テスト期間に入るので、2月の頭は投稿しないかもしれません。
書き溜めてるのを時間見つけて少しずつ進めて投稿しようと思います。
グラウンドには、煙草を咥えた火永がポケットに手を突っ込んで立っていた。
その先には、出久や爆豪、お茶子をはじめとした1年A組の生徒全員が対峙していた。
「強くなるには実戦あるのみ……戦いまくって戦闘慣れするのが大事だ」
ニヤリと笑みを深める火永。
「上等じゃねェか……あの煙草帽子、俺がぶっ殺してやる!!!」
「おい爆豪、冷静になれよ…」
「俺はすこぶる冷静だァ…!!!」
興奮状態の爆豪に、呆れる切島。
先程の口だけの舐めプをまだ引きずっているようだ。
「なァ緑谷、お前はあいつ知ってるのか?」
瀬呂の言葉に、出久は頷きながら語り始める。
「〝蒼い弾丸〟弾東火永……雄英高校の卒業生で、剣崎さんの同級生。 ヒーロー業界及び
「そ、そんなに強いのか……?」
「うん……現に剣崎さんと互角の実力者って言われていているようだよ」
この世の全ての
それを聞いただけでも、怯んでしまう瀬呂。
剣崎の強さは、先日の襲撃事件で目に焼き付けている。そんな彼に匹敵するとなれば、手合わせといえど覚悟がいる。
「うし、〝個性〟使って来いよ。お兄ちゃん、いっちょ張りきるからよ」
首の骨をゴキゴキと鳴らす火永は、ニヤニヤしながら挑発する。
しかし、誰一人火永に立ち向かおうとしない。あの爆豪でさえもだ。
「……どうした? この距離じゃあ
煙草の煙を口から吐きながら、ゆっくりと出久達に近づく火永。
ポケットに手を突っ込み、何の構えも取らずに近づいているのだから完全に舐められているのだが……。
(何てプレッシャーだ……気迫の時点で桁違いだ……!!)
絶対的強者の、強烈な圧。
先日襲ってきた
ふと後ろを見れば、何人か腰を抜かして戦意を喪失している。あの爆豪や轟ですら動いてない。
――これでは手合わせ以前の問題だ。臆したら負けだ。
そう考えた時には、出久は火永に特攻していた。
「緑谷!!?」
「デク君!!?」
いきなりの特攻に、衝撃を受ける一同。
しかし、それは火永も同じだった。
(いきなり捨て身か!!)
「〝
ドォン!!
〝ワン・フォー・オール〟による強烈なパンチを炸裂させる出久。
出久の拳は、火永の脇腹に直撃する。
しかし……。
「……中々いい一発だ、ド素人だと思ってたぜ」
にやりと獰猛な笑みを浮かべて、右手で受け止めていた。
信じられない光景に、出久は目を見開いた。
「と…止められた…!?」
「お返しだ、弾になってこい!!」
火永は左手で出久の顔面を掴むと、飯田達に目掛けて思いっきり投げた。
その瞬間!
ゴゥッ!!
「ぅぁああ!?」
ズドォォン!!
『おわあァァァ!?』
出久が突然、猛スピードで飯田達に突っ込んで盛大な土煙を挙げた。
それを見た相澤は絶句し、御船と熱美は顔を引きつらせた。対する火永は、爆笑している。
「ハハハハハ!! どうだ坊主、弾丸になった気分は?」
火永の〝個性〟は「弾丸化」。触れたものはどんなものでも弾丸にする事が可能で、半径150m圏内ならばどんな人間でも撃ち抜くことができる。
一握りの砂つぶては弾幕となり、その辺の石ころでもショットガン以上の威力と貫通力を有し、人間を投げれば周囲を薙ぎ倒しながら巻き込む。 モノさえその場にあれば、すぐに弾丸として放つことができる…それが火永の長所だ。
「っつ……皆、大丈夫……?」
「ああ……何とかな」
「スゴイ威力……」
そんな中、轟が口を開く。
「シャレにならねェ〝個性〟だが、もっと厄介なのは精密さの方だ。向こうから寄ったとはいえ、緑谷を投げて正確に俺らにぶつけやがった……」
火永の真の脅威は、タフさや個性ではなく、目標に対し確実に当てる射撃能力だと語る轟。
「ほんじゃまァ……ちょっとからかってみるか」
火永はそう言うと、グラウンドに転がっていた石ころを手にして投げた。
するとその石ころは凄まじい速さで出久達へ向かい……。
ガッ!!
「…危なかった」
石ころは、轟が咄嗟に造りだした氷壁に減り込んだ。
衝撃は相当強かったのか、厚さ30㎝の氷壁に大きな亀裂が生じている。
もしもあれが人体に当たっていたらと思うと、ぞっとする。
すると、火永は氷壁目掛けて突進し……。
「油断大敵だぞ? 坊主」
ドゴッ! バリィン!!
