IS×椎堂ツムグ、ネタ   作:蜜柑ブタ

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ここでの椎堂ツムグは、悪役的な立ち位置です。ISキャラ達から見て。

一夏が可哀想です。
もう一度言います、可哀想です。

こんな可哀想な一夏見たくない人は、速やかに戻ってください。


第一話 不幸な再会

 

 IS学園。

 そこは、世界中からISのために生徒が集まる最先端の学園だ。

 ISが女性にしか扱えないため、必然的に女子学園なのだが、そこに男子が入ることになった。

 

「緊張してる?」

「……別に。」

「ま、いいけど。」

 

 ツムグは、イチカの背中をポンポンと叩いて笑った。

 イチカは、俯いておりその表情は暗かった。

 そしてツムグに引っ張られる形でイチカは、教室の前に辿り着いた。

 

「なんであんたは、そんなテンション高いんだ?」

「別にテンション高いわけじゃないよ。いつもの調子だし。」

「あっそうですか…。」

「ところで、調子はどうよ?」

「…最悪。」

「なぁに? 俺の血が足りないか?」

「違う。あんたの心臓入れられてからずっとだ。」

 イチカは、ツムグを睨んだ。

 そりゃそうだ。心臓移植されたことで生き残れたものの、死んだことにされて世界規模のプロジェクトの検体として生かされる羽目になったのだ。

 そして最近になって男でありながらISが使えると分かり、IS学園に入ることになったのだ。

 椎堂ツムグの臓器移植の初の検体であるため、まともに学校など行かせれてもらってなどいない。それでいて突然女子学園に行けと言われて喜べるはずがなかった。

 検体として管理されているが、平均的な男子としての勉学は教えてもらっているのでその辺の不安はない。

 学園に行くことになった理由は、椎堂ツムグの臓器を移植された後の経過を日常生活でどうなるか調べることと、史上初の男のIS装者であるためだった。まあ、8割がたは経過を調べるためというのが占めているのだが。

 イチカに、睨まれてもツムグは、ニヤニヤ顔を改めることなく、その視線を受け止めていた。

 やがて教室の戸から自分達を呼ぶ声が聞こえた。

「じゃあ、行こうか。」

「……。」

 イチカは、不機嫌なまま教室に入った。

 そこで、いきなり不幸な再会をすることになるなどと、ひとかけらも思うこともなく。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 このクラスの担任である織斑千冬は、持っていた出席簿を思わず落とした。

 赤毛の男の後ろに隠れるように立ってる少年が、死んだはずの弟にあまりにもそっくりだったことに。

 そしてその少年の方も千冬を見て、目を見開いていた。

「はいはい。さっさと自己紹介、自己紹介。」

 その空気を破壊したのが、ニヤニヤ笑いを浮かべた赤毛の男だった。

 副担任である山田がハッとして、二人に自己紹介をするよう促した。

「椎堂ツムグだ。まあ、この名前を聞いて何か引っかかると思ったり、アレ?って思ったりする人もいるだろう。そりゃそうだ。現代科学の教科書を開いてみな。そこに答えがある。」

 そして、教室内がざわつきだした。

 そりゃそうだ。教科書に載っているこの世で唯一の人間(?)がそこにいるのだから。

 しかも外見が、60代(!)とは思えない若々しさなのだ。驚かない方がおかしい。

「今年からこの学園で、生徒全員を相手にしろって言われたからきた。あ、勘違いしないでね? 相手って言っても、訓練の相手だから。」

 そう言ってニヤリと笑うが、誰も笑っていない。むしろ不気味がって引いてる。

「おまえが、椎堂ツムグか…。」

「初めまして。ブリュンヒルデ。」

「私はそんな名前じゃない。」

「それとも、白…。」

「織斑千冬だ。」

「織斑先生。今年からよろしく。ほら、次は、イチカだ。イチカ?」

「!!」

 その名前を聞いて千冬はまた目を見開いた。

 俯いて横を向いていたイチカは、ツムグに肩を叩かれ、ビクッとなった。

 一分ほど時間をおいて、ギリッと歯ぎしりをしたイチカは、前を向き、だが俯いたまま。

「…い…、イチカです。」

 そう言った後。

「…以上です。」

「ほら、ちゃんと顔上げて。」

 そう言ってツムグは、イチカの顎を掴んで無理やり顔を上げさせた。

 

