IS《ISの帝王:小説版》   作:只の・A・カカシです

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これは・・・・・コマンドーあたりでしょうか?
ンよくご存じねぇ、正確には紀元前マイナス20世紀のものよ。その時代はお好き?
ええ、ゾッコンですよ


第70話 銃弾や砲弾の傷じゃない・・・・・

 眠ってしまったジブリルを叩き起こす方法を、アイリスは思いつき実践する。

 「ジブリル!織斑一夏をルクーゼンブルクに招く。近衛騎士団としてわらわを守ってもらうのじゃ!」

 「「「はぁ???」」」

 それに素っ頓狂な声を上げたのは、その場にいた全員だ。

 「異議のあるものは名乗り出よ!」

 「ある。」

 それらを代表して箒が歩み出る。

 「なんじゃ?申してみるがいい。」

 「一夏がルクーゼンブルクを守ってないと思ってるわけだな?」

 「?」

 アイリスはその言葉をどこかで聞いた気がするが、なかなか思い出せない。

 「一夏に千ふ・・・織斑先生、それに私がいなければ、今頃、ルクーゼンブルクは海の底だ。分かっているのか?」

 「どういう意味じゃ!」

 もう少しで繋がりそうな気がしていたが、海の底という単語に全てを吹き飛ばされる。

 「篠ノ之束を放っておけば、時結晶を掘り尽くしたさ。それを止めたのが俺達だ。」

 「「?!」」

 衝撃的すぎる言葉にジブリルが飛び起きた。

 「だからまあ、一夏に地上の場所なんて関係ないのよ。」

 鈴がそれを捕捉する。

 「ふん!そんなバカな話があるわけがない!わらわに織斑一夏を取られるのが悔しいのじゃな?わらわには分かるぞ!」

 ここで弱気になっては王家の名が泣く。アイリスは強がった

 「別に?あんた達じゃ連れて行けないし、連れて行けてもすぐに帰ってくるし。」

 「よろしい!ならば織斑一夏の所有権をかけて女同士、ISで真っ向勝負じゃ!」

 一夏のことなどまるっきり無視した宣言。鈴の忠告を無視した結果がどうなるか。

 「痛い痛い痛い!!!」

 ギリギリ怪我にならない強さで、頭蓋骨を握りめられる。

 「俺はものじゃない。」

 「分かったから!手を離すのじゃ!!」

 パッと手が放される。アイリスはズキズキと痛む頭を抱えてうずくまった。

 「まあ、勝負するって言うなら受けては立つわよ?」

 それとこれとは別の話。舐められっぱなしでは鈴のメンツにかかわる。

 「舐めおって!格の違いを見せてやる!」

 流石は王女。痛みを堪えてシャキッと立つ。

 「いけません、王女!このような下せんのものとの決闘など!」

 「言葉を慎め!ジブリル!」

 「王女殿下!」

 「黙れというておる!」

 「!!」

 負けを恐れてか、はたまた自分達の地位に傲ってか。ジブリルは必死に止めようとしたが、王女の言葉に逆らうことは出来なかった。

 「鈴、ハンデをやれ。そっちは二人で来い。」

 勝負することは決まった。一夏の指定は戦力比を考えてのことだったが、アイリスのプライドはそれを許さない。

 「舐められたものじゃ!二対二で勝負をするのじゃ!」

 「よせ、オーバーキルだ。」

 ナオも引かぬアイリスに、一夏は鋭い視線を向ける。

 「ふ。泣きを見ることになるぞ?」

 更にラウラが畳み掛ける。

 「どうしてもって言うなら、セシリアかシャルロットか。」

 鈴としてもオーバーキルは避けたい。しかし、ここで意外な人物が名乗りを上げた。

 「いや、私が行こう。」

 箒だ。

 「いつ、誰が仕掛けて来るか分からん。私達とて、完全ではない。」

 今まで、こう言った場面で横槍が入らなかった試しはない。万全を期すにはこれしかなかった。

 「それもそうね。じゃ、決定で。」

 「決まったの。では時間は一週間後の日曜日。第三アリーナじゃ。」

 

 

 

 「お届け物です。」

 鈴が整備室で簪の打鉄弐式の整備を手伝っている時に、それは届いた。

 「はいどうも。・・・あ、また追加パッケージ。んー、どらどら?重い割りに微妙ね、これ。」

 説明書を読むまでもなくスペックを把握すると、スクラップ置き場に投げ捨てた。

 「あ、壊した。」

 「じきに次が来るわよ。」

 「あ、来た。」

 「早っ!」

 まさかこれを見越して二つ送ってきていたのか。けれどそんな情報は仕入れていない。

 「違う・・・プリンセスのスペック・・・。」

 しかしそれは考えすぎだったようだ。

 「一夏から?」

 頷く簪からメモを受け取った。

 「ん~どらどら?第4世代。勝ったわ。」

 素性が全く分からないISではあるが、国外に持ち出しているということはその程度のIS。鈴はそう予想していて、実際にその通りだったことで自信を持った。

 「油断は禁物。・・・相手の機体には重力を操る装備や高圧高電流を操る剣に盾がある。」

 そんな鈴を見て簪は、油断大敵と釘を刺した。

 

