IS《ISの帝王:小説版》 作:只の・A・カカシです
バァクダン攻勢を開始するゥ!腹筋を壊してやれ!
「こいつは最高のイベントだぜ!逃す手はない。流石は亡国企業の実働隊だけあってクソ真面目によく働いてるよ。しかも待遇がイイと来た!叔母さんも贅沢過ぎじゃないのかぁ?」
京都の、それも最上級のホテルの、これまた最上級の部屋に備え付けのプールにダリルとフォルテ、そしてスコールの姿はあった。
「ダリル・・・いやレイン。叔母さんはやめなさい、正体がバレるわ。」
気持ちよさそうに泳ぐ彼女に向け、スコールは迂闊な発言を避けるように促す。
「何か臭うな。」
「金のニオイだよ金の。」
厳密には消毒用の塩素の匂いだが、突っ込むものは不在であった。
「それにしてもオータムは遅いわね・・・織斑一夏くんを招待するよう言っておいたのに。」
オータムは一夏に連絡手段を完全に奪われていた。故に、彼女からの連絡を待っていたスコールは彼女の状況を把握していない。
「オータムは今朝捕縛された。・・・ブリュンヒルデの弟とヤっちまって。」
「!?」
だから、状況の一部をダリルから聞いたスコールの心中は穏やかではなくなった
「一戦な。ドンパチ言わなかったから気づかなかったろ。」
「オータム、迎えに行くわ・・・!」
「よしなよぉ、相手は一組だぜ?IS学園最凶最悪の。」
飛び上がるように椅子から立ち上がったスコール。しかし相手のことを思い出せば、どう足掻こうと奇襲が失敗するビジョンしか見えない。
「クッ・・・。」
「あーらら、柄にもなく取り乱しちゃって、じゃ、私らも行くか、ベッドに。」
「後はアンタと二人でしっぽりか?悪かねぇぜ。」
ダリルとフォルテはプールから上がり身体を拭くと、まだ外が明るいのにベッドルームへと消えていった。
「この女は何だ?」
一夏が旅館に戻るや否や、鈴が不思議そうに尋ねてきた
「いやまあ、保険みたいなもんかな、邪魔が入った時だけ役に立つ」
「だけだと!?このオータム様が!“だけ”だと!?」
チラリとも見ること無く一夏がそう答えたものだから、オータムはカッとなり怒鳴った。
「違ぁう!」
が、お前など眼中にないと言わんばかりに箒が違う方向を指差す。
「こっちだこっち。」
「NE☆KO☆DA」
女と言ってもそれはアリーシャのことでもなく、猫のシャイニィのことであった。
「アタシの事そっちのけでシャイニィ見てるのサ?それよりこの子、いい匂いするのサ。これ何の匂い?」
もてはやされる自身の猫をよそに、アーリィは何かの匂いを嗅ぎつける。
「航空燃料!」
アリーシャの向かう先にいたのは、どこで紛れ込んだのか相川だった。彼女は匂いを嗅がれるや、まるで同士を見つけたような瞳をする。
「航・空・燃・料。いいナ、好き。」
グッと親指を立てたアリーシャ。
「アンタさ、それ以外に香水ないワケ?」
そんな二人に、というより相川に対して鈴がツッコミを入れる。
「鈴さん、航空燃料は香水ではありませんわ。」
鈴のツッコミは正しい部分に対して行われていたが、方向がズレていたために更にセシリアがツッコミを入れた。
というか、相川がいることに誰か突っ込めよ。
「一人で(一夏を)抱え込むなってんだ、この大馬鹿野郎!」
「ふふん、久しぶりサね、ブリュンヒルデ。腕はなまってないのサ?」
「試してみるか、ハッハッハ」
「いや結構。遠慮させてもらうのサ。」
「そいつぁ残念。」
そんな生徒達をよそに、かつてモンドグロッソという大会での世界頂点を競い合った二人は再開を懐かしんでいた。
「どんな匂いがした?」
旅館の花瓶に挿してあった花の香りを嗅いでいた箒に、一夏が尋ねる。
「バラのようないい香りだ。」
だが、箒の嗅いでいた花はバラその物なので、『ような』ではない。
「バラの匂いに酔ってる場合じゃないってんだスケベ!」
と言うやり取りに、外野から来た鈴がツッコミを入れるのだからおかしな事になった。
「今は、抜けたフォルテとダリルに注意を割かなければ。」
一通り騒ぎ終えたところで、軽く咳払いをしてから千冬が話しを切り出す。
「あのー、自己紹介から良いのサ?」
「駄目だ」
「いらん」
「後にしろ。」
ようやく本題に入ろうとしたところにこれである。ぞんざいに扱われるのも当然だ。
「だと思ったのサ。」
その返事に一夏が「ならいい」と返したときだった。
「で、ナニモンなのよ?」
