このネタ作品、嘔吐表現が多いかも…。
あとグロ注意(?)。
ニコニコ笑っているツムグの前には、IS・打鉄を装備した女子生徒。
打鉄のブレードとライフルが握られているが、その手は、ブルブルと震えている。
「ほらほら、早く早く。」
「うぅ…。」
女子生徒はついに泣き出してしまった。
ツムグを殺すことで、メンタル強化を図る、新授業。
それが今行われているのだが、一番目になってしまった女子生徒は、外見は人間のそれであるツムグを殺すことに躊躇し、泣きだしてしまっていた。
「……限界だね。織斑先生、次。」
ツムグは、見切りをつけ、千冬に次の番の生徒を呼ぶよう促した。
なお、この授業。かなり点数が高い。決行できれば成績が格段に上がるのだが、人間を殺すというリスクを恐れ、多くの生徒が点数を放棄した。
「イチカ、カモーン。」
「うっせぇ。」
イチカは、一撃で、ツムグの首と胴体を切り離した。
血が噴水のように噴き出るが、すぐに止まり、胴体が転がった頭を拾い上げて首の切断面にくっつけた。
順番待ちや、やることを放棄したりした生徒達が一斉に目を背けて必死に耐えていた。
「シャルロットちゃん、遠慮なくどうぞ。」
「……本当に、やっていいんですか?」
「遠慮なくどうぞ。」
「……うぅ…。」
デュノア社でテストパイロットをしていたとはいえ、人など殺したことなどない。
同じIS装者と手合わせ程度ならしたことはあるが、流血するほど傷つけたことなどない。
死なないとはいえ、普通なら死ぬほどのダメージを与えるのだ。イチカが躊躇いもなくツムグの首と胴をお別れさせたのを見ているのだ。そしてそこから再生するのも見ている。安いホラー映画にありそうな再生であるが、それが実際に目の前で起こっているとなると話は別だ。濃厚な血の匂いはするし、出血した跡が地面やツムグの体にしっかり残っている。首を切ったのでなんか血以外の液体っぽい物もあるようなないような…。
「シャルロットちゃん、ギブ?」
「……なんでなんですか?」
「ん?」
「なんでこんなこと…、受け入れているんですか?」
「んー。気紛れ?」
「痛いでしょ!?」
「痛いけどすぐ治るから別に。」
「やめろ、デュノア。そいつに何を言っても無駄だから。硫酸で溶かそうが、全身ミンチにしようが死なない奴だから。」
イチカが腕組してそう言ったものだから、お昼にハンバーグなどを食していた生徒が連想してしまい、オエ~っとなっていた。
なぜこの授業をご飯後にしたんだと…、千冬も山田も思った。
その裏にツムグが言うところの上の連中のうっぷん晴らしのためという迷惑この上なく、理不尽極まりない理由があるのだが千冬たちは知らない。
「そうだ。」
ツムグは、何か思いついたように口元を釣り上げた。
そしてチョイッと右手の指を動かした。
その瞬間、シャルロットが装備しているラファールの右手がツムグへと伸び、ツムグの首を掴んだ。
「えっ? な…。」
「あー…、これこれ…。」
シャルロットの意思を無視してラファールの手がツムグの首を絞めていく。
「なにこれ!? ちょ…、止まらない、止まらないよォ!! いやだ! どうして!」
「まさか…、椎堂! 貴様!」
「あ、ハハハ…、こぅ…ギリ、ギリっと…、ぁ、折れそ…。」
「口から血混じりの泡拭きながら喋んな!」
「うぁ、あぁぁぁ! 誰か、誰か止めて!」
泣き喚くシャルロットとは反対に、ツムグは首を絞められながら笑っていた。
そして。
嫌な音と、シャルロットの手に嫌な感触を残してツムグの首が折れた。
「……ぅ……う…、ウアアアアアアアアアアアアアア!!」
ツムグの首が折れた途端、自由になったラファール。シャルロットは、手から離れておかしい方向に曲がったツムグが倒れるのを見ながら悲痛な悲鳴を上げた。
「はい、ごーかく。」
ツムグは、首を片手で元の位置に戻しながら、もう片手で親指を立てた。
「うぅ…、うぇ…ぇええ…。」
