IS《ISの帝王:小説版》 作:只の・A・カカシです
それは元旦の出来事だった。
「なあ、千冬姉。」
こたつで温まりながら、おせちではなく昨夜のあまりのそばを喰らっていた一夏が急に話し掛ける。
「何だ?」
「俺達、なんで自宅に籠もってるんだ?」
いつもならお参りに行くのに今年は家の中。
「自粛要請が出てるから。」
「何で。」
必要でないときまで法を破ることはしないが、要請ごときで黙るというのも変な話しである。
「新型コロナが流行っているから。」
「なんたってそんな外の病気が来てるんだ?」
俺達には関係のないはずだと不満を垂れる。
「決まってるだろ?書くのが面倒くさいんだ。」
「つまり。」
「カットしてやった。」
1月4日、新年一発目の授業がIS学園で始まった。
「先生!質問があります!」
授業が始まると同時に、相川が手を上げた。
「どうした。」
「昨日まで猛威を振るってたウイルスはどこに行ったんですか?」
今朝のニュースでは、誰も触りもしなければ口にもしない。たった一夜でそれ程劇的な変化が訪れるのかと疑っている。
「新型プレミオに置き換わった。」
「「「?????」」」
突然車の話になったが、当然、生徒達はついてこない。
「さ、手前ら正月らしいことしてないだろうからおみくじを引かせてやる。」
そういってどこからともなく、神社においてあるような振ると棒が出てくるタイプのおみくじを取り出した。
「わー!これやってみたかったんだ!」
日本出身でない生徒も多数いるため、予想以上の盛り上がりを見せる。
「あ!大吉!あなたは?」
「私、末吉。」
「わー中吉だ!」
「勝った、吉!」
「知ってる?中吉の方が強いところもあるんだよ?」
「それがどうした!」
それぞれが自分の運勢を競い合う、実にほほえましい光景がそこにあった。。
「織斑君は?」
そんな中、一人の生徒が一夏に勝負を挑もうとした。しかし。
「(字が)見えないんだ。」
よくなかったから誤魔化しているんだ。そう思ったのか、一夏からそれを受け取ってみてみると。
「ん~どらどら?・・・見えないね。」
「マジで、見えない。」
本当に何も書いていないただの棒がそこにあった。
「あれ?篠ノ之さん引かないの?」
やがて箒にも順番が回って来たが、彼女は引くことなく次に回した。
「滅多に引かん。当たらんから。」
それだけでなく、家に帰ればいくらでもできるということもあるが。
「まあ、そう言わずに一回。」
ジャラジャラー、ジャラジャラーと、箒がおみくじを振ると、PON☆と運勢を書いた棒が出てきた。
「ん~、何?」
面白がってのぞき込んでみると。
「大凶。」
無感情に箒がそれを読み上げる。
「あっ。」
「「「・・・。」」」
やってしまった。後悔するクラスメイト達の目の前で、けれど箒はこういった。
「どうやらこれでも底らしい。ホントなら今年は絶好調だな。」
〈〈〈それもそれで恐ろしい。〉〉〉
不敵な笑みを浮かべる彼女を見て、一部の例外を除いた全員が震えあがった。
と、その時。
「早く紹介せぬか!」
ドアが乱暴に開け、一人の少女が怒鳴り込んできた。
「嫌だね。」
「断る。」
一夏と箒がすかさず言い返すと。
「断るだと!静まれ、静まれ!この紋章が目に入らぬか。」
直後、釣り目の女性が入ってきて、高級な総菜で作られた紋章を見せつけてきた。
「ここにおわすお方をどなたと心得る。恐れ多くも先の女王『アイリス・トワイライト・ルクーゼンブルク』にあらせられるぞ!頭が高い、控え・・・・・何ですか、女王陛下。」
意気揚々と話していたところをつつかれた女性だったが、主人の呼びかけに素早く対応する。
「まだなっておらぬ!」
そこには王女としての確固たるプライドがあった。
「!!静まれ、静まれ!」
「「「お前だ!」」」
慌てて取り消そうと叫んだ結果、一組の生徒からド正論の反論をされる。
「で、そんなヤツがここに何の用だ?」
「知らないのか?特別留学生だ。」
ラウラが問いかけると、それをカットするように一夏が返す。
「へー・・・偉いの?」
誰かがそう言った。
「王女だが、所詮、七位だ。」
「所詮は失礼じゃない。」
すかさず一夏が言ったことに対して、どこからともなく声が上がる。
「まあ、見てろ。」
どっしりと腰掛けたまま、一夏は不敵にに笑っていた。
「わらわのこと、しっかりと説明してくれなくては困るぞ。織斑千冬。」
時刻ではそれで通用していたことだろう。だがここはIS学園の一年一組。
「・・・。」
ドベキシ「オフゥイ」
「先生を付けろ。」
権力だろうと肩書きだろうと、一切通用することはない。
