のマガイモノ達の反応を見るのが楽しみだ。

 

 

 

「ああ……この世に同じ存在を2つ創り出せたら……一体何が起こるのだろうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あれ?ここは……」

 

目が覚めると白いモヤモヤした空間に居た。全く知らない場所なはずなのにどこか安心するような、そんな気がした。

 

『神夏ギルよ』

 

「……?っ!」

 

その人の姿を見て反射的にその場に跪く。

間違えようも無い、王様だった。だけど表情はどこか険しいようにも見えるし、和やかなようにも思える。

 

『久しいな。精霊の力を封じているからか外の世界は存外楽しめたように見える』

 

「い、いえ。その……」

 

『良い。咎める気など無い。むしろようやく其方の本来の姿を見れたと言うものだ。して……ルシフェルとやらを殺すために動いているな?』

 

「はい」

 

『ほう?否定しないのか』

 

「私めが王様へ虚偽の報告をするなど。それに五河士道の策が失敗した時のための保険になれば、と思い動いております」

 

『其方自身は精霊の力を扱えないのに、か?』

 

「たとえ精霊の力を扱えずともやれる事はあるかと」

 

『ふむ…覚悟はとうに決めているようだな』

 

「はい」

 

『であるならこれ以上我から言うことは無い。これより先は其方の力のみで行え。持てる全てを使い奴を殺せ。ま、道化が懐柔できたら話は別だがな』

 

「そうですね。それが一番ありがたいです。けど……王様、ひとつだけ伺っても宜しいでしょうか?」

 

『よかろう。述べてみよ』

 

「……私に天の鎖が埋め込まれてるのは、やはり王様が?」

 

私がいまだ霊力を使えない理由。令音さんから教えてもらったことから推察するに、多分だけど天の鎖が埋め込まれてるから、そう思って聞いてみるとなんでも無いかのように王様は答える。

 

『ふむ。そうさな。確かに我が埋め込んだな』

 

「理由お聞きしても宜しいでしょうか?」

 

『ふむ。理由は幾つか有るが…その前に神夏ギルよ。お主の体についてはどこまで知っている?』

 

「大まかには」

 

体、と言うと令音さんから聞かされていたことだろうと思い返答をする。その間も王様は神妙な顔でこちらをみる。

 

『ならば分かっておるのだろう?其方の結末がどのようになるのか』

 

「はい」

 

『……なら良い。ならば我から言うことは無い。さてお主の体の内に在る天の鎖だが……」

 

 

 

 

 

 

「……そう、ですか」

 

『さて神夏ギルよ。其方に改めて問おう。其方は何を成す?』

 

「私は、この命在る限り貴女様に仕えると決めております故。ですが…その前にルシフェルは私の心の弱さのせいで生まれた産物。ですので私がケジメをつけるべきでしょう」

 

『ほう?なんと言ったか、殺したいほど憎しみを抱いていた雑種はどうする?』

 

「……救える手段があるかもしれないと、わかったんです。ですので……やれる限りのことはやろうと、そう思いました」

 

『ほう…ならば良い。例の道化への対応と言い、随分と変わったものだ』

 

満足したのか王様は私に背を向け何処かへ行こうとしていた。最後に一言だけ言いたくて、言葉をつづける。

 

「本当不思議です。私自身も驚いてます。それに…ルシフェルを止めて且つアイツを救う。それと同時に五河士道達も守る。そんなことが出来たら…最高じゃないですか」

 

その瞬間、王様の体がピクリと少し揺れた。それに気づいたけど何も言わずに言葉を続ける。

 

「自己の限界に挑戦し続ける。それがヒトですから」

 

『左様か。其方の覚悟は理解した。努、その在り方を損なうでない。我は特等席で見させてもらうとしよう』

 

「ハッ。存分にお楽しみください」

 

 




やはりオリジナル展開となると……難しいですね。

頭が痛くなってきますが…楽しい(

最近は文字を書くお仕事貰えたりしてるので書き方がビミョーに違ったり、前の書き方と違っていたりで苦労しましたがなんとか納得のいく形で終わらせたい…です

頑張ります



読んでくださりありがとうございました。
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