ありえない職業で世界最強   作:ルディア

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戦闘回です。いつもより大分短くなってしまい申し訳ありません。次回はいつもと同じ様に書けるように努力します。


第五話“黒と黒”

 拠点から出発したミノルとルナは順調に階数を重ねていった。ある時、ミノルが食料を取りに行っており仮拠点を留守にしていると留守番をしていたルナに蛙の魔物の群れが襲い掛かったが一瞬で物の見事に全滅させられたり、またある時はその層を牛耳っていた鳥型の魔物を一族諸共根絶やしにしたり、色々あったが特に目立った問題は無かった。ミノルの現在のステータスボードはこんな感じ。

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 壠瀧ミノル 17歳 男 レベル:87

 天職:????

 筋力:7425

 体力:7645

 耐性:7852

 敏捷:7593

 魔力:8624+5000

 魔耐:7505

 技能:極全属性適性・超全耐性[+全異常状態耐性][+全属性耐性][+極物理耐性][+極魔法耐性]・神位複合魔法・全武器超適性・未来予知[+危険予知][+自動発動]・超高速魔力回復・神歩[+飛翔][+浮遊][+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光]・神眼[+魔力感知][+気配察知][+アイテム探知][+通路探知]・神化[+限界突破]・全種族言語理解・極魔力増加・半不老不死[+封印]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・魔力変換[+体力変換][+治癒力変換][+衝撃変換]・魔力吸収[+吸収力強化][+吸収治癒][+魔法吸収]・五感強化[+視覚強化][+夜目][+聴覚強化][+味覚強化][+食材判別][+触覚強化][+物質判別][+嗅覚強化]・威圧[+服従][+恐慌]・創造[+消費魔力減]・念話・体術

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 増えた技能は“体術”。第五十八層の猿型の魔物が持っていた物だ。其の名の通り自分の身体だけで敵の攻撃を受け流したり、近接格闘の威力が上がったりするらしい。魔法専門のミノルにはあまり効果のない技能だ。それと“半不老不死”というミノルの持っている技能の中では唯一解明されていない特性(?)に“封印”が付き文字が青から灰色になった。恐らくまだ発動できないのであろう。所で何故ミノルは“全異常状態耐性”を持っているのにサソリモドキの毒にかかったのだろうか。そこでよく説明を見てみると、全ての異常状態にかかりにくくはなるが無効では無いため普通になってしまうらしい。因みに毒の場合は進行を遅める効果もあるらしく本来なら一分程度で全ての魔力を失ってしまうあの毒も、この技能のお陰で十分以上は耐えられたのだ。しかし、流石迷宮の魔物。侮ってはいけないと再確認したミノルであった。

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 六十三層目に到着した時ミノルは他の層とは何処と無く雰囲気が異なる事に気づきルナもミノルと同じ事を考えていたらしく二人で顔を見合わせると緊張した面持ちで探索を始める。

 

 探索を始めて十分後。分かった事と言えばこの層には竜人型の魔物である“リザードマン”しか生息していない事。本来、知能はあまり高くない筈なのにやけに統率が取れすぎていることである。この事についてミノルは二つの仮説を立てた。

 

 一つは突然変異。魔法か或いはそれ以外の物、外部からの影響を受け突然変異した個体が繁殖し有り得ないほどの知能を獲得したという説。だが、迷宮という外界からの影響を全く受けない、受けられない場所で魔法以外から干渉を受ける事は無いに等しい。更に魔法の影響だとしてもこの層まで進んで来る者は殆どいないだろう。仮にこの層まで辿り着き、リザードマン達に魔法を使ったとして意味は無いだろう。

 

 もう一つはリザードマン達を率いている者がいる事。いるとすれば、人間ではない可能性が高い。魔物の中にもその種族を率いる“王”の座に就く者もいる。その者が竜人達を率いているか、或いは()()()()()()()()()率いているのかは定かでは無い。だが確率的に言うとこちらの説の方が有力だ。

