エンジェェェェェル★スタァァァァァイル!   作:kurutoSP

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夜と天使

 雄英高校一年生は毎年、個性の訓練の為課外活動を行うことがある。その授業目的としては、状況に応じて個性が使用できるか、つまり自身の個性をきちんと把握し現状でどのくらい使いこなせるかの実技授業である。

 

 そのため、外部講師を招いたり、雄英高校にない設備も当然存在するため外部施設を利用することもある。

 

 ヘドロ事件が起きた年の一年生の担任であるミッドナイトとイレイザーヘッド(相澤消太)の二名はクラスの人間を率いてその外部施設に授業の為、バスに乗り向かっている時の出来事である。

 

 だが、この年、イレイザーヘッドのクラスは彼により見込みがないとされ全てヒーロー科から除籍されており一人もいないため、ミッドナイトのクラスの付き添いとしてついて行っているだけである。彼の個性の見たモノの個性を消す能力はかなり便利であり、生徒の暴走を止めたりにはぴったりであり、ミッドナイトが同じようにすると被害が大きく授業にならないため当然であろう。

 

 もちろん、来年の緑谷たちが入学する年は彼女は担任から降ろされたのは当然の判断であろう。

 

 そんな彼女たち一行が銀行の目の前の道を通っている時に銀行からヴィランが現れて、ガラスをぶち破りながら逃げていくのが見えた。

 

「ちょっと止めて」

 

「おい、他のヒーローに連絡して俺たちは生徒の安全を確保しながら目的地に到着するのが最優先だぞ」

 

 運転手に向かい、ミッドナイトがバスを止めるように指示を出したため、すぐに何を知るのか察知したイレイザーヘッドは彼女の行動を止めようとしたが、バスが減速したことにより彼女は窓を開けて外に飛び出してしまっていた。

 

「あなたがいれば問題ないでしょ。それにヴィランは男性だったし、私が最適だと思わない。じゃ、また授業で!」

 

「あっおい…………ちっ!非合理的だな。運転手さん、そのまま目的地へ行ってくれ、彼女ならタクシーでも使って追いついてきますから」

 

 彼女を止めるのが不可能だと判断した彼は情報を他のヒーローと警察に渡し、自分たちは授業を続けるという彼の中で最も合理的判断を下し、実行するのである。

 

 

 

 

 

 バスから降りた彼女は急いでヴィランんが逃げた方角へ走っていたところ、ヴィランが逃げた方角から、

 

 エンジェェェェェル☆ハグ!

 

 ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

 

 きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ♥

 

 何らかのヒーローの必殺技らしき掛け声とそれを塗りつぶす悲鳴が聞こえてきた。

 

 彼女はそれを聞き、ヒーローがもしかしたら敗北した可能性を考え、焦りながらも冷静に今の自分に出来る準備をしながら現場に飛び込んだ。

 

 彼女の目に飛び込んできた光景は、血みどろのヒーローが跪いている光景でも、一般市民が傷ついている光景でも、建物が壊されている光景でもなく、ヴィランを捕まえることに成功したヒーローの姿がそこにあった。

 

 いや、彼女はその光景を見てヴィランを拘束している者がヒーローとすぐには認識できなかった。

 

「……いい……はっ!ちょっと何をしているのかしら!」

 

 彼女は少し腐っていたようだ。もともと、青春的な展開・言動・性格が好み、教師としてはそれはアウトではないかと考えざるを得ないが、それに加え、腐女子と18禁ヒーローの肩書で教師としてはスリーアウトな気がするが、彼女の様子に気づいた者はこの場に不幸なことにいなかった。

 

 彼女の声に市民は新たなヒーローの存在に気づきそちらを向き、それが18禁ヒーローミッドナイトだと知ると、ごく一部の男性を除外し、助かったといわんばかりに彼女を凝視する。

 

 一方、ヴィランを拘束し、その体からあり得ないような音を響かせている彼もその存在に気づきそちらを向く。

 

 この時になり、捕まえている者の顔を見てミッドナイトは彼がプリプリプリズナーであると理解した。

 

