超次元ゲイムネプテューヌ-DIMENSION TRIGGER-   作:ブリガンディ

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今回から本編に突入します。

ネプテューヌの口数が少ないとのご指摘があったので気をつけてみたのですが、これで大丈夫なのか心配です・・・。

後、ブレイブルー側からナオト、レリウス、アズラエルを出して欲しいとのご意見を頂きました。ご意見の方ありがとうございます。調整して出せるようにしたいと思います。
・・・アズラエルは後半どっかしらで出して、早々に退場する可能性が極めて高くなりそうですが・・・(笑)。


新たな生活、新たに紡がれる蒼の物語
9話 紅の旅人とグーダラ女神


俺が万全に動ける状態になってから既に半月・・・。

つまり、ゲイムギョウ界で和平が結ばれてから、引いては俺がゲイムギョウ界に来てから早くも一ヶ月が経った。

ゲイムギョウ界の空気にはもう慣れたのだが、未だにわからない場所とかがあるので、それを解消しておくために今日はプラネテューヌを散策していた。今はプラネタワーに向かう途中だ。

もちろんクエストもちゃんと挟んでいる。クエストついでに他国に行くことだってあった。そんなこともあってか、俺は時々『(くれない)の旅人』と呼ばれるようになった。

他には・・・人助けを何度かやった。道が解んなきゃ地図みりゃいいから、道案内も最低限はできた。

道案内する時、セリカみたいな方向音痴じゃなくて良かったと何度思ったことか・・・。

 

「あっ!でっけえモンスターを一人で倒した兄ちゃんだ!」

 

「ねえねえ、『紅の旅人』がいるよ!」

 

後、俺がエンシェントドラゴンをブッ倒して以来、こうやって少年達や年頃の女の子達中心に注目を集めやすくなった。

年頃の女の子の方は前からある程度は注目集めてたっぽいが・・・。少年たちは将来の目標なんだろうか?無理しねえといいがな。

まあ『死神』だの何だの言われるよりは圧倒的にマシだから良しとする。

そんなことを考えながら、俺はプラネタワーへと歩を進めていった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「いい加減に・・・してくださぁぁいっ!」

 

「ねぷぅっ!?それダメって説明書に書いてあるのに!」

 

プラネタワーに戻り、いつもみんなで集まる部屋に入ろうとしたら、何かとデカい声が聞こえた。

イストワールが何らかにキレたのだろうが、概ね予想は付いていた。

 

「(あいつ全っ然仕事してねえからな・・・)」

 

あろうことか、モンスター討伐は大体俺がクエストでこなしている始末。

このままではいる限りぐーだらしてそうな状態だった。そろそろ何か言ってやる必要があるな。

そう思って俺はドアを開ける。

 

「何だか騒がしいけど、どうかしたか?」

 

「あっ!ラグナ避けてーっ!」

 

俺がドアを開けて部屋に入り、状況を訊こうとしたらいきなりネプテューヌが避けろという。

どういう事だろうかと思って周りを確認しようとしたら、ゲーム機の電源アダプターが俺の眼前に迫っていた。

 

「うおおっ!?」

 

俺は慌てて左手でキャッチする。だが、この直後に俺の確認不足を痛感させられる。

 

「ああぁぁぁっ!?」

 

そう。今度は遠心力に振り回されていたイストワールが勢い余って放り出され、部屋の壁に激突してしまった。

 

「うわぁっ!?いーすん、大丈夫!?」

 

「きゅー・・・」

 

イストワールは目を回していた。俺とネプテューヌは慌ててイストワールのところに駆け寄った。

シェアに関する話を聞く前に何でこうなったかを訊いたら、こんなことがあったらしい・・・

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「ネプテューヌさん!全然お仕事してないじゃないですかっ!」

 

ラグナが部屋に入る数分前のことである。

ラグナの『蒼炎の書』が再び使えるようになって以来、ネプテューヌは全く仕事をせずに遊び惚けていた。

その様子を見かねたイストワールが怒ったことが事の発端である。

 

