超次元ゲイムネプテューヌ-DIMENSION TRIGGER-   作:ブリガンディ

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今回でこの最終決戦は終わりとなります。


66話 終幕と別れの時

プラネテューヌの上空で行われている戦いは、一気に女神たちの優勢へと変わった。

シェア収集装置の破壊による吸収した分のシェアが消滅、セリカの持つ『秩序の力』による女神たちの強化とマジェコンヌらの弱体。更には5pb.の歌でセリカの持つ力の影響を更に強めると言う三段構えがほぼ全てを物語っている。

 

「・・・ええい、邪魔をするなッ!貴様らに纏わり付かれては奴らを止められもせんだろうがッ!」

 

「そんなことはさせないわ・・・。何としても、あなたたちはここで止めて見せるわ!」

 

ネプテューヌが刀を振り下ろしてきたので、マジェコンヌは槍を横にして受け止める。

動きを悪くされたのが響いており、先程までは有利を取れた状況では不利にされてしまう事態に陥っていた。

また、自身の動きが悪くなったことで、更に悪い事態は増えていた。

 

「くっ・・・避けるだけでも手一杯になるなんて・・・!」

 

「みんな、このまま続けるよ!」

 

「さっきまでのお礼・・・たっぷりとしてあげるわよ!」

 

レイはマジェコンヌが苦しそうなので、救援の為杖からビームを放とうとするが、女神候補生たちによる遠距離攻撃に阻まれてしまう。

先程まで平気だったのに、今回はダメになってしまった理由としては、ビームを放つまでに必要な時間が伸びてしまったことにある。

シェア収集装置が生きている時はノンチャージで撃てたのが理由で妨害を受けることは無かったが、今は僅かな時間のチャージが必要となり、その時間が女神候補生たちに付け入る隙を与えてしまっていたのだ。

 

「候補生のみなさんだけではありませんわよ・・・!」

 

「(あの手段を使うなら、マジェコンヌさんをここから遠ざけないと・・・!)」

 

女神候補生たちが作ってくれた隙を逃さず、ベールが追撃をして来たので、レイは防御してやり過ごすしかなかった。

その後もどうにかして押し返せば、今度は女神候補生が遠距離攻撃で彼女らをサポートするので、ジリ貧な状況が続いてしまう。

迷っていればこちらに勝ち目は一つも無くなるから、実行するなら速く実行したいのだが、タイミングを見誤ればマジェコンヌを巻き込んでしまうものであった。

それ故にレイは焦り、必死に物事を考える。

 

「(ダメもとでこれはどうですか・・・!?)」

 

「させませんっ!」

 

レイも杖からビームを放ってセリカを狙うが、今度はネプギアがM.P.B.Lから放ったビームでそれを阻んだ。

これによって、レイは迷っている場合じゃないことを認識する。

 

「マジェコンヌさん!私が時間を作るので退避してください!」

 

「何!?しかし、それではお前が・・・!」

 

レイがマジェコンヌに促せば、マジェコンヌは大きく動揺した。

それもそのはずである。何しろ今この段階でマジェコンヌが逃げるなどすれば、それこそレイが八人に取り囲まれてあっという間に打ち負かされる未来が見えてしまっているのだ。

 

「大丈夫です。一つだけ、この状況を打開する方法がありますから・・・」

 

レイが笑みを見せながら言い切ったので、マジェコンヌは押し黙る。

ならば自分も手伝うことを伝えようとしたのだが、言い出す前にレイが「ですが・・・」と前置きを作った。

 

「その方法は範囲が広すぎるせいで、マジェコンヌさんを巻き込んでしまうんです。範囲はこのプラネテューヌ内に納めますから、マジェコンヌさんはどうか安全な場所に離れてください。それが・・・私にとっては一番嬉しいお手伝いです」

 

「・・・・・・」

 

レイが強がりを言っているのと、それが事実であることが分かってしまったマジェコンヌは、数瞬の間硬直する。

―また失うのか?私たちからどこまで奪えば気が済むんだ!?しかしながら、これ以上はどうすることもできないと分かっていたマジェコンヌは、虚空に向けて己の悔しさ込めて叫んだ。

 

「ならばレイ、死なずに戻って来いッ!それが絶対だからなッ!?」

 

「分かりました。ちゃんと戻ります」

 

「その言葉・・・忘れるなよ」

 