説明を受けていなかった鈴が、こっそりと一夏に耳打ちをしたのをアリーシャは聞き逃さなかった。
「アリーシャ、テンペスタのアーリィと言えばわかるのサ?」
「サイボーグみてぇだな、腕がたつよぉ。」
簪が失われた腕を見ながら呟く。
「サイボーグなのサ。」
「マジかよ~」
それを告げられるや、簪の目は更に輝く。
「おい、いい加減このオータム様を開放しやがれ!」
などと緊張感など欠片もなく楽しそうにやっているのは、世界を股にかけて暗躍しているオータムにとって面白くない。それも身動きが取れないように拘束されているとは言え、同じ空間でなら尚更に。
「ア“ァ?」
「ごめんなさい!」
だがそのプライドも、一夏の威圧の前には何の役にも立ちはしない。
「さて、こちらの戦力はマイナス二、あっちもコレが抜け、マイナス一。とは言え、あちらはプラス二でこちらはアリーシャでプラス一だ。」
茶番を一通り終えて、千冬が本題に入った。
「だが、あっちの二はこっちの一だ。違うか?」
「いやぁ、その通り。」
ぶっちゃけあっちが一だろうと二だろうと、一夏達にしてみれば全く問題にならない。
「ともかく、やれれっぱなしじゃ私の名前に関わる。こちらから仕掛けるわ!敵の潜伏先は、市内のホテルか、あるいは空港の倉庫よ。」
どこからともなく登場・・・ではなく、玄関から入って来たのに誰にも相手をして貰えないでいた楯無が確定情報をもたらした。
「じゃ、アーリィは篠ノ之、凰、オルコットを連れてホテルへ行け。織斑はデュノア、ボーデヴィヒ、更識妹を空港の倉庫へ連れて行って私の自称妹をツカマエロォ。」
千冬が人員の振り分けを行う。
「お任せを!」
楯無が一番に返事をした・・・時だった。
「おいおい、待ちなよ。京都に空港なんてあるのか?」
「・・・。」
一夏の問いかけに対し、フッと楯無が顔を逸らした。
「・・・ヘリポートも空港よ。」
ポツリと、バツが悪そうに楯無は答える。
「分かったな!我々は本部で待機だ。何かあれば連絡しろ。」
「「「了解!」」」
そう言って、音の速さで各々散っていった。
「ふう、さっぱりした。叔母さんもどぉです?カリカリしたって仕方ねぇよ。」
シャワーを浴びてスッキリサッパリしたダリルが、相変わらずイライラしているスコールを説得する。
「年上に対する口の利き方を教えてやったほうがよさそうだ。」
苛立っているところへ気安く話し掛けられたものだから、更にスコールのストレスは加速する。
「おーい、怒るこたぁ無いだろ?なあフォルテ。」
「はぁ。」
私を巻き込むな。そう言いたげに、フォルテは適当に返事をした。
「ま、いいや。オレ等のISも制限解除したし、武装確認しようぜ。」
「了解っす!」
本領発揮の時間。フォルテはダリルの後について、武器が並べられているフロアへと向かう。
「おお、この銃ってあれだろ?ヴィッカースの50口径機銃。よく手に入ったな。世界一の銃だぜ。こいつは私がもらう。」
ダリルは嬉々としてISを部分展開して、
「バカ言え世界一はマグナム44と決まってら。ダーティハリーも使ってるっす。」
と、武器マニアなのかフォルテがあざ笑うように別の武器を手にして、ISに組み込んだ。
「・・・こっちは準備OKだ。」
「私もOKっす。」
ISを展開して、異常がないことを確認した二人。
「よーし、そんじゃ!」
と言って、突然ダリルがホテルの窓を撃ち抜いた。
「よく気づいたのサ、だが、わたしの狙いはスコールなのサ!」
同時に、一機のISが奇襲を仕掛けて来る。
「行くわよ!ゴールデン・・・」
遅れは取らない。笑みを浮かべながらIS『ゴールデン・ドーン』を展開した。
「ISを展開したぞ!」
「ヤロォォォォぶっ殺ッシャァァァァァァァ!!!」
「バァクダン攻勢を開始するゥ!」
のまではよかったのだが、それを待っていましたと言わんばかりに圧倒的な物量と質の攻撃があり、ゴールデン・ドーンは瞬く間にシールドエネルギーを削られる。
「ちょ!?」
「うぁっ・・・!」
「駄目です!テッターイ!」
「ちっくしょもう!」
噂に聞いていた以上の猛攻。初めて目の当たりにした箒の戦いっぷりの前にダリルとフォルテは先ほどまでの余裕を失い、ただ逃げ惑うことしかできなかった。
「私たちは(空)港湾労働者組合のもんだ。」
「ここに亡国企業が潜んでるって聞いた。まさかちがうよなぁ?」
一夏とラウラが、入口の前に立っているテロリストの警備要員らしき人物に声を掛ける。