「高速ジャンプ!ああっ!ムキーッ!!」

 

だが、ネプテューヌはそんなこともお構いなしに今日もゲームで遊んでいた。

 

「聞いてるんですか!?」

 

「んー・・・いわゆる一つ平和ボケ?これからは戦争とかする必要もないし」

 

イストワールは更に怒るが、ネプテューヌは意に介さない。

 

「ネプテューヌさんっ!平和だからこそ、女神にはいろいろお仕事が・・・」

 

「お姉ちゃーん。お茶入ったよー」

 

イストワールが説得しようとすると、そこにネプテューヌを甘やかす声が遮るように入る。

ネプテューヌの妹、ネプギアがネプテューヌのためにお茶を入れて入って来たのだ。

質の悪いことに、ネプギアはネプテューヌを咎めるのではなく、ネプテューヌのだらけを助長してしまった。

 

「サンキュー、ネプギア!対戦プレイやろっか?」

 

「うん!」

 

「ネプギアさんまで・・・・・・」

 

しかもそれだけでは止まらず、これ見よがしにネプテューヌがネプギアをゲームに巻き込むように言うと、ネプギアはあっさりと乗ってしまった。

そして、イストワールは我慢の限界に到達する。

 

「いい加減に・・・してくださぁぁいっ!」

 

「ねぷぅっ!?それダメって説明書に書いてあるのに!」

 

イストワールはネプテューヌが使っていたゲーム機のコンセントを引っこ抜いた。

ネプテューヌがそのことについて咎めるが、イストワールはそれどころでは無くなっており、電源アダプターの遠心力に振り回されていた。

 

「何だか騒がしいけど、どうかしたか?」

 

そこへ散策を切り上げたラグナが帰って来た。ラグナはそのまま前に進みだす。

 

「あっ!ラグナ避けてーっ!」

 

ラグナはイストワールに気づいておらず、このままではラグナの顔にクリーンヒットすると、危惧したネプテューヌが叫ぶ。

 

「うおぉっ!?」

 

気づいたラグナは咄嗟に左手で電源アダプターをキャッチした。これで一安心だと思ったネプテューヌが安堵しようと思ったその時・・・

 

「ああぁぁぁっ!?」

 

今度は勢いが余った状態のイストワールが放り出され、壁に激突してしまった。

 

「うわぁっ!?いーすん、大丈夫!?」

 

「きゅー・・・」

 

そして、イストワールがその場で目を回す状態になった。

ラグナとネプテューヌは慌ててイストワールの安否を確認するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「見てください!これを!」

 

普段みんなであれやこれやと集まって楽しむ部屋の隣にある、シェアクリスタルが安置されている部屋にいる。

こんな重要な場所俺が入って平気なのかと聞いたときは、『蒼炎の書』に関わる可能性があるからむしろ入ってくれと言われた。

んで、見てくださいってのはシェアクリスタルだろうから、俺はシェアクリスタルを見る。

何というか、ゲーム機の電源ボタンのマークが真ん中にあるのはわかるが、残りは透明で、この暗い部屋じゃあよく見えない。

一応、その周りにサークルっぽいのが見えるから、それが目印か?

ん?・・・イストワールの容姿が解んない?ああ・・・そういや本に乗っかった少女くらいしか言ってない気がするな。

イストワールは金髪のツインテールを真横から少し後ろ側にまとめ、白と青紫色のワンピースを着ている。背は俺の三分の二を下回っているくらいに低い。

話を戻そう。俺は確かにシェアクリスタルを見ていた。じゃあ、ネプテューヌたちはというと・・・イストワールを注視していた。いや、見る方間違えてるよ・・・。

 

「シェアクリスタルを見てください!」

 

イストワールはたまらず声を上げ、場所を少しだけ移動する。その間に二人は姿勢を正す。ちなみに俺は立っている。

 

「シェアクリスタルが、どうかしたんですか?」

 

「クリスタルに集まる我が国のシェアエナジーが、最近下降傾向にあるんです」

 

