超次元ゲイムネプテューヌ-DIMENSION TRIGGER-   作:ブリガンディ

8 / 70
今回にて序章は終了になります。
字数超えないかどうか書いてて不安だったぜ・・・(笑)。
明らかに独自の設定が出てきたのでタグに『独自設定』を追加しておきました。



8話 蘇る蒼炎の書

エンシェントドラゴンは自分が飛ばされたことが許せないのか、周りを一切見ること無く俺に向けて火を放つ。

 

「デッドスパイク!」

 

俺は一歩前に出てから、腰にある剣を振り上げるように抜いて、黒い炎のようなものを地面から走らせる。

それらは衝突して、相殺した。

 

「嘘っ!?アレを相殺したって言うの!?」

 

「何をやったらああなるですかぁ!?」

 

「・・・」

 

その光景を見た二人が驚愕したというような声を上げた。ネプギアはさっきの一悶着もあるのか、固まっていた。

そんな三人をよそに剣を持ったまま右腕の状態を気にして見ると、何も問題ないどころか、もっと良くなってる気がした。

 

「(大丈夫だ・・・これなら皆を『護れる』!)」

 

俺は動揺してるエンシェントドラゴンに向かって一気に走りだす。

奴は迎撃するために右腕を引く。だが俺は構わず前進し、十分に近づいたところで左足を強く踏み込み・・・

 

「インフェルノディバイダー!」

 

俺は体を左側へ捻るようにジャンプしながら、黒い炎のようなものを纏わせた剣を右下から振り上げる。

その斬撃はエンシェントドラゴンが爪を振るう前に当てることができ、10メートルあろう巨体のエンシェントドラゴンを地面から少し持ち上げる。

その時、奴に付いた傷口から紅い球が三つ程現れ、それが俺の右手の甲に吸収される。これは俺のドライブ、『ソウルイーター』が機能しているようだ。

しかもこのドライブ、本来は『蒼の魔導書』の影響で周りの奴全ての生命力を吸ってしまう代物だったが、二回程使ってみた感じ、その影響は全く感じられない。

傷の治り具合がこの攻撃で得られる紅い球の吸収分だけだったからだ。それでも攻撃を続ければ治るだけマシだ。

 

「う・・・打ち上げた?あのエンシェントドラゴンを?」

 

近くまで飛んで来ていたネプテューヌが啞然とする。そんなにヤバいことをしたとは俺は知らなかった。女神じゃなくて普通の人間だからか?

どうやら切り裂くというよりも、打ち上げるに近くなったようだが、それでも平気だ。

俺は自分の体が背を向け始めたら一度剣をしまう。魔素はないが、術式と同じ感覚で行けると確信した俺は、術式でやった時と同じように空中制御をし、左腕でアッパーをしてエンシェントドラゴンの顎辺りを殴りつける。

 

「砕けろっ!」

 

更にそこから右足に黒い炎のようなものを纏わせ、前に一回転しながら踵落としを食らわせる。

それはエンシェントドラゴンの頭に当たり、威力が十分に出ていたその一撃でエンシェントドラゴンは地面に叩きつけられる。

インフェルノディバイダーの時と同じで、俺が蹴りつけた位置から紅い球が三つ現れ、俺の右手の甲に吸収される。インフェルノディバイダーの時と同じ大きさだ。

俺は落下しながらエンシェントドラゴンの様子を見てみる。煙から晴れて見えてきた奴の様子は、四つあった角の内、外側の二本が折れ欠けていた。

 

「どうだよ?角を折られた気分は?」

 

「凄い・・・エンシェントドラゴンをこうも簡単に・・・」

 

「ど、どんな威力をしてんのよアレ・・・」

 

俺が見せた攻撃にはネプテューヌすらも驚いていた。アイエフはもうわけがわからんとでも言いたそうだった。

つまり・・・俺の攻撃は、一般人のそれを大分上回ってることになる。それが解っただけでもいい。

それは、俺の手で護れる範囲が結果的に広いことを証明していたからだ。

攻撃力が高い=タフな敵も倒せる=護れる人が増える。こう考えると俄然と頑張れる。これからも多くの人を『護る』つもりだが、まずは皆への恩返しからだな。

そんな思考を終えた時、エンシェントドラゴンは怒りの雄叫びを挙げながら起き上がる。

 

「へぇ・・・まだやんのか・・・」

 

全く自業自得なモンだぜ。さっきまで舐め切ってたのに、やられだしたらこれだもんな・・・。

じゃあ次は・・・。考えを決めた俺は左腕に黒い炎のようなものを纏わせ腕を引く。

 

