超次元ゲイムネプテューヌ-DIMENSION TRIGGER-   作:ブリガンディ

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ラグナの各国ツアーはこれで一区切りです。

追記:ブレイブルー側からテルミを出して欲しいとのご意見がありましたので、この場を借りて感謝の意を述べさせていただきます。

ご指摘受けたので一部改稿。なるべく早く直そうと思うので、もしここおかしいというところがありましたら、遠慮なく言ってください。
最後に、ご指摘ありがとうございます。


6話 ラグナ、リーンボックスへ

「船旅なんて久しぶりだな・・・」

 

俺はネプテューヌと共にラステイションから出ている船でリーンボックスに移動していた。

しばらくは船の上なので、景色を眺めるくらいしかすることがなかった。

だけど、純粋な船旅ができるので俺は満喫することにした。

 

「やっぱり船旅っていいよね~。こう、風を感じるっていうかさー」

 

「それは違いねえな」

 

船旅を楽しみながらネプテューヌの言葉に同意する。

一面に広がる海と青空。優しく吹き付ける風・・・。

前は蒼の魔導書の使い方を考えるための旅だったのもあってそんなに楽しめなかったけど、今回は新しい場所に行って文化に触れるためだから普通に楽しむことができた。

ちなみに、ネプテューヌが同行してるのはこんな理由があった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「ああー・・・そう言えばやったことないみたいなこと言ってたね・・・。

なら、今回ラグナも連れてくる?リーンボックスに行くついでって言えば来てもらえるかも」

 

「何の話しをしてたんだ?」

 

「おおっ、丁度いいところに!実は今からベールに会いにリーンボックスに行くんだけど、ラグナも来る?

リーンボックスの景色とか見るついでに、私たちでゲームのことを教えたいと思うんだけど・・・」

 

今朝、ネプテューヌの楽しそうな話し声が聞こえたのと、そのネプテューヌから俺の名前が聞こえたので訊いてみたのが事の始まりだった。

リーンボックスに来るから俺もどうかと訊かれた。ついでにゲームのことも教えたいときた。

確かにゲームに触れたことはないからいい機会だし、リーンボックスだけまだ行ったことがなかったな。

 

「そうだな。せっかくだし、同行させてもらうわ」

 

「おっけー!そういうことだからベール、また後でね!」

 

「はい。二人とも、お待ちしておりますわ」

 

俺は何も断る理由がなく、自分もいきたいと思っていたから共に行くことにした。

そうするとモニター越しで話していた金髪を綺麗におろし、緑と白を基調としたドレスを着ている美女、ベールが笑顔で歓迎を伝える。

そうしてネプテューヌとベールは通信を終える。

見た目だけで言えば最も女神らしいだろう。俺も四人で誰が女神というイメージ像に近いかと言われたらベールだ。

 

「じゃあ、準備ができたらプラネタワー前に再集合しよう!」

 

「わかった。んじゃあまた後でな」

 

俺たちはお互いの準備に取り掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

そして今、船旅が始まってからいくらか時間が経った位のところだ。

俺は船の手すりに背中を預けた状態、ネプテューヌは手すりから少し乗り出した状態で風に吹かれていた。

船旅と言えば、暗黒大戦時代に飛ばされた時に一緒にいたセリカのことを思い出す。

親父さんを探しに行くってのにすげえ方向音痴で、途中で当時の師匠がいなかったら間違いなく遭難してたレベルに酷かったからな・・・。アレには相当振り回された。

だけど、姉のナインの「あいつはクズ」って切り捨てるような発言にも「どんなことがあっても大切な家族であることは変わらない」って返せるくらいに芯の強いやつだった。

他にも、傷ついてる人がいると放って置けないくらいなお人よしだった。それは野生の生き物だって変わらなかった。自分を襲った野犬相手にも、正気に戻ったと見るやすぐに治療してやるくらいだったからな・・・。

そういや、俺の蒼炎の書を『護るため』に使うことを提案してくれたのは・・・『居ない筈の者(クロノファンタズマ)』として俺のいた時代で、第二の人生を歩んでいたあいつだったな・・・。

あいつは俺に大切なものをくれた。これからも大切にしていこう。

 

「おーい、ラグナーっ!」

 

