ストライクウィザーズ ~第501統合戦闘航空団補助部隊~ 作:S'sran
シャーリーとルッキーニから逃れた二人は食堂へ向かう。
「もうすぐで着くぞ。でも、ちと疲れた歩かせてくれ」
「えー、もうすぐなら頑張ってよー!」
「あのなぁ、十四の子供背負って走り続けられるほど、俺の体は強くないんだよ。ガラスの如く
ダニーは自然と声のトーンが落ちる。
「きゃしゃってなに?」
カーチャはまだ知らない言葉に興味の目を持つ。
子供にとって好奇心ほど強い欲もない。
「愛しくも弱いって感じかね。俺はみんなが思うほど強くないのさ」
「なんで? おじさんは少佐なんでしょ? 偉くなるには強くならないといけないじゃん」
「カーチャ、お前の言うことに間違いはない。だがな、俺は指揮をしてきた人間だ。戦闘がすこぶる上手いわけじゃない。おかげで被弾は一回のみさ」
ダニーは自嘲気味に語る。
カーチャは黙って聞いている。
「スコアも30と他のウィザードやウィッチに比べて少ない。この道六年だが、少し情けなく感じるよ。みんなにできることが俺は苦手なのさ」
「おじさんはすごいよ」
「……お世辞か、カーチャ?」
「違うよ。だって、おじさんは僕にできない指揮ができるもん! だからおじさんは僕らのリーダー、つまりおじさんは偉くて、強くて、凄いんだ!」
「……」
ダニーは自分の中で何かが解けていくのを感じる。
冷たく硬かったものが、少しずつ小さくなり、解けていくような。
同時に、思い出されるものもあった。
二年前のある日のこと、ダニーは二人を連れて周辺の哨戒任務をしていた。
「しかし、人員が足りないとはいえど三人だけとはな」
ダニーは不満げな顔で言う。
「仕方ないですよ、ジョンソン大尉」
そう言うのはジェームズ・ギルロイ少尉。
ダニーと共にウィザードとして戦ってきた戦友だ。
「私なんて飛行学校出たばかりですよ……不安だらけです」
もう一人は卒業したばかりのウィッチの卵であるジェニファー・ランキン軍曹。
初出撃と言うことで不安だらけのようだ。
「まあ、見回りだしなんとかなるか。目を凝らせよ」
「「了解!」」
ダニーを先頭に辺りを見つつ飛び続ける。
「先生、ちょっと」
「ん?」
ダニーを先生と呼ぶのはジェニファーのみだ。
彼女とダニーは先生と生徒の関係にある。
ダニーは指揮官だけでなく教官としても活動している。
少し前に訪れたウィッチ育成学校から惚れられてしまったのだ。
追っかけで空軍に入り、今に至る。
「今週のうちにネウロイを撃破できれば、デートしてくれるっていう約束覚えてますよね?」
「あ~……そんなこと言ったな」
内心忘れていたことは口が裂けても言えない。
「絶対ですよ!」
「はいはい、お前がコアを打ち抜いたらな」
適当にあしらい、任務に戻る。
昨日襲撃があったばかりなので、今日はないだろうと考え。
(昨日の今日で現われはしない、か……)
その方が平和だが。
引き返すよう言おうとした時である。
突如として赤い光線が放たれる。
遠くからだったのでなんとか避けることができた。
「ネウロイか!? 警戒しろ!」
ダニーは二人に伝えると光線が飛んできた方を見る。
すると湖の中にネウロイが数体。
形はこれまでに見たことがない形だ。
「あれは……ドラゴンでしょうか?」
見たことのない形に戸惑うジェニファー。
「あれは十年前に目撃されたっていうネッシーじゃないか?」
ギルロイが答える。
「UMAの形をしたネウロイだと!? そんなのいるのかよ!」
「人型も出たというし、ありえるだろう」
人も出ればネッシーもありなのか。
そのうち怪物みたいなのもでるぞ。
「そういうもんかねぇ……そんなことより撃破するぞ!」
「「了解!」」
ダニーの指揮で掃討が行われた、が。
今回も1500文字くらい。
平均的にこれくらいになっちゃいそうです。
正直、ダニーがいまのところぶっちぎりで好きだ。