ストライクウィザーズ ~第501統合戦闘航空団補助部隊~ 作:S'sran
なにかあればTwitter:@kou_S_sranまで。
日夜、多くのウィッチが戦い、戦果を挙げている。
しかし、ウィッチも人だ。
そう酷使はできず、一部の地域では戦況が悪化の一途をたどっている。
そこで、打開策として新たな戦闘員『
ウィザードとは、稀に生まれてくる魔法力を持った少年のことである。
1945年、その試験的運用が始まろうとしていた。
◇ ◇
「いよいよなのね」
書類を見つめ、そう呟くのは501の母親ことミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐。
「そういえば、今日か」
乗せて呟いたのは501の父親こと
彼女たちは数枚の書類を並べる。
そこには顔写真とその人物のプロフィールが書かれている。
「補助とはいえ、魔法力を持った少年まで戦わせることになるなんてね」
ミーナは書類を見ながら悲しみの表情を浮かべる。
「利用できるものは利用する。それが上層部の判断なのだろう」
坂本はただ下を向いたままそう言うのだった。
◇ ◇
僕、
理由は簡単だ、僕が501の補助部隊の
501と言えば各国のエースが揃いに揃ったエース部隊。
一度解散したが、ロマーニャで再結成されたのだ。
補助とはいえ、その一員になれる。
これほど素晴らしい名誉は他にないと言っても過言ではない。
ロマーニャが待ち遠しく、今すぐストライカーで飛んで行きたい。
ここ数日はワクワクして眠れなかったくらいだ。
必死に他国語を覚え、海軍に入ってよかったというものだ。
これからの生活に胸を膨らませ、僕は寝床に入った。
◇ ◇
「私が選ばれた、だと?」
サルミアッキを口に入れながら整備兵に聞くのはスオムス空軍所属のオリヴァ・トゥオミネン少尉。
旧式のストライカーで戦い続け、スオムス空軍では男女含めて第四位のスコアだ。
整備兵は彼の訓練時代の友人である。
「ああ、さっきお偉いさんが言ってたぜ。わざわざウィザードになった甲斐があったな!」
友人は自分のことのように喜んでくれる。
それもそのはずだ。
オリヴァは整備兵として訓練されていたが、それを辞めてウィザードになることを志願したのだ。
ウィザードになって前線で活躍するために。
「そうか……身支度を済ませなければな」
彼は自室に向かうため、友人に背を向ける。
「がんばれよ、オリッ……トゥオミネン少尉!」
彼は背中を向けたまま、手を振って去っていった。
◇ ◇
「ベテランとして、俺をねぇ……」
煙草を吸いながら書類に目を通すのはブリタニア空軍所属のダニー・ジョンソン少佐。
五百回以上も出撃し、シールドの使用は僅か一回のみというベテランウィザードだ。
しかし、彼はもう二十歳、いつ魔法力が衰えてもおかしくない。
「これでお前が空を飛ぶのは最後になるだろう。もう決心はできたのだろう?」
上官に問われ、少し惜しそうな顔をする。
でも、答えは決まっているようだ。
「俺のウィザードとしての墓場はロマーニャか……祖国で終えたかったが、仕方ないか」
彼は煙草の火を消し、残っていた煙草を箱ごと上官に渡す。
「あげます。大人ぶって吸ってましたが、俺はまだガキのようです」
「そうか……」
彼は廊下を歩いて、自室に戻った。
上官がひとり取り残され、小さく呟く。
「魔法力を持った少年、それがウィザード……か」
◇ ◇
「エカチェリーナ、いるか?」
一人の上官ウィザードが部屋の前で部屋主の名前を呼ぶ。
ほどなくして扉が開けられ、中から一人のウィザードが。
彼はオラーシャ空軍所属エカチェリーナ・V・ブダノワ中尉。
彼はまだ十四歳と少し幼いが、戦績はしっかりと挙げている。
「なに?」
「お前にビッグニュースだ! 501の補助部隊が配属先に決まったぞ!」
「ホント!?」
その吉報を聞いて大いに喜ぶ。
「これでとも会える!」
「ああ! よろしく言っといてくれ」
「わかった、エレーミン先生! 早速準備しないと!」
彼はすぐさま部屋のありとあらゆる棚を開け、身支度を始めた。
上官は扉を閉じ、自室に戻る。
(無理矢理だったけど、やってよかった)
◇ ◇
数週間が立ち、ずっと海の上で退屈になってきたころだ。
もう少しで到着ということなので船室で待機中。
(まだか……まだなのか……)
いてもたってもいられず船室の仲をひたすら動き回る。
そして、艦内無線が流れる。
「ロマーニャに到着したぞー!!」
内部の無線で伝わると船員たちは続々と甲板に上がってくる。
自分も甲板まで走って行く。
そして、ロマーニャの光景に者々が歓声を上げる。
長旅に疲れていたのだろう。
(ようやく着いた! 待ってろ、501! 必ずエースになってやる!)
僕は胸の内でそう誓うのだった。
追記:誤字などの修正と一部内容を変更しました。