ストライクウィザーズ ~第501統合戦闘航空団補助部隊~ 作:S'sran
その後の模擬戦はすぐに決着がついた。
フーゴが二人を撃墜、そして終了。
種か仕掛けがあるのではないかと疑いたくなる結果だ。
皆赤松の如く動けなくなった。
どのような手品なのか見破れず終わり、基地に帰還した。
「いやぁ、空で金縛りになるなんて初めてだ」
ダニーとオリッパは食堂のテーブルで頭を悩ませる。
腑に落ちない。
「固有魔法だったんでしょうか? 事前の資料には書いてませんでしたけど」
「どうだろな……そんな固有魔法聞いたことねぇぞ」
「軍帽がヒントなんでしょうけど……さっぱりです」
オリッパはコーヒーを飲みながらサルミアッキを口に放り込む。
「まあ、敵じゃないから頼もしい限りだがな」
ダニーは椅子を並べて腕を枕にして寝始める。
「寝るなら自室で寝てくだいよ」
「いいのいいの、どうせ晩飯までの間だし」
「ですが……はや」
ダニーは既に眠りについていた。
オリッパは少し呆れ、マグカップをカウンターに置いて自室に戻った。
◇ ◇
一方、赤松とカーチャはというと暗くなりつつある外を赤松の自室で眺めていた。
「一日って早いね、さっきまで太陽が真上にあったのにもう見えなくなりそうだよ」
「サダオがここで話そうっていうから来たのにいきなり変だね」
「直球だね、カーチャ」
人間、一度は詩的になりたいもんだ。
僕は今がそうだというだけだ。
「早く試合の話してよ!」
「わかったよ」
部屋の電気をつけ、二人はベットに腰を降ろす。
「フーゴって人と僕は戦ったんだ。と言っても戦いと呼べるような内容じゃなかったけど」
僕は自虐の笑み浮かべる。
「なんでか知らないけど、動けなくなった。怖くなっちゃったのかなと思うんだ。練習とかなら上手なんだけど、本番になるとダメダメでさ」
僕は閉め忘れた窓を閉め、カーテンも閉じる。
窓には鍵をかけ、ガチャリと音が鳴る。
「ここに来るっていう事実に浮かれてて忘れてたよ。僕の頑張りが認められた、期待に応えなきゃいけないのにこれだ」
「サダオ……下向いてる」
自分でも気づかなかったが、今は顔を上げられる気がしない。
「向きたくなるさ。僕だって人間なんだから」
常に上を向いて歩くなんて無理だ。
それができないからお荷物なんだろうけどさ。
「でも、僕たちは顔を上げなきゃダメだよ!」
「それはそうだけど……」
「先生が言ってた、顔を上げないと世界は暗いままだって! 世界が暗いと行先がわからなくなって
「先……生……」
◇ ◇
あれは、七年前くらい前の事。
その日は快晴で、とてもすがすがしかった気がする。
たしか庭に植えられた紅葉の樹、先生と二人で眺めていた。
「先生、僕はネウロイをやっつけて人助けがしたいです」
先生は微笑みながら僕の頭を撫でてくれる。
撫でられるのは好きだ、この人のせいだけど。
「いい心がけですが、ウィッチにならないとネウロイとは戦えませんよ?」
「あ、そっかぁ……」
僕は自分の願いが叶わないとわかるとしょげてしまう。
「でも、男性にも魔法力はあるそうですからね、もしかしたらできるかもしれません」
先生が付け足すように言うと、僕の顔は変わる。
「なれるかな?」
「顔を上げ、前を見ていればきっと叶います。その情熱を忘れないように」
「うん!」
◇ ◇
「……らしくなかったかも」
「へ?」
僕は立ち上がり、窓を開けて身を乗り出し深呼吸。
「ああああああああああ!!!!」
いつの間にか暗くなった空に向かって叫ぶ。
突然の事でカーチャは驚き、耳を塞ぐ。
そして、僕は窓をきっちり閉じる。
「サ、サダオ……?」
カーチャは塞いでいた手をのけ、恐る恐る聞く。
「スッキリした! 自分らしくあるのが一番!」
「てことは?」
「もう大丈夫、ありがとうカーチャ」
僕はカーチャの頭を撫でてやる。
少し照れているが嬉しそうだ。
「さて、そろそろご飯だし行こうか」
「うん!」
部屋を出て、僕たちは食堂に向かった。
らしくないのはよくないと思います。
身の丈、というと感じが悪くなりますが、らしさ(スタイル)というのはあまり変えるべきではないと思います。
まあ、私はらしくないことしましたが。