エンジェェェェェル★スタァァァァァイル!   作:kurutoSP

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 軽く読んで楽しんでいただければ幸いです。


エンジェル爆誕!

 ヘドロ事件、後の記事ではテレビ史上最悪の事件とされ、今も人々の記憶に残り続け、被害者、加害者、傍観者の全ての記憶に障害を残し、そしてヒーローミッドナイトのデビュー当時その服装で問題となり国を動かしたほどだが、彼はその衝撃的デビューから、警官とヒーロー、政治家、裁判所のいわゆる日本における三権を動かし、ヒーローとヴィランとの境界線を日夜テレビの哲学者やコメンテーターが論じる程であり、日本中が注目するヒーローとなり、一時その勢いはNO.1ヒーローであるオールマイトを凌ぐほどの人物のヒーロー名は

 

 プリプリプリズナー

 

そう、彼は愛と勇気を持った某美少女戦士の変身技をもつムキムキのナイスガイなのだ!

 

 

 

 

 

 事件の発端は、オールマイトがヘドロの様な個性を持つヴィランを一度は捕らえたが、この物語の主人公である緑谷出久とのやり取りに気を取られ、どうやって詰めたのか分からないがペットボトルに入れていたのをおとし、それが爆破の個性を持つ爆豪勝己の通り道に偶然にもおち、ペットボトルの中から飛び出し、彼を乗っ取ろうとしたのが事の始まりである。

 

 そこから、爆破の個性の威力と、ヘドロの様な体をしたヴィランの体の相性より、現場に駆け付けたヒーローは手が出せず、応援と被害の拡大を防ぐことしかできなかった。

 

 その中で、騒ぎを聞きつけた緑谷出久は騒ぎの中心にいるのが幼馴染の爆豪勝己だと気づき、その顔に涙があったのを見て思わず、飛び出してしまっていた。もちろん無個性の彼が飛び出したところで何も解決などしないし、より一層危険度を上げることになりかねない、他のヒーローからしてみれば無謀であり、蛮勇に見え焦っていたが。少し前に彼と会っていたオールマイトはその姿に、命を懸け、他者を救う、この場にいた誰よりも彼からヒーローの存在を感じ、自身の不甲斐なさを感じ行動しようとした時、隣にいた大男に肩を掴まれ、

 

「だめよ、此処はヒーローである俺に任せて」

 

 青髭を生やしたその男は細身姿のオールマイトに対してウインクを送ると、群衆をかき分けヴィランの前に進み出た。オールマイトは自身が行動しようとしたところを見られ、先に飛び出した少年と同類だと思われ止められたのだと理解し、同時にあんなヒーローがいたのか疑問に思った。

 

 

 

 

 

 群衆の中から体こそ大きいが、別に異形系の個性の持ち主でもないただガタイの良い男が飛び出し、ヘドロに包まれた爆豪勝己を救おうとして、逆に襲われそうになっている緑谷出久の制服の襟を掴み後ろに引かせた男にそこに居た全ての人間の視線が集まった。

 

 その男はアフロに青髭という笑いを誘ってるのかというパーツを持ちながら、その顔は引き締まり、精悍と言ってもよい顔立ちであり、その少年を小脇に抱え仁王立ちする姿は様になり、その弾けんばかりの筋肉は服の下からでもその存在を主張し、人々に汗臭さや鬱陶しさという嫌悪感よりも力強さを印象付けた。

 

 彼のヴィランをにらみつける眼光は力強さをもち、それを正面から見たヴィランは息を呑んだ。

 

 彼が醸し出す雰囲気がこの場を完全に支配していた。それを誰よりも感じることが出来たのはもちろん、同じようなことをよく体験したことのあるオールマイトであろう。そしてオールマイトは彼のその力強い後ろ姿を見て、彼が強いことを理解したが、その彼が着ているハートマークのセーターが何故だか無性に気になり、そして数多の戦いで培った勘とでも言うものが何故だかその後姿を見てから警鐘を鳴らし始めていた。しかし、彼が行った行為はどう見ても人助けであり、活動限界も近いこともあり、オールマイトは無視することにした。

 

 この時のことをオールマイトは緑谷出久にこう言った。

 

「ヒーローとはいつも命懸けだ。だが、あの時、君の姿を見て奮い立ちながらも結局自身の体を案じて動かなかったことを今でも後悔している。自分が人生で起こしたミスの中であれほど最悪だと思ったのはオール・フォー・ワンに止めをさせなかったこと以来だったよ。あの時の私は偽筋野郎であったと本当に落ち込むよ」

 

 その時の落ち込み様と緑谷の青ざめた顔を偶然見た校長はあの事件の認識を一段階上げるとともに、映像資料の封印を決定した。

 

