さて、演習が始まって終了まで残り3分となった。
剣崎と別行動をしていた出久達は、演習場でも広い通りに移動していた。
「よし……これで後は構えるだけ……!」
「大丈夫かな……」
背中合わせになって構える出久とお茶子。
なお、峰田は出久に背負われている。
「お……おい、逃げないのかよ!? さっきまで建物の中逃げてたからそれでいいだろ!?」
異議を唱える峰田。
それもそのはず、今ヒーローチームが陣取っている場所は相手から非常に見つかれやすい。人質を守るにはあまりにも不向きだ。
それをモニター越しで見ているオールマイト達も不審に思う。
「……アレ、さすがにマズイんじゃねぇか?」
「アレで人質を守りきれはしないぞ」
「それとも何か考えでもあるの……?」
戸惑う生徒達。
オールマイトも、出久とお茶子がとった行動を不審に思う。
人質を守る作戦にしては、危険を伴う行動だ。剣崎と離れ離れである以上は2対3の戦闘に持ち込まれかねず、最悪負けてしまう。
オールマイトは放送を通じて二人の行動は愚策であると告げようとしたが、あるモニターを見て驚いた。
(屋上からの不意打ちか!!)
3階建ての小さなビルの屋上に深緑の髪の毛をゆらゆら揺らす、ボロボロのコートを羽織った人物――剣崎が隠れていた。
つまり、剣崎は出久達が相手に見つかった瞬間動いて人質を奪還しようとするところをまとめて仕留めようというのだ。
さらに言うと、剣崎は恐らく爆豪の性格を先程の戦闘で把握している。あえて出久達を見つけやすくすることで、自分が隠れて機を窺っている事を覚られないようにしているのだ。もっとも、剣崎が
(相変わらずレベルの高いというか、一見デンジャラスな作戦を思いつくな……)
そして、その時は来た。
「おい、爆豪達が緑谷達を見つけたぞ!!」
「むっ!」
ついに対峙したヒーローチームと
今まで出久達を見つけられなかったのが相当腹が立ってるのか、爆豪は若干キレ気味だ。
「おいクソナード……今までよくもあのゾンビ野郎を利用してコケにしたなァ……!!」
「か、かっちゃん……」
かなりお怒り気味の爆豪。
チームメイトも引きつった顔である。
今の爆豪は、まさに悪鬼羅刹。
「あのゾンビ野郎がいねェからには、思いっ切りてめェを捻じ伏せることができる……!」
爆豪が攻撃を仕掛ける。
そう予感した出久は、お茶子に峰田を任せて拳を構える。
(剣崎さんが不在の今、僕が食い止めなきゃ……!)
「やっとやる気か……じゃあ、こっちから行くぞ!!」
爆豪は興奮状態で、出久を攻撃しようと迫る。
それと共に、バサバサと何かが棚引く音が聞こえる。
「爆豪!! 戻れ!!」
上鳴が叫んだ時には、すでに彼が爆豪のすぐ後ろにいた。
「剣崎さんっ!!」
そう、剣崎が舞い戻って来たのだ。
剣崎は爆豪に狙いを定めて納刀状態の刀を振るうが、爆豪は咄嗟に籠手でガードする。
「さァ、どうする? 籠手を封じられたが」
「っ……クソが……!!」
剣崎は片手での攻撃だが、爆豪はそれを両腕で受け止めている。
剣崎の一撃は、それ程までに重いのだ。両手持ちならば、それこそ動けなくなっただろう。だが剣崎も、爆豪で手一杯。ある意味チャンスではある。そう考えた上鳴と切島は、爆豪が剣崎の相手をしている隙に出久とお茶子を掻い潜って峰田を狙う。
だが、次の瞬間!
ヒュッ! ガンッ!!
「ひでぶっ!?」
「上鳴!?」
上鳴の頭に何かが激突した。
それは、剣崎がコートに隠していた短刀だった。
当たり所が悪かったのか、上鳴は大きなたんこぶが出来た頭のまま崩れるように倒れた。
「なっ……!」
ここへ来て
剣崎のファインプレーか、はたまた上鳴の不運か……ともかく、
しかも…。
「あーーーっ!! 逃げやがった!!!」
いつの間にか出久とお茶子は峰田を連れて逃走。
上鳴のアクシデントに気を取られた隙に逃げ出していた。
何とか追いつこうと切島は走り始めたが…。
ビーッ!!
演習はそこで終了してしまった。
《そこまで!! ヒーローチーム、WIN!!》
ヒーローチームの勝利。
しかし、爆豪達
*
地下のモニター室に剣崎達は向かい、オールマイトから講評を受ける事となったのだが……。
「剣崎少年……もう少し加減してもよかったんじゃないか?」
オールマイトの第一声は、それだった。
何故かというと、
対するヒーローチームも、「何もしなかったなァ……」と互いに呟き遠い目をしている。
講評しようにも、何か言いにくいのだ。そしてその状況を作ったのも、剣崎のせいとも言える。
「…実戦じゃねェから手は抜いたぞ。あいつらが俺と比べりゃあまだまだ弱いって事だろ」
剣崎はそう言いながら、
「お前らは実際に戦った事がねェから無理もねェだろうが…
その言葉に、何も言えなくなる一同。
「俺にとっちゃあ、今のお前らなんざ5分もあれば返り討ちに出来る程度の強さ。自分の力に――」
バシィンッ!!
「……あ?」
剣崎の頭を引っ叩く何か。
それは、何とキャットオブナインテイルの鞭だった。それの持ち主は、この雄英高校ではただ一人。
『ミッドナイト!?』
そう、誰もが知る18禁ヒーローのミッドナイトだ。
「……睡か」
「そうやって心を削ぐようなマネ、みっともないわよ? 刀真」
「事実だろうが。つーかみっともないって言葉、そのまんまブーメランで返すぞ」
「ブーメラン?」
「お前いつからそんな女になった? 俺の知る睡じゃねェんだよ」
「16年もあれば人間変わるわよ? それくらいわかるでしょ」
「変わり過ぎるのもよくねェんだよ、目に毒だ」
「何ですって? 誰に対して言ってんの?」
「お前に対して目に毒だっつってんだよ。俺は精神年齢31歳の
いつの間にか言い争い始める二人。
しかし二人共どこか楽しんでいるようであり、どういう訳か微笑ましく感じる。
「刀真、ちょっと大事な用があるから一緒に来なさい」
ミッドナイトはそう言うと、剣崎のコートを掴んで引っ張る。
「おい、睡!! その手を放せ!! コートが千切れる!!」
「何を今更言ってんの、別に買えばいいじゃない」
「物には愛着ってモンがあんだよ!!」
ミッドナイトに引っ張られながら移動を余儀なくされる剣崎。
そんな様子を見た生徒達は……。
『ミッドナイト、パネェ……』
次回以降、オリキャラネタぶっこむぜよwwww
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