「ヘルズッ!」

 

俺は左腕を前に突き出しながら、エンシェントドラゴンに向かって飛び込んでいく。

ちなみにこの時、術式と同じ要領で、地面を蹴ったときの勢いをそのままに、足が地面スレスレで飛んでいる。

そして、拳をぶつけると、エンシェントドラゴンはよろめいて一歩後ろに下がる。

 

「ファングッ!」

 

俺はその隙を逃さず、今度は右腕に黒い炎のようなものを纏わせて、下側から殴り上げる。

すると、エンシェントドラゴンは最初に殴り飛ばした時と同じように吹っ飛ぶ。

ヘルズファングの二撃目の時に紅い球が出て、これも例外なく俺の右手の甲に吸収される。大きさは踵落としの時より大きい。

エンシェントドラゴンはこれ以上は耐えられないと感じたのか、慌てて逃げの体制を作り出す。

翼があるから飛べば良かったのだが、このエンシェントドラゴンは飛ぶ前に背を向けるべく、その巨体をゆっくりと旋回させ始める。それが、俺の次の攻撃のチャンスになった。

 

「逃がさねえぞ!ブラッドサイズ!」

 

俺は奴の方へ向かうようにジャンプしながら剣を引き抜き直し、通常の持ち方にしてすぐに剣を変形させ始める。

剣の刃の部分と腹の部分をスライドさせ、刃の付け根に最も近い部分が腹の先に来たところで付け根部を中心に手前側に90度程回転させる。

これによって剣が死神の鎌を想像させる形になる。俺は更に、付け根部の先端から、これまた術式と同じ要領で鎌状の形で血のような色をしたエネルギーを発生させる。

そして、そのでき上がったエネルギー状の刀身をエンシェントドラゴンの左翼側にぶつけ、そのまま鎌になってた剣を元に戻しながら奴の上を通り過ぎ、少ししたところで着地する。エネルギーの発生は奴の翼を斬ってすぐに終了させてる。

その一撃によって、エンシェントドラゴンの左翼が斬り落とされる。エンシェントドラゴンはたまらずに絶叫に似た声を挙げる。

ヘルズファングのように、この一撃も『ソウルイーター』の能力が影響してるため、奴の翼の切れ目から紅い球が三つ出現する。大きさはインフェルノディバイダーの時と、ヘルズファングの時の中間だ。

紅い球の吸収が終わったところで、俺は右手に持っている剣を軽く振って、エンシェントドラゴンの方に向き直る。

 

「つ、翼を斬っちゃったですぅ!?」

 

「さっきまでの苦しい戦いが嘘みたいね・・・」

 

コンパはまだまだ驚きの反応をするみたいだが、アイエフはもう飽きれ半分だった。まあこんだけ一気に優勢になっちまうとな・・・。

ネプギアはエンシェントドラゴンの向こう側にいるから、どんな表情をしてるかは今はまだ解んねえ。後でお礼と謝罪はしようとは思う。

一方で、エンシェントドラゴンは完全にヤケになって俺の方へ歩いてくる。火を吐きゃまだ迎撃とかできたかも知れねえのに、気づけなかったんだろうな。

 

「そうだな・・・そろそろ終わらせようぜ」

 

俺は剣を自分の目の前に持ってきてから、逆手に持ち直して構える。

エンシェントドラゴンはそんなことお構いなしに近づいてくる。そして、エンシェントドラゴンが右腕を引いたところで俺は動きだす。

 

「見せてやるよ・・・『蒼炎(あお)』の力を!」

 

奴の腕を、俺は剣を振り上げることで、弾き返す。目の前で起きたことに、エンシェントドラゴンは動揺する。

 

「恐怖を教えてやる・・・」

 

俺は剣を再び鎌に変形させ、鎌状のエネルギーを発生させる。この時、右手の甲から蒼い螺旋が発生していた。

俺はその場でわけが分からず混乱しているエンシェントドラゴンに対し、右から斜めに振り下ろし、右から斜めに振り上げ、上から縦に振り下ろしの順番で斬撃を叩き込んでいく。

一撃目と二撃目でエンシェントドラゴンの左足を機能不全に陥らせ、エンシェントドラゴンは逃げるための術を完全に失う。

三撃目は腹部に深く当たる。これらの攻撃全ては『ソウルイーター』の能力付きであるため、紅い球がどんどん出てくる。

その球が吸収され、俺の傷はみるみる治っていく。エンシェントドラゴンはというと、最初の二撃が影響したのかしゃがみ込んでしまっている。

完全に形勢が逆転した。

 

「地獄はねえよ・・・」

 