レイに口約束をもらえた事で一先ず納得したマジェコンヌは、身を翻してこの空域から離脱を始めた。

この時セリカと5pb.を狙ったところでナインに防衛されてしまうのが目に見えていたので、手を出すことはせず離脱を最優先した。

 

「よし・・・これなら使える。マジェコンヌさん、本当にすみません・・・この方法は、本当に私一人にならないと使えないものですから・・・」

 

レイは離れて行くマジェコンヌを見ながら詫びを入れ、女神たちを見据え直す。

良くて自分は暫く動けない程のダメージ、最悪は死ぬかもしれないこの博打だが、女神たちを倒すにはこれしかないのが悲しいところであった。

 

「・・・マジェコンヌが逃げる?」

 

「追わせませんよ?いえ・・・私を止めざるを得ない状況にします」

 

「止めざるを得ない状況?一体、何をするつもりなの?」

 

マジェコンヌ飛び去っていくのに違和感を感じたブランがどうしようかと考えていたところ、レイが宣言して遮った。

何をするのかを気になったネプテューヌが問いかけると、レイがとんでもない回答を残すのだった。

 

「私は今から、この国全域が範囲になる・・・自爆も同然の攻撃を行います。これなら、貴女たちもこちらを止めなければならないでしょう?」

 

『・・・・・・!?』

 

レイのまさかの宣言に全員が絶句する。

そんなことをされてしまえば、シェルターに退避した人たちにすら被害が及んでしまうので、マジェコンヌを追っている場合では無くなる。

レイ自身成功しようとしまいと、マジェコンヌを逃がせれば良いのでそのことは大して気にしていなかった。

そこまで考えを纏めたレイは、自身に残っているシェアエナジーを収束し始めた。

 

「なっ・・・!?アイツ、正気なの!?」

 

「ど、どうしよう・・・!このままじゃ大変なことになっちゃう!」

 

「・・・関係ない人も巻き込まれる・・・!」

 

「(キセイジョウ・レイの最終手段・・・。女神たちで力を合わせれば止められるかも・・・)」

 

全員が焦りの色を示す中、ネプギアは一度今の状況を考えれば止められるかもしれないと考えた。

また、その時にラグナがいればより確実であることも、何となくではあるが理解していた。

それも全て、レイが己に収束させているものがシェアエナジーであることが分かったからである。

 

「あの・・・!一つだけ止められる方法があるんですけど、聞いてくれますか?」

 

「・・・ネプギア?良いわ、その方法を教えて」

 

「その方法だけど・・・」

 

ネプギアの問いかけには真っ先にネプテューヌが肯定し、もう全員の反応を待っている余裕も無いので、先に話しを聞くことにした。

そして、ネプギアが答えた提案に全員が驚きの声を出す。

 

「方法としては結構博打に近いわね・・・」

 

「でも・・・これが一番、一般市民たちを護りやすいわ」

 

その方法はまず初めにレイを自分たちで取り囲み、今ここにいる全員分のシェアエナジーを用いて彼女が放出しようとしているシェアエナジーを相殺することにあった。

失敗した場合は自身らもプラネテューヌと運命を共にしなければならない為、シャレにならないリスクがあるのは事実だが、同時に最もレイから市民を護りやすいものでもあった。

あまりにも危険が大きすぎることと、レイが今もこうして行動を始めているせいで迷っている時間が無いのも大きい。

 

「この際だ・・・迷ってる暇なんてねぇと思う」

 

「そうですわね。私も、希みがあるならそれに賭けますわ」

 

「アタシもですっ!考えてる時間も無いし、それしか無いと思います」

 

「「私もっ!」」

 

ブランが賛成の意を示せば、ベール、ユニ、ロムとラムの順番で賛成する。

それを見たノワールも、「こうなったら腹を括るわ」と宣言したことで、全員が賛成となった。

そして、やることが決まるや否、八人でレイを取り囲み、全員で手を繋いでレイを中心とした輪を作る。

 

「・・・なるほど。では、どちらが上から試して見ましょうか!」

 

「みんな、ここが正念場よ!」

 

「大丈夫・・・みんなとならできる!」

 

彼女らの意図を理解できたレイは、更にシェアエナジーを収束させる。

対する女神たちはネプテューヌとネプギアが順番に促すと同時に、シェアエナジーを集め始める。

 

