IS《ISの帝王:小説版》 作:只の・A・カカシです
放課後。第3アリーナに集まった一夏と箒、セシリアの3人。
「し、篠ノ之さん!?どうしてここに!?ISは貸し出しがなかった筈ですのに・・・。」
今日の訓練機貸し出しは、全て埋まっていたはずと驚くセシリア。
「残念だったな。トリックだよ。」
「ま、まさか専用機ですの!?」
貸し出しがなかったに対してのトリックであるというのに、明後日の解答を探すセシリア。
「・・・箒、どこでISを調達してきた。」
このままでは、またセシリアが暴走を始めると思い、一夏は助け船を出す。
「壊物だ。」
「か、買い物ですか?・・・いいえ、そんな筈はありませんわ!!ISは国際条約によってその取引が制限されているはずですもの!」
実はクラスで筋肉式を一番理解できていないのは、セシリアなのかも知れない。
「次余計なこと言うとブルー・ティアーズに縫い合わすぞ。」
「」
説明が面倒くさくなった箒は、威圧して黙らせることにした。
今から10分前。整備室に箒の姿はあった。
「打鉄は日本で生まれました。篠ノ之束の発明品じゃありません。倉持技研のオリジナルです。少々、時代遅れのISになってきましたが、今や
整備科の生徒が、嬉しそうに話をする。
「打鉄は好きだ。」
「打鉄がお好き?けっこう。ではますます好きになりますよ!さぁさぁ、どうぞ!」
そう言って、箒をコックピットに座らせる。
「精密調整済みの打鉄です。・・・快適でしょう?んああぁ、仰らないで。(コクピットの)シートがビニール。でも純正部品なんてカタログスペックだけで、生地は厚いし、よく狂うわ、衝撃は伝わるわ、ロクなことはない。胸囲の長さもたっぷりありますよ。どんな巨*(自主規制)の方でも大丈夫。」
良く喋る整備科の話を聞き流し、箒はISを始動させる。
「どうぞ噴かしてみてください。・・・いい音でしょう?余裕の音だ、信頼度が違いますよ!」
顔の前で人差し指を立て、自慢げに言った。
「一番気に入ってるのは・・・。」
「何です?」
箒の問いにも、自然と笑顔が出る。
「値段だ!」
言い終わると同時に、箒はスラスターを全開にする。
「わーっ、何を!わぁ、待って!ここで動かしちゃ駄目だよ!待って!止まれ!うわーっ!!」
必死で追いかけてくる整備科を尻目に、アリーナへと飛び出した。
そして、今に至る。
「く、まさか一年生に訓練機の使用許可が下りるだなんて・・・。」
まだ悔しそうに、ぶつぶつ文句を言い続けるセシリア。
「さぁ、一夏ぁ!始めるぞ。雪片を出せ。」
「かかってこい!」
「ムゥン!」
ガッ!【5007/5500】
【48999/50000】
打鉄のブレードと雪片がぶつかり合う。初手は互角。
「ヌォオオ!・・・フンッ!」
「ッ!まだだぁ!!」
しかし、ブレード(刀)の扱いに関しては、箒の方が一段上である。横薙ぎが、一夏の胴を捉える。
「!!ウッ!」
「気分いいぜぇ!昔を思い出さぁっ。フッフッフッ。チェストォォ!」
「ウォォォッ」
突きをいなし、体勢を整える。
〈い、行けませんわ!行ったら逝きます!こんな化け物に・・・。い、いえ、怖いのですかオルコット!そうですわ!私に恐れるものなどありませんわ!〉
心技体のどれも2人に劣っているセシリアは、あっという間に蚊帳の外。
「踊りなさい!私とブルー・ティアーズの奏でるワルツで!」
命まで取られることはないと分かっていても、捨て身の覚悟で臨まなければ気押されそうになる。
ビビビビシュンッ【99948/99999】
【18946/20000】
白式に4Hit、打鉄には7Hit。しかし。
「「!!我々の勝負の邪魔をするとは、面白い奴だ。気に入った。転がすのは最後にしてやろう。」」
到底、彼らの戦力を削ぐことは出来なかった。
〈や、やってしまいましたわ・・・。こうなったら、やられる前にやってやりますの!!〉「・・・ぶっ殺してや――」
ゴゴォン!【2000/27000】
インターセプターを出す間もなく、雪片とブレードを投げ刺されてしまった。
「ウウウウウォォォゥアァァ・・・。」
衝撃に耐えられず、グラウンドを転げ回る。
「「グラウンドに転がってろ、セシリア。」」
あっという間にISは解除された。
【1000/1500】
『おい、そこの生徒!(ISを解除して)何をやっているんだ!』
担当の先生がそれを直ぐに見つけ、スピーカーで怒鳴りつける。
「すまない、大声を出さないで貰えるか?休んでるだけだ。」
うちわを出し、セシリアを扇ぐ一夏。
『あぁ、そうか。悪かった。』
それを見て納得したのか、それ以上のことは聞かれなかった。