俺はそのまま同じ順番でもう一度斬撃を行う。さっきと当たる部位は若干変わり、一撃目と三撃目が腹部に当たる。

もちろん『ソウルイーター』の効果もある。俺の傷は更に回復する。

 

「あるのは無だけだ・・・」

 

俺は剣を元に戻しながら右腕を引く。そのまま『ソウルイーター』の力でエンシェントドラゴンの生命力を吸い上げる。

この時の俺の姿が、『獲物を殺す体制に入った獣』に見えるのか、エンシェントドラゴンは動けぬまま戦慄してるかのように見える。

すると奴の傷口から無数の紅い球が現れ、全て俺の右手の甲に吸収される。これによって俺の傷は完全に回復した。

そして、最後に剣を奴の腹部に深く刺す。これは俺の持つ最大の大技、『ブラックオンスロート』だ。

この一撃は完全な決定打になり、エンシェントドラゴンは絶叫を挙げながら光となり、柱状の爆発を起こして消えていった。

その強烈な光に、周りのみんなは思わず顔を覆い、俺は少し顔をしかめる。

 

「これが、『蒼炎(あお)』の力だ・・・」

 

今はもういないエンシェントドラゴンに対し、俺はこの言葉を残して剣をしまう。そしてまた右腕を見やる。

この力は『護る』ための力だ。他人が何と言おうと、俺はそう使うんだ。俺は晴れやかな表情を浮かべた。達成感ってやつだろうか?

まあ、力も取り戻したし、大事なものは護れたし、少しくらいはいいだろ。

 

『ラグナ!(ラグナさん!)』

 

そんなことを考えていたら、皆が駆け寄ってきた。

 

「あの、ラグナさんっ!私っ・・・私・・・!」

 

ネプギアが震えながら何かを伝えようとしている。その気持ちは解らなくも無かった。

 

「気にすんな・・・元はと言えば、動けなくなった俺が悪いんだからよ・・・悪かったな。心配かけて」

 

俺としてはあまり抱え込んで欲しくない。元は俺が原因なのだから。だから俺はネプギアの言葉を遮って先に謝る。

 

「でもっ・・・でもっ・・・」

 

うーん・・・どうも効果が薄いな・・・この辺はノエルに近いな・・・。

 

「それと、ありがとうな。ネプギア・・・お前がいなかったら、俺は間違いなくあのまま死んでたからな」

 

「で、でも・・・ラグナさんの背中は・・・」

 

ならばと俺は逆に礼を言って穏やかな笑みに変える。そしたら今度は俺の背中の傷を気にしだした。

これなら流れを止められそうだと確信した俺は・・・

 

「なら、さっき傷ができた部分触ってみな?」

 

「・・・えっ?でもそんなことしたら・・・」

 

「いいからいいから。ほら早く」

 

俺はネプギアの言葉を無理矢理遮って触ることを促す。ネプギアは「じゃあ、失礼します」と心配しながら俺の傷ができてた部分に触れる。

 

「・・・あれ?」

 

ネプギアは異変に気づいて傷口だったところの周りを撫でる。ちとくすぐったかった。

ネプギアは俺の身に起きたことに気づいて背中から手を離した。

 

「傷が治ってる・・・」

 

「もしかして・・・さっきのあの紅い球かしら?」

 

「ああ。あれは俺が『蒼炎の書』を使う時に使える『ソウルイーター』って能力でな・・・攻撃を当てた時に、一部を生命力として吸収できるんだ。

まあ、詳しいことはまた今度話そう」

 

ネプギアが啞然としてるところで、アイエフが俺に訊いてくる。俺はそれを簡単に説明した。

まあどうせみんなに話さなきゃならないことだし、覚悟は決めないとな・・・。

 

「あぁ、そうだ。ネプギア。もし、お前が恩返ししたいって思うなら、自分の大事なものを護れるように強くなってくれ。

焦らなくてもいい。自分のペースでやるんだ。それでいいか?」

 

「・・・はい。私、頑張ります!」

 

俺が提案したら、ネプギアは頬をちょっと朱色にしながらも笑顔で返してくれた。やっぱり、女の子は笑ってる顔のほうがいい。俺はそう感じた。

 

「それにしても凄かったわね・・・あれが『蒼炎の書(ブレイブルー)』の力なのね」

 

「ああ。久々に使えるとわかるが、やっぱりとんでもねえわ・・・」

 

ネプテューヌの称賛を聞いて、俺は改めて『蒼炎の書』の強大な力を再認識する。

間違ってもただ『奪う』ために使ってはいけないからだ。『護る』ために使うんだ。

 