「うおっ!?なんだよ耳元でいきなり・・・」

 

俺はネプテューヌのデカい声で現実に引き戻された。

チクショウ・・・珍しく良かったと思えるモン思い出してたってのに・・・。

 

「いやぁ・・・また難しい考え事してるんじゃないかと思ってつい・・・。

って、違う!もうーっ、一対一で話してるのに考え事に走るなんて酷いよ!ラグナが主人公だったら鈍感キャラ確定だよ!」

 

「わ・・・悪かったな・・・。つか、鈍感キャラってなんだよ・・・」

 

割とひでえことをしてたので俺は素直に謝る。

・・・鈍感キャラってなんだ?後、俺一応向こうでは主人公だったみてえだぞ?

そういや、前に『名ばかり主人公』とか言われたっけ?こんな時にどっかの記憶に眠る『強敵(とも)島』に恨みを抱いた。

 

「あぁ・・・そうだよね。そういうのわかんないんだったよね・・・。

でもいきなりギャルゲーじゃあゲームの認識がずれるかな・・・」

 

「・・・その辺は任せるわ・・・」

 

「まぁ、その辺はベールと合流できてからだねー」

 

俺はネプテューヌの話してることがわかんなくなって降参の体制に入る。

正直なところネプテューヌのテンションの高さに馴れきってないことと、この世界の知識が足りないことを補えば、ネプテューヌとの会話はもう少し弾むだろう。

ネプテューヌ自身が明るい空気を作りやすい存在なんだろうな。話してて皆に明るい時間を届けられる才能が羨ましく思えた。

それは紛れもない、あいつの特権とも言えるものだった。

 

「あっ!リーンボックスが見えてきたよ!」

 

「あれがリーンボックスか・・・」

 

ネプテューヌが指さした方を見ると、リーンボックスが近づいていた。

俺は新しい国を見て、心を躍らせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ・・・教会に行かなくていいのか?」

 

「ああ・・・そのことか。実は今日、リーンボックスで新作ゲームが出てるから、ベールが買いに行ってるんだよ」

 

「(・・・イメージと全然違うな・・・)」

 

俺はリーンボックスに着くや否、早くもベールが俺のイメージと全然違うことを思い知った。

うーん・・・何というか、ベールはもっと違った趣味してると思ったんだけどなぁ・・・。

花を愛でるとかそんなことなく重度のゲーマーだったとはな・・・。

正直今回一番驚いていると思う。ブランが読書だったのはすんなり呑み込めた。ノワールはまだ解ってねえけど何の趣味してんだろ?

上手く聞けなかったし、今度チャンス見つけて聞こうか。

 

「着いた着いた~。ここだよ、ベールが普段来てるゲーム屋さん!」

 

「ここか・・・」

 

俺はネプテューヌに案内されながらゲームショップに着いた。

店の入り口の近くでは近頃発売されるゲームのPVと呼ばれるものがいくつか流れていた。

ネプテューヌ曰く、リーンボックスのゲームショップ内で最大の大きさを誇るらしく、リーンボックス系のゲームの大体は揃ってるそうだ。

流石に中古は専門店だろう・・・とか思ったらここはある程度あるらしい。すげえなこの店。

俺はどれから始めりゃいいんだろ?多分今日は参考に色々と教えてもらえるだろう。

 

「今度プラネテューヌの方も寄ってみるか」

 

「そう言ってくれると嬉しいよ。

さて、とりあえず入ろうか。この様子だとベールはまだ並んでるかもだし」

 

俺はネプテューヌについていく形で店の中に入って行った。

 

「おお・・・」

 

入ってすぐ目に映ったのは、ゲームのパッケージがずらりと並んでる複数の棚だった。

あんなにあるのかよ・・・。俺は呆然としながら見ていた。ちなみに店内にも発売したばかりのゲームのためにPVが流れていた。

どんだけ売り込むんだろ?それくらいしないとダメなもんなのか?少し考え込んでしまった。

 

「ああ・・・その気持ちわかるよー。私も最初入った時凄いビックリしたんだよ」

 

「へえ・・・お前もだったのか」

 

なんとなく、入って早々に「おおーっ、すげーっ!」とかって興奮するネプテューヌが簡単に想像できてしまった。

それだけネプテューヌは分かりやすい人物だった。

 