「おい、行くぞ。」
こちらへの注意がなくなったタイミングを見計らい、一夏と箒はアリーナを出た。
彼らが向かった先は、第3アリーナ横の家庭科室。
その入り口に、到着する。
「向こう側へまわって俺の合図を待て。」
「わかった。」
正面から突っ込む一夏、建物の横を行く箒。それぞれに消えていった。
準備室へと滑り込んだ一夏。誰もいないことを確認し、窓を叩く。
「一夏、ここだ。」
窓越しに、箒が顔を覗かせる。
「入れ。」
一夏は、箒の手を引き彼女を中へと引き入れる。
「・・・間違いない、ここで調理をしていた。」
「何故だ?調理室の方が設備が良いはず。」
「それは、分からん。だが、これを見ろ。」
そう言って、一夏は食品の入ったパックを見せる。
「これは・・・、消費期限が今日じゃないか。」
「そうだ。そしてこれが今撮ってきた写真だ。」
スマホの画面を見せられた箒は、驚愕する。
「!?何だ、この在庫の山は!・・・おい一夏、これ。」
不意に、何かを拾い上げる。それは、差出人が料理部の注文書。
「この数・・・。奴等、注文数を間違えたんだ。それに、廃棄の依頼書・・・。早くしないと、材料が捨てられてしまう。」
「だが昼休みに聞いた限りでは、今夜調理で、搬入は明日の早朝のはず。」
まだ猶予はあるはずだが。
「これ(自動車用燃料の領収書)の日付を見ろ。一週間前の日付だ。」
「!!つまり、明日の朝食分から業者に手配する言うことか?」
「間違いないだろう。今、見てきたんだが、(家庭科室には)誰もいなかった。今夜分は、既に運んであるんだ。」
「何て勿体ないことを・・・。」
今にも料理部に文句を言いに行ってやろうとする箒を制し、一夏は時計を見る。
「・・・今、3時半だ。急げ、材料が腐っても知らんぞ。」
「無理だ!この量は食べきれん。」
いくら大食らいだからと言っても、2人では物理的に無理な量。
しかし一夏は、ニヤリと不敵な笑みを浮かべ言う。
「まだ諦めるには早い。今日は、購買が閉まっていたな。」
「・・・そうだ。それが何k・・・、まさか、食堂が混むとでも?」
『そんな馬鹿な』と、言いたげな表情の箒。
「あぁ、そうだ。昼に見た限り、あれでは足りん。」
「だとしても、どうやって運ぶ?車でも奪うのか?」
「何のためのISだ。」
「!!」
条約?守ってちゃロクなことたぁない。
「始めるぞ!」
エプロンを着込み、準備万端。
しかし。
「待って!あぁ、駄目!」
「どうした?」
「こんなの包丁じゃないわ!柄の付いた鉄板よ!」
家庭科室お約束の切れない包丁。
「だったら、研げばいいだろ!」
砥石を取り出し、差し出す。
「研ぎ方が全く違うんだもん!日本刀しか研いだことがないんだ!」
なぜ、日本刀が研げて、包丁が研げないのか。
「貸せ!切れろ!切れろッてんだ!」
痺れを切らした一夏は、ひったくるように包丁を受け取ると上腕二頭筋で包丁を研ぐ。筋肉研磨である!
シャッ!!【500/500】
「!!」
見違えるような切れ味!
「この手に限る。」
「・・・OK。始めよう。」
ダダダ!ダッ!ダダダダダダダッ!
リズミカルな包丁の音だけが、家庭科室に響いた。
5時半過ぎ。家庭科室前に一夏と箒とは別の2人の姿があった。
「購買が休みとは・・・。」
「全くだ。今から調理して、間に合いますかしら・・・。」
1人は食堂のオバs・・・お姉さん。もう1人は、発注ミスをやらかした、料理部。
「無理だと思う。やれるトコまでは、やってみるけど・・・。」
「厄日だわ・・・。ん?いい匂いがする。」
「ホントだ。(家庭科室に)誰かいるのかしら?」
そーっと中を覗いてみると・・・。
「・・・織斑君!?でも、第3アリーナで練習中のはず・・・。」
「訓練していると言ったな。アレは、(半分)嘘だ。」
今まで正面に捉えていたはずなのに、突如として背後に表れた一夏。
「!?どこから!」
「静かに素早くだ。それより、(出来上がった料理を)持って行け。俺達も(ISで)運ぶ。」
良く見れば、岡持を左右に五段ずつ重ねて持っている。
「まだ、材料は残っているのか?」
処分にだってお金が掛かると、それだけが心配の料理部。
「料理だけです。」
「!!調理師を再編したい!君さえ入ってくれれば――」
「今日が(最初で)最後です。」
無駄な食材がなくなると言いたかったのだが、その前に振られてしまった。
料理?勿論、大好評でした。
キィーンッ!バンッ!【1544/2000】
21時、1025号室のドアに打球を打ち込んでいる奴が居た。
カキィーンッ!ガチャッ!バシィィィーンッ!