「そのようだな。」
「言ったろ。」
それでも手加減があったので、一夏は面白くなさそうではあったが。
「な!貴様!アイリス様に手を出すとは!」
当然、アイリスの従者は切れた。
「手は出してない。」
嘘は言っていないが、言い訳であることに疑いの余地はない。
「叩いたろ!出席簿で!」
「安心しろ、峰打ちだ。」
「峰?峰って何だ?」
「ここは日本だ!郷に入っては郷に従え!」
上手いこと誤魔化そうといたが、相手に伝わらなかったので強引にいく。
「おいおーい。」
「どうした織斑。」
「ここは日本じゃないぞ。」
「似たようなもんだ。」
一夏が上手いこと割り込んでくれたお陰で、逃げ切れた。
「う、うーん?なぜわらわはここで寝ておるのじゃ?」
「この女が殴ったのです!」
とういのは従者が許さない。
「何と!!死刑じゃ!」
立ち上がりアイリスが宣告する。
「やってみろ。できるならな。」
それを挑発する千冬。
「近衛騎士団!懲らしめてやりなさい!」
どこぞの隠居のように指示を出した。直ぐさま近衛騎士団が駆け込んで――
「近衛騎士団?」
は来なかった。
「控え室でひっくり返ってたぞ。」
「何?!」
一夏の言葉を聞いて驚いたのは、アイリス・・・ではなく千冬だった。
「私の(酒)じゃないだろうな。」
「お前の(酒)は消毒だって正月に全部飲み干したろ。」
「・・・。」
マジギレ寸前の一夏を見て、千冬はばつが悪そうにそっぽを向くのだった。
「もうよい。それより、そこのうるさいの。」
流石に無視され続けることに我慢が限界が来たのか、命知らずの王女はある一人を指さした。
その指の延長線上を生徒はみる。
「呼ばれてるぞリアーデ。」
「あ!大き・・・え、何?」
最後列にいた彼女は、ようやく回って来たおみくじを引いていたので話を聞いていなかった。
「お主じゃ!」
小バカにされたことでさらに怒り、アイリスは一歩踏み出した。
「え~、私かぁw。」
と、全く関係のないところで一人の生徒が照れながら立ち上がった。
「呼んでおらぬ!誰じゃお主!」
「岸原理子だよ!」
名乗りながら独特のポーズを決める。
「ウザイ!・・・この匂いは何じゃ?」
ふと、嗅ぎ慣れない香りがしてきた。
「航空燃料。」
「航空燃料。いいのう、好きじゃ。」
「同士よ!」
目をらんらんと輝かせ、相川はアイリスの手を取った。
「・・・ハッ!離さぬか!無礼者!」
まもなく我に返ると、相川の手を振りほどく。そして、ずかずかと足音を立て教室の中へと進む。
「お主じゃ!織斑一夏。」
そして呼びかけていた本人の前へと出向き、名指しと指差しで呼びかける
最初からそうすればいいのに。
「何の用だ?」
「お主をわらわの召使いにしてやる。光栄であろう?」
胸を張りながら言ったが、相手は一夏である。一筋縄でいく相手ではない。
「めしつかいって何だ?」
「ご飯作る人。」
「なるほど。」
すぐに答えたのは箒だったが、そこにセシリアが訂正を入れる。
「違いますわ!ご飯を操る人のことでしてよ!」
「流石英国貴族。言葉の重みが違う。」
どういうわけか、クラス中の全員が納得したように頷いている。
「おぬし、それでも貴族か!それとも召使いも雇えぬ貧乏貴族であるのか?」
全方位にケンカを売りまくるアイリスだが、誰一人としてまともに買ってくれない。それどころか買わされていた。
「お生憎様。当家にはメイドしかおりませんので。」
言い方の違いでしかない。「もうよい!!」と一言言って、一夏へと向き直る。
「わらわの身辺を護衛せいと言っておるのじゃ!」
「子守りは得意じゃない。」
「子守りじゃと?!わらわを子ども扱いするでない!」
一夏は当然のことを言ったまで。しかし彼女にしてみれば、それは最大級の屈辱だったらしい。
「俺をコケにするもりか!いっぱしの王女を気取っても、俺から見ればそこら辺のガキだ!誰が専属で面倒を見るか!」
アイリスはここで気が付くべきであった。一夏は、面倒を見ないとは一言も口にしていない。専属ではしないと言っているだけだ。
「貴様!王女殿下に対して無礼であるぞ!」
ドベキシ「「オフゥイ」」
十社が出しゃばった瞬間、誰かの何かが切れる音がしたかと思うと、アイリスと従者のフローレンスは眠りについていた。
「教室では静かにしろ。さもなくば去れ。」
「「「上がり目しかねぇ・・・。」」」
大凶でさえこれだけできる。今が本当に底だとすると、いったいどれほど強くなってしまうのか。クラスメイト達はそのことについてただ震え上がった。