「あなたは確かプリプリプリズナーだったわね?」

 

「ええ」

 

「犯人確保にご尽力感謝するけど、今のあなたは逮捕しなきゃいけないわ!」

 

 例に漏れず彼は素っ裸である。大切な部分はヴィランに密着していることで隠れているため、ヴィランにとっては不幸でも、周りの市民にとっては幸運なことであった。

 

 ただ、まっとうなヒーローなら市民の心の安全のために彼も一緒に捕まえようとするのはごく当然のことだが、18禁ヒーローのミッドナイトがそれを言うと違和感しかないのは彼と同様にヒーローとしてはどうなのであろう。

 

 周りの人間がそう思ったのかは不明だが、二人の対峙する様子を固唾を呑んで見守った。そこに邪な思いが介在していたことは確かであろう。

 

「何を言ってるのだい。貴方だってギリギリじゃない。ヒーローはその活動上、個性の最大限の使用に伴いセクシーなヒーローコスチュームが認められるようになった。ミッドナイト、貴方あのおかげで!」

 

「聞いているわ、あなたの個性は。確か脱げば脱ぐほど、自分をさらけ出せば出すほど強くなる個性だと」

 

「ノン!そんな無粋な言い方はしないで欲しいな。個性は天使、純なる心を見せることにより私はパワーアップする!」

 

「自称でしょ、それ。そんなことよりも、肌の露出は認められていても、全裸は認められていない。女性ならば水着ぐらいまで、男性も同様、マッパは論外よ!」

 

「美しくない!そんなものでは私の心は奮い立たない。貴方だってそう思うでしょう」

 

「違う!全裸は単なる変態だ!チラリズムこそ大人の身に着けるべきスリルある遊びであり、真の芸術であるのよ!最初から全てを見せるなど片腹痛いのよ!」

 

 話がずれ始めた。

 

「なっ!自身を枷に嵌め、自由を束縛するスタイルは人として間違っている」

 

「全てをさらけ出すことがいいとは限らない。それは子供がすること、大人になるということはこういうことなのよ!」

 

「それは少年の心を忘れろということか!あなたにはあの青い果実が素晴らしいと思う心はないのか!」

 

あるわよ!青春大好きよ!青臭くて結構!でもそれを大人にするのは私たちの仕事!なら、それを美味しくいただ……ゴホン。彼等の成長を見守る私たちは大人にならなければいけない!」

 

「くっ!この素晴らしさが分からないなんて、貴方なら共感できると思ったのに」

 

「残念でしたね。私は共感できない。スリルあってこそ気持ちいいんです。貴方の露出スタイルは間違っている。だから、こうなるのは当然よ」

 

 何やら交渉らしきモノが決裂したが、そもそも話し合っていた内容はどこまで脱ぐかの問題であり、ヒーローがする会話ではないであろう。

 

 もしここに真っ当なヒーローがいれば二人とも警察にご同行願うだろう。

 

 とにかく、話し合いで解決できなかったミッドナイトは肌色の極薄のタイツを破くと、彼女の個性である眠り香を使用した。

 

 徐々に露わになる皮膚に男性は色めき立つが、すぐに彼女の強力な個性を前に眠りにつく。

 

 それは女性も例外ではなく、男性よりは効きにくいのか徐々にではあるが、彼女のフェロモンが届いて数秒で男性同様に眠りに落ちる。

 

 その効果は彼にも現れ、ヴィランを手放し膝をつく、だが男性に効きやすい彼女の個性の彼は抗うことに成功しているのか、意識を保っていた。しかし、保っているだけであり、動くことはままならない様子である。

 

 そんな彼の様子を見て、この場で圧倒的上位に存在する彼女の嗜虐心は燻られ、鞭を取り出し、這いつくばる彼に鞭を与える。

 

「ぐっ!」

 

「フフフ。無様ね」

 

 鞭が鳴るたびに彼女の頬は赤く染まり、場の空気を変えていく。

 

 裸の筋肉モリモリの大男が四つん這いになり、鞭に打たれる。酷い光景である。そこにSM嬢が加わればどこのSMバーであるというのだろうか。本当にあまりにひどい光景である。救いは良い子は皆寝てしまっているということだけであろう。

 

 しかし、彼女の強力な個性の前に普通なら跪き、許しを請うしかなくなるのであろうが、彼の目には未だ闘志が宿っていた。

 

…………やっていない……

 

「?何かしら聞こえないわね。止めてほしいのなら大きな声で!」

 

 ぼそり呟いた言葉に反応し更に、18禁に突入しようと知るミッドナイトであるが、

 

まだ、何も何処にも入れていない!