「そのまさかだ!」
被っていたフードを脱ぎ捨て、目にも止まらぬ速さでISを展開したマドカ。
「サイレントゼフィルスゥ!ぬぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「そうそう何度も簡単に!」
やられはしない・・・と、言わなくてよかったと、斬り合った瞬間からマドカはどれ程思ったことだろう
「ぐぅっ・・・」
「一夏!加勢するぞ!」
たった一人相手にこれなのにもかかわらず、更にもう一人加勢使用と向かってきている。
と、ここでマドカに救いの手が差し伸べられた。
「・・・ん?」
「うわ・・・!?!」
それまで快調に動き回っていた簪、シャルロット、ラウラが突如として動きを止め、その場に立ち尽くす。
「にゃーん!黒騎士のお披露目は邪魔させないのさ!」
陽気な声とともに、ふらりと現れたのは篠ノ之束。彼女は右手にステッキを握っていた。
「これは・・・重力でしょうか?」
声量は多少控えめながらも、珍しく自ら発言した簪。
「ン~よくご存じねぇ、正確にはキングス・フィールドだよ。出力高めはお好き?」
「ええ、ゾッコンですよ」
「もっと強くていい。」
「トレーニングに丁度良いね。」
しかし、束が想像しているよりも簪にラウラ、シャルロットのパワーが上回っていたせいで、渾身の一撃が足かせにもならない。
「あ、アレ・・・?」
壊れたのか。右手のステッキをグルグル回して眺める束。
ご安心ください。お使いの装置は正常に作動中です。
「束ぇ!」
そこへ、怒鳴り声と共に千冬が日本刀を手にして切り込んできた。
「やあ!やっと来たね!ちーちゃ・・・」
「フンッ!フンッ!フンッ!ヌォォォォォォ!!!」
感動の再会をぶっ壊して、ついでに束のフィジカルもぶっ壊して千冬は刀を振るう。
「うぁぁぁ・・・!!!」
「小娘め!クソォ・・・逃げたか!」
たまらず逃げ出した束を、しかし千冬は追いかけようともしなかった。
「フンッ!」
一方その頃、一夏はマドカをストーカー・・・もとい追いかけ回していた。
「ええぃ!この燃費どうにかならんのか!」
白式を使っている以上、避けては通れぬ道に一夏は不満が募る。
「無理無理無駄なこったよ。」
「くそったれぃ!」
怒りにまかせ、一夏が零落白夜を発動させた雪片を投げつける。
「見せてやる、私の新しい力を!」
それをあっさりと躱して、マドカは自慢げにそう告げる。
「セカンドシフトか!」
直後に始まったISの変形。一夏はその大胆さと余裕がどこから来ているのかに驚く。
「これで・・・この力でお前を倒す!行くぞ、黒騎士!」
「でぇい!邪魔だクソッたれ!」
そういって突撃してくる黒騎士に向けて、一夏はほとんど重しになっていた白式を脱いで蹴り飛ばした。
「な、ISを蹴り飛ばし・・・うわ!」
あまりに衝撃的な光景に、驚いて声をあげるも避けることができない。
「ヘロインのにおいがするな?」
意味ありげに笑いながら、一夏がマドカに尋ねた。
「随分粒が細かいぜこりゃ。」
キラキラと舞うその粉に、マドカは意味が分からなかったので適当に答えた。
「ぶっ飛べ!」
刹那、空間を熱と衝撃が支配した。
「チクショウ痛かった!」
どこから来たのか、スコールもその衝撃に巻き込まれていた。
「生きてるだけでラッキーだ!」
「ああ、爆発が上手くいったのもな。」
「エム!ずらかるぞ!」
どれだけ強くなっても、一夏がそれを上回ってくるのでは手の打ちようがない。スコールとマドカは、一瞬の内に撤退を決断した。
「スコールミューゼル!チクショォしくじったのか!」
「織斑一夏・・・もう二度と会うのは御免だ。」
そう言って、二機のISは瞬時加速で離脱していった。
「逃げたか・・・だが、二度と会わないって訳に行かないんだろ?」
いつでも受けて立つと、ほぼラスボスのように一夏は二人が逃げていった方向へ声を掛けた。
「ね、ねぇ・・・一夏あれ・・・。」
鈴に言われ一夏が振り返る。
「ISが動いてる・・・人が乗っていないというのに・・・。」
心底不思議そうに、一夏は首を傾げるのだった。
B 信じられない・・・読者の為だなんて言っておきながら、結局はコメントが欲しいのか
A もちろん。読者のために書きながら少しは交流しなきゃ
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