IS《ISの帝王:小説版》   作:只の・A・カカシです

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A 下がってろぉ!(腹筋が)ドカンと逝くぞぉ!!
B ・・・
A 腹抱えてねえと腹筋吹っ飛ばされっぞ。(よだれ飛ばさねえように)口も隠すか?


第35話 夏は花火に限る

 「よお、舞ってるな。」

 一夏は、篠ノ之神社で行われている夏祭りに来ていた。そこで彼は、舞踊を終えた箒を見つけ声を掛ける。

 「しばらくだな一夏。」

 箒は、夏休みに入って直ぐ生家に帰っていたため、二人が顔を合わせるのは久しぶりだった。

 「あぁ。」

 「今夜は蒸すな、えぇ?」

 「参った参った。こんなひでぇ熱帯夜は流石の俺も初めてだ・・・。」

 「まったくだよ。チョー最悪だ。サウナが天国に思える。」

 着慣れない服に加え、厚手の素材の服と言うこともあって箒は珍しく汗びっしょりだった。

 「ところで、仕事はいつ頃までだ?」

 「ここにあるお守りとおみくじがなくなるまでだ。家柄でやってるが堅っ苦しくてやってらんねえ!」

 目の前にある大量の商品と、箱詰めされたまま後ろに積まれている商品を指さし面倒くさそうにする。

 「セシリアの皮まだ来てねえのか?」

 「身代わりにおいとこうってのか?」

 あまりに的外れな言葉に、箒は想像が追いつかない。

 「いや、金髪碧眼の外人が売ってたら物珍しさに飛びつくかと思ってな。」

 「お前、頭良いな。」

 ちょっと行ってくると言い、箒は売り場を開ける。

 そして、セシリアの皮を被って戻ってきた。この間、5秒。箒にしては遅い方だった。

 

 それから10分後。

 「流石ですわ!」

 あれだけあった商品は、一つ残らず売れた。箱で買っていってくれる(売るなよ)客がいたこともその要因だろう。

 「もう脱いでも良いんじゃないか?」

 戸締まりと金額の確認をし終えるまでセシリアの皮を被っていたので、一夏は突っ込みを入れる。

 「お嬢様口調のせいで、ストレスがマッハだ!」

 皮を脱いで元の口調に戻る。やはり、一夏の想像した通りであった。

 「この後の予定は?」

 「ないな。」

 「どうだ?一緒に祭りでも回らないか?」

 折角の祭りなのだから、久しぶりに一緒に回らないかと誘う。

 「そりゃいいな。筋トレでもしながら待っててくれ。着替えてくる。」

 「ごゆっくり。」

 

 「待ったか?」

 「腕立て1000回ってトコだな。」

 「直ぐだな。」

 お決まりのやり取りを済ませる。

 「ところで何処に行く。」

 「金魚すくいなんてどうだ?」

 「篠ノ之神社じゃそれは喧嘩を売る言葉だぞ、かかってこい!」

 いつになく強気な箒。それには裏があった。

 「怖がっているのは、俺ではなく君じゃないのか箒。君こそ、金魚すくいを恐れているんだ。おっちゃん、強い紙2枚。」

 「負けたら飯奢ってやるよ。筋肉ビジネスにかけちゃあんたほど経験はないが、私は学ぶのは早い。観客が求めているのはきっとこうする事さ!」

 勢いよくポイを水に入れる箒。そのせいで、金魚に触れていないにも拘わらずポイは破けてしまった。

 「この馬鹿!ヴァカ野郎!マヌケィ!」

 「何でここの金魚は小さいんだ?鯉を入れておけばスッキリするのに。」

 「枠に嵌めて取ろうってのか?」

 「あぁ、そうだ。」

 実際にやるには、ポイの素材と構造では鯉を上げること自体が不可能だと思われるが。

 「・・・オヤジ!もう一枚だ!」

 余程悔しかったのか、もう一度挑戦する箒。しかし、結果は何一つ変わらなかった。

 「トーシロがぁ!さっきの失敗から何一つ学んどらん!金魚とはこうやって掬え!」

 そう言って、凄い勢いで金魚を掬ってみせる金魚屋のオヤジ。因みに紙は、弱い方の紙だ。

 「やるな。俺も負けてられねえ。」

 その後、一夏VS金魚屋のオヤジの金魚掬いが始まった。

 