「ところで、その右目はどうしたですか?何かの病気でもかかってるですか?」

 

「ん?ああ、これか・・・実は、『蒼の魔導書』を手にした時からずっとなんだよ・・・。

一応、普通に見えるし、病気でも何でもないから気にしないでくれ」

 

そう。俺の左目はエメラルドグリーンをしているが、右目は深紅に染まっている。

これはレイチェルから『蒼の魔導書(ブレイブルー)』をもらった時からずっとそうだった。この時から侵食は始まってたみたいだ。

だが、今回はあれだけ一気に『蒼炎の書』の力を使ったってのに、全く浸食が進行していない。なんでだろうか?またイストワールに調査を頼むことになるな・・・。

 

「そうだったですか・・・それなら変に触らないようにするですね」

 

「悪いな・・・助かるよ」

 

他の国の人たちは差が激しいが、プラネテューヌの人々は案外色んな事をあっさり受け入れてくれるから、正直気が楽でいい。

本当にいい場所に来た。ここは俺がもう得られないと思ってたものを得ることができる。どこの誰がここに送ってくれたかは知らねえが、あった場合は感謝しねえとな。

 

「まぁ・・・そんなことはさて置きとして・・・」

 

ネプテューヌは話の流れを変えるべくか、声をかけながら変身を解いた。

 

「せっかくラグナの右目も戻って万全な状態になったんだし、みんなを呼んでお祝いしようよ!」

 

「はいですぅ!私は大賛成ですよ!」

 

「あら、ネプ子にしては気が利いてるじゃない。いいわよ。やりましょう」

 

「お前ら・・・すげえ切り替えの早さだな・・・」

 

俺はその切り替えの早さに驚いた。ゲイムギョウ界の人々って訳でもないかこれは・・・。

そんなことを考えながらネプギアの方を見ると・・・

 

「私も、いいんじゃないかと思いますよ」

 

とまあ、笑顔でこんなことを言われた。ああ、これはもうやるって言うしか残されてないやつだ・・・。

半月でこの世界に順応できたのは伊達じゃないぜ・・・。回答がわかる。俺もやりたいとは思ってたので、賛成だが。

 

「ラグナはどうするー?ラグナさえ良ければ、満場一致ですぐに準備を始められるよーっ!」

 

「おし!なら賛成だ!せっかくだからやろうぜ!」

 

ネプテューヌに扇動され、俺はノリノリで賛成する。

 

「よーしっ!それなら野郎ども!早速取り掛かるぞーっ!」

 

『おおーっ!』

 

ネプテューヌの掛け声に皆が乗る。ゲイムギョウ界に来てから半月、俺はすっかりとゲイムギョウ界に馴染んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

同日夜のプラネタワー。祝いの準備が終わり、後は開始の宣言をするだけとなった。

一応ネプテューヌからは「なんか一言言うように振るかも」とは言われているので、少し考えている。

集まったメンバーは女神四人。女神候補生四人。教祖四人。アイエフとコンパ。そして俺。要するに俺がゲイムギョウ界に来た時に事情聴取で集まったメンバー全員だ。

主催は言い出しっぺのネプテューヌ。皆はまだかまだかと話をしながら待っていた。

 

「あー、あー。テステス・・・よし、はいはーい!みんなーっ!注目ーっ!」

 

ネプテューヌはマイクで皆に呼びかける。元の声の大きさもあり、ハッキリと聞こえる。

 

「今日は突然決まったこのお祝いに集まってくれて、本当にありがとう!

じゃあ早速、このお祝いが決まった理由として・・・ラグナ、説明と何か一言よろしくっ!」

 

そう言われて俺はネプテューヌの方に進んで行き、マイクを変わってもらう。

俺が振り返ると、皆が様々な反応を示して驚いてくれる。

 

「あー、この度は集まってくれてありがとう。もう気づいてると思うけど、この度俺の体が完全に動くようになった。

ああ、右目は病気でも何でもないから気にしないでくれ。

ちなみに、『蒼炎の書』が使えるようになったのと同時に、俺が持っているドライブの『ソウルイーター』も使えるようになった。

そんで、俺はまた使えるようになった『蒼炎の書』は、大事なものを『護る』ために使うって決めてる。皆への恩返しも含めてな。

ああ・・・口下手ですまねえな。とりあえず、これからも仲良くやってこうと思うから、よろしくな。俺からは以上だ」

 

俺が言い終わると、みんなが拍手をしてくれた。不安だったが、とりあえずは良かったってことか。俺は少し安心した。

 

「はいっ!ラグナの一言ももらったし、早速始めようっ!」

 