 

 ミノル達は一先ず、リザードマン達を率いている者がいるという方針で探索を続ける。“神眼”の“通路探知”で階段を探し、道を曲がり、リザードマンをボコし、真っ直ぐ進み、洞穴を抜けた時、これまでも数が尋常でなかったリザードマン達だったがそれを数十倍も上回る数百体以上のリザードマンが集合している場所を発見。その光景が見渡せる高台に乗ると取り敢えず様子を観察する。どうやらリザードマン達は“何か”を待っているようだが、数十分経ってもそれは現れない。ルナが欠伸をし始め、撤収しようとミノルが荷造りを始めたその瞬間、今まで思い思いの場所で寛いでいたリザードマン達が一斉に立ち上がり漸く現れた“何か”に向かい何と敬礼をしたのだ。少々意表を突かれたものの再び意識をリザードマンの方向に向ける。リザードマン達が敬礼をしていると方に目をやるとそこには遠目からでも目立つ、緑や黄土色といった汚れたリザードマンの群れの中では見つけやすい“漆黒”の鎧を纏った騎士が玉座(?)に鎮座していた。

 

「誰だ......あれ...。」

「解らない、けど......持ってる魔力が桁違い......。」

「ルナも感じるか?一体何なんだ。」

 

 ミノルも黒い騎士と同じく、“黒”の魔力を持つが黒剣士のそれはミノルのとはまるで違う。ミノルの黒が“災厄”を意味するなら黒騎士の黒は“正義”。穢れなき平等を意味する黒。変わらない堅い意思を意味する黒。その荘厳な雰囲気はかなり距離があるというのにミノルにピリピリと伝わって来る。下手すればミノルと変わらない、寧ろそれ以上の魔力量。本能が告げる。“強い”と。

 

「.........ルナ、周りに居るリザードマン達を任せてもいいか?」

「いい、けど.........ミノルは......?」

「あの全身黒づくめと話してくる。」

「!?.........大丈夫...?」

 

 ルナの「大丈夫?」と言うのは恐らく、ミノルの身の安全を案じてだろう。ミノルは口を固く結ぶと力強く頷いた。黒騎士はリザードマン達に何かを話しているようだがこの距離では聞き取れない。念の為自動回復の魔法を唱えるとルナの魔法に合わせカウントを数える

 

「3、2、1、今だルナ!!」

「“雷帝”」

 

 直後、リザードマン達の頭上に無数の雷が降り注ぐ。突然の出来事に慌てるリザードマン達だが逃げる暇もなく次々に雷に打たれ絶命していく。ルナの魔法発動と同時に飛び出したミノルは雷の雨の中を縫うように駆け抜けて行く。騒ぎを見た黒騎士は特に慌てず、無言で腰に下げた黒い剣を抜くと静かに玉座から立ち上がった。

 

「これで......終わり...!!」

 

 止めとばかりに特大級の雷が天を揺るがす大音響とともに落ちる。あまりの音に一瞬ミノルの聴覚がフェードアウトするが雷が消えた頃にはあれほどいたリザードマンは影も形も無くなっていた。高台で息を荒くするルナ。ミノルから渡されていた水筒の中に入った神水を一気に飲み干すと、急いで遠視魔法を使いミノルの様子を見守る。

 

「ミノル............。」

 

 ミノルは黒騎士との距離が後数mという所まで迫ると魔法で手から黒剣を創り出しそれを大上段に構えると目の前の黒騎士に向かい振り下ろす。形は全くなっていなかったが、並大抵の兵士や魔物が受けられる程の威力、速度では無かった。黒騎士は無造作に降られた黒剣を、ミノルとは異なり、鉄を打たれ作られた黒剣で受け止める。ガッキイィッン!!!という魔法の黒剣と鉄の黒剣が打ち合う音が衝撃波と共に放たれる。