 

「なっ!どうして立ち上がれるの!」

 

 彼は立ち上がり、彼女の鞭を掴んだ。一方、今まで彼女の眠り香を受けて立ち上がれたものなど皆無なだけに驚愕していた。

 

「不思議そうね。でも、あなた達ならば知っているはずよ」

 

「?」

 

Plus Ultra(更に 向こうへ)!!」

 

「!!」

 

 彼女は驚愕していたがこの場で取る行為は、校訓を汚すなと怒鳴るのが妥当であろう。

 

「私はこの子を調きょ……んっ!更生しなければならない。そして私の帰りを待つ者たちのもとに帰らなければならない。その為ならば壁など超えて見せる!」

 

 彼は寝ているヴィランを脇に抱えなおすと、その手に持った鞭を引っ張った。もちろん、彼女は予期せぬ事態にその手を離すのが遅れ倒れ込み、今度は彼女が地面に座る番となった。

 

「私は世界中の男子のためにここで捕まるわけにはいかない!」

 

 彼は決め顔を作ると、座り込む彼女に向けて言い放った。しかし何度も言うが、酷い場面であり、世界の男子のために捕まって欲しい。

 

 普通なら、悪の女王に跪いてヒーローが大切な、守るべきものたちを思い浮かべ再度立ち上がり、今度は自身の強さの源を敵に突きつけ、敵に膝をつかせるというヒーローらしい姿のはずなのだが、そもそもの前提条件として、既にヴィランは対峙されている。しかも相対しているのはヒーロー同士、片方は変た…全裸ヒーローのプリプリプリズナーであり、もう片方は18禁ヒーローのミッドナイトである時点でどうしようもないものだが、さらに片方が全裸でその体にムチの跡を残し、もう片方は極薄タイツが至る所破れ肌が露出して、その変態男に跪いている状況である。

 

 ヒーローとは一体何であろうか。何というか……酷い。それ以外の言葉が出ないほどである。もし、ここに誰かが立ち寄ったら、言い逃れは出来ないであろう。

 

 しかし、二人の間の空気は真剣そのもの、彼は言うことを言い切ったのかその尻を彼女の方に向けると、何も言わずに彼の住む牢屋へ去って行くのであった。

 

 

 

 

 

 後日、新聞で銀行強盗を捕まえるプリプリプリズナーの記事が書かれており、そこに現場に居合わせ全てを見たミッドナイトの証言の記事があったが、そこに映る彼、ミッドナイトの顔写真は対照的だあり、どちらが明でどちらが暗なのか言うまでもないだろう。しかし、この記事で気になるのは、何故犯人の顔写真がテレビの防犯カメラに映る顔と此処まで違うのか、牢屋の中で何が起きているのか、警察の管理責任問題に一時発展しそうになったが、後日、釈放された犯人が、良くしてもらったと証言したことにより事態は沈静化した。

 

 そこはかとなく、かの刑務所の闇が垣間見えたがそれが社会に出ることは無く、闇は闇に葬り去られた。(※この取材をした男性記者の数名がこの事件について犯人と同じことしか言えなくなりました。)

 




個性について、
・彼の個性は自称天使(正式名称 野生化)
 本文に書いてあるように人間本来の姿になるほどパワーアップ
 ただし、今だ解明されていない不思議な現象もあり(謎の発光現象、異常な耐久性など)、それにより、今だ個性の名がきっちりと決まっていない部分があるため、彼は天使を自称している。
 原因としては、彼の精神的部分にあるとされているが、心を覗く個性の者が一回見て再起不  能になったため解明されていないのである。


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