ネプテューヌは事前に用意してあった飲み物が入ったコップを手に取る。

他の皆も近くに置いてあったコップを手に取る。俺は移動することを前提に用意されていたであろうコップを見つけて手に取った。

 

「それじゃあ!ラグナの体が復活したことを祝して、乾杯っ!」

 

『乾杯っ!』

 

ネプテューヌが言い切ると、一泊遅れて皆が返す。こうして祝いは始まった。

 

「あっ、ラグナさん。今のうちにいいですか?」

 

「ん?どうした?」

 

「先ほど使われていた『蒼炎の書(ブレイブルー)』の件についてなのですが・・・」

 

どこかに移動しようかと思ったらイストワールに呼ばれ、イストワールの少し前に小さめなモニターが表示される。

そこには『蒼炎の書』に関する稼働データであろうものが表示されていた。

 

「どうやら、ラグナさんの持つ『蒼炎の書』はシェアエナジーと親和性が高かったのですが、この世界に適合するまでに時間が掛かったみたいなんです・・・。

ちなみに、ラグナさんの『大切なものを護る』という強い意志が出ている時は、適合までの時間が急激に短縮されていますよ」

 

そのモニターに映っているのは『蒼炎の書』の適合率だったみたいで、来た直後は当たり前のようにゼロで、少しづつの上昇だったが、途中から急激に上がっていた。

各国に観光しに行った時が特に上がっている。・・・ルウィーの時は影響が出るまで上がりきらなかったみたいだが・・・。

 

「そうだったのか・・・。じゃあ、俺が術式と同じ要領で戦えたのはそれが理由なのか・・・?」

 

「それについてはまだ分かりませんが、今のところシェアエナジーとその術式というものの性質が似ていると考えた方がいいでしょう」

 

「性質が似てるか・・・」

 

シェアエナジーを使って戦う女神。魔素を使って発動する術式って考えりゃ似てるのか?あまり考えたくもねえが。

 

「こちらの方はまた調査を続けますので、何かあったらまた伝えますね」

 

「解った。頼むよ」

 

「いえいえ、こちらこそ呼び止めてしまってすみません。今は楽しみましょう」

 

「ああ。そうさせてもらうよ」

 

俺たちは会話を切り上げて移動を始める。俺がこんな風に楽しむ機会なんて果たしてあっただろうか?

カグラんとこで飯を食う?いや、でもあれ俺自身はそんなに楽しめてねえな。純粋に楽しんだのは飯食うだけのタオくらいだろ。

 

「あっ!ラグナさん!」

 

俺が移動してる途中で、ユニから声をかけられた。

 

「そのっ、ネプギアを助けてくれて・・・本当にありがとうございます!」

 

「そのことか・・・いや、俺も悪かったな。途中で動けなくなっちまったし・・・」

 

あんまりにも綺麗に頭を下げられたので、俺は焦って自分の悪かった部分を引き合いに出す。

 

「いえっ、それでも助けてくれたことには変わりないので!本当に!本っ当にありがとうございます!」

 

だぁーっ!更に頭を下げられた!でも・・・。俺はここで再認識できた。こいつら、本当に仲良しだと。

 

「・・・ははっ。お前みたいな友達持って、ネプギアは幸せ者だろうな」

 

「ふぇっ!?ア、アタシみたいなのがですかっ!?」

 

俺がそう言うと、ユニが顔を赤くして動揺する。

あれ・・・?俺は弄るつもりで言ったわけじゃないんだけどな・・・。まあいいや。言葉を続けるか。

 

「だってそうだろ?趣味は合うし、楽しく会話できるし、自分の身に何かがあったら心配してくれる・・・。

当たり前のようだけど、すげえ大変なことを全部こなせる・・・。お前はネプギアにとって最高の友達だよ。もっと自信持てって」

 

「アタシが最高ってそんな・・・あうぅ・・・」

 

ユニがもう俺の顔を見てられないと言わんばかりに顔が更に赤くなり、煙まで出てやがった。

そしてそのまま顔をそらした。ああ・・・これ言い過ぎたかもな・・・。

でも実際、ツバキ=ヤヨイはその性格もあって友人よりも命令を優先し、更に追い込まれ、その精神状態を付け込まれる羽目になったからな・・・。そうなるよりはずっといいさ。

そんなことを考えていたら左肩を誰かにがっしりと掴まれた。しかもなんか妙に力入ってるんだけど・・・。

 

「ちょっとラグナ・・・?何の目的で私の妹を口説いてるのかしら・・・?」

 

「えっ?口説く・・・?ンな目的一切ねえぞ?」

 

恐る恐る振り向いて見ると、俺の方を掴んだ主はノワールだった。

しかもだんだん掴む力が強くなってる。普通に怖えよ・・・。つか、何でそうなったんだ?