ネプギアに訊かれたイストワールは、どっからともなくメガネを取り出して掛け、折れ線グラフを見せてくれる。

一つだけ上昇しているところがあったが、残りは全部下降だった。その先の点線は今後の予想だろうか?途中から下降速度が上がっていて、ヤバいのは確かだ。

グラフとか全く見たことが無かった俺でもなんとなくその危機感は伝わってくるが、ネプテューヌはというと・・・。

 

「まだ沢山あるんでしょー?心配することなくなーい?」

 

この有様だった。何でこいつこんなに前向きなんだ・・・?サボりたいだけな気がするのは俺だけだろうか?

 

「なくないです!シェアの源が何か、ご存知でしょう!?」

 

「国民が女神を信じる心、ですよね」

 

「そう! この下降傾向は、国民の心が、ネプテューヌさんから少しずつ離れていると言うことなんです!」

 

イストワールの問いにはネプギアが答えた。そして、イストワールが危機感を伝えるように言う。

 

「で、人が離れると更に離れやすくなるし、回復も後々大変だから早めに対処したいってことか」

 

「その通りなんです!このままだと、近いうちにネプテューヌさんへの信仰が、無くなってしまうかもしれないんです!」

 

「確かにそれは問題だな・・・」

 

恩人が危機に陥るのはよくないので、俺も何とかしてやりたいのだが、俺の場合クエストを受ける場所がバラバラ過ぎてイマイチ助けになってないのだ。

どうしたものか・・・。俺も難しい顔になる。

 

「ええ~?私、嫌われるようなことした覚えないよー?」

 

「でも・・・好かれるようなこともしてないかも。しかもラグナさんがプラネテューヌにいる時はすぐラグナさんに頼るし・・・」

 

ネプテューヌの抗議の声はネプギアによって潰される。

俺自身、皆に恩返しがしたいのもあって、クエストは結構な頻度で受けていた。その合間に旅をしながら人助けしたり、色んな人と話したりしてた。

話してる時に何をしてるかって聞かれた時に、「この世界をよく知るために旅をしている」と答えたのが、『紅の旅人』と言われるようになった由縁だろうな・・・。

 

「そう!それが問題なんです!」

 

イストワールが段々とヒートアップし始めて来た。女神がサボるってのは、俺たちの世界で言うところの『帝』が仕事をサボるようなモンか・・・。そりゃ確かにヤバいな。

 

「確かに、ラグナさんが恩返しをしたいと言う気持ちも解りますし、自分にできることで積極的に手伝っていただけるのは非常にありがたいものです!しかし!しかしですよ!?」

 

イストワールはその小さな拳をプルプルと震わせ、一度顔が下に向く。一体その小さな体にどれだけの苦労を溜めていたのだろうか?

 

「ネプテューヌさんと来たら、ラグナさんが万全に動けるようになった途端に仕事を、しないで遊んでばっかり!

他の国はラグナさんに負けないように頑張っているというのに、ネプテューヌさんが頑張らなかったのもあって、ここの国民の信頼はラグナさんに向き始めているんです!」

 

「あちゃ~・・・まぁでも、ラグナが受け入れられたんだから、それは良かったんじゃないかなー?」

 

「良いわけありません!ネプテューヌさんは危機感が足らなすぎます!」

 

「確かに・・・このままじゃ危ないかな・・・」

 

頭を掻きながら気楽そうに言うネプテューヌだが、二人の言葉にたじろぐ。

これ・・・まさかだとは思うがやり過ぎたか?俺は一種の不安を覚えた。

 

「二人の言うとおりでしょ?」

 

俺がそんなことを考えていたら、後から声が聞こえたので振り向く。

そこにはアイエフとコンパがいた。ネプテューヌの様子を見に来たんだろうな。二人はそのまま部屋の中に入ってくる。

 

「すいません、イストワール様。話が聞こえたものですから」

 

「アイエフさんとコンパさんなら別に・・・」

 

