IS《ISの帝王:小説版》   作:只の・A・カカシです

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A Zzz・・・
A おい。
A !!冬期!
A ISの帝王!
作A 小説版!!!


I’m back.


第63話 ホントにドイツ人は怒りっぽいんだから

 乗っていた飛行機を撃墜された(どちらかというと乗り捨てた)一夏達は、ドイツを目指しISで東欧境界線付近を飛行していた。

 その中にあって、ISを持っていない飛行機のパイロットと千冬はいわゆるお姫様抱っこの格好で運ばれていた。

 「オイ、一夏。千冬さんは放してやったらどうだ?」

 箒が薄情な仕打ちを提案しているように聞こえるが、対象はあの織斑先生である。

 IS程度の速さなら、走ってでも追い越せる。

 「駄目だ。」

 「ダメエェ?!」

 しかし一夏は、にべもない態度でそれに答えた。

 「私のことは気にするな、一夏。私は置いていってかまわわん。」

 更には置いて行けと言われた本人までもが言い出す始末。

 「お前を置いていくとでも?」

 「随分と優しいじゃないか。どうした?」

 ようやく心を取り戻したかと思った織斑先生であったが、それは希望を持ちすぎであった。

 「勘違いするな。お前をこの森に放してみろ。自然保護区が消滅するだろうが!」

 「!!」

 痛いところを突かれた織斑先生は、仕方なく一夏の腕の中で黙っておくことにした。

 

 

 

 「ラウラ隊長、遅いですなぁ。」

 その頃、一夏達の到着をドイツの特殊空軍基地の滑走路脇で待つ者がいた。

 「隊長のメンツを潰したくないが、もう三〇分以上遅れてる。」

 「・・・・・。」

 隊員の一人が呟くも、隊長不在の今、部隊の指揮を執る副隊長は全く動じることなく無言で立ち続ける。

 「クラリッサ副官!心配ではないのですか!!」

 その様子が薄情に見えて、その隊員は食ってかかる。

 「馬鹿者!どうせ隊長のことだ、ドーナツ屋でサボってんだ。」

 ところがどっこい。動じていないのではなく呆れているだけだった。

 「私はいつ、ドーナツ屋でサボるキャラになったんだ?クラリッサ副官。」

 クラリッサの背筋に冷たいものが走る。

 「?!静かに素早く・・・。お変わりないようで安心しました。」

 先ほどまでの態度はどこへ行ったのか。直ぐさま気持ちを切り換えると、ビシッと敬礼をした。

 「隊長!お待ちしておりました!ところで織斑教官の様子が見えないのですが・・・何かあったのですか?」

 「そう焦るな。まだ終わっちゃ居ない。」

 ラウラが空の遙か彼方を指差す。そこには、小さな点が幾つか飛んでいた。

 「隊長の仰るとおりだ!あの織斑教官だ。さぞかし威風堂々と現れると相場で決まっている。それもIS学園の小娘共を引き連れて・・・・・なんあ!?」

 瞬く間に近付いてきたそれを見たとき、クラリッサは驚きの声を上げた。

 「諸君!お出迎えご苦労。」

 そこには逆さ吊りにされた女性の姿があった。

 「隊長、アレは一体。」

 「紹介する。これが伝説の教官『織斑千冬』だ。」

 紹介されても、未だに信じられないといった表情を見せる。

 「この野郎!この私を忘れたのか!この馬鹿!ヴァ鹿野郎!間抜けェい!!」

 「た、大変失礼しました!三六〇度も回っておられたゆえ、気が付きませんでした!」

 地面に降ろされて、ようやく見覚えのある顔だということを認識する。しかし、角度が間違っていた。

 「あー、それを言うなら三八〇度だ。このマカロニ黒ウサギ。そんな単純な計算もできんのか!三六〇度ひっくり返ってみろ!始めと同じ位置に戻ってひっくり返った事にはならんだろ!」