「さて・・・今日は確か・・・。うん!このゲームならこっちだね。ついてきて!」

 

ネプテューヌが店内にあるチラシと、各階に置かれているジャンルを確認して歩き出す。

俺もそれについていく。階段を2、3階分登ったところで・・・。

 

「お・・・」

 

「あら・・・」

 

「あっ・・・」

 

声を発した順番は俺、ベール、ネプテューヌの順番だ。

何があったかって言うと、俺たちがベールに合流するために階段登ってたら、ベールがゲームを買い終えて俺たちに合流しようとしてたらバッタリ出くわしたわけだ。

 

「あら。お二人ともいらしてたんですね」

 

「うん。丁度来たところだけどね。その様子だとゲームは買い終わった感じかな?」

 

一瞬固まってから、一番最初に開口したのはベールだった。それに対して、返事をしたのはネプテューヌだった。

俺もその間に硬直からは立て直した。

 

「はい。丁度買い終わったところですし、早速参りましょうか」

 

「ああ。そうしよう」

 

俺たちは階段を降り始める。俺とネプテューヌに至っては、登ったばっかりだってのにすぐに降りることになるのだった・・・。

 

「(馴れてはいるが・・・めんどくせえなぁ・・・)」

 

俺は降りてる最中にそう思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「ん?ありゃなんだ?」

 

俺は教会に向かう途中一つのデカい会場に目が行った。

 

「そちらは国でイベント会場用に用意されてる施設ですわ。

リーンボックスを中心に活動してる5pb.ちゃんも、よくここでライブを開催してくれてますわ」

 

「なるほどねぇ・・・」

 

5pb.・・・。一応話は聞いてたが、ゲイムギョウ界では大人気のアイドルらしい。

リーンボックスを中心に活動してて、この国では結構な頻度でライブを行うそうだ。

そういや、俺の世界はとことん娯楽が不足していたな・・・。もしカグラに会った時は話してみるか。

時代劇以外にも大勢で楽しめるものが増えるはずだ。

 

「(どんな感じなんだろうな・・・)」

 

時代劇は見に行ったことないからどんな感じかはわかんねえけど、きっとみんなが楽しめる。そんな確信はあった。

俺はライブを見るのが楽しみになっていた。

 

「今度ライブある日は教えてもらえるか?行けそうなら行くわ」

 

「はい。そういうことでしたら後ほど連絡させていただきますわね」

 

そんなこともあってか、俺はベールに訊いてみた。そしたら連絡をするという形で応じてもらえた。

ダメ元でも訊いてみるって意外とアリなんだな。

 

「ライブ行くならサイリウムとうちわを忘れずにね!」

 

「・・・サイリウム?うちわ?」

 

何のこと言ってんだこいつは?まずサイリウムなんて聞いたことねえよ・・・。後うちわも。

異世界であることを忘れた訳じゃねえが、この二つはマジでわかんなかった。

 

「・・・もしかしてだけど・・・ラグナの世界には二つとも無かったの?」

 

「ああ・・・いらなくなったから廃れた可能性もあるが・・・」

 

「まぁ・・・ゲームどころか、娯楽が不足しすぎてますわ・・・。

私、そんな世界ではやっていける気がしませんわ・・・」

 

ネプテューヌの問いに答えると、ベールが嘆く。

ああ・・・うん。多分ベールはあの世界じゃやってけないだろうな。多分ネプテューヌも。

そう思ってネプテューヌの方を見やると、ネプテューヌも沈み込んでだ。流石にこれはヤバい。

俺が何か酷いこと言ったんじゃないかと勘違いされかねない!

 

「ま、まあ。なんかあったとしても俺のいた世界に行くことはないだろうから、その心配はないと思うが・・・」

 

俺は慌ててフォローをする。だが、実際に異世界生活をしている俺が言っても大した説得力はないよな・・・。

何気ない一言で、相手がショックを受けるかもしれないから気をつけろってのはあるけど、こう言うことなんだな・・・。身をもって知ったよ。

 

「ま・・・マジで大丈夫?つか、そろそろ教会に戻ろう?な?な?」

 