本当はこの部屋に女神以外を入れること自体、非常にマズイ事なのだが、信頼できる者である俺たちは特例だ。

だからこそ、アイエフとコンパも普通に入れる。

 

「お前らも今戻ったのか。なんか、これだけ見ると機密もあったもんじゃねえな・・・」

 

俺は女神、女神候補生、教祖の三人以外に、本来ならば一般人である俺ら三人が普通に入ってこの状況を見て呟いた。

ハッキリ言って、こんな状況が起きるのなんてどの国を見てもプラネテューヌだけだろう。

 

「まあ、それは『プラネテューヌだから』で片付いちゃうから仕方ないわよ」

 

改めてプラネテューヌの内情が極端なのがわかるな・・・。なんでプラネテューヌだけこうなんだ?

 

「それにしても聞いたわよ?『紅の旅人』だなんて・・・ラグナ、この頃大活躍じゃない。ギルドの方では仕事がなくなるなんて危機に陥る人がいたけど」

 

「プラネテューヌを中心に、ゲイムギョウ界にいる人たちが安心できるって喜んでたです。これでケガをする人が減るですぅ♪」

 

「おいおい・・・俺は仕事をぶんどったつもりはねえぞ?まあ、出かけるついでにちょくちょくこなしてはいたが・・・。」

 

マジか・・・そんなことが起きてたのか・・・いやでも、出かけるついでにクエスト2、3個程受けて行くだけだぞ?仕事の増える量より減る速度が上回ったってことか?

 

「新しく仕事が来るから完全に無くなりはしないけど・・・。ほら、ラグナは体が万全になってから結構な頻度でクエストを受けてたでしょ?

クエストの消化されていく速度が急激に速くなったから、減っていく速度に増える速度が追いつかなくなってるのよ」

 

「ああ・・・そう言うことか。そりゃ確かにそうなるわな」

 

要するに「お前、クエストやり過ぎ」ってことか。確かに金も溜まって来たし、そろそろ休暇と称して何か買ったりするかな。

 

「ラグナさんがゲイムギョウ界を見て回りながら、多くの人を護りたい、助けたいと言う気持ちもわかるですけど、ちゃんと休むことも大事ですよ?

体が元気じゃないと、それもできなくなっちゃうですからね?」

 

「それもそうだな・・・。ご忠告ありがとうございます。コンパ先生」

 

コンパのおかげで少し気が楽になった気がする。俺はそんなに計画性がねえからな・・・。こういう話はちゃんと聞こう。そして気を付けよう。

 

「そうそう。こういう努力したり頑張ったりしている人にこそ、休日はあるものよ・・・。

それに対してネプ子は遊んでばっかりなんだから・・・少しはラグナを見習いなさい?イストワール様に苦労をかけ過ぎよ」

 

「え~?あいちゃんまでー、いーすんの味方するの~?」

 

アイエフは完全にイストワール側についた。ネプテューヌだらけすぎてんもんな・・・。

 

「こんぱは違うよねぇ?」

 

ネプテューヌの味方がどんどん減っていく。ネプテューヌはアイエフがダメならとコンパに訊いてみる。

 

「ねぷねぷ、これ見るです」

 

そう言ってコンパはもらったであろうチラシをネプテューヌに見せる。

 

「えっ?女神、いらない」

 

「なっ・・・!?」

 

そのチラシを簡単に読み上げたネプテューヌの言葉を聞いて、イストワールは本から滑り落ちそうになる。

俺もそれを聞いて思わずチラシを凝視した。こういうのが出るのは結構危険な傾向だと思うな・・・。俺のいた世界ではカグラが主導で反乱計画とかあったしな。俺も成り行きに近い形で参加したけど。

 

「こういう人たちにねぷねぷのこと分かってもらうためには・・・お仕事をもっとがんばらないとです」

 

「うお・・・!?」

 

コンパの口調はいつもと変わらないが、その顔には妙な恐ろしさがあり、俺は思わず一歩後ろに下がる。何だろう?女の子の裏の姿っていうのか?その一例を見た気がする。

 