「ラグナ、聞こえる!?私の言う場所に急いで向かって欲しいの!」

 

『その位置なら15秒ありゃ行ける!ちょっと待ってろよッ!』

 

また、彼女らの行動を見たナインはネプギアの意図に気づいていたが故に、ラグナへと即座に術式通信を繋いで事を伝えてくれる。

幸いにもラグナはすぐに行ける場所にいた。そのことがネプギアたちに一つの安心感を呼び起こした。

15秒ぴったりで現場に到着したラグナは、すぐにネプギアの真後ろについて、準備を始める。

 

「(私が望むのは・・・『市民たち(みんな)を護れた未来』!)」

 

「(俺が望むのは・・・『女神たち(アイツら)が生きて戻ってくる未来』!)」

 

ネプギアとラグナは同時に、『蒼』へ向けて自分たちが望んだ可能性を告げる。

その瞬間、ラグナの右手の甲と、ネプギアの胸の前から蒼い光が現れ、それが二人の間を輪のように光の線となって繋いだ。

 

「さあ・・・貴女たちの可能性を見せてみなさいッ!」

 

収束させたシェアエナジーが臨界に到達したレイが、女神たちに促しながら溜めこんでいたシェアエナジーを放出する。

紅い光をした暴力的なエネルギーが柱状となって広がろうとしていたが、それを女神たちが集めたシェアと、二人の『蒼』で作った見えない光の壁が受け止めて、女神たちに届く寸前で食い止めている。

 

「大丈夫。私は・・・私たちは負けない・・・!」

 

ネプギアが押し殺すように言ったその言葉が皮切りとなるかのように、他の女神たちも胸の前辺りから自分の国の色に合わせた光のが現れ、それが自身たちの作り上げた光の壁を強くする。

これの直後、レイの放出した光が無理矢理外へ広がろうとするが、女神たちが作った光の壁も強くなっていたお陰で食い止められる。

やがてレイの放出した光が行き場を失い、その場で大爆発を起こした。

 

 

 

 

女神たちの作り上げた光の壁に抑えられたまま―。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「うっ・・・んぁ?」

 

体を打ち付けられた痛みに呻き声を上げながら、ラグナは目を覚まして体を起こす。

目を覚ますと、そこには自身の近くの地面がひび割れている状態が広がっているが、背後のシェルターは無事であることから、レイの自爆まがいの攻撃を押さえきれた事が伺えた。

 

「・・・!そうだ、アイツらは無事か!?」

 

確かに『蒼』で女神たちが生存する未来を望みはしたものの、彼女らの姿が見当たらないので確認が取れないでいる。

その為ラグナはすぐに彼女らのいた場所へ移動して確認を取りに行くと、先程起きた爆発の反動で、変身が解けた状態で倒れている彼女らの姿があった。

 

「お、おい・・・!大丈夫だよな・・・?」

 

ラグナは不安になってネプギアの首筋に手を当てて見ると、脈を打っているのが伝わってきたので、彼女は無事であることが判明した。

その後も続けざまに全員の首筋に手を当てて確認し、全員が無事であることを確認したラグナはそこでようやく胸をなでおろした。

 

「全員無事か・・・それが起こり得る可能性があればこそだよな・・・」

 

ラグナが可能にしたいと願った『女神たち全員が生存する可能性』。それが僅かにでもあったからこそ実現できるものであった。

また、嬉しい情報はこれだけでは終わらず、術式通信が来たのでラグナはそれに応じる。

 

「俺だけど・・・どうした?」

 

『繋がった・・・!セリカと5pb.は私が咄嗟に逃がしたから無事だけど、女神たちは大丈夫?』

 

「ああ、全員無事だ。そういや、シェルターの方はどうだ?俺より後ろには被害が行ってねぇから大丈夫だと思うんだけどよ・・・」

 

『ええ。国内の被害は増えてしまったけど、市民は全員無事よ』

 

飛ばしてきたのはナインであり、近くにいたセリカと5pb.、自身の三人とその他一般市民たちが無事であることを伝えてくれた。

ここまで無事であることが分かれば、残りは外にいた人たちだけである為、全員に一斉で術式通信を飛ばした。

 

「おいお前ら・・・全員無事か!?」

 

『はい!ノエル=ヴァーミリオンは無事ですっ!』

 

『同じく・・・ラムダも戦闘終了からの損傷増加はゼロ』

 