俺はこの二人の沈み具合が心配になってひきつった顔になり始める。

そして、この二人が立ち直るのには結構時間がかかった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

俺たちは一通りリーンボックスを回り終わり、リーンボックスの教会前に来ていた。

ベールがドアを開けて入っていくので、俺たちもそれについていく形で中に入る。

 

「ベールお姉さま!お帰りなさい。そしてお二人も、いらしましたわ」

 

入ると早速、リーンボックスの教祖の箱崎チカが俺たちが来たことを歓迎してくれる。

チカは薄緑色の紙にかなり派手な格好のドレスをしている女性だ。

まあ、俺自身、向こうの世界では派手な・・・っつうより肌を多く出す格好してるやつらをよく見てたから馴れてる。

だがまあ・・・普通の人だとそれなりに目をそらしがちになるんじゃねえか?

 

「チカさん、こんにちは!いやー。やっと堂々とみんなのところに遊びにいけるよ」

 

「確かに、和平を結んだのでこれからは気楽になりますわね」

 

ああ・・・俺が和平を結んだ日に来たのもあって、今まで対立があったのを忘れてた。

ジンと一緒にいたツバキ=ヤヨイはこの和平を結んだ世界をみたら一安心するんだろうか?

まあなにがともあれ、平和は大事だよな。

そして俺は、この和平が確かなものになるために『護って』行こう。この世界で迎え入れてくれたみんなの為にも・・・。

 

「・・・っ!?」

 

そう考えた瞬間、ほんの一瞬ではあるが、俺の右目が開いた。一瞬すぎて俺以外は気づけなかったが。

 

「(右目が・・・一瞬だけ開いた・・・)」

 

ベールが「部屋にいるから紅茶を用意してほしい」とチカに頼んでいたので、チカも気づいていないだろう。

そう言えば、ラステイションで右腕が動くようになった時も『護る』に関することを思ってたな・・・。

ということは、『護る』って決意や意思が蒼炎の書再起動のカギか?今度イストワールと話してみるか。

 

「ラグナーっ!そんなところで何ボーっとしてるのー?こっちだってさ」

 

「分かった。すぐ行く」

 

俺はネプテューヌの声で思考を現実に呼び戻され、ベールが普段私事をするときの部屋に向かった。

結局、俺の右目が動いたことは誰も気づかなかったので、後回しにするしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「さてと・・・まずはどちらから始めましょうか?」

 

「んー・・・ゲーム初心者なら難しい操作が多くない方がいいよね・・・」

 

「ん?買ったばかりのやつはやんなくていいのか?」

 

ベールの部屋に入ってから、ベールは早速今まで買ってあったゲームのパッケージと睨めっこしていた。

ネプテューヌもそれを手伝っている。そこで俺が疑問に思ったのは、ベールが今日買ったばかりのゲームを見てないことだった。

 

「ええ。今回買ったのは集まってやるのには向かないタイプですから・・・。

多人数対戦とは言え、オンライン専用ですから」

 

「そうなのか・・・」

 

「ああ・・・えっとね・・・」

 

オンラインとか何だとかって言われてもあんましわかんねえな・・・。

俺のゲームに関する知識がほぼゼロなことに気がついたネプテューヌが俺に簡単な説明をしてくれた。

しかもジャンルごとの簡単な説明もおまけ付きで。マジでありがたい。俺の知識はからっきしだったからな・・・。

 

「それでは、まずはこちらにしましょうか」

 

「えーっと・・・『ギョウ界電鉄』?」

 

「なるほど・・・パーティーゲームなら、右目が見えなくてもそこまで不利にはならないね!

さすがベール!」

 

どうやらこのゲームはサイコロ振ってマスを進んで目的地に向かいながら各国を回って物件を買って収益を上げる。

んで、それらの総資産で勝敗が決まるみたいだ。

操作はサイコロを振る。マスを移動する。物件買う。ルーレット止める。アイテム使う。

そんなくらいらしい。後はそこにハプニング要素も混ざってくるみたいだ。

なるほど。確かにこれなら俺も遊べるな。

俺が「これでいい」と言ったので早速三人でプレイ開始。

ベールが手慣れた操作でルールと人数を決めてる間に、俺はゲームの取り扱い取扱説明書を読み始める。めんどくせえし次から取説にしよう。

取説を読んでいる途中に、プレイ年数とやらと人数等を決め終えて、残りは名前の入力となった。

 