「ああぅ・・・!これぞ四面楚歌!?私大ピンチ!?」

 

その言葉にマジで腹を立てたのか、イストワールの口元がひくついた。うわぁ・・・これヤバいやつだ。あいつの自業自得だが。

 

「ピンチなのはこの国の方ですっ!」

 

まあ、うん。こうなるわな。さて、俺はどうするか・・・?俺は少し考える。

 

「なあ、イストワール。これ・・・俺がやり過ぎたのか?」

 

俺は取りあえず訊いてみる。これでネプテューヌの言葉次第で決めよう。

 

「いえいえ!そんなことはありませんよ!ネプテューヌさんが働かないだけで・・・」

 

「うんうん、やり過ぎなんかじゃないよ!ラグナのおかげで私はこうして今日も元気に遊べるわけで・・・」

 

「テメェッ!馬鹿かぁっ!」

 

流石にダメだった。思わず久しく使っていなかったこの言葉を発した。それだけでは止まらない。

 

「テメェ、今日も元気にって言うが、仕事ほっぽり投げて遊んでるだけじゃねえかっ!

そんなんだから国民から信頼離れて、俺の方に信頼寄るとかいうよくわかんねえ事態が起こるんだろうがこの馬鹿がッ!」

 

「ねぷぅっ!?バカって二回も言われたぁっ!?」

 

そのままの勢いでダメ出しした。俺が最後の頼みだったんだろうが、あんなだらけた態度見てそれはできなかった。

 

「それに、今後のことを考えたらちゃんと仕事しねえとダメだろ。俺の『蒼炎の書』だって、この世界じゃ何か起きるか解んねえんだし・・・」

 

「全くです!ネプテューヌさん、もし、ラグナさんの『蒼炎の書』が国を移動するたびに、その国のシェア量に力が比例するようなモノだったらどうするつもりですか?

プラネテューヌにいる時だけ極端に弱い・・・なんて事態に陥ってからじゃ遅いんですよ!?」

 

俺が言うとそこにイストワールが追加攻撃と言わんばかりに続けて言う。

事実、この世界における『蒼炎の書』の稼働データはまだまだ足りない。俺が必要最低限の使用回数に抑えてるのもあるが、それでも進捗はよくなかった。

 

「確かに、それは困るな・・・実際のところそんな感じはしなかったけど、もしそうだったらまたあのエンシェントドラゴンの時みたいなのは無理だぞ?」

 

「うぅ・・・それは・・・」

 

ネプテューヌが顔を下に向け始めたが、情け無用。今回はこいつに仕事をさせる必要があるから心を鬼にするぞ。

 

「そうですよね・・・。ラグナさん頑張りすぎるせいでお姉ちゃんがだらけた・・・なんて噂が広まったら、ラグナさんの努力も台無しになっちゃいますし・・・」

 

「そんなことが起きたら、ラグナの真っ当に生きたいって願いも叶わなくなっちゃうしね・・・。

それがネプ子のせいで起きたなんてことがあったら、ネプ子も嫌でしょ?」

 

「ねぷねぷ・・・ラグナさんの為にも頑張るですよ!」

 

「あ、あの・・・。ちょっとみんな?一旦落ち着こう?」

 

俺が次は何を言おうか悩んでいたら、ネプギア、アイエフ、コンパの順で追い打ちにも見える言葉が飛ぶ。その様子にネプテューヌは焦り、慌てて言葉を探し出す。

俺がどうするか考えてるうちに、マジの四面楚歌は完成してた。

 

「ネプテューヌさん。女神は常に国民のために努力しなければならないんです。貴女はもっと女神がもつその大きな力の使い方を考えるべきだと思います。ラグナさんを見習ったらどうですか?