 

 

 試合当日。アリーナのスタンドは生徒達で賑わっていた。

 そんな密を避けるように、一夏の姿はモニタールームにあった。それは、とある来客者を案内するため。

 「久しぶりだな(がく)さん。」

 部屋に入ってきた人物と、一夏が握手を交わす。彼は、凰鈴音の父親だった。

 「少し見ないうちに一段と逞しくなったな。」

 まるで我が子のことのように目元を緩ませ、楽が再会を喜ぶ。

 「それにしても、随分と急な話だったな。鈴の姿を見たいなんて。」

 「あぁ、そのことなだがな。健康診断は?」

 「?・・・少し前にやった。」

 急にテンションを落とし話し始めたので、一夏はいぶかしむ。

 「筋密度は高かった?」

 「あぁ。1000%」

 「だろ。実はな・・・・・肺がんが見つかったんだ。かなり悪いらしい。」

 「おぉい、本当は?」

 彼が病魔に犯されていると信じたくない。見た目にも、昔と変わらないたくましさがある。しかしその声の弱々しさは、明らかに病人のそれである。

 「意外も意外だ。」

 「・・・それで?どうするんだ?」

 わざわざそれを伝えると言うことは何か考えがある筈だ。

 「取り敢えずは稼げるうちに稼ぎまくる。鈴のためだ。会ってはないがな。死んだあと、いい父親だったと思われたい。・・・・・哀れだろ?」

 「同情するよ、全く。」

 近いところでそのような話しを聞くとは夢にも思っていなかった。一夏はショックを隠しきれない。

 「・・・・・何て全部嘘だよ。」

 と、次の瞬間、楽は満面の笑みでそう言ってきた。

 「何?」

 驚いたのは一夏だ。

 「まだ心があったか。へっへっへ。」

 「はっは、はは。」

 「完璧騙されたろ。」

 「あぁ、まんまとやられたよ。もう信じない、なにを言われてもな。」

 久しぶりに負けた気がする。一夏は心の底か笑い転げた。

 「おっと、試合が始まりそうだ。」

 

 

 

