エンジェェェェェル★スタァァァァァイル!   作:kurutoSP

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悲劇のショタ

 ヒーローを目指すもの、それは必ずと言っていいほど高校ではヒーロー科を目指す。

 

 その為、どんな高校でもヒーロー科だけは偏差値は高く、倍率もどんな下らない学校だろうが定員割れを起こすことは決してない。

 

 それだけ人気のヒーロー科だ。子供たちも進路を考えて必死に勉強するとともに情報を集める。

 

 どこの高校でどんなヒーローが生まれたのか。どんなヒーローになれるのか。高校の特色、そしてランクを見るのだ。

 

 その中で最も有名な高校と言えば、雄英高校だろう。かのオールマイトを輩出したと言えばもう言うことは無いだろう。

 

 しかし、その倍率は非常に高く。事前の情報収集などは欠かせない。それは些細な情報もである。

 

 何せ入ったら将来の成功を約束されたようなものである。

 

 もちろんそれだけ厳しく、才能ある人間しか入れないということでもあるのだが、それでも入るだけでもうそれはステータスであり、プロからも注目されやすい。

 

 だからこそ、夢を追う少年少女はいかなる情報も逃さない。

 

 そんな少年が此処にもいた。

 

「ふひひひ。今日のマウントレディもぱねぇ」

 

 様々なヒーローの活躍を見ることにより己が力にする。もしくは個性の使い方のヒントにする。そんな建前の元峰田実はネットを巡回し、お宝映像を求めより熱心に情報を調べる。

 

 彼の調査はどんどんと深度を深めてゆき、遂には18Rの閲覧場所にまでその魔の手は入る。

 

「オイラの情熱を前にこんな壁無意味!」

 

 父親のIDを利用して、少年には禁止されている大人たちの楽園に躊躇なく入り込む彼は、もう何度もしたことなのかやけになれた手つきでお目当ての画像を掘り当てる。

 

「ふっふふ~ん」

 

 彼は何時もの様にヒーローの際どい戦闘シーンを集めてゆく。

 

「ん?ナニコレ。閲覧注意。見るなら覚悟しろ?R18の中のR18」

 

 閲覧数もさることながら、様々なコメントが入り混じるその動画に興味を惹かれ彼はクリックをする。

 

「何々タイトル、地上に堕ちた天使?大層な名前だな」

 

 彼は油断していた。ここに貼ってあるのは基本女性のみ、時たま男性があるが、それは動画を軽く見るだけで直ぐに分かるため即座に退出をすればよかった。

 

 だが、彼のそんな安直な考えは、ヒーローはいつも覆すものなのだ。

 

「どんだけ際どいのか、オイラワクワクすっぞ」

 

 そして彼はコメントのうわぁぁぁぁぁぁぁぁぁの文字にワクワクしながら動画を流し始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エンジェェェェェル☆スタァァァァァイル」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 パソコンから溢れ出す眩い光にその目を焼き尽くされるかのように、パソコンの画像を見た彼の目は真っ赤に染まり、血を流しめ、余りの激痛に彼に出切るのは絶叫しその目を閉じることのみ。

 

 既に彼は目が痛いのか頭が痛いのか分からず、ただ、強烈なインパクトに悶え、イスから転がり落ち、ただ、恐怖に体を震わせる。

 

「君のために私は輝く!全てを愛故に救って見せる」

 

 パソコンはされど止まらず、画像を映し、声を彼に届ける。

 

 このままではまずい、彼は最後の力を振り絞り、マウスを動かし、画像を停止、嫌、消すためにパソコンの電源を切ろうと強制シャットダウンを使用とマウスからその手が電源ボタンに向かうが、この一瞬、その判断の遅さが、更なる悲劇を生む。

 

 この時間、たったの数秒、普通なら何もできない時間。だが、ヒーローはその数秒に全てを賭け、人を守る存在なのだ。彼らに壁はあれど、乗り越えられないものなどない!

 

「とっとまれぇぇぇぇぇぇぇ」

 

 彼の指は電源に届く。しかし、画像の彼も次のモーションに移っている。彼が早いかそれとも画像か、まさしく息を呑む対決である。

 

 しかし、彼の指は映像が次のモーションを映し出すより前に届く。

 

 彼もヒーローの卵、己がピンチにただ縮こまり震える弱者ではない。逆に一歩前に踏み出す男なのだ。

 

「やっやった!」

 

 喜びに打ち震え、安堵した彼は、シャットダウンにかかるまでの僅か1、2秒の存在を忘れていた。

 

 だから彼は見てしまう。最も最悪な光景を。

 

 

 

 

 

「エンジェェェェェル★ハァァァァァァグ! Verノーモザイク」

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああ」

 

 そして映像は途切れ、彼の意識も途切れる。

 

 こうして少年はヒーローとしての心得、最後まで油断してはいけない。

 

 そんな大切だが、経験しなければ分からない貴重な体験を済ませ、周りの同級生よりも一歩ヒーローへと近づいたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 余談

 

 オールマイトが毎度登場するたびに峰田が震えるのに緑谷は疑問に思っていた。

 

「どうしたの?」

 

 何となく、嬉しくて僕みたいに感動で震えているのかと思って声を掛けてみたのだが。

 

「筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い、筋肉怖い」

 

 青ざめブツブツと呟く声しか返ってこなかった。

 

 緑谷はその異常さにそれ以上声を掛けられなかった。


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