すいません、某夢の国で遊び惚けてました。
少しずつですが、話を進めます。
過去を語った剣崎。
語り終えた後に残ったのは、重苦しい静寂だった。
「
全てを奪われてなお、再び生を受けて世に解き放たれた剣崎は誓った。
今度こそ、
「俺はあの日を通して二つ学んだ。一つは、
「……剣崎少年……」
「俺はケジメをつけなきゃならねェ。オール・フォー・ワンもシックス・ゼロも、一人残らず殲滅させる……あいつらも所詮は心臓一つの人間一人。今度こそ息の根を止めてやる」
敬愛した家族、己が描いた夢と未来、一生続くと思っていた愛情…それら全てを失った少年は無力感と悲しみに襲われ、怒りと憎悪に身を焦がした。
慈悲が家族を殺し、力不足が悲劇を生んだ。力が無ければ救えるモノも救えない。
全てを奪われても抗い、大切なモノを護るためには、自分が変わらなければならない。例え、人間を止めて修羅となってでも。
「……すまん、話がズレたな……本題に戻ろう」
剣崎は先程と打って変わって、子供のような無邪気な笑みを浮かべて自らの個性について述べた。
彼曰く、現時点で確認が出来たのは「建物や壁などをすり抜けて移動できる」、「過度の衝撃や攻撃で肉体が欠損しても再生する」、「刀をラジコンのように自在に操れる」「物理攻撃及び個性による攻撃を受けても戦闘が可能」の4つ。それに加え、かつて囚われていた時は「亡霊らしく誰かに憑依する」ことが出来たとのこと。個性である以上は弱点も存在すると考えているらしいが、肝心のそれすらまともに把握しきれていないのが現状とのこと。
「まァ……色々と試すさ。個性も鍛えりゃあ無限の戦闘力を生む」
その時だった。
「失礼する」
保健室に、二人の刑事が入ってきた。
その二人は、オールマイトがよく知る人物だった。
「塚内君!! それに加藤警部!!」
非常に高い分析力とプロファイリング能力の持ち主である塚内直正と、警察内で最も名の知れた塚内の大先輩である加藤旦蔵だ。
両者共に、オールマイトとは旧知の中である。
「……またお会いしましたね、旦那」
「やはりお前が全員殺したのか?」
「事情聴取なんざ通用しねェって…あいつらが口を割ると思いますか?」
鋭い眼差しで剣崎を見据える加藤は、溜め息を吐く。
警察は証拠集めも重要な仕事……剣崎が皆殺しにしたせいで供述証拠が取れないのだ。
しかし剣崎と付き合いが長い加藤にとっては日常茶飯事……おかげで推理力は鍛え上げられたのは秘密だ。
「それに奴らの裏にいる黒幕の正体も大体の目星はついているし、今後の動きも予想できる」
『!!?』
剣崎の言葉に、目を見開く一同。
何と彼は、今回雄英高校に侵入して暴れ回った
「詳しく聞かせてくれないか? 剣崎君」
「……俺の経験上、シックスはこんなマネはしねェはずだ。奴は正面から真っ向勝負挑むような
剣崎の言葉を詳しくまとめると、こうだ。
死柄木弔を筆頭する「
そして今回の襲撃で先生だけでなく生徒達も強者が多い事が明らかとなり、今後は
「……相変わらずの推理力だ、
「そうだ、旦那……あの死柄木って奴を調べてくんねェか? 俺の太刀筋を知っていた」
「!! お前の剣をか?」
「悪い予感がする……もしかしたら死柄木って奴の所に〝あの頃の
「……いいだろう、俺も死柄木弔について調べたい事があったしな」
剣崎は一言礼を言うと立ち上がり、扉をすり抜けてその場を去った。
「さて…じゃあ僕達は君らと話すとしようか、緑谷出久君」
*
夕方――
いつも座るベンチで、剣崎とミッドナイトは話し合っていた。
一見はリア充のデートだが、話し合っている内容は今後の対策であり断じてふざけていない。
「……っつーことだ」
「そう…じゃあやっぱりヒートアイスが絡んでいるかもしれないわね」
「俺と戦って生き延びてる奴はそうそういないからな………んで、雄英の方針はどうなんだ?」
「まだ決めてはいないけど…セキュリティの強化だけでは物足りないはずよ」
「だろうな……それ以前に内通者がいるかどうかぐらい調べた方がいい」
「え!?」
剣崎の爆弾発言に、ミッドナイトは驚愕する。
雄英高校に、内通者がいる…つまり
「考えてみろ……
――そうじゃなけりゃあ、俺は内通者を殺す必要がある。
平然とそう言った剣崎に、ミッドナイトはゾッとした。
無慈悲で強硬的な姿勢の剣崎は、反感を買われる事や対立する事は何とも思わないが、裏切られる事を極端に嫌う。事実、とある一件でプロヒーローに裏切られた剣崎は鬼の形相で怒り狂い、そのプロヒーローとサイドキックを殺しかけた程だ。
「私も、偶然であって欲しいわ…………」
刀真がこれ以上、自分を苦しめるところを見たくない。
そう呟くミッドナイトに、剣崎は彼女の肩を叩いた。
「まァ……どの道しばらくは悪事を働かねェさ。戦力を削っちまったしな」
剣崎の粛清により、死柄木達は戦力増強をせざるを得なくなり、暫くは力を蓄えることに専念するだろう。
それまでに対策を打たねばならない。
「俺も俺なりに手を打つ……奴らの一歩先ではなく、三歩先に行くぞ」
剣崎はそう言い、死柄木を筆頭とした