 第三アリーナで、アイリスとジブリルの正面に鈴が仁王立ちしていた。

 「ルールを確認するわよ。アンタが勝ったら一夏を連れて帰る交渉が出来る。OK?」

 「違う!わらわは連れて帰ると言うておるのじゃ!」

 「言うは易く行うは難しよ。悪いことは言わないから、交渉権にしときなさい。」

 「お断りじゃ!」

 最後の助言は、虚しくもアイリスに跳ね返される。

 『試合始め!』

 審判が宣言する。それと寸分たがわぬタイミングで、アイリスが鈴へと襲いかかった。

 「よく見切ったの!」

 それを鈴は、軽々と避けてみせる。

 「あ、攻撃?挨拶だと思った。」

 勿論、その後のフォロー(挑発)も忘れずに。

 アイリスが次々と攻撃を繰り出す。鈴は一切反撃をせず、ひたすらそれを避ける、避ける、避ける。

 「狙ってる?」

 あまりにも軽々と避けきれるものだから、鈴はアイリスが攻撃の手を抜かざるを得ない状況にあるのではないのかと心配になる。

 「逃げるのは弱者のする事じゃ!掛かってこぬか!」

 「それじゃお言葉に甘えて。」

 鈴が衝撃砲を放つ。

 「ふっ!わらわには効かぬ!」

 鈴の攻撃は、アイリスのISが衝撃砲への対策が出来ているからこそのものだった。けれどもアイリスはそのことに気が付かない。

 「今度はわらわの番じゃ!」

 立ち止まった鈴を、攻撃が防がれたことに驚いてと思い込んだアイリスが重力攻撃を行う。

 「これが重力攻撃ね。ラウラから聞いたわ。」

 「ふ、その余裕がどこまで持つかの?」

 出力を上げる。グラウンドの地面が陥没するほどの超重力が発生する。

 「お、お主人間か?!」

 「?まあね。」

 その中において、鈴は涼しい顔をして突っ立っていた。

 「アイリス様!私が参ります!アイリス様はもう一人を!」

 これは時間稼ぎをしているに過ぎない。ジブリルはそう判断して、この場を引き受けると主人に伝えた。

 「任せたぞ!・・・ジブリルよ、篠ノ之はどこへおるのじゃ?」

 戦術に関してはジブリルが上である。それを分かっているアイリスは判断に従おうとしたが、付近に箒の姿が見えなかったので困り果てる。

 「箒?あそこでコタツ出してせんべい食ってるわよ。」

 「「」」

 困っていた二人に、鈴はアリーナの端っこの方を指差して教えてあげる。

 「さて。」

 立っていることに飽きてきた鈴が動き始める。

 「う、動けるじゃと?!」

 その光景に驚いたのはアイリスだ。今まで破られたことのなかった技だけに動揺は大きい。

 「そりゃ、この程度なら。」

 鈴は涼しい顔をしていた。まあ、一月なので涼しいと言うより寒いに近いのだが。

 「お下がり下さい!」

 「ダメじゃ!引くわけにはいかぬ!」

 主人と近衛騎士団とで揉めている。そこへ鈴は飛び込んで、ジブリルにパンチをお見舞いした。

 「グア!」

 不意打ちを食らって吹っ飛ぶジブリル。

 「大丈夫か!」

 「こ、この程度!」

 それでもアイリスに心配を掛けまいとすぐに立ち上がる。

 「・・・?地面を打ち始めたが、何じゃ?」

 「気でも狂ったか?」

 再び鈴に立ち向かう。次の瞬間、鈴は狂ったように衝撃砲で地面を撃ちまくっていた。

 付近には砂埃が立ちこめ視界が悪くなる。

 「時間の無駄じゃ!一、二の三で突撃して片づけるぞ!」

 「はっ。かしこまりました。」

 「一、二の三!」

 煙に隠れながらこそこそと戦う者に、強者はいない。アイリスの理論ではそうなっていた。

 見えないならばこちらから捕まえに行く。

 勇ましく砂埃に二人は突っ込んでいったが、鈴はすでにその煙の中にいない。

 「せんべい食うか?」

 鈴は箒のところへと行っていた。

 「ん、あんがと。」

 鈴は渡された煎餅をかじる。流石にコタツに入るほどの時間はないので立ったままではあるが。

 「小学生じゃあるまいし、砂埃を立てるのは寄せ。」

 幸い風向きとしてこちらに向かってくることはないにしろ、お行儀が悪いぞと指摘する。

 「常に相手するほどの敵じゃないのよね。」

 「なるほど、同士討ちか。」

 道理で戦闘する音が聞こえるわけだと頷く。

 直後、一際鈍い音が響いた。

 「アイリス様!エネルギーが!」

 「ジブリル!大丈夫か!」

 決着がついたようだ。

 「そろそろ戻るわ。せんべいあんがとね。」

 「あぁ、怪我させないようにな。」

 鈴はお礼を言うと砂埃の中に戻り仁王立ちする。

 「おのれぇ、姿を隠しおって!こうじゃ!」

 アイリスが重力を増大させて、まっていた埃を地面に落とす。

 視界がクリアになる。

 「まだまだね。私の敵じゃないわ。・・・ゲフッ。」

 思いのほか煎餅が腹に溜まっていた。

 「うぬぬぬぬぬ!もう一度じゃ!」

 「アンタ、他に攻撃はないわけ?」

 「全力じゃ!」

 まだ重力攻撃しか見ていない。それで倒すことに固執しているのか、あるいは情報とは違ってほかに攻撃手段がないのか。

 しかし全力と言われた以上、鈴とて手抜きをするわけにはいかない。

 「攻撃に集中するのは良いけど、足動かした方がいいわよ。」

 「?!」

 攻撃している間は動けない。それがどれだけ致命傷なことかを知らしめるべく、鈴は目にもとまらぬ速さでアイリスの懐に飛び込む。

 「この距離で打てば私の勝ちだけど、どうする?続ける?終わる?」

 決定権を相手に渡すことで、後でごねさせない下準備をする。

 「続けるがよい!わらわを打ち倒すのじゃ!」

 「はいはい。」

 判断に従って、鈴が距離を取った。

 「!!お主!距離を取るとは舐めておるのか!」

 「いや、続けたいって。」

 自分の言ったことだろうと、鈴が聞き直す。

 それはアイリスのプライドを大きく傷つけた。

 「ああああああああっ!」

 怒りに任せ手当たり次第に重力攻撃を仕掛ける。しかし鈴は、ピョンピョンはねてそれを躱す。

 「逃げるでない!」

 「はいはい。」

 仰せのままにと、鈴は足を止める。

 やはりというかただ体が重たくなるだけでそれ以上のことはない。

 「どうじゃ!最大出力じゃ!」

 「うん。・・・で?」

 「」

 最大出力なのは先ほどから聞いているので分かる。そこに何かを足していかなければ鈴の相手ではない。

 もっとも、アイリスの攻撃は普通の操縦者に使えば一撃で沈められる威力があることに間違いはない。

 「何か忘れてません、か?」

 つまり、それだけのエネルギーを使えばどうなるか。

 「・・・?え、エネルギーが!」

 気が付いた時には時すでに遅し。メーターにかすかに表示されていた残量が、完全になくなる。ISは強制解除された。

 『ジブリル、アイリス王女、両名エネルギー切れにより、この試合、凰鈴音の勝利!』




只の・A・カカシですに連絡をとってくれ。組合員と言えば分かる
ふへへっ、只の・A・カカシですだぁ? 寝言言ってんじゃねぇよ

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