『俺も無事だ!ラケルも俺んところにいる』

 

『私、アイエフもどうにか無事よ。アレを見た時は流石に冷や汗ものだったわね・・・』

 

『私も浮遊大陸から脱出に成功した。時期に合流する』

 

全員が無事であることが分かり、一先ず安心できた。

また、女神たちが順番に目を覚ましたので、「皆が目を覚ましたから、状況を伝えてくる」と告げてラグナは一度通信を切った。

 

「あ・・・ラグナさん」

 

「大丈夫だな?俺もそうだが、他のモンスター食い止めてたやつらも、一般市民たちも全員無事だ」

 

「・・・良かったぁ。私たちが望んだ可能性、両方ともあったんですね・・・」

 

気が付いたネプギアに事を伝えると、『私たち』と『両方』と言う単語が飛んできたので、ラグナはその言い方に察しが付く。

だからこそそれに頷いて肯定して見せると、ネプギアは互いが気づかぬ内にフォローしあえていたのが嬉しく感じて笑みを見せるのであった。

 

「立てるか?」

 

「あはは・・・ちょっと無茶し過ぎました。体借りますね?」

 

「ああ。今日くらいは構わねぇよ」

 

手を差し伸べて問いかけてみると情けない回答が返ってきたので、自分の左方を使わせてやることにした。

その好意に甘える事にしたネプギアは、立たせて貰った後思いっきりラグナの左肩に体重を乗せる形を取った。

 

「え、えっと・・・重く無いですか?」

 

「いや?そんなことはねえぞ」

 

思いっきり体重を乗せている状態になって気づいた事だが、それが不安になったネプギアは問いかけた。

しかしながら、ラグナもラグナで気を遣わせまいと真っ先に否定したので、ネプギアは安堵する。

最も、ラグナがこの場で重いと言ってしまえばそれは失言で、ネプギアも聞かなければ良かったと後悔するだろう。

 

「そう言えば、キセイジョウ・レイはどこに・・・?」

 

他の女神たちも体を起こすだけで精一杯な状態なのでそこまでに留め、辺りを見回して見る。

暫く見回していると、何か瓦礫をずらしていくような音が聞こえ、全員がそちらに注目をする。

するとそこには、瓦礫をどかしきってゆっくりと体を起こして立ち上がるレイの姿があった。

 

『・・・・・・!?』

 

「ま、まさか・・・これを阻止されるだなんて・・・。お見事ですね・・・」

 

彼女がまだ動けると言う事実に絶句したが、それも束の間、弱々しく称賛の言葉を送ったレイは、そのまま変身が解けて倒れそうになる。

しかし、彼女が真正面から地面にぶつかる直前に、突如として現れた巨大な鉄の腕に受け止められた。

何事かと思ってみて見れば、そこにはレリウスとイグニスがいた。

 

「此の様子・・・今から戻れば間に合うな」

 

レリウスは彼女の様態を確認して呟く。

その様子からして戦うつもりなどさらさらないらしく、それが分かったところで今動けない女神たちは警戒を続ける。

 

「此の度は面白いものを見せてくれて感謝するぞ。しかし、我々はまた機会を見つけて訪れると思っておいて貰おう。・・・時間が無い。では、また会おう」

 

そう告げてから転移魔法を使ってレリウスはレイとイグニスを連れて消えていった。

それから程なくして、浮いていた浮遊大陸はどこかへ飛び去って行く。それはつまり、この戦いの終わりを告げるものであった。

 

「終わったな・・・」

 

「はい。ようやく終わりましたね・・・」

 

飛び去っていく浮遊大陸を見送りながら、ラグナとネプギアは互いに確認し合う。

先程まで曇りきっていた空は、雲間から光が差し込み、段々と晴れていった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「すみませーん!この資材どっちに置けばいいんすかー!?」

 

「ああ、それこっちに持って来てくれー!」

 

戦いが終わってから、四ヶ国で協力し合ってプラネテューヌの復興を行っていた。

教祖間では「わざわざこうして貰って申し訳無い」とイストワールは言っていたが、他の三教祖が全員「事前に同盟の動きを察知し、自ら率先して引き付けてくれたのだから、これくらいの礼はさせてくれ」と言うニュアンスの回答を返して来たので、素直に受け取った次第である。

 