ラグナさんが女神なら、自分には不利益しかなかろうと『ゲイムギョウ界に生きる全ての人を、一人でも多く護るため』に振るうはずですよ?それでもゲイムギョウ界の人を多く護る姿勢は・・・」

 

その言葉を聞いて、ネプテューヌの顔が更に沈んでいく。確かに、俺が女神であればそう使うだろうな・・・。

しかし、この様子だと長くなるな・・・。俺は頃合いを見て止めようと思ったが、ネプテューヌが何か思いついたかのようにポンと手のひらを叩き、勢い良く立ち上がる。

 

「そうだ!私、女神の心得を教わってくるよ!」

 

ネプテューヌは唐突にそう言った。一瞬やる気を出したか?と思ったが、さっきの動きを見ていた俺は猜疑心が残った。

 

「(こいつ・・・本当にやる気になったのか?それとも・・・)」

 

サボる口実を見つけたか・・・。そうならあいつのふざけた根性に喝を入れねえと・・・。

 

 

「教わるって・・・誰にですか?」

 

「ノワール!」

 

『・・・えぇ!?(・・・はぁ!?)』

 

イストワールが聞いたらノワールと答えた。そのせいで、俺たちは思わず聞き返してしまう。

 

「ラステイションの、ノワール!」

 

ネプテューヌがウインク付きでそんなことを言う。

そして、イストワールの頼みもあって、俺たちは俺の『蒼炎の書』の稼働データ集めも含めて、ネプテューヌを監視するためにラステイションに行くことになった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、よくわからないんだけど・・・」

 

ラステイションの教会の最上階にて、ノワールは眉をひそめる。

 

「どうしてお隣の国の女神がうちのところで寝てるのかしら!?」

 

「・・・・・・」

 

結局はこうなった。ネプテューヌが女神の心得を教わるっつってラステイションに移動したのだが、今ネプテューヌはラステイションの教会で寝ていた。

ちなみに監視は俺、ネプギア、アイエフ、コンパの四人だ。その監視がいるっ通のにこいつは普通に寝ていた。流石にここまでくるとすげえ根性してるとしか言えなかった。その様子を見た俺は早速ネプテューヌをたたき起こすための手段を考える。

 

「あー。構わずにお仕事してー・・・私、気にしないからー」

 

「私が気にするわよっ!」

 

「ごめんなさいノワールさん・・・お姉ちゃん、起きてよぉ・・・」

 

「いいじゃーん・・・」

 

「・・・ネプギア、ちょっと下がってな」

 

「えっ?あ、はい・・・」

 

ネプテューヌは振り返りながらそう言ってまた眠りにつく。ノワールに謝ったプギアの咎めすら無視。ああ・・・こいつ完全にサボる気満々だったか。

俺は無理矢理起こすべくネプテューヌの所まで行き・・・。

 

「テメェ、馬鹿かぁっ!」

 

「あいたぁぁあっ!?」

 

俺は左手で頭に拳骨をぶつけてやった。武器を使わなかっただけまだマシだろう。それによってネプテューヌは完全に起き、両手で拳骨食らった部分を押さえ込んだ。

 

「もーっ!人が気持ちよく寝てるところに何すんのさー!」

 

「テメェ、やっぱり馬鹿か!?お前自分から女神の心得を教わるっつったよな?それなのに呑気に昼寝して、俺にたたき起こされたら文句が出るってテメェ、馬鹿か!?

そんなんだからシェアがあんな状況になるんだろこの馬鹿がッ!」

 

「一気に三回もバカって言うなあっ!」

 

ネプテューヌは流石にたまらなかったのか、涙目になりながらも馬鹿と言ったところに反論する。

女神としてちゃんと働いてるとかは問題だが、ネプギアとの姉妹仲はなんだかんだ言って他国の女神たちより良好だから、その辺でのご説教は必要無いな。そこは安心だ。プラネテューヌの姉妹なら、俺とジンみたいなことにはならないだろう。

まあ、今回はこのだらけっぷりを何とかしないといけないから、それはそれだ。

 

「悪いけどお断りよ。私、敵に塩を送る気はないから」

 

「ああ~。敵は違うでしょー?友好条約結んだんだしー、仲間で・・・」

 

「シェアを奪い合うことには変わりないんだから、敵よ」

 

ノワールの『敵』と言う言葉に反応したネプテューヌが反論するが、ノワールは言い切る前に遮るようにバッサリと言う。

この辺の融通が利かないところは確かに問題だ。下手をすればツバキ=ヤヨイみたいに、知らぬ間に孤立しちまうんじゃねえか?俺はその可能性を危惧した。

 

「まあ・・・お前が『敵』だって言うか『仲間』だって言うかは自由だけどよ・・・。そんなにきつく言う必要は無いんじゃねえか?