俺は反論するが、簡潔過ぎたのが行けなかったみたいで・・・。

 

「じゃあ、何でユニが顔を真っ赤にしてるのよ!?」

 

そこを突かれてしまった。ああ・・・うん。これ見たらそうなるか・・・。

 

「い、いや!ホントに口説くつもりなんて無かったんだよ!今日の件で礼言われたから、ネプギアはお前みたいな友達いて良かったなって・・・」

 

「・・・えっ?ホントにそれだけ・・・?」

 

俺が大慌てで弁明すると、ノワールの勢いが弱まる。

 

「ああ・・・それだけだが・・・」

 

「え・・・えーっと・・・その・・・」

 

俺が肯定すると、途端にノワールは目を泳がせ始める。さっきまでの妙に怨念混じりっぽいのが嘘みたいだ。

 

「ごっ、ごめんなさい!私、早とちりしちゃって・・・」

 

「お、おう・・・分かればいいんだよ・・・分かれば」

 

ノワールが結構な勢いで頭を下げるモンだから、俺もちょっと焦った。まぁ、取りあえず分かってもらえたから良しとする。

 

「そう言えば・・・」

 

「ど、どうしたの?」

 

「俺のいた世界に、お前とよく似た声してる奴がいたんだよ・・・」

 

「そ・・・そうなの?」

 

「ああ。そいつが俺の弟のことを慕ってくれてたのをちょっと思い出してな・・・」

 

向こうではどうしてるんだろうな・・・。相変わらずジンの補佐だろうか?

十六夜持ってたから覚えてる部分を頼りに動いてるかも知れねえが・・・。

 

「ふーん・・・ちょっとラグナの弟が気になって来たかも・・・」

 

「そうか?会えればだが、今のあいつならあっても大丈夫だろうな」

 

そう。今のジンなら当たり障りのない対応をするだろうが平気だ。

前なんか「さあ、殺し合おうか・・・兄さんッ!」なーんて言うレベルにヤバいからな・・・。でもアレって俺だけなのか?

『兄島』の様子を見ると大分ヤべえんだけど・・・。だってあいつ俺を見た瞬間「兄さーーんッ!!」とかって叫ぶんだぜ?兄島の補正か何かは知らねえが。

 

「ラグナ。ちょっといいかしら?」

 

「ん?どうした?」

 

話している途中に声をかけられたので、そっちを振り向くとルウィーの三姉妹がいた。

 

「ラグナさんが治ったお祝いとして・・・」

 

「私たちからプレゼント・・・♪」

 

「悪いなお前ら・・・ありがとうな」

 

ロムとラムが一つずつ小袋を渡してきた。俺は二人の頭を帽子越しに撫でてからその小袋を受け取った。

 

「えへへー・・・褒められちゃった♪」

 

「褒められた・・・♪(ニッコリ)」

 

二人は凄い満足そうなの笑みを見せた。ロムもすっかり俺を受け入れてくれてるから助かった。

ちびっ子の笑顔を目の前で見る・・・確かに俺がいた場所では足りないものだな。

 

「どう?ラグナはゲイムギョウ界(こっちの世界)に来てから楽しめてる?」

 

「ああ。自分でも信じられねえくらいに楽しめてるよ。何でゲイムギョウ界(こっち)に来れたかは解んねえけど、すげえ充実してる」

 

「そう。それなら良かったわ」

 

事実、俺はゲイムギョウ界に来てから毎日がとても楽しく感じる。復讐とかそんなことを一切考える必要のない、純粋な生活や旅だからだ。

俺の回答を聞いて、ブランは微笑む。

 

「ところで、どこに住むかは決まったかしら?ロムとラムが来てほしいって言うものだから、ちょっと訊きたいのだけれど・・・」

 

「ああ。なるほどな・・・」

 

俺が二人の方を見てみると・・・。

 

「ラグナさん、こっちに来るの?」

 

「来るの・・・?(どきどき)」

 

めっちゃ興味深々な目をしてやがった。ちょっと待って欲しい。これでご期待に添えない回答したらどうなるんだ?