 釣られて間違う千冬。

 「そうかなぁ・・・・・。」

 直前に自分が間違えたことで頭の混乱している隊員は、千冬が間違っていることは分かっていてもどこが間違っているのか理解することができず首を傾げる

 「なあ、乙女の友情を邪魔したくはないが、それを言うなら一八〇度だ、この歴史的馬鹿モンどもが。」

 やれやれと言いたげに一夏が訂正を行う、と。

 「この声は・・・まさかメイトリクス?!この野郎生きていたのか!教官も元気そうで安心しました!」

 クラリッサは目をランランと輝かせ、千冬、一夏と続けて握手をする。

 「久しぶりだな、クラリッサ!・・・なんだ、その似合わない(眼)タイは?」

 「ほっとけ、余計なお世話だ。」

 その会話を交わした直後、両者はガシッっと力を入れて空中腕相撲を始めた。そう、いつか見た光景を再現するように。

 「「ヌゥ!」」

 「どうした?隊長業務(代理)のデスクワークで鈍ったか?」

 「いやぁ・・・。参った降参だ。相変わらずだな、メイト――」

 その時、クラリッサの肩にラウラが手を当てた。

 「・・・・・クラリッサ。」

 「何です隊長。」

 「私のキャラと被るのでその台詞は変えろ。」

 ラウラのその命令は、明確な意志を持ってはね除けられる。

 「それが何だってんだ!誰が何しようが私には関係ない!デカい声を出すな!耳があるんだ!台本どおりにただ喚き散らしやがって、それしかできんのかこの大根野郎!私を何だと思ってる!(臨時)隊長だ副官だ!私に怒鳴るな!」

 「・・・・・クラリッサ!」

 しかし、ラウラが一夏と何ヶ月も過ごしているうちに腕っぷしが進化していると言うことまで、彼女の計算には入っていなかった。

 

 「状況については、諸君らの知るところだから割愛する。作戦だ。」

 一同はオペレーションルームへと移動していた。

 「作戦?俺達に作戦なんかいるかよ。」

 今までもその場のノリで的を圧倒してきた。最も、作戦を立ても臨機応変を建前に守った試しはないが。

 「お前らを纏めとくと、過剰戦力になるからな。それと、実に迷惑な話だがデュノア社から最新装備の受領命令があった。」

 「適当にあしらっときゃいいわよ、役員なんぞクソッくらえね。」

 いつものノリで、鈴がすぐに反応を示した。

 「いや、鈴。俺達は別件でデュノア社に用がある。」

 「?珍しいこともあんのね。」

 てっきり無視して進むのかと思っていたため、彼女は意外そうな顔をした。

 「それは私と織斑、ラウラ、デュノアで対処する。いや、電子戦に更識、お前も来い。篠ノ之。後の連中を最速でイギリスに送れ。ついでに悪さをしないように見張ってろ。」

 「ちょい待ち。アタシ達はお荷物なわけ?」

 ササッと千冬の行った人員配分に、鈴は抗議する。

 「あぁ、そうだ!」

 そして千冬は、隠すこともなくそれを肯定した。

 「ならば、シュヴァルツェ・ハーゼ隊の副官である私もお伴しよう。戦力不足だ。」

 学生如きで、それもどちらもIS操縦者が五人以下ときては、テロリスト相手に立ち回るのは荷が重い。

 クラリッサは、一夏達がどれだけテロリストで戯れてきたかを知らないからそう考えていた。

 「既に過剰だ。これ以上子守りが増えたら、篠ノ之がパンクする。」

 「おいおいおい、私がこんな連中に手こずるとでも?」

 「連れて行きたくないだけだ。」

 余計なことを言うと、食い下がってくる性格であること熟知している千冬は、すかさず箒に耳打ちをして、自分が良い手立てを知っていると伝える。

 「教官!私は、こんな小娘ごとに気に負けはしません!」

 一人、ガッツを見せるクラリッサがISを展開した。

 「ブレードはしまってろ。そのISも閉じとけ。」

 しかし彼女は、千冬の声が届かない。それどころかブンブンと、ISのブレードで素振りを始める始末だ。

 「・・・山田君!あいつの装備全部持って行きなさい!」

 「はい、かしこまり・・・ゲフンゲフン。放してください!これも私の仕事なんです!」

 「あ!何をする貴様!放せ!えぇい、決闘だ!」

 その二人のやり取りを見ていた千冬の口元がにやけたことを、一夏達はしっかりと見ていて、そしてこの作戦を理解した。

 「クラリッサ。そいつに勝ったら連れて行ってやろう。」

 「織斑先生!?ハメましたね!?このクソッタレ!嘘つきみぃ!装備を奪えだの連れて行きたくないから説得しろだの、あれは私を引っ張り出すための口実なんですか!?」

 まるで決まっていたことのように言い放った千冬に対し、山田先生が怒りを表す。

 「いやぁ、その通り。それが悪いのか?」

 しかし山田先生は、更に踏み込んだ千冬の考えまでは見抜けていなかった。

 