「あっ!こっちの資材必要としてる人いるから送ってくれるかー?」

 

「はーい!それじゃあ積み込み手伝ってもらいますねー」

 

また、復興の手伝いをしている人にはリンダも混ざっており、彼女は資材運搬の手伝いを行っていた。

女神たちの仲が条約を結んで以来非常に良くなっているのが現れたかのように、各国の人たちも分け隔てなく普通に接していたのである。

こうして四ヶ国全ての技術者や建築家の集まるこの空間には国間の距離感など無く、ただ平和と団結を強くするきっかけとなったプラネタワーを持つこの国を速く復興させたいと言う願いであった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ・・・お前らとはここでお別れだな」

 

復興を始めて数か月後。遂にプラネテューヌの復興が終わり、式典を一週間後に控えたこの日、周りの情勢が落ち着いたこともあって、ナオトたちは元いた世界に帰ることになった。

異世界組の中で残るのはラグナ、セリカ、ハクメン、ナイン、トリニティの五人。自分達の世界に帰るのはナオト、ラケル、ノエル、ニュー、ラムダの五人である。

 

「三人がいて賑やかだったのに・・・全員が帰っちゃうとちょっと寂しいわね」

 

ノワールの言うとおり、ラステイションにはノエルら三姉妹がいたことで賑やかになっていた。

仕事で毎日が多忙である中、彼女たちとの会話はそれなりに楽しく、時々手伝ってくれていた事に嬉しさを感じていたのもあり、尚更寂しさを感じるものであった。

 

「ニュー・・・本当に大丈夫?」

 

「大丈夫。もうあの時みたいに、全部が嫌いなニューじゃないから・・・向こうでも何か見つけてみる」

 

当時の事を知っているからこそ、不安に感じたユニが問いかけてみるが、その心配が無駄だと分かるくらい、ニューは明るい表情で前向きな答えを出した。

そんなニューの表情を見て、本当に助けられて良かったと全員が安心した。

 

《ナオト、向こうに戻ったら私が迎えに行くから待ってなさい》

 

「わかった。早めに来てくれよ?」

 

ラケルとナオトは元の世界に戻った時の事を話しておく。

ちなみに、ナオトの問いかけに対してラケルは「私を誰だと思っているのかしら?」と余裕そうに返して見せた。

 

「じゃあ開けるぞ。お前ら、向こうでも元気でやれよ?」

 

「はい。皆さんもどうかお元気で」

 

「皆・・・元気で」

 

「向こうでも元気にやっていくから、心配しないで」

 

「今までお世話になりました」

 

《この世界で過ごすのも楽しかったわ》

 

ラグナが促した後、ノエルたちが順番にそれぞれ別れの言葉を送る。

ラケルの言った言葉に全員が同意の表情をしたので、ゲイムギョウ界での生活はそれなりに満足できていた事が救いだろう。

帰る人たちが言いたいことを言えたのを確認したラグナは、手を触れて『門』を開いた。

元の世界に帰ることを選んだ五人は『門』の中に入り、それが閉じられるまでは見送りに来た全員の方へ振り向いた。

 

「元の世界でも、元気にやるんだよ~!」

 

ネプテューヌが代表して送る声をかけながら手を振り、殆どの人たちはそれに合わせて手を振る。

例外はハクメンとミネルヴァで、自分たちが手を振るのは合わないと分かっていた各々はサムズアップを見せて送るのであった。

少ししてから『門』は閉じられ、彼らはようやく元の世界へと帰還を果たすのであった。

 

「行ってしまったわね・・・」

 

「あの者たちはあれで良い・・・。本来の居場所があるのだからな」

 

ノワールが少し寂し気に呟くが、ハクメンの言葉を聞いた時は頷いて肯定の意を返した。

 

「さて、そろそろ行きましょう。私たちには、これからの事もありますから」

 

イストワールの言葉には誰も反論しない。

これから一週間後には復興した記念の式典があるので、その為のリハーサルも控えていたのである。

そうなればこれ以上長居している場合ではないとなった全員は、この場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「もう明日になったな・・・」

 

「早いですよね・・・あの戦いが終わってからもう数ヶ月経っているんですから」

 

