ストライクウィザーズ ~第501統合戦闘航空団補助部隊~   作:S'sran

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9話

 その後の模擬戦はすぐに決着がついた。

 フーゴが二人を撃墜、そして終了。

 種か仕掛けがあるのではないかと疑いたくなる結果だ。

 皆赤松の如く動けなくなった。

 どのような手品なのか見破れず終わり、基地に帰還した。

「いやぁ、空で金縛りになるなんて初めてだ」

 ダニーとオリッパは食堂のテーブルで頭を悩ませる。

 腑に落ちない。

「固有魔法だったんでしょうか? 事前の資料には書いてませんでしたけど」

「どうだろな……そんな固有魔法聞いたことねぇぞ」

「軍帽がヒントなんでしょうけど……さっぱりです」

 オリッパはコーヒーを飲みながらサルミアッキを口に放り込む。

「まあ、敵じゃないから頼もしい限りだがな」

 ダニーは椅子を並べて腕を枕にして寝始める。

「寝るなら自室で寝てくだいよ」

「いいのいいの、どうせ晩飯までの間だし」

「ですが……はや」

 ダニーは既に眠りについていた。

 オリッパは少し呆れ、マグカップをカウンターに置いて自室に戻った。

 

 

 ◇   ◇

 

 

 一方、赤松とカーチャはというと暗くなりつつある外を赤松の自室で眺めていた。

「一日って早いね、さっきまで太陽が真上にあったのにもう見えなくなりそうだよ」

「サダオがここで話そうっていうから来たのにいきなり変だね」

「直球だね、カーチャ」

 人間、一度は詩的になりたいもんだ。

 僕は今がそうだというだけだ。

「早く試合の話してよ!」

「わかったよ」

 部屋の電気をつけ、二人はベットに腰を降ろす。

「フーゴって人と僕は戦ったんだ。と言っても戦いと呼べるような内容じゃなかったけど」

 僕は自虐の笑み浮かべる。

「なんでか知らないけど、動けなくなった。怖くなっちゃったのかなと思うんだ。練習とかなら上手なんだけど、本番になるとダメダメでさ」

 僕は閉め忘れた窓を閉め、カーテンも閉じる。

 窓には鍵をかけ、ガチャリと音が鳴る。

「ここに来るっていう事実に浮かれてて忘れてたよ。僕の頑張りが認められた、期待に応えなきゃいけないのにこれだ」

「サダオ……下向いてる」

 自分でも気づかなかったが、今は顔を上げられる気がしない。

「向きたくなるさ。僕だって人間なんだから」

 常に上を向いて歩くなんて無理だ。

 それができないからお荷物なんだろうけどさ。

「でも、僕たちは顔を上げなきゃダメだよ!」

「それはそうだけど……」

「先生が言ってた、顔を上げないと世界は暗いままだって! 世界が暗いと行先がわからなくなって(つまづ)くって!」

「先……生……」

 

 

 ◇   ◇

 

 

 あれは、七年前くらい前の事。

 その日は快晴で、とてもすがすがしかった気がする。

 たしか庭に植えられた紅葉の樹、先生と二人で眺めていた。

「先生、僕はネウロイをやっつけて人助けがしたいです」

 先生は微笑みながら僕の頭を撫でてくれる。

 撫でられるのは好きだ、この人のせいだけど。

「いい心がけですが、ウィッチにならないとネウロイとは戦えませんよ?」

「あ、そっかぁ……」

 僕は自分の願いが叶わないとわかるとしょげてしまう。

「でも、男性にも魔法力はあるそうですからね、もしかしたらできるかもしれません」

 先生が付け足すように言うと、僕の顔は変わる。

「なれるかな?」

「顔を上げ、前を見ていればきっと叶います。その情熱を忘れないように」

「うん!」

 

 

 ◇   ◇

 

 

「……らしくなかったかも」

「へ?」

 僕は立ち上がり、窓を開けて身を乗り出し深呼吸。

「ああああああああああ!!!!」

 いつの間にか暗くなった空に向かって叫ぶ。

 突然の事でカーチャは驚き、耳を塞ぐ。

 そして、僕は窓をきっちり閉じる。

「サ、サダオ……?」

 カーチャは塞いでいた手をのけ、恐る恐る聞く。

「スッキリした! 自分らしくあるのが一番!」

「てことは?」

「もう大丈夫、ありがとうカーチャ」

 僕はカーチャの頭を撫でてやる。

 少し照れているが嬉しそうだ。

「さて、そろそろご飯だし行こうか」

「うん!」

 部屋を出て、僕たちは食堂に向かった。




らしくないのはよくないと思います。
身の丈、というと感じが悪くなりますが、らしさ(スタイル)というのはあまり変えるべきではないと思います。
まあ、私はらしくないことしましたが。

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