こいつらがしょぼくれる?ブランがそこから連鎖で殺しに掛かる??ヤバい。これは慎重にならなければ。

 

「悪い。まだ決めきってなくてな・・・もう一度一人でゆっくりと回って決めるよ」

 

「わかったわ・・・もしルウィーに住むなら連絡を頂戴」

 

「私たち、いつでも待ってるよ!」

 

「待ってる・・・♪(ニコニコ)」

 

よ、良かった・・・今回の回答は正解だったみたいだ。取りあえず回ったは良いが、決定打が足りない。今はそんな感じなんだ。

 

「ラグナさーん。ちょっとよろしいでしょうか?」

 

「おう。今行く。じゃあ、俺は向こうに行くぞ」

 

「はーい!ラグナさんまたねー!」

 

「またね・・・♪」

 

俺はベールに呼ばれたので、そっちに向かう。

 

「ラグナさん。ネプギアちゃんを助けて下さって、本当にありがとうございますわ」

 

「おお・・・お前までもか・・・。ネプギアは皆に大切に思われてるんだな・・・それが分かって良かったよ」

 

またこのくだりかとは思うが、これだけネプギアが大切に思われてるのが分かって良かったかも。

ネプギア・・・お前はもっと自信もっていいと思うぞ?

 

「ふふっ・・・当然ですわ。だって、ネプギアちゃんは私の最高の妹なのですから」

 

「そうだよな。最高の妹・・・ってちょっと待て!?ネプギアはネプテューヌの妹だろ!?

何でお前がネプギアを妹っつったんだ!?」

 

俺は途中でベールの発言に気づいてツッコむ。ベールって妹いなかったよな?

 

「何を言いますか!私にとってネプギアちゃんは妹のようなもの・・・すなわち、私の妹なのですわ!」

 

「何をどうしたらそうなった!?『妹のようなもの』じゃあ『妹』にはならねえだろ!」

 

俺はゲイムギョウ界に来てから、恐らく最も盛大にツッコんだ。余りにも理論が吹っ飛んでやがる。

ベールの場合はそれ『義理の妹』で止まるだろ・・・。いや、その辺詳しくは知らねえけどさ。

 

「ああ・・・それはもういいや。ところで、こないだそっち行ったときに出してもらった紅茶なんだけど、あれどう作ってるんだ?

できることなら作り方知りたいんだけど・・・」

 

この話題は身が持たん。俺は話題を変えるべく、俺はこないだご馳走になった紅茶のことを訊いてみることにした。

 

「まあ!気に入ってくれたのですね。そうでしたら、後日作り方のほうを送らせていただきますわ」

 

「いいのか?そりゃ助かるぜ」

 

作り方を訊いたら後ほどくれると言ってもらえた。何事も聞いてみるって大事だな。

 

「ラグナ、すまないがちょっといいかい?」

 

「分かった。今行く」

 

ああ・・・今日はすげえな。誰かに呼ばれて話してたらまた誰かに呼ばれる。

ちなみに今の声の主はケイだ。

 

「悪いな。そういうことだから俺は行くよ」

 

「はい。また時間がある時にお話しましょう」

 

俺は今度は教祖たちがいる方に移動するのだった。

 

「悪いね。わざわざ呼んでしまって」

 

「ああ。それは構わねえんだが・・・一体何があったんだ?」

 

俺はチカの様子を見て思わず訊いてみた。何が起きてるかと言うと、チカがショックを受けたように突っ伏していて、ミナがそれを慰めてる形だった。

 

「だって・・・お姉さまが・・・お姉さまがぁ・・・」

 

「ああ・・・そういうことか」

 

チカの泣き言で全てを理解した。うん。そりゃショックを受けるわな・・・。だって普段妹のように大切に思われてんのに、いきなり他のやつを妹だって言われりゃな・・・。

 

「まあまあ。言葉の綾ですよ」

 

「うぅ・・・それならいいけど・・・」

 

「災難だな・・・そりゃ」

 

俺は今日ベールの暴走っぷり?を見てかなり驚いた。あれは多分、自分の妹にしたいと思った子に対しては誰でもああなるな・・・。

ピンポイントのジンやイザナミでも大分ヤべえってのに・・・。ジンは改善できた感じはあるけど・・・。

 

「ああ・・・さて、いきなり脱線してしまったね・・・。

君が言ってた『ソウルイーター』のことを先に訊けば良かったんだけど、流石にお祝いの空気を崩す訳には行かないから呼んだんだけど・・・。話してもらってもいいかい?」

 

「すみません・・・私が気づいていればこんなことをしなくても良かったのですが・・・」

 

ケイが『ソウルイーター』のことを訊こうとする。イストワールは配慮不足を謝罪してきた。まあ、端折り過ぎた俺も悪いな・・・。

 

「ああ。それなら今のうちに話しちまおう。

俺のドライブである『ソウルイーター』は、能力を使って攻撃した時に相手の生命力の一部を吸う能力なんだ。

周囲の生命力を吸うとかそんなことはないから安心してくれ」

 