「ウボキシ・・・。」【633/1600】
打ち込んだ瞬間、ドアが開いたため勝ったと思ったのも束の間。避ける間もない速度で箒に向かっていたはずの打球は、反射的に竹刀で打ち返され、凰はそれをなけなしの胸でトラップした。
「うるさいぞ、この豆粒が!」
「痛ててて・・・。」
胸を押さえ、座り込む凰。
「やっと出てきたわね。いい?今から私が言うこと、一字一句漏らさずに聞きなさい!アンタ―――私の方が、よっぽど―――理解した?」
そのままの体勢で、チェーンガンも真っ青な口速で一足飛びに話し終える。
「と言う訳で、篠ノ之さん!部屋変わんなさい!男子と同室なんて嫌でしょ?」
痛みが引いたのか、仁王立ちになる。
「(一夏と同室だと)どこで聞いた。」
3日に一回、寝る前にドアが壊れる、若しくは無くなっているので、一夏の部屋がここであると学園の生徒全員が既知の事柄ではあるものの、クラスに友達のいない凰が聞いたとも考えづらい。
「
「落書きされていたとは・・・。」
悔しそうに拳を握り締める。
「一夏とはぁ、小学校で一緒だったらしいなぁ。私も一夏と同じ中学校にいたことがあらぁ。学友ってのはぁ、いいもんだよなぁ。それに一夏。昔の約束があるでしょ?」
そう言って、部屋の中に話し掛ける。
「・・・酢豚か?」
「!!そ、そうよ。」
忘れていなかった。これは完全勝利ねと思ったのも束の間。
「毎日、酢豚を食べてやるといったな。」
「!!・・・そうよ//」
次の言葉に、期待に胸が膨らむ。
「アレは、嘘だ。」
「ウワァァァァァ!?と、とにかく、私も住ませなさい!OK?」
『この流れで振る!?』と、言いたげな顔で、要はヤケクソに言い放つ。
「OK!!」
バシィンッ!【17000/18000】
校則を守れと、竹刀を振るう。
「危ないじゃない!」
間一髪のところで、ISを展開した凰。
「流石だ、代表候補生。やっぱり(ISを)展開してきたか。」
私の太刀筋を見切ったのは、3人目だと、付け加える。
「鈴、箒は関係ない。突っかからないでやれ。」
しかし、これは箒を心配してのことではない。
「古い付き合いだ、見苦しいところは見せたかねぇ。・・・一夏、私をこ――」
「見上げた反射神経だ、凰。だがな、(条約と学則を破ってまで)てめぇのISを出すほど値打ちのある話か?さぁ頭を冷やして、よく考えてみろ!」
織斑千冬が巡回に来る時間。それを知らない凰は、見事に見つかってしまう。
ダバァ!【1480/1800】
酒(ウォッカ)を頭からブッかけられる。
「千冬さ・・・あぁ!(アルコールが蒸発して)寒いぃぃぃ!!」
着替えぇぇぇ!!と叫びながら、凰は階段へと消えていった。
一仕事終えた織斑千冬。彼女もまた、早急に立ち去るべきだった。
「どこで買ってきた。」
何時になく冷徹な声。後ろから、雪片を突き付けられる。
「一ヶ月に一斗瓶3本までと言っただろうが!何処で買った!」
「!!しまっ!誰が喋るかよ!」
迂闊だったと悔やむも・・・。
「見上げた忠誠心だ千冬姉。気に入った。財布を縫い合わすのは給料日にしてやろう。」
約束違反だと、月末の給料日、つまり月に一度の酒購入日を封印すると宣告される。
その後、千冬と鈴の悲鳴が寮に響いたとか、響かなかったとか・・・。
B アリーナのくだりは何だ?
A セシリアがしばかれただけだろう?
B 確かセシリアの料理は、ケツからでも食えん味だったよな?・・・つまり、そう言うことか?
A !!わぁ待って!ここで言っちゃ駄目ですよ!待って!止まれ!ウワァァァァァァァァァァ!と、言うと思ったか?残念だったなあ、やっぱりやられるんだ・・・。
*どうやっても、セシリアを家庭科室で暴れさせられない・・・。