ストライクウィザーズ ~第501統合戦闘航空団補助部隊~   作:S'sran

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4話 華奢な男の過去

 シャーリーとルッキーニから逃れた二人は食堂へ向かう。

「もうすぐで着くぞ。でも、ちと疲れた歩かせてくれ」

「えー、もうすぐなら頑張ってよー!」

「あのなぁ、十四の子供背負って走り続けられるほど、俺の体は強くないんだよ。ガラスの如く華奢(きゃしゃ)な体なのさ」

 ダニーは自然と声のトーンが落ちる。

「きゃしゃってなに?」

 カーチャはまだ知らない言葉に興味の目を持つ。

 子供にとって好奇心ほど強い欲もない。

「愛しくも弱いって感じかね。俺はみんなが思うほど強くないのさ」

「なんで? おじさんは少佐なんでしょ? 偉くなるには強くならないといけないじゃん」

「カーチャ、お前の言うことに間違いはない。だがな、俺は指揮をしてきた人間だ。戦闘がすこぶる上手いわけじゃない。おかげで被弾は一回のみさ」

 ダニーは自嘲気味に語る。

 カーチャは黙って聞いている。

「スコアも30と他のウィザードやウィッチに比べて少ない。この道六年だが、少し情けなく感じるよ。みんなにできることが俺は苦手なのさ」

「おじさんはすごいよ」

「……お世辞か、カーチャ?」

「違うよ。だって、おじさんは僕にできない指揮ができるもん! だからおじさんは僕らのリーダー、つまりおじさんは偉くて、強くて、凄いんだ!」

「……」

 ダニーは自分の中で何かが解けていくのを感じる。

 冷たく硬かったものが、少しずつ小さくなり、解けていくような。

 同時に、思い出されるものもあった。

 

 二年前のある日のこと、ダニーは二人を連れて周辺の哨戒任務をしていた。

「しかし、人員が足りないとはいえど三人だけとはな」 

 ダニーは不満げな顔で言う。

「仕方ないですよ、ジョンソン大尉」

 そう言うのはジェームズ・ギルロイ少尉。

 ダニーと共にウィザードとして戦ってきた戦友だ。

「私なんて飛行学校出たばかりですよ……不安だらけです」

 もう一人は卒業したばかりのウィッチの卵であるジェニファー・ランキン軍曹。

 初出撃と言うことで不安だらけのようだ。

「まあ、見回りだしなんとかなるか。目を凝らせよ」

「「了解!」」

 ダニーを先頭に辺りを見つつ飛び続ける。

「先生、ちょっと」

「ん?」

 ダニーを先生と呼ぶのはジェニファーのみだ。

 彼女とダニーは先生と生徒の関係にある。

 ダニーは指揮官だけでなく教官としても活動している。

 少し前に訪れたウィッチ育成学校から惚れられてしまったのだ。

 追っかけで空軍に入り、今に至る。

「今週のうちにネウロイを撃破できれば、デートしてくれるっていう約束覚えてますよね?」

「あ~……そんなこと言ったな」

 内心忘れていたことは口が裂けても言えない。

「絶対ですよ!」

「はいはい、お前がコアを打ち抜いたらな」

 適当にあしらい、任務に戻る。

 昨日襲撃があったばかりなので、今日はないだろうと考え。

(昨日の今日で現われはしない、か……)

 その方が平和だが。

 引き返すよう言おうとした時である。

 突如として赤い光線が放たれる。

 遠くからだったのでなんとか避けることができた。

「ネウロイか!? 警戒しろ!」

 ダニーは二人に伝えると光線が飛んできた方を見る。

 すると湖の中にネウロイが数体。

 形はこれまでに見たことがない形だ。

「あれは……ドラゴンでしょうか?」

 見たことのない形に戸惑うジェニファー。

「あれは十年前に目撃されたっていうネッシーじゃないか?」

 ギルロイが答える。

「UMAの形をしたネウロイだと!? そんなのいるのかよ!」

「人型も出たというし、ありえるだろう」

 人も出ればネッシーもありなのか。

 そのうち怪物みたいなのもでるぞ。

「そういうもんかねぇ……そんなことより撃破するぞ!」

「「了解!」」

 ダニーの指揮で掃討が行われた、が。

 




今回も1500文字くらい。
平均的にこれくらいになっちゃいそうです。
正直、ダニーがいまのところぶっちぎりで好きだ。

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