 特設戦闘アリーナで、二機のISが睨み合っていた。

 「これより、山田先生とクラリッサのバトルを始める。開始。」

 「手加減はなしだ!」

 「分かりました!」

 千冬の合図とともに両者は素早く飛び出し、派手な格闘戦を始める。

 そのすさまじさたるや、砂埃でグランドが見えなくなるほどだった。

 「・・・よし、こいつらここで戦闘しているって言ってるから、さっさとイギリスを目指そう。」

 戦闘中の二人に、完全に視界がないことを見ると、一夏達は堂々とアリーナの正面入り口から出ていった。

 

 

 

 「ねえ、感動の別れを邪魔して申し訳ないけど、列車なんか乗らないで走った方が早いんじゃないの?特に一夏。」

 公共機関に乗っての移動をすると聞いて、何かの冗談と思った鈴は尋ねる。

 「行こう行こう、いつも先を急ぐ。そしてある日死ぬ。たまには足を止めて人生の楽しみを味わうべきだ。」

 「ふっふ~ん、だといいが?」

 そんなこと、今までなかったじゃないと鈴は信用していない。

 「おっと、列車が来た。じゃあ箒、子守りを頼む。」

 タイミング的に鈴から逃げたような格好になったが、本当に列車が来たのだから仕方がない。

 「私は子守りなんて得意じゃない。」

 「謙遜しすぎだ。君はきっととても良い子守りになれる」

 そう告げたところで、列車のドアは閉まった。

 一夏、千冬、シャルロット、ラウラ、簪の五人は、チケットを見ながら座席に移動する。

 「さて、織斑。」

 荷物を運び終えるや、千冬が一夏に声を掛けた。

 「飲み物か?」

 「買ってこい。」

 そう言いながら千冬は五〇〇〇円札をポケットから取り出して手渡す、

 「・・・ここはユーロだ。」

 しかし一夏はそれを一瞥すると、直ぐさま千冬に突き返した。

 「・・・間違えた。酒頼めるか?」

 「今は移動中だ。抑えろ。」

 今日ぐらい良いだろうと食い下がる千冬には聞く耳を持たず、お金を受け取ると一夏は歩き去る。

 やれやれと、千冬は体を椅子に深く預ける。

 「・・・・・。」

 それから横目で隣の席を見やると、シャルロットが緊張からか無言で俯いていた。

 「さて、デュノア。・・・デュノア。」

 「は、はい?何ですか織斑先生。」

 反応がないので二度呼びかけると、彼女はビクッと跳ね上がりながら返事をする。

 「なぜ、我々が列車で移動しているか分かるか?」

 「え?」

 公共交通機関を使って移動しているなんて、ただの気まぐれだと思っていたシャルロットは、理由を尋ねられて返答に困る。

 「一人で抱え込むなってんだこの大馬鹿野郎!けど手を貸せる馬鹿も私達しかいないぞ!」

 横に座るラウラが突如として口を開く。出会って間もないころならばその口調に恐怖を感じたことだろうが、今のシャルロットには妙にしっくりと感じられ心を落ち着かせてくれる。

 「で?その作戦は?」

 「まず私がサーバーに侵入、ドン。動作感知器と生体認証センサーを切る、ブチッ。そしてさらに監視カメラシステムを無効化・・・あとはみんながババーンと潜り込める。簡単でしょ・・・?」

 空中投影ディスプレイに作戦を表示して簪が説明をする。

 「ドン、ブチッ、ババーン、か。・・・一夏、飲み物は?」

 作戦の要点を口にした直後、一夏が戻ってきたので購入品のラインナップを尋ねる。

 「本場のチーズとペパロニのグッチョ美味いピッツァだ!激旨だでぇ!」

 当然のように一夏が言い放つ。

 「・・・一夏、ピッツァは飲み物じゃないよ。」

 それを冷静に突っ込むシャルロット。

 「私も・・・そう思う・・・・。」

 シャルロットに賛同する簪。

 「「「・・・え?」」」

 しかし織斑筋のベテラン勢は、すでにピッツァを飲み始めていた。




(腹筋を)殺るのは一日に一度ずつ・・・・・まるでハンターだ

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