元の世界にいる人たちが返ってから6日後。遂に式典を明日に控えたこの日の夕刻、プラネタワーの屋上でラグナとネプギアは外の景色を眺めていた。

戦いが終わった直後は荒れ果てていたプラネテューヌの国内だったが、今ではすっかりと元通りになっていた。

また、プラネテューヌ国内の復興事態は異世界組が帰還する三週間前には完了しており、ラグナとネプギアの二人は空いてる時間を使って二人きりで出かけたりと、少しづつ距離を縮めて行った。

 

「本当に色々あったな・・・一人の人として生きるようになったし、定職付けた訳じゃないが、真っ当に仕事できてるし・・・」

 

ラグナはこの世界に来てから自分の変化を思い返す。

あの時からすれば考えられない程変化しているのがこれでもかと言う程分かるが、それ以上に大きな変化は他にあった。

 

「よりによって俺が、誰かに恋心抱くとは思わなかったしな・・・」

 

「・・・・・・」

 

照れくさそうに笑うラグナに取って、これが一番の変化であった。

自分はこんなものずっと抱かないまま生きていくのかと思えばいつの間にかこうなっていたので、我ながら何が起きるか解らないなとラグナは改めて実感する。

ちなみにこの時、ネプギアはラグナが好きになった相手が自分で無いならどうしようと言う後ろ向きの感情が現れ、聞くのを躊躇ってしまう。

 

「気になるか?」

 

「・・・気になるんですけど、ちょっとだけ・・・怖いとも思うんです」

 

「そうか・・・」

 

そんなネプギアの反応を見たラグナは、これはいっそのこと自分から伝えた方が良いだろうと思って、「ならここで伝えたいこと伝えるよ」と言って話しを切り出す事にした。

 

「俺の好きになった人って言うのはな・・・」

 

「・・・!」

 

まさか伝えたい事がそれだとは思わず、ネプギアはその場で硬直する。

―本当に自分じゃなかったらどうしよう?ネプギアの思考はそれに支配されてしまったのである。

確かに気になる事ではあるが、いざという時の事を考えると聞きたくない。そんな相反する感情でせめぎ合う事が一瞬のようで永遠とも思えたかも知れない状況を感じ取るが、それはラグナの回答によって氷解することになる。

 

「ネプギア、お前なんだ・・・」

 

「・・・・・・えっ?」

 

ラグナの答えを聞いたネプギアは、思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。

まさかその相手が自分であったとは夢にも思っておらず、それ故に反応が遅れてしまったのである。

 

「えっと、その・・・私の事が好きだって言うのは・・・妹だからとか・・・そう言うことじゃ・・・ないですよね・・・?」

 

ネプギアは確かに『ネプギアとして(今まで通りに)』生きる事を決めているが、どうしてもそれが引っかかってしまっていたのだ。

事実、ラグナも自分がサヤに対してはかなり甘えさせていた事は自覚しており、その部分は絶対に解決させなければならないとは常々思っていた事だった。

 

「んな訳あるか。俺はな・・・一人の女の子としてお前が好きなんだよ」

 

「・・・・・・ラグナさんっ」

 

その言葉を聞いて嬉しさのあまり涙が出てきてしまったネプギアは、走ってラグナの胸に飛び込んだ。

一瞬それに驚きはするラグナだが、大して体制を崩す事は無く、そのまま抱き止める。

 

「私も・・・私も、ラグナさんの事が好き・・・好きなんです・・・!」

 

「・・・・・・」

 

どうして涙ながらに抱きついて来たのか、ネプギアの告白でその意味を理解したラグナは、数瞬の硬直から復帰して穏やかな笑みに表情を変える。

 

「どうなるかと思ったけど、安心したぜ・・・」

 

「それは私もですよ・・・」

 

互いに安堵した旨を伝えてから、顔を見合わせる。

この時ラグナとネプギアは、自分の見つめている相手が他の何よりも綺麗に思えていた。

 

「これからも、末永くよろしくお願いしますね?ラグナさん」

 

「ああ。末永くよろしくな、ネプギア」

 

互いに心を通わせた二人は、夕焼けが差し込むプラネタワーの屋上で唇を重ねるのであった。




少々駆け足な感じになってしまいましたが、これで最終決戦とお別れ、ラグナとネプギアの恋の行方の三点を纏めて終わりにさせていただきます。

残すのはネプらじ回と、最終回のみになりました。
私の今後の予定などは、次回のネプらじ回で軽く話させて頂こうとかと思っています。

最後の2話分も楽しんでいただけたら幸いです。

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