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№1:3年後
時は流れて3年後、雄英高校。
15歳となった緑谷出久は、ついに悲願であった雄英高校の入学を成し遂げた。その上で、出久はある約束を果たさんとオールマイトの捜索をしていた。
出久は今、今から3年前に
出久がインターネットで調べてきた限りだと、剣崎の本名は「剣崎刀真」といい、〝無個性〟で雄英高校のヒーロー科に
その強力さと無慈悲さから、人々は剣崎を〝ヴィランハンター〟と呼び、数多くの
――この世の全ての
オールマイトにも引けを取らない強い正義感を持っていて、何事にも揺るがぬ信念の持ち主で……〝無個性〟である出久を救けた。
あれから3年。出久は早く剣崎を救いたいと思っている。出久はオールマイトから〝ワン・フォー・オール〟を受け継いだ。
――今はまだコントロールすら出来ていないけど、いつかはこの力で剣崎さんを救ってみせる。
出久はその為に、日々特訓をしている。おかげで指とか腕とか足とか包帯まみれになったりするが。
「あ!! オールマイト!!」
出久はオールマイトの元へ駆ける。
オールマイトはかつての母校――雄英高校で教師をやっている。恩師でもある根津校長の勧めもあって教鞭を振るっている日々を過ごしている。
若き力を育てる教師という仕事は、オールマイト自身としても実に魅力的だと思っている。だが教師経験ゼロである彼はカンペや参考書が欠かせないのが現状。教師という仕事は辛いモノだと、常に実感している。
「オールマイト!!」
「おお、緑谷少年!!」
いつも通りの笑顔で、出久に手を振り挨拶をする。
相変わらずアメコミ画風の彼に、出久は剣崎からの伝言を伝えた。
「実は、オールマイトへの伝言を預かってるんです」
「私に伝言? それは誰からだ? 緑谷少年」
「剣崎さんからです」
「っ!?」
出久が口にした名に、オールマイトは表情を変えた。
オールマイトが剣崎という名を聞くのは、16年ぶりだ。しかし……剣崎は16年前に死んだはずだった。厳密に言えば、16年前のあの日、
今なお消息不明であるが、致死量の血液が散らばっていたことから、人々は戦死したとされた。
剣崎の死は、オールマイトにとってもショックだった。〝無個性〟でありながら不屈の精神で雄英高校に入学し、刀一本で
(だが、緑谷少年は彼から伝言を預かっていると言っている。緑谷少年はヒーローオタクだ、彼がすでに死んでいるのは知っているはずだと思うが……)
いずれにしろ、オールマイトは出久に事実を伝えた。
「……君の口から剣崎少年のことが出るとはな……だが緑谷少年、彼はもう死んだんだ」
「でも彼は生きてたんです、亡霊として。3年前……僕は
出久の言葉に、オールマイトは驚く。
剣崎は、
(緑谷少年は、私の前でわざわざ嘘をつくとは思えない。という事は、緑谷少年は衝撃の事実を口にしている事となる。しかし、緑谷少年の言葉はどこかおかしい。亡霊という事は、一度死んでいる事を意味する…どうして蘇ったのだ? ――いや、そんな事は後で考えよう。まずは緑谷少年が言っていた伝言を聞かねば)
オールマイトは、出久に訊いた。
「伝言の内容は……?」
「「
その言葉を耳にし、オールマイトはどこか納得した。
異空間に囚われてるのならば、遺体が見つからず血痕だけが遺されていたという状況になる。
それに空人間といえば、巷を騒がす
「……緑谷少年、君の言うことは私としても確かめたい」
「はい…」
「もし彼が生きているのならば、これから何を成す気なのかを知らねばならない。敵になるも味方になるもわからないからね…その
オールマイトは出久の伝言を――剣崎少年の頼みを受け入れ、この件の重要人物である
*
異空間にて。
「1201、1202、1203……!」
この異空間の中で今も幽閉されている剣崎は、修業をしていた。
彼は自分がこうして苦しんでいる原因となった
全ては、自分から全てを奪った憎き
だが、彼は一度死んでからは今まで眠っていたと思われる〝個性〟の覚醒で亡霊として蘇ったものの、その後に彼の身にある問題が発生した。それは……。
――暇だ……本当に修業をする以外何もできない……。
ある意味で一番残酷な現実ともいえる、「退屈」である。
何せ周りは枯れ木や雪、厚い雲ばかりで、太陽の光など一条も射し込まない殺風景だ。もしこれが晴れていたら夜空に輝く星を見て多少は
一時は雪だるまでも作って暇つぶしにでもしようかと思ったが、雪は何と全く雪だるまに適していない粉雪。水分が無いため固まらない。
更に追い打ちをかけるかのように苦しめたのは、食事が全く摂れないことだ。生前の彼にとって食事は数少ない娯楽であり、特に好物である和食を食べられないのはこの上なく辛い。ただでさえこの異空間は墓場みたいな扱いで、あの憎き
――というわけで、完全に詰みである。
「1220……ハァ……」
1220回目の素振りを終え、剣崎は仰向けになって雪の上に倒れる。
彼の目の先は、太陽と青い空ではなく、黒い雲だけだ。
「ああ…早く太陽見たい、星空が見たい、海が見たい、とりあえずこの風景じゃなかったら何でも良いから別のモノ見たい……!!」
短いながらも悪者退治に人生の全てを捧げた剣崎にとって、退屈は立派な拷問として機能した。
「……出久君、忘れてなければいいが……」
今になって、剣崎は不安になるのだった。