「あっ、そう言えばこのゲーム。名前入力は4文字までだったね・・・。

なんてこった!『ネプテューヌ』って打とうとしても『ネプテュ』までしか入らない!」

 

「まあ・・・。久しぶりなので忘れてましたわ・・・」

 

「うーん・・・だったらこうしよう!」

 

ネプテューヌは自分が女神になった時の名、パープルハートにちなんでか『パープル』と名前を打った。

それに合わせて、ベールも自分の名前まんまから『グリーン』に名前を変える。

俺は『ラグナ』と打とうとはしていたが、この流れでは無理だろう。

 

「皆さん。紅茶が入りましたわよ」

 

「ありがとう。チカ。いただきますわね」

 

ならどうする?そんなタイミングでチカが用意していた紅茶を持ってきてくれた。チカは仕事があるのか、一度お辞儀をしてから部屋を後にした。

俺は置かれた紅茶を早速飲んでみる。

 

「(美味いな・・・。何らかのこだわりでもあるのか・・・?)」

 

紅茶を飲んで、俺はアルカード家でご馳走になった紅茶を思い出す。ヴァルケンハインのじーさんに教えてやりたいもんだが、それはもうかなわねえよな・・・。

気を取り直してゲームの方に思考を戻す。俺は悩んだ末、自分の使っている剣とコートが師匠の盟友である『ブラッドエッジ』のものである言われたことにちなんで、『ブラッド』と打つことにした。

 

「ラグナはどうして『ブラッド』にしたの?」

 

「俺のこの剣とコートが元々『ブラッドエッジ』って人のものだったから、そこから名前を取らせてもらった」

 

ネプテューヌにこのネームにした理由を聞かれたので簡単に答える。

一応聞いた話では俺とほとんど体格とかが同じなんだそうだ。実際のところ俺も使ってて違和感は一切なかった。

それもそのはずだ。『ブラッドエッジ』は暗黒大戦時代に行ってた俺なんだからな・・・。

・・・アレ?変だな。俺『ブラッドエッジ』なんて名乗った覚えねえぞ?何をどうしたらそう伝わったんだ?

 

「へぇ・・・。なんでそんな危なっかしそうな名前してるんだろ?」

 

「俺に聞くなよ・・・」

 

正直そんなこと聞かれても困る。答えようがない。

あの時俺は『ラグナ』ってしか名乗って無かったはずなんだが・・・。

・・・そうか。思い出した・・・師匠に「改めて名前を聞かせてくれって言われた」ときに「『ブラッドエッジ』・・・『ラグナ=ザ=ブラッドエッジ』」って名乗ってたわ・・・。何でこれ忘れてたんだろ?

そんなことはお構いなしと言わんばかりにベールがゲーム開始を決定した。

最初に目的地のためのルーレットが回り、目的地が決定する。とりあえずはそこを目指せってことらしい。

ちなみにプレイヤーの順番はネプテューヌ、ベール、俺の順番だ。この順番になったのは俺が初心者なので手本を見せながらとのことだ。

 

「・・・ん?最初から1000万クレジットもあんのか?」

 

ネプテューヌの手番ではあるが、俺は画面に映ったそのバカみたいな所持金の額を疑問に思った。

確かに名前の後ろに『社長』とかついてるけど・・・。

 

「最初はたくさんあると思うでしょうけど、実は物件の金額も万単位以上ですから、すぐに心もとなくなりますわよ?」

 

「・・・・マジかよ」

 

俺はそれを聞いて啞然とする。そんなにかかるモンなのか・・・。

その後に高いと億は超えると言われた時はもう何も言えなかった。物件購入って大変だな。

 

「あー、大丈夫かな?とりあえずサイコロ振るよー!」

 

そう言って早速ネプテューヌがサイコロを振る。出目は5だ。

 

「おおっ!最初からいい感じ!」

 

そう言って喜びつつもネプテューヌは馴れた手付きでマスを進めていく。

 

「マスを進むごとに出てくるあの矢印はなんだ?」

 

「あれはその方向に進めば目的地に進めると言うガイドですわ」

 

「なるほど・・・」

 

俺はベールに聞いて取説を見てと、二重で確認していく。

 

「うん。まずはプラスマスだねっ」

 

俺が二重の確認を終えると、いつの間にかネプテューヌがマスの移動を終えていた。

俺はまた取説で確認を始める。青色のプラスマスはルーレットで止まった時の分、所持金が増えるみたいだ。

最後に所持金が今これってのが出て、ネプテューヌの手番が終わり、次はベールの手番になる。

 

「さて・・・最初のダイスロールですわ」

 

ベールは普段より少し張り切ってサイコロを振る。出目は6だ。最初からいい数値が出ていた。

・・・ダイスっつったのは気分なんだろうか?