「おい、デュノア! てめぇ、やり過ぎだ!」
膝から崩れ落ちて嘔吐するシャルロットを介抱しながら、イチカはツムグを睨んで怒鳴った。
「だって、つまらないじゃーん。さっきからずーとなんもされてないからさぁ。」
ツムグは、口についている涎と血を拭いながら、クックッと笑った。
「って、感じで、やろうと思えば強制的にISの操縦は奪えるんだよね~。」
ISの操縦を奪われてしまう事実に、ISを絶対視していた多くの生徒達が驚愕し顔を蒼白とさせていた。
「誰か、デュノアを保健室へ運べ。椎堂、貴様には話がある。」
「授業が終わってからね~。」
「貴様…!」
ツムグの嘗め切った態度に青筋を立てる千冬。一方で山田は、治る前のグニャリとなったツムグの首を見て気絶していた。
シャルロットは、ラファールを解除して保健室に連れていかれ、やがてセシリアの番になった。
「椎堂ツムグ…。」
「な~に?」
「いったい何を企んでいますの?」
「別に?」
「先ほどのことでデュノアさんは、深く傷ついたでしょう。なんのおつもりであのようなことを?」
「ただの悪戯だよ。」
「いたずら?」
その瞬間、セシリアの美貌が酷くゆがんだ。怒りによって。
「あのような悪意ある行為をわたくしは知りませんわ!」
セシリアは、ブルーティアーズの銃口をツムグの顔に向けた。
「あ、顔狙い?」
「そのニヤニヤとした癪に障る顔を粉々にして差し上げますわ!」
「へえ? あの試合の時にはおしっこもらしたのに随分と度胸がついたんだね?」
「っ!! 死になさい!」
銃口から放たれた弾丸は……、ツムグの頭部を、貫かなかった。
「なっ…。」
弾丸は、ツムグの目と鼻の先で止まっており、ツムグが、チョイッと指で弾丸の方向を左にそらすと、次の瞬間、弾丸は左へと曲がって飛んでいった。
「狙いは十分。さすが代表候補生。」
「…ど、どういうつもりで…。」
「別に。ただの気紛れ。」
「どこまでも人を馬鹿にして!」
セシリアは、ブルーティアーズのビットを展開した。
「わたくしのブルーティアーズは、逃しませんわよ。」
「へ~、随分と特訓したんだね? 前よりビットの動きが良くなってる。」
「あなたに褒められても嬉しくありませんわ。」
吐き捨てるように言い放ったセシリアは、四方八方からビットによる攻撃を行った。
「二度と生き返らぬよう、骨の一片も残しませんわ!」
凄まじい爆発とビームによる攻撃が行われ、粉塵と爆炎が舞う。
やがて攻撃を止めたセシリア。打ち止めなのだ。
煙が晴れると、そこには抉れて焦げた地面だけがあった。
さすがに死んだかとセシリアのみならず、他の生徒も千冬も思った。
だがイチカだけは、ムスッとした顔で見つめていた。
ズズズッと地面が動き出した。
黒く焦げて粉々になった肉片や骨がもとの色を戻し、一か所に集まっていく。
高速で。
肉と血が渦巻くように蠢き、やがて人の形を取った。
「……ふはぁ…、中々過激。」
全裸のツムグがポリポリと頭をかきながら言った。
セシリアも女子生徒達も千冬も、信じられないモノを見る目でツムグを見ていた。
正直、全身が再生するまで、一分もたっていない。30秒もあれば十分だっただろう。
「はい、次々。」
「そ、そんな……、あんな状態から…。」
「ごめんねー。俺、あれくらいじゃ、死ねないんだ。」
震えるセシリアに、ツムグは、ペロッと舌を出した。
あれくらい? あれで死なない? ならばどうすれば死ぬ? そもそも死なない生き物がこの世にいるのか? じゃあ、目の前にいる、アレはなんだ?
そんな疑問がイチカ以外の全員の脳裏をよぎった。
自分に恩義を感じてそういう視線を向けて来るシャルロットに、酷いことをするツムグさん。
自分にそんな視線を向けるのは間違っているという意味でなのか、単なる気紛れなのかどうかは分からない。
そして度胸(?)がついたセシリア。けどツムグは、死ななかった。というか死ねない。
一方で、イチカは躊躇なし。