「一夏!?」

 

 ガターンっと椅子を蹴飛ばすように立ち上がった女子生徒がいた。

 黒髪で、ポニーテールで、胸が中々に発育が良い少女だ。

「一夏じゃないよ。イチカだよ。」

 ツムグが、わざとらしくそう言いながらイチカの頭を撫でまわした。

 千冬が何か言いたげにツムグを睨んでいたので、ツムグは、視線だけ千冬に向けた。

「詳しい話は、授業が終わった後で。」

 そう言って口元を釣り上げて見せた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 授業が終わった後。

「どういうことか説明してもらおうか。」

「どうって?」

「貴様、それを言ったのはそっちではないか。」

 千冬に睨まれても、ツムグは、ヘラヘラとしていた。それが余計に千冬の神経を逆なでし、ますます千冬の眼力を鋭くさせた。

「じゃあ、何から聞きたい?」

「イチカのことだ。彼は…、私の弟の織斑一夏ではないのか?」

 なお、この場にはイチカはいない。医務室に設けられた彼専用の検査室にいる。

「だとしたらどうする?」

「なぜ一夏が生きている?」

「それって生きてちゃ困るってこと?」

「そんなわけない!!」

 千冬は絶叫した。

「政府は、一夏の死亡届を私に出した! なのになぜ一夏がいる!」

「イチカは、検体なのさ。そのことは資料で送ってるはずだけど。」

「!? 確かに世界規模の極秘一大プロジェクトの検体が学園で経過を見るという資料はあったが…。」

「イチカって書いてなかった?」

「一夏だとは思わなかった!」

「残念だけど政府に取り合ったって、イチカが検体だって事実は変えようがないよ。もう実験されてるからね。」

「一夏になにをした!」

「移植したのさ。」

 ツムグは、自分自身の胸を指さした。

「コレ(心臓)をね。」

「貴様の心臓を…!?」

「イチカは、ある現場で心臓を撃たれてね。もう心臓がダメになって、移植が必要だったわけ。それで俺の心臓を。」

「なぜ、一夏なんだ!?」

「たまたまだよ。俺があの場で誘拐犯たちを倒して、それから俺が推薦したわけ。」

「貴様!!」

「じゃあ、一夏が出血多量でそのまま死ねばよかったんだ?」

「っ!!」

「あんたは現場を見てるだろ? あの血の量じゃもう病院に送っても間に合わなかったよ。まあ、仮に間にあったとしても移植する心臓が見つかるって可能性は低かったんじゃないかな?」

 両手をすくめて喋るツムグ。千冬は血が垂れるほど拳を強く握りしめ怒りに震えていた。

「推薦したのは俺だけど、受理したのは政府だ。ブリュンヒルデの弟だろうが、一大プロジェクトの方を取ったのさ。今のところ経過も良好だし、これが成功すれば世界中でどれだけの人間が命を救われるだろうねぇ?」