 

「............くっ...!」

「........................その程度か。」

 

 兜越しで性別まではハッキリしなかったが確かに黒騎士は告げた。そして片手でミノルの黒剣を撥ね上げるとガラ空きになったミノルの胴体に渾身の突きを繰り出す。ブンッ!!という空を切り裂く音ともに放たれた黒の閃光はミノルの脇腹を掠り、再び衝撃波を発生させる。突きは何とか回避したものの衝撃波をモロに浴びたミノルは横に大きく吹っ飛ばされた。二、三度地面を転がったミノルに追い討ちとばかりに黒騎士が飛び上がりその黒剣で上からミノルの心臓辺りを突き刺そうと剣を構えるが、刃が当たる直前にミノルが魔力を衝撃波に変換させ黒騎士に浴びせた。黒騎士は大きく仰け反るものの、直ぐに体勢を整えミノルに再び切り掛る。黒騎士が仰け反った隙でミノルも起き上がると黒騎士と斬り合い始めた。両者の黒剣が打ち合う度に金属と金属がぶつかり合うような音が迷宮に鳴り響き、その一撃一撃には衝撃波が発生した。二つの黒が互いを打ち消しあおうとするその死闘には、他者が干渉できる余地は無くただただ眺めることしか出来なかった。いつの間にかミノルは黒騎士の首に黒剣をピッタリと当てており、黒騎士の黒剣もミノルの首に添えられていた。睨み合う両者。殺気と殺気がぶつかり合い場にとてつもない緊張感を生んだ。静寂の中突如黒騎士が言葉を放った。

 

「......問おう、穢れた神よ。貴様の名は何だ?何故此所にいる。」

「問おう、漆黒の騎士よ。お前の名は何だ?此処で何をしている。」

 

 “神”という言葉に天職がバレたと思い内心ドキッとしたミノルだが、表情には出さずに問い返した。両者の首に黒剣が当てられたまま、その場から微動だにせず互いを睨み合う。その沈黙は永遠にも感じられたが実際にはほんの一瞬の出来事であった。ミノルの目に本能剥き出しの殺意が宿り剣を持つ手に力を込める。それに呼応するように黒騎士からも膨大な量の殺気が放出された。

 

「生憎、貴様に答えることなど」

「何も」

「「“無い”」」

 

 両者の声が重なった次の瞬間お互い後ろに跳躍すると、二つの異なる“漆黒の魔力”が放出され、それと同時に互いに全力を込めた突きが放たれた。ぶつかり合う黒と黒。その威力が頂点に達した瞬間、洞窟を消し飛ばす様な黒の衝撃波がドッッッッゴーン!!!という音を立て両者の黒剣を中心に放たれた。

 

 やがて衝撃波が完全に消えるとそこには衝撃波で吹き飛んだ両者の黒剣が地面に突き刺さり、その状態になって尚魔力を放っていた。弾き飛ばされたミノルは地面に手を着きながら、目の前の高地に着地した黒騎士を睨んでいた。

 

「......穢れた神よ。貴様とはいずれまた相見えるだろう。その時まで、さらばだ。」

 

 黒騎士は地面に突き刺さった黒剣に一度目を向けると跳躍し、どこかへ去ってしまった。

 

「......二度と御免だ......。」

 

 呪うような口調で呟いたミノルは黒騎士が去った方向をルナがその様子に耐えかねてミノルの事を呼びに来る時までずっと眺めていた......。

 

 

 

 

 

 




新キャラ登場です。1回だけの使い切りじゃありませんよ?個人的に黒騎士には憧れがありまして、ライバルみたいな感じにしたら面白いんじゃないかなと思いやってみました。戦闘回の方が心無しか書くのが楽な気がします。今回も読んでいただきありがとうございました。果たしてミノル達は迷宮を攻略出来るのか......?簡単に出すつもりはありませんが。

次回の更新は明日か明後日になります。

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