ストライクウィザーズ ~第501統合戦闘航空団補助部隊~ 作:S'sran
一方、ダニーとカーチャはというと。
「ねえねえおじさん、なんでみんなの部屋をノックして回ってるの?」
ダニーは先ほどからウィッチ一人一人の部屋をノックして回っているのだ。
「あの嬢ちゃんが言っていたことには、少し無理があると思ってな」
「どゆこと?」
ダニー後ろを先ほどから追ってくるカーチャ。
振り向かず、ノックしながら説明する。
「俺たちがウィッチと別れたのは今から一時間前くらい、基地巡り終了が十分前くらいだ。ウィッチは普段から訓練してるのに一時間も経たないうちに訓練なんてやめちまうか?」
「うーん……今日は遊びたかったんじゃない?」
カーチャは必死に考えたうえで言うが、ダニーは聞くだけで続ける。
「基礎訓練でももう少しするだろ。仮に早く終わっても三十分。今から三十分前に風呂に入ったとしたら少々長すぎやしねぇか?」
「でも、体の汚れを落とすために入るんでしょ? きっと綺麗好きなんだよ」
「三十分も自分の体を洗い続ける人間がいるかよ。きっとなにか隠してると俺は思うぜ」
「なにかって?」
「それはだな……」
ダニーは考え、やがて納得の表情をする。
「わからん! しかし、その答えは食堂にある!」
「なんで食堂なの? それに入っちゃいけないって言ってたよ?」
「食堂に入るな、なんて見られたくないものがあるからだ。なにかしら関係するものがあるはずだ!」
「なるほど! おじさんは天才だね!」
「だろぉ……ホームズさながらの推理だな! さて」
ダニーは服を整え、カーチャの顔を見る。
「全ての部屋に誰もいない。なら、次向かうべきところは?」
カーチャに問いかけ、カーチャは元気よく答える。
「食堂!」
「よし! 行くか!」
「うわぁ! 高ーい!」
ダニーはカーチャを肩車する。
カーチャは大喜びだ。
「ナパディニー!」
◇ ◇
「しっかし、暇だなぁ……」
「そだねぇ」
基地内をぶらぶら歩きまわるシャーリーとルッキーニ。
歓迎会の準備は料理のみになったので今の彼女たちにやることはない。
暇つぶしに基地内をぶらぶらしているのだ。
「こうも自由だと、やることがなくて暇だ」
「昼寝の気分でもないしねぇ」
暇だ暇だと言いながら歩いていると、前方からなにかが迫ってくるのを発見。
「なんだありゃ?」
「なんだろ?」
シャーリーは目を凝らす。
そして、こちらに向かっており、少しずつシルエットが大きくなる。
「あれは……ダニー少佐とカーチャ? なんで肩車してんだ?」
「さあ?」
二人は突っ立っているとダニーとカーチャがこちらに気づく。
近くで足を止める。
「よう、リベリオンとロマーニャのお嬢さん」
「よう!」
二人はそのまま挨拶をする。
「なにやってんのあんたたち?」
「「探偵(ごっこ)だ!」」
ダニーとカーチャは恥ずかしげもなく言う。
これには聞いたルッキーニどころかシャーリーも呆れたご様子だ。
「さて、俺たちは食堂に用があるのでここで失礼させてもらう」
「さらば!」
去ろうとしたダニーとカーチャをシャーリーが肩を掴み、止める。
もちろん、歓迎会を当人たちにばらしてはいけないからだ。
ダニーは後ろを向かず、尋ねる。
「なぜ、止めるのかな?」
「生憎食堂は工事中だ、行っても意味ないぞ?」
「意味がなくてもいいさ。しかし、これで確信した」
シャーリーは焦りを抑え、冷静さを声に込めて言う。
「なにを?」
「意味があることをさ」
ダニーはそう言うと手を振りほどき、瞬時に走り出す。
「あ、待て!」
「逃がさないよ!」
シャーリーとルッキーニは追いかける。
「待てと言って待つものがいるか!」
「そうだ!」
ダニーのスピードは速く、シャーリーでもなかなか追いつけない。
次第に差が広がり、追いつけないほどにまで離れてしまった。
なによりも、スタミナがすさまじい。
シャーリーたちに会うまでに走っていたにもかかわらず汗ひとつ流していなかった。
そのうえで全速力で走れているのだから恐ろしい。
オリンピックでも出れてしまうのではなかろうか。
「なんて体力してるんだぁ!?」
「うじゅ~、速すぎ!」
「すまん……中佐」
特に約束したわけではないが、ミーナに謝る。
シャーリーとルッキーニは地面に手をついて休憩する。
(ストライカーでも、速いのか? だとしたら要チェックだな……)
シャーリーは密かにライバルとなりえるかもしれないその背中を見つめた。
今回も少なめ。
シャーリーってこんな感じだっただろうか?と悩みながら制作。
あってたらいいんだけどね。
私、同時にいろんなキャラを喋らせる技術が欲しいです。
それができなくてもせめてストーリーだけは……切に願います。