「ということは、さっきノワールが君の肩を掴んだけど、それは平気なんだね?」

 

「ああ。それは平気だ」

 

「じゃあ、二人に触れたけど、能力を使ってないから効果は働いてないんですね?」

 

「ああ。能力を使ってないし、攻撃もしてないから影響はない・・・

悪いな。俺の説明不足で無駄な心配かけちまって」

 

俺がケイとミナの問いに答えると、二人は安堵した。

 

「そうでしたか・・・でしたら、私たちで皆さんにお伝えしますね」

 

「・・・いいのか?」

 

俺は思わず訊いてしまった。人の温情を無下にするのは良くないのは分かってるが、やっぱりこういうことに慣れてないから抵抗感がある。

 

「はい。今回は私たちにお任せください。ここにいる皆さんがこうやって笑っていられるのは、ラグナさんがあの状況を諦めずに覆したおかげなんですから」

 

「ええ。そうでなければ、今頃お姉さまがショックで倒れ込んでるかもしれませんもの」

 

いつの間にかチカがいつもの調子を取り戻していた。これ、よくよく考えたら、間に合わなかった場合葬儀だもんな・・・間に合って良かった。

それにしても不思議なモンだな。カグラに取っ捕まるまでは暴れたら皆に恐れられる『死神』だったのが、今はゲイムギョウ界に生きる『旅人』で、女神候補生の一人を助けた『勇者』だからな。

 

「ああ、引き止めて悪かったね。この話はここでお開きにしようか」

 

「分かった。また聞きたいことがあったら言ってくれ」

 

俺はそう言い残してまた移動を始める。

 

「うーん・・・。お礼は別に気にしてなさそうな気はするけどなぁ」

 

「それに、もうあの時こうしてくれなことは言ってたしね」

 

誰のところへ移動しようかと悩んでいたら、ネプテューヌたちがいつものメンバーで話しているのが見え、そこに移動することにした。

 

「どうしてもなら、お料理とかはどうですか?それくらいなら断らないと思うです」

 

「なんか楽しそうな話してるな。混ざっていいか?」

 

『ひゃあっ!?』

 

俺が声をかけたら、全員が揃って素っとん狂な声を出した。タイミング悪かったのか?

 

「ど、どうした?」

 

「い、いや~ごめん!余りにもいきなりだったからつい・・・」

 

「ああ。せっかくだから私から一つ質問いいかしら?ラグナは誰かの手料理食べたことある?」

 

「ん?手料理か・・・一応、あるにはあるぞ。それがどうかしたか?」

 

教会でシスターとサヤの飯を食ったことは確かにある。・・・モテメガネ?そんなもん知るか。

シスターは普通に美味かったが、サヤのは死んでたな・・・。どうやったらあんなの作るんだろ?

 

「実はですね・・・今度ギアちゃんにお料理してみたらどうかって話してたんですぅ」

 

「へえ・・・ネプギアの料理か・・・」

 

俺はそれを聞いて、サヤのデスディナーではなく、シスターの手料理が脳裏に浮かんだ。

そうしたら普通に食いたくなってきた。

 

「なら、今度食わせてもらおうかな」

 

「っ!いいんですか?」

 

俺が答えると、ネプギアが目を丸くする。そんなにビックリするモンだろうか?

 

「ああ。俺はいつでもいいぞ」

 

「わかりました。それなら今度作らせてもらいますね」

 

ネプギアが笑顔になる。俺の予想が正しければ何も心配する必要はないからな。楽しみになって来たぞ。

 

「良かったね!ネプギア!」

 

「うん!」

 

俺の回答を聞いて嬉しかったのか、ネプテューヌも笑顔になる。応援してたのかな?それなら納得だ。

 

「(まさか俺が、こんなに楽しい時間を過ごせるようになるなんてな・・・)」

 

俺はその後もみんなとこの祝いを楽しんだ。

ゲイムギョウ界に来てから半月。俺の周りは以前とは比べ物にならない程明るく、活気に満ちていた。

そして俺は、すっかりとゲイムギョウ界に馴染んでいた。




何とか序章を無事に終わらせることができました。

エンシェントドラゴン相手のフィニッシュは『闇に喰われろ』にするか『ブラックオンスロート』にするかでけっこう悩みましたね・・・。でもやっぱりASTRALFINISHした方が気持ちいいだろうってことで(笑)。

ちなみに、紅い球の大きさはCFでの回復量を元に決めた感じです。


次回から本編に入ります。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。