まあそんなことはさて置き、ベールはまるで把握済みとでも言わんばかりにマス移動を進める。

最後の一マスの時だけ一瞬止まり、ガイドの方から逸れた。

 

「ん?そっちでいいのか?」

 

「ええ。あのままガイド通りに進みますと、マイナスマスに入ってしまいますので」

 

俺はそれを聞いて再び取説で確認をする。赤いマスのマイナスマスは、止まった時にルーレットで止まった時の分、所持金から引かれるマスだった。

なるほど。これは確かに、総資産で勝敗が決まるこのゲームじゃ迂闊に止まれないわな。

で、そんなベールが止まったマスは黄色いマスしたアイテムマスだった。

このマスはルーレットで止まった時のアイテムがもらえるマスだ。

 

「ふふっ・・・いいものをもらいましたわ」

 

ベールが手に入れたのは『特急』と言うアイテムだった。

俺は取説に載ってるかを確認してみたら、そのアイテムは乗っていた。

効果は『使ったら一度だけサイコロを三つ振る』だった。その時だけ出目が最低は3、最高で18になるのか・・・確かにいいものだな。

これでベールの手番は終わる。

 

「さあ、ラグナさんの番ですわよ」

 

「よし。やってみるか」

 

俺も二人に倣ってサイコロを振る。出目は3だった。俺だけショボくねえか?

とりあえずマスを進める。後一マスだけ移動できる時に、周りのマスがマイナスマスと物件マスだったので、一先ず物件マスに入る。

 

「物件か・・・」

 

「あら・・・このマスは高かったみたいですわね」

 

物件マスにある物件を買うと勝ちに繋がるのは把握済みなので物件を買おうとするが、初期の所持金じゃ足りないので断念せざるを得なかった。

 

「な、なんて運が無い・・・」

 

「ま、まあ・・・初心者が悲しい目に会うのはお約束だよね・・・」

 

「何のお約束だよそれ?」

 

そのお約束とやらを俺は知らんぞ?そんな感じで俺の手番も終わり、手番が二週目に入る。

 

その後、目的地にはベールが真っ先について、一番目的地から遠かった俺に『貧乏神』とやらが憑りつく。

この貧乏神はなすりつけもできるらしいが、俺の信じられない程のダイス運の無さがそれを何度か拒絶した。クソがっ!何でだ!?

しかもなすりつけに失敗してうっかり5000万捨てられたりもした。この損失は実際に起きたらと思うと想像したくもねえ・・・。

また、途中で貧乏神が変身して『キングビンボー』とやらになり、その時なすりつけが終わってたのでネプテューヌが甚大な被害を受けた。もちろんネプテューヌの絶叫付き。

マジで分かりやすい絵面だ・・・。ゲイムギョウ界で見たゲームのCMでリアクションする人並みに。

他にも、ベールが努力して溜めていた所持金の内の半分を『スリの金次』とやらが盗んだ時は、ベールの目が殺意に満ちた。でも笑顔の表情。見てるこっちが怖いんだが・・・。

 

そして、あっという間に設定していたプレイ年数に到達して、最終決算。

恐ろしい程に運の無さが発揮された俺が最下位。ベールは当たり前と言わんばかりにダントツの一位だった。ネプテューヌは二位に収まる。

 

「ああー!やっぱりベールとやると一方的になりがちだな~・・・」

 

「・・・もの凄い運の無さを見た・・・」

 

「まあまあ。あれは運が悪かっただけですから・・・」

 

実は今回、ハプニング系の被害の内6割方は俺に飛んできている。初心者を優先して殺しにかかるのかよ・・・。

 

「それで?ラグナはどうだった?初めてゲームやってみて」

 

「俺は・・・」

 