 「悪いな、焼きそば驕ってもらって。」

 終戦後、当然のように飼ってしまった一夏は嫌みったらしく焼きそばを口に運ぶ。

 「人の金で食う焼きそばは美味いか?えぇ?」

 「驕ると言ったのは、おめぇだぜ。」

 「・・・くたばりやがれ。」

 恨めしそうに見る箒。それもそのはず。屋台で買うより、作った方が安いからだ。

 その発想は、最もお祭りを楽しめないタイプの考え方かも知れない。

 「一口いるか?」

 「いや結構。遠慮さしてもらうぜ。」

 それは、一夏が次の一口を箸で摘まんだときだった。

 「あれ?一夏さん!?」

 「人違いでしてよ!」

 声をかけられたので、そう言いながら振り向いたが、背面が色々と残念なことになっていた

 「変装しても無駄です。」

 「どうして分かった。」

 「背中のチャック閉まってませんよ。」

 一夏としたことが、大失態であった。

 「おい一夏。この妙に鋭いのは何だ?」

 背面の見えないチャックが開いているのが分かるとは何者だと、箒は警戒する。

 「五反田蘭、同級生の妹だ。ところで弾は?」

 良く知った仲なので、別に怖いことはないと一夏は話題を変える。

 「今頃、家でグッスリでさぁ。」

 随分と彼女も染まって来たなと、一夏は心の中で頷く。

 「会長!この筋肉ってもしかして・・・!」

 「あなたたち。この人が伝説の男、織斑一夏だ。」

 敏感にそれを察した蘭の連れに、彼女は自信を持って紹介した。

 すると。

 「「「道理で、会長がどんなイケメンにもなびかないわけだ!」」」

 「あ、こらソレは!!!」

 「きゃー!怒った!」

 「こえーよ!」

 何やらよくわからないことを言い始めた。その様子を、一夏と箒は微笑ましそうに見つめる。

 「「「じゃあ、また今度!!!」」」

 「あ、逃げるな!待て!!」

 1人置き去りにされた蘭。可哀想に思った一夏は、話しかける。

 「学校の友達か?」

 「奴らは友達でも仲間でもない。生徒会のメンバー。仕事が遅れたら48時間は拘留される。」

 「ソイツはご愁傷様だな。」

 ただの腐れ縁に、一夏は哀悼の意(死んでない!)を示した。

 「ところで一夏さん。その女性は?」

 そのとき、初めて一夏の横に立つ箒に気がついた蘭は、ムッとした表情でそう言った。

 「篠ノ之箒だ。剣道界じゃ、結構有名な人物だが?」

 「も、もしかしてISの開発者の妹!?」

 一夏から説明されて、蘭はハッとしたように言い返した。

 「あんなゴミを作ったヤツが姉妹だと、恥でしょうがねえ。」

 が、それはハズレクジであったのは言うまでもない。

 「そうか?ラウラが言うには最強の携帯だって話だぞ?」

 「その使い方は予想外だったな。」

 明後日の使い方を提示する一夏に、箒は、確かにそれなら優秀だと真面目な表情になる。

 「・・・その使い方はマズくないですか?」

 その会話を聞き、蘭は恐ろしくなる。

 というか、それが普通の反応だ。

 「クソッタレ共の作ったルールなんざ、守ってやる義務はねえ。そうだろ?」

 「え、えぇ・・・。」

 もっとも、この時点で彼らにはこの手の話が通じるはずはないのだが。それを欄が知る由も無いのは当然といえば当然だ。

 「ここで立ち止まっててもしょうがない。見て回ろう。」

 「あぁ、そうしよう。付いてくるか?」

 「あ、行きます!!」

 箒が呼びかけ、それに一夏が答え、蘭が従った。

 「ところで蘭、何処か遊びたいとこあるか?」

 「え!?・・・あ、あそこで!!」

 唐突に行き先の話を振られ、一夏に優柔不断に思われたくなかった蘭は、それをよく考える間もなく答えた。そして、咄嗟に指差した先にあったのは。

 「射的?久々にやってみるか。」

 「蘭とか言ったか?得意なのか?」

 「え、えぇ、まぁ・・・。」

 意外にもいい食いつきを見せたため、蘭は顔を(しか)めるしかなかった。

〈私は!自分の言ったことが何も分かってない!ぎょわぁぁぁ!〉

 そして、心の中で盛大に叫んだ。

 「へい、いらっしゃい。」

 そんなことを知る由も無い一夏と箒は、さっさと射的屋に向かっていった。

 「三人分頼む。」

 「おお?筋肉モリモリのマッチョマンの変態が両手に花持って来やがった。よし、オマケは必要ねえな。」

 うらやましそうな目で一夏を見ながら、そんな愚痴をこぼす店主。

 「賢明な判断だ。店を赤字にしたくないならな。」

 「言いやがる。」

 まさか本当だとは、このとき思いもよらなかったことだろう。

 「お、いい構えだな。何処で撃ち方を習った。」

 蘭の構えを見て、一夏は意外とさまになっていることに感心する。

 「そ、そこに書いてある通りです・・・。」

 そう言って出来るほど簡単なことではない。

 蘭は、もうどうにでもなれと、半ばやけくそ気味に引き金を引いた。

 PON☆ベシ・・・ズドォンッ・・・

 「倒す札が派手だねえ。えぇ?鉄板倒すか?」

 「言ったろ?」

 「え?え?え?」

 すると驚いたことに、重々しい音を立てて的が倒れた。しかし、当の蘭は何が起こったのかを理解できずうろたえる。

 「液晶テレビ、当たりぃ!馬鹿野郎!何やってんだ!てめえ正気か!俺の店を潰してえのかてめえ!どっかし天丼!てめえ何やってんか分かってんのかい!」

 「は、はあ・・・?」

 現実なのかどうかがあやふやになり、生返事するのが精一杯だった。

 「赤字だ赤字。持って行きやがれチクショウ!!」

 そう言っている店主の横で箒は。

 「さて、私は・・・。」

 PON☆ベシ・・・ゴロォンッ・・・

 別の景品を倒していた。

 「お前等射撃でもならってんのか、おい?」

 さすがに焦りが見え始めた店主だった。

 

