IS《ISの帝王:小説版》 作:只の・A・カカシです
陰謀・・・・・?
何寝ぼけてる!投稿作品を見ないのか!巨大な二次創作業界の罠に嵌ってるって事だよ!
その日の夜、一夏は鈴とともに食堂にいた。
「で?親父さんは何だって?」
一夏が気になっていたのは、鈴の家族のこと。知ろうと思えば、彼ならいくらでもできる。だが、そこはやはりプライベートの話。本人の口から聞くに限る。
「大真面目なところ、病気になったと思ってたけど健康その物だったんだって。」
ストローを加えながら鈴が言う。
「それは聞いた。どうするかってことだ。」
「結局、お母さんまで来たのよ。」
「よく学園に入れて貰えたな。」
「よく言うわね、お父さんを手引きしといて。同じことをしたのよ。何やかんや再婚するみたい。」
取り敢えずは平穏に物事が進みそうだったので、一夏は「そうか」とだけ返す。
「まさかあそこまでバカなことを考えているとは思わなかったけど?」
「誰にだって、間違いはある。鈴の親父さんだって、不幸になりたかったわけじゃない。」
「そうなんだけどね。ま、難しいことを考えるのはやめやめ。」
ふと来訪者の存在に気が付いて、鈴は話を切った。
「いつまでわらわを放っておるのじゃ!」
「何だ、帰ったんじゃないのか?」
一夏が煽るように尋ねる。
「負けたのでな。残ることにしたのじゃ。」
「なんで、また。」
残る理由が全く見当たらないので首を傾げる。
「勝ったら連れて帰るの逆じゃ。負けたから残る。それにの、お主をわらわの師匠に任命する。どうじゃ、嬉しかろう!」
「道理で不自然な転入申請書が出たなと。」
なぜ知っているのか。それを今更気に掛けるのは時間の無駄である。
「とにかく、これからは学友じゃ!よろしく頼むぞ!」
「なあ、山田先生。14だが転入できるのか?」
規定には何歳ということは書かれていないが、日本の基準で考えればまだ義務教育も卒業していない年令。近くに待機していた山田先生に一夏は問いかける。
「ま、まあ特例と言うことで。あははは・・・・・。」
目が死んだまま笑っているということは、相当に面倒なことをさせられたのだろうと、一夏は同情した
「ところで?何でこっちのまで制服を着てんだ?」
「罰ゲームです。」
今度のは明らかに心の底から楽しんでいる笑顔だった。
「どうだ。まだ十分、学生に見えるだろ?」
IS学園の制服を着せられたジブリルが、表情を引きつらせながらそういう。
「優しいクラスメイトに恵まれたようで何より。」
「同情されているみたいに言うな!」
心を抉られて、ジブリルは顔を赤くして怒った。
「というより、山田先生。一度卒業したんだろ?いいのかよ。」
毎年在校生の何倍という人数の入学試験受験者を篩い落としている割に、編入はジャンジャン受け入れている。果たしてそこに公平性はあるのかと一夏は気になる。
「え?あ~、まあ、これ小説だって織斑先生も仰ってたので。」
「「「それ、マジで思ってんの?」」」
「・・・え?」
照れ笑いながら言った山田先生は、全員から冷ややかな視線を向けられて固まった。
ここはアイリスのために用意された部屋。その部屋でアイリスとジブリルは、それぞれのベッドに寝転がって話をしていた。
「ジブリルよ。」
「何でしょう。」
「わらわは、兄上達にも姉上達にも愛されておったのじゃな。わらわを政治から遠ざけるために、ISを与えてくれたのじゃな。」
この年齢にしてそこまで考えられる思考力に、ジブリルは感動した。
「アリス。きっと素晴らしい王になられるでしょう。」
突然、天井板の一枚が外れた。ジブリルは飛び起きる。
ひょこッと顔をのぞかせたのは一夏であった。
「you‘re king of kings。」
「Queenじゃ!」
「あ、そうか。」
何をしに来たのか全く分からない上に間違えている。
しかし彼は、何事もなかったかのように天井板を戻し、消えていった。
「・・・?!一夏!お主どこから現れておるのじゃ!!」
しばらく呆然とした後、アイリスは大声を出す。
すると再び天井が開いた。
「うっさいわよ!夜よ!静かに!」
今度底にいたのは、鈴だった。
「鈴!お主もじゃ!」
下手をしなくても鈴の声はアイリスよりも大きかった。
「仕方ないわよ!消灯時間を過ぎたら廊下に出ないって決まりなんだから。」