「んなっ……!?」
火永は回し蹴り一発で、轟が造りだした氷の壁を粉砕した。
まさかの事態に、轟は言葉を失う。
そこから先は、火永の一方的な蹂躙。蹴りだけで構えていた生徒達を薙ぎ払っていき、何と数十秒で半数以上の生徒を倒してしまった。
そしてすぐさま、轟の首を掴んで持ち上げる。
「動きは悪くねェが、ちと〝個性〟に頼り過ぎだな。純粋な腕っ節が最後はモノを言うんだぜ?」
「……いや、そうでもねェよ」
「!」
ふと、火永の右手目掛けて何かが飛んできて巻き付いた。
瀬呂がテープを射出し、火永の右腕を拘束したのだ。
「……」
「っしゃあ! 動き封じたぜ!」
しかし、切り離そうとした瞬間!
「詰めが甘ェ、ぞっ!」
「うおっ!?」
左腕で巻き付いたテープを掴み、切り離される前に引っ張り上げた。
そして瀬呂は吸い込まれるように火永の目の前に接近し…。
「歯ァ食いしばれ!」
ドンッ!
火永の掌底打ちが瀬呂の顎に直撃。
錐揉み回転しながら地面に倒れ伏した。
「「あ~……ドンマイ……」」
白目で気絶する瀬呂。
脳を揺らされたのかもしれないので、暫くは起きないだろう。
「いい策だったが、そんなんじゃ俺には通用しねェよ……ドンマイ」
「よそ見してんじゃねェ!!!」
「!」
一瞬の隙を突いて、爆豪が飛びかかった。
爆豪は渾身の飛び蹴りを見舞った。
ドォン!!!
爆豪の強烈な蹴りが、爆ぜる。
至近距離の爆破に巻き込まれた火永は、黒煙に包まれる。
「けっ、強ェだけの雑魚じゃねェのか!?」
余裕に満ちた笑みを浮かべる爆豪。
しかし煙が晴れた瞬間、爆豪は言葉を失った。火永は倒れておらず、むしろ拳を握り締めて構えていたのだ。
「ふーっ……面構えはともかく、いい味出してるじゃねェか」
火永の体を見て、一同は唖然とした。
鍛え上げられた肉体に、はっきりと割れた腹筋。そして上半身を覆う程の夥しい数の刀傷と火傷、複数の銃創。中には致命傷になりかねない傷痕もあり、
「礼を言うぜ……お前のおかげで、少し本気を出せそうだ」
「っ……!!」
ドゴッ!!
火永は本気の拳を振るって爆豪の顔面を抉り、文字通り殴り飛ばした。
爆豪は火永が全力で繰り出した拳を、避ける事も出来ず、防ぐ事も出来なかった。
「かっちゃん!!!!」
出久の悲鳴が、木霊した。
すると、猛烈な速さで吹き飛ぶ爆豪を、一人の男が片手で受け止めた。
「火永の拳は重いからな、ただ防御するだけじゃあ完全に相殺はできねェ」
「て、てめ……」
「ったく……あいつに一矢報えねェ程度の腕っ節じゃあ、先が思いやられるな」
その声を聴いた途端、火永は放心状態になった。その声の主は、既にこの世から去っていたはずだったのだから。
勿論、その声を聞いた熱美も御船も、絶句していた。
その声の主は、刃こぼれが生じた刀をステッキのように突いて、コートや髪の毛、ブレザーとネクタイをゆらゆらと揺らしている。
そう、剣崎だ。
「っ……!?」
「え……?」
「生きてた、のか……!?」
「一回死んだよ。生ける亡霊として蘇っただけにすぎん」
16年ぶりに見る剣崎は、痛々しい程に変わっている。
血の気の無い肌、顔面から指先まで全身の至る所に走るひび割れたような傷痕、刃こぼれした刀とボロボロの衣服……かつて見たあの勇姿はかけらも残っておらず、落ち武者のような不気味さを醸し出している。
しかしその意志の強い目は間違いなく剣崎であり、死して姿を変えても昔と全く変わってないという
「まあ色々言いてェことがあるだろうが……それは後だ。そして改めて言おう……」
剣崎は、口角を最大限に上げて喜んだ。
「元気そうだな、我が同志よ」
今更ですが、剣崎の刀について紹介します。
剣崎は打刀と短刀を一振りずつ所持していますので、少し詳しく。
【打刀】
剣崎が悪者退治に普段使う刀で、今は亡き父親の形見。
無銘でありながら刃こぼれしても鉄をも斬り裂く切れ味と頑丈さを誇る。刃渡りは75㎝と長めで、剣崎の技量と腕力を上乗せすると一撃一撃がかなりの威力を有する。鞘は漆黒で鉄拵え。
【短刀】
乱戦や打刀を奪われた際などの打刀だけでは手に負えない状況や相手勢力に見せしめをする時に使用する短刀で、同じく今は亡き父親の形見。
無銘かつ切れ味は打刀よりも劣るが、コンクリートを貫通する威力を有している。
刃渡りは28㎝。鞘は打ち刀と同様、漆黒で鉄拵え。