それに・・・もし、女神全員で力を合わせなきゃいけないって時が来た時、お前は一人で戦うつもりか?ハッキリ言うが、俺はそんなの絶対に勧めねえぞ?」

 

ノワールを咎める意味もあるし、ネプテューヌの気持ちも解るので、俺はネプテューヌに助け舟を出すことにした。遠回しにノワールにも出しているが、どう出てくるかな・・・。それによって次の言い方を変えないと。

 

「まあ・・・言いたいことはわかるけど、それでも今までの散々敵対してきたのよ?そんな簡単に変われるわけないでしょ?」

 

「いや。それがそうでもないんだ・・・。ちょっと素直になるだけでいい・・・。

聞くだけなら簡単って思えるけどな、俺はこれで大分マシになったぞ。あんな物騒な世界で俺は変われたんだ。お前ならもっとすんなりと変われるだろ。こんな俺でも1年あれば変われたんだぜ?」

 

力の使い方を考えるために、俺は暗黒大戦時代に停止時間も含めて1年間いた。その時間のおかげで俺は『蒼炎の書』を護るために使うという答えを得ることができたからな・・・。暗黒大戦時代に行く前にセリカと会って話せたからってのもあるんだろうけどな・・・。

でも、ココノエやカグラたちの目線で考えると、俺はたった二日で力の使い方の答えを得て、クシナダの楔に関することの態度とか、考え方とかが急に変わったんだよな・・・。考えてみたら割と滅茶苦茶な速度だな。

 

「なら・・・私も変われるのかしら・・・?」

 

「ああ。変われるさ。焦らなくていい・・・。」

 

ノワールは少し思いつめたように言う。俺はそれを肯定した。

 

「ああ、そうだ。ネプテューヌに女神の心得を教えるのが納得できないなら、俺の『蒼炎の書』の稼働データを取るついでに見立てりゃいいんじゃねえか?」

 

「・・・確かに、それなら問題ないわね・・・」

 

ついでに俺は『蒼炎の書』の稼働データ収取のついでに心得を教えることを提案したら、ノワールは一瞬考えてからだが受け入れてくれた。

 

「おぉっ!と言うことはノワール、私に女神の心得教えてくれるの!?」

 

「ま、まあね・・・。でも、あくまでついでだからね?」

 

その回答にネプテューヌがベッドから身を乗り出して食いつく。ノワールはそれに対してついでを強調しつつも肯定した。

それを聞いたネプテューヌは「やったぁっ!」と喜ぶ。

 

「ああ、そうだった・・・。それとさぁ、『シェアを奪い合うから敵だ』とか、そんなに可愛げないこと言うから、『友達いない』なんて言われちゃうんじゃないの?」

 

「な・・・!?と、友達ならいるわよっ!」

 

それだけなら良かったんだが、ネプテューヌがただ喜んだだけかと思えば、さりげなくノワールの精神に効くような一撃を与える。

それに対して、ノワールは顔を赤くしながら声を荒げる。ああ・・・俺の言葉台無しだよ・・・。俺は頭を抱えた。

 

「ラグナ・・・貴方災難ね・・・」

 

「せっかくいいこと言えたですけどね・・・」

 

「うわあ・・・これは中々に辛い」

 

アイエフたちがフォローしてくれるが、せっかく上手く纏められそうだったのに台無しにされたのが予想以上にデカい。

 

「まあでも、どうにか引き受けてくれたから、今は良しとするか・・・」

 

俺は少しくらいは見逃してやることにした。

 

