亡霊ヒーローの悪者退治   作:悪魔さん

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最終章は最後の戦場です。

実は時系列に問題が生じ、こちらでは志村菜奈が五年前に死んだことになっているのですが原作ではオールマイトが18歳の頃に亡くなっていました。
途中で気づいたため全ての修正は不可能と判断し、志村奈々は五年前に亡くなったという設定のままで最終話まで行きます。
申し訳ありませんが、ご了承ください。


№69:笑顔

 一方、壁を爆豪の〝個性〟で爆破された(ヴィラン)連合のアジトでは、剣崎と爆豪が死柄木達と対峙していた。

「……これでいいのかよ、ゾンビ野郎」

「ああ、これでいい。街中で爆破事件ともなれば、否が応でも民間人は逃げてプロヒーロー共と警察連中が駆けつける………勝機ありだ」

「貴様……」

 剣崎は獰猛な笑みを浮かべる。

 すると、穴の開いたビルに向かって彼の取り巻――骸骨カラス達が鳴き声を上げながら飛来した。

「何だアレは!?」

「白骨化した鳥!?」

「しかも鳴いてるし!!」

 生きていること自体が常軌を逸している、骸骨カラス達の登場に混乱する一同。

 唯一冷静なシックス・ゼロは、忌々しげに顔をしかめた。

「こいつらは俺の優秀で従順な部下だ。この骸骨カラス達を知る者は雄英関係者――つまり、こいつらの姿を追ってくる連中がお迎えに来るってことだ。……言っておくがこいつらも俺と同じ性質だ」

 骸骨カラス達はほぼ骨と羽だけの状態で飛び回ったり、剣崎の方に留まったりする。

 彼と同様不死身に近いので、攻撃したところで無駄だろう。

「ちなみに左からストク、タイラ、オサベ、タチバナだ」

『どうでもいいわっ!!!』

 剣崎の至極どうでもいい紹介にツッコミが炸裂。しかも爆豪からもツッコまれている始末だ。

「実は他にもいてな……ちょうどテンジンとサワラ、それにイヨがちんたらしているオールマイト達にチクっているところだ」

『っ!?』

「さすがの俺も、社会のゴミとはいえ無駄に腕の立つてめェら全員を勢いで勝てるなんて甘ったれたビジョンは頭にねェ……肉体は朽ちたから脳ミソはねェが、魂にまで深く刻まれた数多の修羅場の経験がある。チンピラ以下のてめェら(ヴィラン)とは経験値が違うってこった」

「おのれ剣崎っ……何てマネを……!!」

 剣崎の機転と策により、劣勢に立たされた(ヴィラン)達。

 倒せないわけではないが、ほぼ不死身に近い剣崎と強力な〝個性〟を持つ人質(ばくごう)を相手に下手に暴れるのは愚策だ。剣崎自身がどこまで手を打ってるのかもわからず、もしかしたら脳無の工場もすでに制圧されてるのかもしれない。

「俺は〝ヴィランハンター〟………人を人と思わぬ社会のゴミを、腑抜けたヒーロー共と警察連中に代わって粛正するのが義務。ゆえに俺は生涯現役の執行人だ……一度死んじまったが」

 剣崎の言葉一つ一つが怒りと憎悪を孕んでいるようで、肌を突き刺すような視線を向けている。

 そして彼は口角を最大限に上げ、狂気的な笑みを露わにした。

「今からここは、てめェら全員の死刑場だ」

 

 ゾクッ!

 

『!?』

 とても人間が見せるような笑みとは思えない表情に、恐怖を感じた直後だった。

「剣崎少年、よくぞ見つけた!! もう大丈夫だ爆豪少年、我々が来た!!!」

 何とオールマイトやグラントリノ、シンリンカムイをはじめとしたプロヒーロー軍団が到着した。

 ヒーロー達の姿に視界は埋め尽くされ、この場にいる(ヴィラン)達にとっては恐怖と絶望でしかない光景となる。

「そうか……あの謝罪会見はタイミングを示し合わせたのか! まんまと嵌められてたのかよ畜生が!!」

「攻撃は最大の防御っつうが、攻勢の場合は話は別だ。攻勢に出過ぎると守勢(まもり)が疎かになるからな……」

 コンプレスの苛立ちに満ちた叫びを嘲笑う剣崎。

 するとリーダー格である死柄木が怒りに満ちた声を上げた。

「おいおい……せっかく計画を練ってこねくり回してたのに、何そっちから汚い面下げて来てくれてんだよラスボスが……」

「…………少年、私が出ようか?」

「いいや、あんたらはまだ温存だ。状況が状況だから〝あっち〟にしとくよ」

 シックス・ゼロの提案を断り、死柄木は切り札を切った。

「やってやるよ、全面戦争したけりゃ上等だ……気に入らないものはぶっ壊す!! ――黒霧ィ! 全部持って来い(・・・・・・・)!!」

 死柄木の言葉の意味を理解した黒霧は、対象位置へとワープゲートを繋げる。

 あの強力な改人・脳無を全部呼び出そうというわけだ。呼んだ後は「殺せ」の命令だけ出せば、逃げることもできれば反撃することもできる。しかし――

「……!?」

「……黒霧?」

 何も起こらず辺りが静まり返るだけだった。どれ程時間が経っても、時計の秒針が進む音しか聞こえず、他は特にこれといった動きもない。

 ふと見れば、黒霧の表情は険しくもあり震えており、目を細めていた。

「どうした黒霧……!?」

「そ、それがその……申し訳ありません……保管してあるはずの脳無、倉庫にワープゲートを出しているのですが……一体もいない!!」

『!?』

 補充していたはずの脳無が一体も無い。その事実を知り現状を理解した(ヴィラン)連合は一気に窮地に立たされた。

 すると、剣崎が声を上げて笑い始めた。

「クックック……」

「何がおかしい!?」

「悪かったとは思ってる、16年も経つとどうも物忘れがひどくなっちまってなァ………火永達を動かしていたことをすっかり忘れちまってた」

『!!』

 その言葉に、死柄木達は目を見開いた。

 火永といえば、ヴィランハンターの同志として圧倒的戦闘力で(ヴィラン)を狩りまくっているヒーロー業界屈指の実力者・弾東火永のことだ。彼は女性ヒーローの中でも屈指の実力・知名度を誇る〝プロミネシア〟炎炉熱美と〝黒の処刑人〟と恐れられる戸隠御船とも繋がっており、有事の際は三人で動くことが多い。

 ということは、工場にはその三人が向かって制圧済みである可能性が極めて高いのだ。

「先の時代の残党を甘く見てたな。朽ちた体で何ができると、怒りと憎しみで心を支配された亡霊など恐れるに足らぬと………だがこれでシメェだ。決着(ケリ)をつけようぜシックス・ゼロ……それとオール・フォー・ワン」

 

 朽ちた肉体に禍々しい意志を持つ魂を宿した死神は、悪の前で微笑んだ。


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