 

 

 

 

 全員の視線が集まる中、その男は、

 

「その子を放しなさい。悪はこのプリプリプリズナーが許さない。」

 

 緑谷出久を下し、背中に隠した後、その胸を張り、堂々とヒーロー名を言った。

 言われた方はそのあまりにもマッチしていない名前と目の前の人間が結びつかず茫然としたが、直ぐに目の前の笑える名前の様な奴に気おされた事実に腹が立ち始め、爆豪の体を操り彼の胸筋に向かって爆破の個性をさく裂させた。

 

「何がプリプリプリズナーだ!はっ!木っ端みじんだぜ」

 

 今までで一番大きな爆炎が生じ、ヴィランを不愉快にさせた男が包まれたのを見て群衆は悲鳴を上げ、周りのヒーローは焦った。この時オールマイトは自身がやはり行こうかと思い始めていたが、そうはならなかった。一度運命の歯車がズレはじめたら、もうそれが元に戻ることがないのが真理であるように、歴史の悲劇がほんの少しのきっかけで起きたように、ただ、オールマイトが迷っただけ、それもほんの数秒、されど数秒の時間が大きく歯車を狂わせ、どうしようもなくなったのは確かであろう。

 

 ヴィランが高笑いし、群衆の悲鳴が聞こえる中、突然野太い男の声が響き渡り、それが煙の中から発せられているのを全員が理解し、そして煙の中の人影から発生するプレッシャーに皆が目を離せなくなった。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!彼氏の手編みのセーターがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 その声は空気を振動させ、近くのショーウインドーのガラスをビリビリと振動させるほどであった。その耳を痛くするほどの大声には悲しみが満ちていたのを誰もが理解できたがその言葉の内容を深く理解する前に、

 

「あぁぁぁぁなたは絶対に許さないぃぃぃぃ!」

 

 その正義の拳が爆豪の体の近くを通り過ぎ、その拳圧がヘドロの一部を吹き飛ばすのと同時に爆豪も軽く吹き飛ばした。

 

 そして、拳を振ることにより彼の周りの煙が吹き飛び、上半身に消し炭となった服らしき何かに申し訳程度に包まれた彼の鋼の肉体が露わになった。拳を振るだけで生み出した衝撃の凄さを民衆が理解した時、そこには熱狂が生まれ、その凄まじい体に注目が集まった。

 

 しかし、この時緑谷出久や彼と同じように観察眼に優れた人や、オールマイトの様に直感に優れた人物はこの場面に何故か違和感を感じた。そう、ボタンを一つ掛け違えているような、何か見落としている気分になり、落ち着かなかった。しかしながら場の雰囲気が、そしてヒーローとヴィランの二者が相対する姿は彼等の口と行動を縛った。掛け違えたものは元には戻らない、面接で着るスーツもボタンを掛け違えるだけで、印象は真逆となる。だが、現実は非情であり、彼等が止まっても時は進む。

 

「何て野郎だ。だが、こっちには人質がいるんだぜ。無駄だ。邪魔をするんじゃねぇ」

 

 ビビったヴィランだったが取り込んでいる人質の存在を思い出し、もがき苦しむ爆豪勝己を前面に盾のように出して、自身の優位を確信するように言葉を連ねる。

 

 彼の後ろで守られている緑谷出久は再度立ち上がり、恐怖に足を震わせながらも前へ進み、状況を打開しようと彼なりのもがきをしようとして、

 

「安心しなさい。坊やは黙って見ていて頂戴」

 

 彼は緑谷に対してその厳つい顔に笑みを浮かべ安心を誘おうとした。緑谷はその姿に大きな安堵を確かに覚えると何故か同時に尻がすぼまるような感覚と背筋が泡立つ様な感覚を感じたが、それはヴィランの脅威をまじかで感じたからだとその時錯覚してしまった。

 

 緑谷は彼を応援するように、

 

「かっちゃんを助けてください!」

 

「おお!」

 

 頭を下げ真摯に友の身を案じる少年の姿に胸を撃たれたのか、彼は感嘆の声を上げ、

 

「任せなさい」

 

 彼は目線を合わせるように片膝をついて力強く頷くと、ヴィランと相対し、

 

「助けを求める声がする。助けを求めた少年の声がする。正義の心を宿すこのプリプリプリズナーは美少年の声を力に今変身する。覚悟しな!」

 

 彼は朗々と声を張り上げると、その両手を握り、腰のあたりでタメを作ったかと思うと、彼の胸のあたりから星が出現すると同時に彼が胸を突き出すとそこから虹色の光が彼を包み込む、それはまさしく某美少女戦士の変身のようであり、皆がその神々しさに見惚れた。

 

 皆の注目が最大限集まったのを感じた彼は、

 

「プリプリプリズナー、エンジェル☆スタァァァァァイル!

