申し訳ありませんが、実際は別のキャラです。後々指摘された件について調べて偶然同じだったので、ビックリしてます。こればっかりは譲れませんので、あらためてご了承ください。
剣崎と冷子の戦闘は、壮絶を極めていた。
刃こぼれが生じながらも絶大な切れ味を誇る剣崎の日本刀。生ける亡霊と化した彼の唯一の対抗手段である「浄化」の作用を持つ日本酒で濡れた冷子のレイピア。互いの刃は明らかに急所を狙っており、一太刀でも浴びた瞬間に死が訪れそうである。
剣崎は一刻も早く
「おおおおお!」
「剣崎ィィィ!!」
レイピアで鋭い突きを放つ冷子。
通常の武器であれば生ける亡霊と化している剣崎には無効だが、彼女は無敵状態と言って過言ではない彼にもダメージを与えられる術――日本酒で刀身を濡らしているため、不死身の剣崎もこれは躱さざるを得ないのだ。それでも彼女の攻撃を躱しきれているところはさすがと言えよう。
しかし躱したら今度は剣崎が刀を振るう。刀自体が刃こぼれの影響で多少なりとも切れ味が落ちているとはいえ、その強烈な一太刀はモロに浴びれば命取りである。その上彼の腕力は相当なものなので、下手をすれば胴体を真っ二つにしかねない。
「死ね」
剣崎は刀を両手で持ち、力任せに縦に一閃。
冷子はそれを紙一重で躱し、剣崎の刀の刃が地面に食い込んだ瞬間にその刀身を踏みつけて押さえた。
「っ!」
「はっ!」
冷子の渾身の突きが、剣崎の左肩を貫いた。
通常の剣崎ならば、この手の攻撃など食らったところで何の害も無い。だが、レイピアの刀身は日本酒で濡れており、剣崎の〝個性〟の性質上絶大な効果を発揮するのでダメージを与えられるのだ。
「ぐっ……!!」
肉を貫かれる感覚に、顔を歪める剣崎。
貫かれた箇所は日本酒の影響か、その部分だけ肌色になっており赤い血も流れている。それだけではなく、剣崎は強烈な脱力感に襲われており、刀を握るだけで精一杯な程に弱体しつつあった。左手で抜こうとしても、日本酒で濡れているため触れても肉を焼く音と共に激痛が襲う。
「勝負ありだな」
「っ……!!」
「16年――長い年月だった……!!!」
恍惚の笑みを浮かべ、冷子は念を押すようにレイピアに力を入れ、そのまま彼の背後にある木の幹まで叩きつけた。
刀身は剣崎の肩にどんどん沈んでいき、木の幹に深く刺さっていく。
「お前は私のモノだ……あとでじっくりと調教して、無敵の玩具にしてやる」
とはいえ、剣崎が不死身なだけと侮ったはいけない。その信念の強さから、強靭な精神力の持ち主であることは明白――拷問は逆に無意味だと考えた方がいい。だが言葉巧みに持っていけば、彼の心を支配することはできなくとも変化を与えられる可能性はあるだろう。それに剣崎は志村菜奈の死を知らない。彼女のネタをフル活用すれば、迷いさえ生じさせれば勝機ありだ。
姑息で卑怯な手段は、
「剣崎……
「……!?」
*
「ハァ……ハァ……」
一方の御船は、劣勢に立たされていた。
地力では御船の方が上と判断したスピナーとマグネが作戦を変更し、応援を要請したのだ。
「肉……肉面……」
「くっ、よりにもよってムーンフィッシュか……」
応援に駆け付けたのは、脱獄した死刑囚というあまりにも危険な犯罪者・ムーンフィッシュだった。実は御船とムーンフィッシュは逮捕した側と逮捕された側という因縁があり、御船が命を懸けてようやく捕まえた
それだけではない。毒ガスを操るマスタードや「二倍」というシンプルながら厄介な〝個性〟を持つトゥワイス――本名・分倍河原仁――も駆けつけてしまい、四対一の厳しい戦いを強いられたのだ。
毒ガスと因縁の敵、新手の
「あの男……肉にする……」
ムーンフィッシュは御船に近づき、自らの歯を鋭い刃物のように伸ばして攻撃した。
すると――
バァン!!