 「いや、取った、取った。」

 袋にぎっちりと獲得した景品を詰め、満足げに歩く一夏と箒。それに付いて、蘭も液晶テレビを持って歩く。

 「あの、一夏さん。これ重いんで持って帰ります。」

 それは気まずくなったからではなく、単純に腕が疲れてきたから出てきた言葉だった。

 「弾に取らせに来たら良いんじゃないのか?」

 「!!ちょっと失礼。」

 そう言って携帯電話を取りだし、段に電話を掛ける。

 しばらく呼び出していたが、一向に出る気配がない。

 「出ないか?」

 「流石に睡眠薬を盛りすぎたみたいです。」

 弾ではそうなるだろうと、一夏は苦笑いする。

 「持ってやろうか?」

 「い、いえ、一夏さんのお手を煩わせるわけにはいかないので、帰ります。」

 そう言って帰ろうとした蘭を一夏は引き留める。

 「箒、花火は何時からだ?」

 「もうじきだ。」

 「折角だから、花火ぐらい見て帰ったらどうだ?」

 遠慮しなくてもいいぞと言ってはみたが・・・。

 「ですが、重いので帰ります。」

 「そうか・・・。気を付けてな。」

 これ以上引き留めても悪いだろうと、一夏は引き下がった。

 「はい、失礼します。また会いましょう。」

 そう言って、蘭は足早に去って(厳密には逃げて)行った。

 「・・・さて、例の場所に行くか。」

 「あぁ。」

 その姿が見えなくなるまで見送り、2人は秘密の場所へと移動を開始する。

 

 「ここは意外と変わってないな。」

 参道から外れた繁みの中にポッカリと、いやガッツリと木がなぎ倒され空を見上げられる場所があった。

 「おめえがブチ空けた空間だ。そう簡単になくなるのもか。」

 お陰で人混みを避けて花火がよく見えて助かると、箒は一夏に感謝する。

 「見事なもんだ。」

 「全くだ。」

 普段はロケットランチャーをぶっ放している彼らの目にも、花火というものは美しいものとして捉えられていた。

 その花火の音に隠れるように、何かが近付いてきていた。

 残念ながら、この二人に接近するには無音かテレポート。もしくは光速を越える位しかない。

 「・・・打ち上げ花火、下から見るか横から見るか。それとも、お前等がなるか?あぁ?」

 無粋にも花火の邪魔をする輩に、一夏は苛立ちを隠さない

 「見ろよ。あの女悪かねぇぜ?」

 それを無視する命知らずなチンピラ。

 「悪かねぇ?最高だろ?」

 「・・・何か偉い自信満々だな?どうする兄貴。」

 全くブレてくれないことに、チンピラは困惑する。

 「まずお前さんが横の男をとっ捕まえて羽交い締めにして――」 

 兄貴と呼ばれたチンピラが、それを気にすることなく算段を立て始めた瞬間のことだった。

 「「まあ、チンピラに囲まれてしまいましたわ!」」

 「「「!?!?!?」」」

 突如として、目の前にいた日本人の男女が、全く同じ容姿をした金髪碧眼の女子に変われば誰だって戸惑う。

 「あいつら何話してたと思う?」

 「どうせろくでもねえ事だ。」

 驚いて思考が停止した一瞬の間に、一夏と箒は揃って一夏の格好になる。

 「「「!?!?!?」」」

 「お、おい、さっきの女は何処に――」

 何が何やら分からなくなったら、逃げるのが最善だったりする。特にこの2人からは。

 「「おめでとう、君らは花火にされた。」」

 まあ、逃がしてくれる筈はないが。

 「え?」

 Pi!チュドォォォォォォォォォォォォン!!!

 いつの間にか足下に仕掛けられていたクレイモアの爆発を受け、チンピラはお空へと吹っ飛ぶ。

 「「お代わりだ!受け取れ!」」

 \デェェェェェェェェェェン!!!/

 ズドドドドドドドドォンッ!

 巻き上がったところへ、2人からロケットランチャーの掃射が贈られた。

 「おぉ、汚え花火だ。」

 「汚え?最悪だろ?」

 しばらくして、墨のような見た目に成り果てたチンピラが降ってくる。不思議にも、煤まみれなことを除けばかすり傷一つ負っていなかった。

 勿論、吹っ飛ばされた衝撃と恐怖で、全員が伸びてしまったが。




  ヒュルルルルルルルルル・・・スポンッ
A ・・・ネタが湿ってたんだなこりゃ。
B ドジッたか。泣くな作A。・・・(高評価まで)あと一歩だったな。

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