 

 その体の筋肉を膨張させ、光と共に彼の体の衣服がはじけ飛びその体の全てをさらけ出した。

 

 誰もがつらい現実を受け入れられず、何度も目を瞬かせ、沈黙がこの場を支配したが、その中で彼は輝いていた。

 

「この姿を見て無事だった者はいない!」

 

 誰もがこの場で無事でなかった。間近で彼の穴を見た緑谷出久は倒れ伏していた。その光をまぢかで見て、ヒーローに憧れる純粋な少年の目は初めて見たヒーローの勇姿を逃さず見ようと集中していたため、いち早く汚染され、その意識を絶った。しかし、彼は不幸であるが、幸せであろう。

 

 その姿を真正面から見たヴィランはと言うと、彼の体の大切な部分にヌードを隠すように不自然な光が隠しているのを見て、これほど不愉快な親切さと、気持ち悪さは人生で初めてであっただろう。

 

 さらに彼は生き生きとし、その体を見せつけるようにダブルバイセップスからラットスプレッドに移り、サイドチェストで〆たかと思うと、敵に背を向けるのは明らかな愚挙のはずなのに、彼はそこからバックのダブルバイセップスを見せたかと思うと正面を向き直るついでにサイドトライセップスを見せ、今度こそモストマスキュラ―で〆た。

 

 その時の彼は隙だらけだったが、誰もが彼に触れたくはないと思い、此処にいたのを後悔した。

 

「みっ醜い」

 

 ヴィランがそう呟くのは仕方がないことだろう。

 

 その呟きを聞いた彼は、

 

「遺言は……それだけかぁぁぁぁ!

 

 その体は空高く舞い上がり、全員が何故かその姿に天使の輪と羽を見たが、その彼の全てを見た者はだれ一人として彼自身を天使だと思う者はいなかったであろう。

 

 その羽が無惨にも散る光景を幻視したヴィランは次の瞬間、自身が何処にいるのか分からなくなるほどの衝撃を受けた。

 

「ぁぁああぁぁぁぁぁぁ!エンジェェェェェル☆ラァァァァッシュ!」

 

 その巨体がヴィランの下に運ばれたかと思うと、凄まじい勢いでその拳が振るわれ、一発一発が爆豪勝己の体を取り巻くヴィランの体を取り除いていく。

 

 本来なら、敵に捕まった少年がヒーローの必殺技により救われるという、お約束であり、名場面ともいえる光景のはずだが、巨漢に襲われる泥まみれな青年にしか見えない光景は余りにも酷く醜く誰一人直視できない。

 

 そして拳が振るわれるたびに、関係ないはずだが、疑わずにいられないような現象が起きる。見ていた人が意識を失い、どんどんと倒れていくのである。

 

 その光景はさながら天使(バケモノ)に魂を持っていかれるようであり、召天?ともいえる現象が起きているようだった。

 

 ラッシュが終わるとそこには救い出された少年が天使(バケモノ)に抱えられて出てきた。

 

 彼はその少年をそっと横たえると、その頬を軽く撫でた。

 

 

 

 

 爆豪勝己はぞっとするようなおぞましい感覚に襲われて目を覚ました。

 

「ブハッ!何が起きや…がっ……たんだ?」

 

 自分が横たえられ、自身の顔に影が落ちていることに疑問に思い、状況を把握しようと、影を落としている存在を直視し、言葉を無くした。

 

「大丈夫かい。かっちゃん♥ウフ

 

 目の前にある、光にすら包まれていない強烈に精神を汚染する光景は彼の脳内細胞を焼き尽くし、認識を拒絶しようとした。

 

 つまり、爆豪がとった行動とは、

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 悲鳴を上げ意識がなくなるである。

 

 ここに一人の少年に一生消えぬトラウマが刻み込まれることとなる。

 

 

 

 

 サイレンが鳴り響く。

 

 しかし、不思議なことに、負傷者はほとんどいないのにパトカーや消防車よりも救急車が多かった。そして警察に収容されるのもヴィランだけでなく彼の姿もあった。

 

 この事件は年をまたいでも未だにヒーローの在り方を問うものとなった。

 

 しかし、誰もが忘れてはいけない。彼は正義の心を宿した男のためのヒーローであるということを…………。

 

 ここに一つの悲劇と喜劇の物語がヒーロー、ヴィラン共に始まるのである。

 

 

 

 

 

「彼も良い♥」

 

 今日も彼は牢獄から、助けを求める声に駆け付けるのである。


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