「えー?いるの?どこの何さん?」

 

「え、ええっと・・・それは・・・」

 

そんなに俺たちをよそに、向こうはネプテューヌの問いに回答ができず、口ごもらせるノワールの姿があった。

今度はノワールがヤべえのか。見逃そうと思ったけど、流石にこれは止めよう。俺は二人の話をぶった切ってノワールがネプテューヌに心得を教えるように促すべく、二人の元に歩いていく。

 

「お姉ちゃん。この書類終わったよ」

 

俺が何か言おうとした直前に、ユニが結構な量の書類を持ってやってきた。それを見たネプギアは笑顔でユニに向けて手を振った。

結果的にこれが一時的に話の流れを止めてくれた。

 

「あっ、ユニ・・・。お疲れ様。そこに置いといて」

 

ノワールはそれだけ言ってすぐにネプテューヌの対応に戻ろうとする。

 

「あ、あのね・・・お姉ちゃん」

 

何かを言おうとしたら、ユニがノワールを呼び、再び顔をそっちに向ける。

 

「今回、早かったでしょ?アタシ結構頑張って・・・」

 

「そうね・・・。普通くらいにはなったんじゃないかしら」

 

「っ・・・」

 

ユニは恐らノワールに自分の努力を認めてもらいたかったのだろうが、ノワールから返って来たのは冷たい言葉だった。

それを聞いたユニは一瞬目を点にし、すぐに悲しげな顔になり、書類を置き、少しゆっくりとしたペースでエレベーターに乗ってこの場を後にしてしまった。

 

「(この姉妹・・・俺とジンみたいになる確率が一番高いかもな・・・)」

 

このままだとマズイ。後でノワールへの注意とユニの励ましを済ませよう。特にユニの方はすぐに何とかしてあげた方がいいだろうな・・・。

 

「あぁーっ!もしかして友達ってユニちゃんのことぉ?妹は友達って言わないんじゃないかなー?」

 

「違うわよ!ちゃんと他に・・・」

 

こうやって話に夢中になってる二人をよそに、考えを固めた俺はすぐに行動に移そうと思ったが、そこで何か迷っている様子のネプギアがいることに気がついた。

多分ユニのことを気にしてるな・・・。それなら俺はその背中を押してやることにした。俺はネプギアの右肩に左手を置く。

 

「・・・ラグナさん?」

 

「行ってきな。やること決まったら連絡するよう頼んどくから」

 

なるべくネプテューヌとノワールには気づかれないように話す。特にネプテューヌに気づかれて迂闊な発言はさせないようにしたい。

気づかれないように意識しながら、俺は穏やかな顔でネプギアに言う。

するとキョトンとしていたネプギアは笑顔で頷き、ユニの後を追うべくエレベーターに乗るのだった。

 

「(ネプギア。お前なら上手くやれるはずだ・・・)」

 

俺はネプギアを乗せて扉を閉じたエレベーターを見ながらネプギアの成功を祈った。

とは言え、一応確認しには行こう。そう決めた俺はエレベーターに乗るべく移動する・・・その前に連絡を頼むべくアイエフとコンパのところに移動した。

 

「ちょっと行ってくる。やること決まったら言ってくれ」

 

「なるほど・・・了解よ。それなら早いところ行ってきちゃいなさい」

 

「悪い。頼むわ」

 

こういう時、理解が早いのは助かる。俺は携帯とかまだ買えてないからな・・・。早いところ買っておこう。

そう考えながら、俺はネプテューヌたちが友達がどうのこうので盛り上がってるのをよそに、エレベーターに乗ってユニたちのところへ向かった。




取りあえず本編の出だしに入れました。ネプテューヌへの罵倒数が多いと感じた方はごめんなさい・・・。馬鹿って言ってる回数が予想よりも多かった・・・(汗)。

次回はユニへのフォローからになると思います。ネプテューヌ側キャラの出番を奪いすぎないようにして、なんだかんだ先生を上手く書けるといいなぁ・・・(願望)。

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