『!?』
ムーンフィッシュの歯に何かが直撃し、砕けた。
それはまるで銃弾のようにも見えたが、正体は違った。
「これは……小石……!?」
彼の歯を砕いたのは、物凄い速さで飛んできた小石だった。
こんな芸当をできるのは、あの男しかいないだろう。
「まさか……」
「悪ィな、因縁の敵は自分でケジメつけたかったろうが」
『火永!!!』
そう、今日の仕事を終え急いで――いいところに――駆けつけた火永だった。
「助かった……来てくれてありがとう」
「ああ、いいってこった。そういう間柄だったろ、刀真とも」
不敵な笑みを浮かべる火永は、すかさず小石をトゥワイス達に投げた。
弾丸のように放たれた小石は、木を貫通する。人体に当たれば、急所に当たらなかったとしても無事では済まないだろう。
「お前は休んでろ、奴らは俺が相手をする」
構えを取る火永に、怯むトゥワイス達。
火永はプロヒーローの中でもかなり上位に位置する実力者。高校時代で剣崎と同格扱いされたのだから、心して掛かる必要がある。
「なら、先手必勝ね!」
「おうっ!」
マグネとスピナーは火永が攻撃を仕掛ける前に襲いかかるが……。
「うらァ!」
ドゴッ!
「ブッ!?」
スピナーの顔に拳が減り込み、そのまま吹き飛ばされてしまう。
「誰なのっ!?」
「私よ」
マグネ達の前に現れたのは、熱美だった。
ヒーロー業界屈指の実力者が二人も駆けつけたことにより雄英側は安堵し、マンダレイは感極まって涙を流す。
「火永! 援護するわ!」
すると熱美の全身が真っ赤に光り、付近の木々が燃え始めた。彼女の〝個性〟の影響で、全身から発された高熱により自然発火したのだ。
しかし、これはこれでマズイ事態である。なぜなら――
「バカ熱美!! 山火事になったら誰も助からねェぞ!! 援護どころか一番迷惑かけてるじゃねェか!!」
「あっ…………ゴメン」
(何やってんだァァァァァァ!!!)
そう、森で〝個性〟を使うとあまりの高熱で確実に山火事になるのだ。しかも彼女が〝個性〟を使い終えても消火活動をしない限り燃え続けるため、被害は彼女自身でも止められない。
「イイ女だな!! 頭大丈夫か!?」
「おいおい、火を消すガスは持ってないぞ……!!」
「――マズイ」
トゥワイスやマスタード、そして会話は成り立たないはずのムーンフィッシュですらこの事態に頭を抱える始末。これでは目的達成はできないどころか山火事で
「ったく、何考えてんだか……」
あまりにも間抜けな同期に、溜め息を吐く御船。
こんな女性とよく15年以上も付き合っていられたものである。
「ちっ、しょうがねェ……誰か水を操る奴はいるか!? 氷でもいい!!」
「任せろ」
『!!』
その声と共に、火が燃え移っていた木々が一斉に凍った。
轟が〝個性〟を使って消火したのだ。
『轟君!!』
「でかした、坊主!」
「爆豪や俺の〝個性〟じゃあ、上手く戦えねェ。アンタらを援護する」
「んだと半分野郎!?」
何気ないディスりに激昂する爆豪だが、そうも言ってられない。
森では可燃性の〝個性〟は使いにくい。轟はどうにかなるが、強力な爆豪と熱美は厳しい戦いを強いられるだろう。だが救援が来た分まだマシだ、剣崎は一人でこういう状況を何度もくぐり抜けたことを考えればどうってことない。
「うっし……役者は揃ったみてェだな。ボランティアの時間だ」
林間合宿は、ついに佳境を迎える。