「何故そこは守る!というより、それは部屋から出るなと言う意味ではないのか?!」
「細かいことはいいのよ。それより静かにね。お休み。」
そう言い残すと、天井板を戻して鈴は足音もなく去っていった。
「・・・ジブリルよ。」
「はい。」
「わらわ達は夢でも見ておるのか?」
「・・・と、言うことにしておきましょう。」
自分たちの常識というか想像というか、それらが一切通用しない次元の出来事。そう思わなければ二人とも心が持たなかった。
この日、珍しいことに一夏の姿は整備室にあった。
「「「うーん。」」」
彼と一緒にいるのは更識姉妹と、布仏本音の三人。彼女たちは揃って首を傾げていた、
「どうした、マズいのか。」
「マズいって言うかなんて言うか。一夏君、ほんっとうに使ってないんだよね?IS。」
「いやぁ、その通り。それが悪いのか?」
「いや、悪くはないんだけど・・・何で第三形態にシフトしたのかな・・・。」
本来、使い込んで使い込んで、それでやっとシフトするのがISというもの。だというのに一夏のそれは、全くと言っていいほど使われていないにもかかわらず驚異的な速度でシフトしている。
「どさくさに紛れて大気圏目掛けて投げたんだが・・・いつの間にか戻ってきてた。」
もしかすれば、何とか一夏に使ってもらおうとしてISが頑張っているという説も無きにしも非ずではあるが。
「うん。誰かが拾ったら戦争の原因になるからやめてね。」
彼らにしてみればISなどというものは携帯電話としての価値しかないだろうけれど、世界の常識は一つでも多く手に入れたものこそが強いとされる代物。
一夏ならそれによっておきた戦争など止められるだろうけれど、生じた被害は取り返しがつかなくなるものが出る可能性があると危惧していた。
「・・・システムもほとんどブラックボックス。これじゃ、何も出来ない。」
「そうか。世話んなったな。」
簪の力を以てしても解析できないのでは手の施しようがない。
「あ、そう言えば一夏君。シャルロットちゃんが相手して欲しいって。」
百式を手に取り一夏が退室しようとしたとき、楯無はふと伝言を思い出した。
「どこでだ。」
「第三アリーナ。」
「よし、分かった。」
「ん?あれはまさか・・・メイトリクス!」
第三アリーナでシャルロットと訓練をしていたラウラは、近づいてくるその存在に気が付いた。
「え?一夏?」
呼んだのはシャルロットだが、まさか本当に来るとは思ってもいなかったのか目を丸くする。
「話があるって?」
「あ、うん。ちょっと面白い技を見つけて。」
「どんな技だ。」
「こんな技。」
そういってシャルロットが披露したのは。
「リヴァイヴとすば・・・コスモスを分離できるの。まあ、コスモスは半自動なんだけど。」
ISの分身技だった。
一夏も分子はできるが、ここまで手の込んだものではなく、移動速度にモノを言わせたもの。まあ、どちらもすごいことに変わりはないが。
「なるほど。久しぶりに腕が鳴る。」
一夏がロケットランチャーを構える。そしておなじみの\デェェェェェェェェェェェン!/っという音が流れた。
「それ、腕から出てるの?」
「あぁ、そうだ。」
「「」」
意外過ぎる新事実。シャルロットとラウラはあっけにとられて口をあんぐりと開けていた。
「どうした!もう終わりか!」
それから一時間が経過した。疲労から地面に倒れ込んだシャルロットに、一夏が呼びかける。
「うーん、エネルギーがなくなっちゃった。」
「そうか。」
分かっていたことではあるので、それ以上、一夏が畳みかけることはない。
「それより一夏!すっごい強くなったんだね!僕、驚いちゃったよ!」
「あぁ、シャルは随分と成長した。」
かつてなら手を抜いてもらっても瞬殺されていた。今のところ勝てる気はしないが、それでも一時間、彼の動きについていけるようにはなった。
「先生が良いからだね。」
「『良い』だと?『最高』だろ?」
「あは、それもそうだね。」
あはははと笑う二人。突然シャルロットの前を何かがかすめ飛ぶ。しかしシャルロットは、自分に当たらない機動だったので避けもしない。
対して一夏は、手が動いた。その手の中指と人差し指の間にはナイフが挟まれていた。
「大佐ァ!調子はどんなだ?」
投擲した犯人はラウラであった。
「こっちに来て確かめろ!」
「いいや結構。遠慮させてもらうぜ。」
「来いよラウラ。怖いのか?恐怖心なんか捨てて掛かってこい。」