「そのために、一夏に犠牲になれと?」

「一夏含めてさ。成功すれば一夏は自由になれる。」

 ツムグがそこまで言うと、千冬はグルッと背中を向けて歩き出そうとした。

「一つ言っておく。俺からイチカを引き離そうだなんて考えない方がいい。」

「なっ…。」

 千冬が振り返った。

「まだ俺が必要なのさ。」

 その時、ツムグが持っている通信機が鳴った。

「はいはい。じゃ、俺は医務室に行くから、ついて来るならどうぞ。」

「何をする気だ?」

「俺がイチカから離せない理由さ。」

 そう言ってツムグは、歩き出した。千冬は慌ててその後を追った。

 医務室に行くと、数名の医者と思われる人間達に囲まれ、ベットで横になっているイチカがいた。

 イチカは、胸を押さえ、苦悶の表情を浮かべていた。

「ツムグさん。」

「はいよ。」

 ツムグは、懐から拳銃のような形の注射器を取り出すと、自分の首筋に針を刺した。

 そして血液を拳銃型の注射器についている小さなビンみたいな部分に満タンにすると、針を抜いた。

「はい。」

「どうも。」

「何をする気だ!」

「ツムグさん…。」

「いいのいいの。どうせ遠からずバレてたって。」

 千冬を手で制しながら医者達にツムグが言った。

 拳銃型の注射器を受け取った医者は、それをイチカの首筋に打ち込んだ。

 一瞬にして体内に流し込まれるイチカは目を見開いてビクビクと痙攣した。

「一夏!」

「まあまあ。見てなって。」

 ビクビクと痙攣し涙を流すイチカ助けたくて動こうとする千冬をツムグが掴んで止めた。

 痙攣はやがて治まり、呼吸がどんどん楽になっていき、やがて目を瞑った。

「ん。治まったね。」

「……どういうことだ?」

「どういうことって? ああ、俺からイチカを離せない理由がコレさ。」

「貴様の……血…を…。」

「ま、臓器移植は、まだまだ始まったばっかりでね。定期的に血をあげないと体が拒絶反応を起こすみたいでさ。でもこれでもまだだいぶマシになった方なんだよ?」

「なんてことを…。」

「そうそう、織斑先生。なんでこのプロジェクトが発足されることになったのか理由を教えようか?」

「なんだ…。」

「ISのナノマシンが医療にも使えるって分かったからだよ。」

「!?」

「つまり、ISが登場しなかったら、俺の臓器移植のプロジェクトなんて立ち上がらなかったわけ。」

「ーーーそ、そんな…。」

 

「逆に言えば、ISがあったからこそ、持て余していた“資源”を使うことができたわけですよ。」

 

 そこへ、白衣の初老の女が現れた。

「その点においてだけは、篠ノ之博士には感謝していますよ。」

「あ…、あいつは、こんなことのためにISを作ったんじゃない!!」

 千冬が殴りかかりそうな勢いで叫んだ。

「結果的に“そうなった”、だけですよ。」

 初老の女は、まったく動揺のどの字もない様子で冷静にしゃべり続けた。

「こんな非人道的なことが許されると…。」

「許されましたよ。」

「なんだと!?」

「あなた個人が許さずとも、世界機構が許しました。世界が今、このプロジェクトに注目しています。そして、このプロジェクトが潰えるということは、それはすなわち、イチカ君が死ぬことです。」

「一夏が死ぬ!?」

「我々のチームが用意した設備と、ツムグさんがいなければ、彼は死にます。死んでもよいのですか?」

「っ!!」

「分かったならば、あまり口出しをしないことです。成功さえすれば、イチカ君は自由の身になるというのは、ツムグさんから聞いているでしょう? 成功することを祈ることです。」

「…成功しなかったら、どうなる?」

「それは、あなたの知るところではありませんよ。ここにいるのは、織斑一夏ではなく、検体のイチカなのですから。」

 

「ちふゆ…ねぇ…。」

 

 弱々しいイチカの声が聞こえ、千冬はハッとしてイチカの方を見た。

 イチカは、ベットから肘を使って身を起こし、顔を青くさせていた。どうやらさっきまでの会話を聞いていたらしい。

「一夏…。」

「千冬姉…、ごめん。」

「なぜ謝る! おまえの責任じゃない!」

「はいはーい。授業が始まるよ。織斑先生、行かないと。」

「貴様、どけ!! 離せ!!」

「イチカ次の授業休んだ方がいいから、このままここにいさせるから。じゃ、そういうことで。」

 フフフッと笑いながらツムグは、医務室の外へ千冬を引っ張っていき、そのまま閉めだした。

 扉に鍵をかけると、ドンドンと叩く音がしたが無視。

 ツムグは、イチカがいるベットの傍にある椅子に座り、足を組んだ。

「さてさーて、どうなるかな? この先…。」

「千冬姉…。」

 イチカは、さめざめと泣いていた。

 ツムグは、横目でイチカを見ながら、自分の頭の後ろに自分の両手を持っていった。

「まず、篠ノ之博士に連絡するだろうな。ま、何をしてこようと意味ないけど。」

「千冬姉…。」

「イチカ。あんまり泣くと体に障るよ?」

「っ…、誰のせいだと…。」

「そうだな。俺の所為だ。だけど、君が望んだことでもあるんだよ? “生きたい”って。」

「…揚げ足とりやがって…。」

「好きなだけ怒ればいいよ。好きなだけ憎めばいいよ。それが君が生きる力になるんだから。」

 ツムグは、にっこりと笑って、そう言った。

 

 

 

 




これは、一夏を取り戻すための話になりそうです。

現段階でここまでしか書いてないので、次はいつ更新になるか分かりません。

一夏の性格改変ってタグ入れた方がいいですか?


なお、ツムグは、白騎士事件のこととか全部知ってる。

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