ストライクウィザーズ ~第501統合戦闘航空団補助部隊~ 作:S'sran
ネウロイの巣が近くにできたにもかかわらず、攻めてくることはなくここ数日は平和だ。
おかげで時間の流れは早く、あっという間に模擬戦当日だ。
バルクホルンが審判、ハルトマンが付き添いの形で行われることになった。
どちらもエースということもあり、先ほどからカメラのフラッシュが半端じゃない。
「今日の模擬戦でお前たちの評判が大よそ決まるだろう。決して醜態を晒さぬように」
「えーと……まあ、がんばってね~」
もう少し何かないのか、と拍子抜けする504ウィザード。
特に動揺することのない501ウィザード。
数日同じ基地にいただけでこの差、よく馴染んでいる証拠だ。
「先日の資料で確認してましたが、ほんとに三人ともカールスラントの人なんですね」
「だな。しかもみんな目が隠れてる。カールスラントでは流行りなのかね?」
「どうなんでしょうかねぇ……」
赤松とダニーが周りに聞こえないように話す。
バルクホルンは聞きつけたのか、横目で確認してくる。
二人は再び相手と目を合わせた。
「さて、ルールを説明する。三対三で弾はペイント弾を使用、ストライカーユニット両方、もしくは体のどちらかに当たれば撃墜とする。先に三機撃墜した方の勝利だ」
「506の時と一緒だね」
「そうだな。各自、準備に入れ」
「「「了解!」」」
◇ ◇
「えー、僕抜けなきゃダメなのぉ!?」
「公平なくじ引きの結果だ、悪く思うな」
今回は三対三での試合、一人こちらから抜かなければならなくなる。
そして、くじ引きをして引いたのがカーチャだ。
「ブーブー!」
「まあまあ、今回だけですから、ね?」
「そうです、必ず勝ちますのでご安心を!」
「……約束だよ?」
「はい!」
カーチャは赤松と約束を交わし、そのまま応援席へ向かった。
「さて、そろそろ飛ぼうぜ」
「「はい」」
残った三人は準備を始めた。
◇ ◇
「501、補助部隊とはいえどもエース部隊に変わりはないだろうな」
オリマーは新しいキャンディーを一個口に放り込む。
「相手にとって不足なし、であるな!」
眼帯の少年、バッツは愛用しているワルサーP38を磨いている。
「使わないのにどうして磨いてるんですか?」
「軍人だった父からの譲り物でな、戦いの前にはいつも磨いているのだ」
バッツは銃を太陽にかざし、じっくりと眺める。
「うむ、これでよい」
「僕もなにか磨いた方がいいかな?」
「そんな時間はねぇよ、ちゃっちゃと行くぞ」
オリマーは飴を組み砕き、新たな棒付きキャンディを咥えてからフーゴを引っ張って連れて行った。
「父上、どうか私に力を」
バッツは銃をポケットにしまい、二人の後を追った。
◇ ◇
全員が揃い、並べられていたストライカーユニットを履き始める。
それぞれ、違う使い魔の耳を出し、飛び立っていく。
バルクホルンは全員が飛んだのを確認する。
「よし、全員上がったな。それでは、配置に着くと同時に開始だ」
両チーム、どんどん離れて行き、20mほどの距離になる。
どちらも振り返ったところで、開始の笛が鳴る。
「赤松は軍帽、オリッパはキャンディーを頼む。眼帯は任せろ!」
「「了解!」」
ダニーが指揮をする501チームは散開、更に離れる。
「一人ずつお誘いがかかったが、どうする、少佐?」
「いいだろう、受けて立とうじゃないか!」
「僕が赤松曹長、プリッツルはオリヴァ少尉、バッツ少佐はジョンソン少佐ですね」
「左様! 我等、鉄の三銃士の力を見せてやるぞ!」
「「了解!」」
彼らもそれぞれの目標に向かった。
◇ ◇
(ここまでくれば大丈夫そうだな)
ダニーは一度停止し、周りを確認する。
しかし、誰もおってきてる様子はない。
(ありゃ、これダメな感じ?)
そう思ったが、そうでもないことがすぐにわかった。
「まいったな、俺も年かね」
ダニーはすでに背後をとられたことを感知する。
「噂ほどできていないように感じますな、ジョンソン少佐」
「しゃーないだろ、俺はもう二十、衰退の年だ」
「影ができてしまったあなたが何故501に呼ばれたのか謎ですな」
「上の指示だ、俺が知るかよ」
ダニーは振り向くと同時に発砲する。
しかし、そこにはバッツの姿はない。
「本気を出してください、あの光の如き速さのあなたに勝って私は初めてあなたの上に立てる」
またも背後をとられ、冷や汗が頬を伝う。
「……使わなきゃダメ、か」
ダニーは目の色を変え、目つきが悪くなる。
バッツは思わず距離をとる。
「目が青から赤に……これが影なきエース、ダニー・ジョンソン……素晴らしい!」
「模擬戦だが……久々に頑張りましょうかねぇ!」
模擬戦、何回かに分けてやらせてもらいます。
詳しく書けなかったのがあれですが。