間もなく昼休憩が終わる。一夏は、性懲りもなく付きまとってくるフローレンスを適当にあしらっていた。
「王女の意向だ!これを着ろ。」
一夏に執事の服を押し付ける。それも、サイズからして着られるはずのないものを。
「断る!」
「異論は認めん!」
「授業だ。お前も受けろ、ためになる。」
時計を軽くたたき、フローレンスの首根っこを掴んで持ち上げた。
「は、放せぇぇぇぇぇぇ!私には近衛騎士団長を迎えなければならんのだ!」
「支えてんのは左手だ。利き腕じゃないんだぜ。」
「あわわわわわっ・・・!」
素直にならないフローレンスを、一夏は四階の窓から外に出す。
「空飛ぶか?そら!」
「うわあぁーーーっ!!!」
それでも従う気配がなかったので、「見上げた忠誠心だ」とだけ言うと一夏は手を放した。
「傾注!」
直後、雄々しさを感じさせる声が響いた。勿論、一夏の姿は既にない。
「・・・ぁぁぁぁあああああぁぁぁぁ・・・・・。」
出迎えがない。近衛騎士団長のジブリルが不思議がっていると、窓の外で何かが飛び上がってきて、そして自由落下していった。
「フローレンス!何を遊んでいる!」
「・・・たんです!」
ジブリルの声はフローレンスに届いていたが、その逆は声量が足らず聞き取って貰えない。
「何を言っているのか分からん!」
「・・・ぁぁぁぁああああ!!」
丁度上がってきたところをジブリルは掴み、そして室内に引き込む。
「すまない、助かった!」
「殿下はどこだ!」
ここで足止めされていると言うことは、まさかさらわれたのではと考える。まあ、あながち間違ってもいないが。
「教室で授業を受けておられる。市街を散策されたいと申されておられたのに、織斑一夏め!強引に授業に連れて行きおって!」
「何と!この私が直々に成敗してくれる!」
間違いなく一夏の言っていることの方が正しいのだが、彼女たちは思考が偏っていたのでそう言う判断になっていた。
教室へ向かおうとした、正にその時だった。
ヒョロロ〜〜ファンファンファン
ヒョロロ〜〜ファンファンファン↑
「・・・何の音だ?」
突然聞き慣れない音が流れてきて立ち止まる。
「誰だ!!お前は。」
フローレンスが、真っ正面から堂々とやって来た男に気が付き怒鳴りつけた。
「一夏に頼まれてる。」
御手洗は立ち止まると、名乗ることなく短くそれだけ言い、進路を塞ぐように悠然と立った。
「くそ!あの男、どこまで外道だ!」
「そこを退け。さもなくば与えられし権限により、ナイフと結ばせてやる。」
「・・・。」
どんな挑発でも、どんな脅しでも彼は動揺する素振りさえ見せない。
「なるほど。ならば死ね!」
ジブリルが腰に下げていた剣を引き抜きつつ、男に斬りかかる。
「お、お前は一体・・・・・何者だ。」
その暇さえ与えられず、二人は制圧されてしまった。
「・・・。」
倒れた二人が、授業が終わるまで動くことの出来ない状態にあることを確認して、御手洗は去って行った。
「で?結局、アンタはついて行ってやるわけ?」
週末。一夏が出かける準備をしていると鈴にそう言われた。
「ちょっとした事情があってな。」
「なるほどね。」
何かを察し、不敵な笑みを浮かべる。
「大佐、お気を付けて。」
「あぁ、行ってくる。」
ラウラに見送られ、一夏は出て行った。
「・・・ねえ、一夏はトラブルを引き寄せるの?」
その背中が見えなくなると、シャルロットが小声でラウラに問いかけた。
「違ぁう!逃げるトラブルを追いかけ、見つけ出して殺す。」
「・・・本当は面倒くさがってない?」
あれだけ軽くあしらっていたのは、曜日を調整するためではないかとまでシャルロットは思い始めていた。
「これはこれは、ジブリルさん。ご機嫌如何です?」
アイリスの部屋に向かう途中で、一夏は彼女と出くわした。
「ご機嫌だ。目の前のマッチョマンが消えっちまえばな。」
「それは出来ぬ相談にございます。」
不機嫌を隠すこともなく言われたが、一夏が気に掛けることはない。
「王女殿下の身に何か起こってみろ。溶鉱炉で溶かすぞ。」
「それも出来ぬ相談にございます。」
「何?!」
一夏にはどうやっても勝てないと悟ったジブリルは、まさか一夏が確約できないと言い出すとは思っておらず驚く。
「お宅にスパイがいる。」
「どういうことだ特ダネや。」
顔つきが変わった。それを確認すると、一夏は「この時間にここにいる」と言ってメモを渡し立ち去った。
読 何かが俺達(の腹筋)を狙っている・・・・・人間ではない・・・。全員殺される。
作 くだらん。恐怖でおかしくなったか?相手はただのMA・・・小説だ、どうってことない!