「手抜きは無用だ。行くぞ大佐!」
「来いラウラ!」
いつものルーティーンを済ませると、一夏とラウラがバトルを始める。
毎度のごとく、一夏がロケットラ弾を撃ち込む。
「弾切れ!」
そういってロケットランチャーを投げ捨てると、別の武器をポケットから取り出して撃つのであった。
『斑一夏。おるか!』
夕方。一夏が部屋で休んでいると、珍しく
「どうした。」
ドアを開けて廊下に出る。
「クッキーを焼いたのでな。お裾分けじゃ。」
そこに立っていたアイリスが手に持っていたそれを差し出した。
「そりゃありがたい。早速頂こう。中へ入れ、紅茶を煎れる。」
それを受け取り、一夏はアイリスと付き添いのジブリルを部屋の中に招き入れた。
ソファーに腰かけてもらい、一夏はすぐに紅茶の用意に取り掛かった。
「良い匂いじゃな。種類は何じゃこれ?」
「何だったかな・・・。セシリアにもらったんだが。」
記憶力はいいのだが、ど忘れして名前が出てこない。
「ローズヒップではないかと。」
「いや違うな。」
もっと珍しい品物だということは覚えている。こう見えても、一夏は食にうるさいのだ。
紅茶を二人の前に配膳して、一夏もソファーに腰かける。
「早速頂く。」
一夏がお皿にクッキーを出す。アイリスがまじまじと見つめてくるので、一夏は一つ手に取り食べた。
「アリスは、クッキーだと言ったな。」
かみ砕いた瞬間に、一夏の顔色が変わった。
「そうじゃ。どう見ても、美味しそうなクッキーじゃ。」
胸を張って自慢するアイリス。けれども一夏は容赦なくこう返した。
「あれは嘘だ!」
まるで何かの危険を伝えるようにひときわ大きな声で言ったかと思うと、そのまま泡を吹いて倒れてしまった。
「織斑一夏が倒れるほどの旨さ!このジブリルも頂きます!」
それを勘違いしたジブリルは、2~3個を一気に口に入れる。
「・・・・・ありす。」
だが彼女もまた、一夏と同じような顔色になる。
「何じゃ?」
「クッキーだと言いましたよね?」
ジブリルの声は辛うじて絞り出したといったような感じに震えていた。
「ど、どうしたお主まで。」
「あれは、U・S・O・D・A☆。」
おどおどするアイリス。その真正面で、ジブリルも一夏と同じように泡を吹いて倒れた。
「ど、どういうことじゃ!ま、まさかマズいのか!」
これはおいしいものを食べたときの反応でないことに、遅らせながらに気付く。
もしやと一つを手に取り、お行儀は悪いがアイリスはその表目を舐める。
「う!・・・・・ううううううううう!マズい!」
そしてそのまずさに悶絶したのだった。
「セシリア以来、3回目ね。一夏を完膚無きまでに叩きのめしたのは。」
医務室に運び込まれた一夏を見ながら、鈴が呟いた。
「その前はなんじゃったのじゃ?」
そう聞いてきたアイリスの声はシュンっとしていた。
「ISの自爆に巻き込まれただけ。今なら、余裕だろうけど。」
「そうか・・・。やはりこやつも人間じゃったのじゃな。」
確かに無傷では済まないだろうが、ISの自爆に巻き込まれて気絶で済むと言うことの異常さが気にならなくなっている時点で、アイリスもかなり染まりつつある。
「あ、目が覚めた見たい。」
「ここは、保健室か・・・。」
一夏が弱々しく声を出す。いつもの威勢は、そこにない。
「残念だったね。クリニックよ。」
「そうか・・・。」
呟いたあと、一夏は息を吐いた。
「で、何を食ったの?」
「鈴は知らないほうがいい・・・。俺だって、出来ることなら忘れたい」
セシリアの時に見せたものより、更に絶望の強い目。
「下んないわよ、恐怖でおかしくなったわけ?相手は只のクッキーよ、どうってことはない。」
「腐るよなぁ」
「まったくですわ。サンドイッチならともかく、クッキー一つにこれでは、大げさすぎますわ。」
一夏の調子が出ないことをいいことに、セシリアが畳み掛ける。
「大佐、何をビビってんだ。」
ラウラの一言に、一夏は素早く反応する。
「試してみるか?俺が意識ほどを失うほどのクッキーだ。」
「いや、結構ね。遠慮させて貰うわ。」
「いい判断だ。俺から学んだのかな?」
けれどもそれ以上続けるほどの体力は残っておらず、すぐにまた目を閉じた。
IS《冬の帝王:小説版》、2021・MAD版《冬の陣》編集分はこれで終わりだ。次はMAD版・2021春の陣(予定・GWくらい?)で、また会おう。