ネプテューヌが今回一番大事なことを訊いてくる。確かにみんなで遊ぶのは楽しいだろうが、肝心なのは俺がゲームをやってどう思ったかだ。

俺は少し考える。そして・・・

 

「俺は楽しかったよ。初めてだから疲れたのもあったけど、それでも楽しかったことには変わりない。

やってみて良かったと思うよ。今度自分で何か買ってみようと思うよ」

 

俺はこう答えた。こうやって何人かで集まってワイワイやれたことがなかったから、尚更だ。

今回得られた時間はかけがえのないものだ。それはハッキリとしている。

 

「そう思っていただけると、私も嬉しいですわ」

 

「うんうん!私も誘ってみて良かったよ~」

 

俺の回答に二人も満足してくれた。新しい文化に触れるっていいもんなんだな。

俺はそれを確信した。

 

「そういや、他にはどんなのがあるんだ?俺が今の状態じゃキツイのでもいいぜ」

 

「そうですわね・・・見るだけでしたらかなりありますわよ」

 

せっかくだから他のゲームも見てみようと思い切って訊いてみた。

ああ・・・やっぱり目もちゃんと見えると違って来るんだな。ベールの言葉で俺は確信した。

 

「ネプテューヌ、もう少し付き合ってくださいな?」

 

「もちろん!私はまだまだ行けるよー!」

 

二人の了承もあって、俺は各種ジャンルごとに見せてもらうことになった。

格闘ゲーム。RPG。落ちものパズル。FPS。シューティング・・・と、多数のゲームを簡単に紹介してもらった。

もちろん二人のプレイ付きで。ネプテューヌのテンションの高さと、ベールの説明もあり、楽しさがよくわかった。

この楽しい時間を、一般の人も過ごしてるんだ・・・。『護って』やりたいもんだ。

そう思ったらまた一瞬だけ右目が開いた。二人がプレイに夢中だったので、やはり誰も気がつかなかった。

 

「(・・・『護る』って単語がカギなのか?)」

 

少し考えて見るが、ここで考えてもダメな気がしたので、今は置いておいた。

そうして、楽しい時間はあっという間に過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「いや~。今日は楽しかったよ~」

 

「ええ。私も楽しかったですわ」

 

「二人とも、本当にありがとうな。すげえ楽しかったよ」

 

あっという間に日が沈みそうな時間になり、俺たちは別れの挨拶を始めていた。

もちろん例のごとくリーンボックスの教会前。チカもいる。

 

「ところでラグナさん。住む場所の方はお決まりになられまして?」

 

「うーん・・・まだちょっと決めきれないな・・・。もう少し考えるわ」

 

チカに聞かれて俺はそう答えた。他の国回る最大の理由は住まい決めだからな。

どこにもそれぞれの良さがあって決めきれないのが現状だ。正直もの凄く迷ってる。

 

「ふふっ。リーンボックスに住むのでしたら、いつでも待っていますわよ?」

 

「ああ。善処させてもらうよ」

 

俺はベールの言葉に穏やかな笑みを見せて答えた。自分でもビックリするくらい自然だ。

 

「そろそろ船が来ちゃうから、私たち行くね」

 

「はい。お二人とも、またお会いしましょう」

 

「ああ。またな」

 

俺とネプテューヌは教会を後にし、船の方に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

船に乗った俺たちはまた風に打たれながら外の景色を見ていた。

夕焼けの空と、その色に同化した海を見ると、昼の時とは違う場所を見てるかのように思えた。

 

「そういやネプテューヌ。俺の右目が一瞬だけ動いたのって気づいたか?」

 

「ううん。全然・・・。っていうか動いてたの!?」

 

「ああ。本当に一瞬だが・・・」

 

「そんなぁっ!?ああー、もうっ!私のバカ!なんで見逃しちゃったのさーっ!」

 

俺が右目の話をしてみると、ネプテューヌは結構なリアクションで反応してくれた。やっぱり気づいて無かったらしいが。

やっぱり今度話してみるのがいいだろうな。

 

「まあ、右目のことは今度イストワールに話すとして・・・今日やったゲームは楽しかったよ」

 

「でしょ?みんなでやると普段以上に楽しめるよ!ああ~。楽しかったな~・・・」

 

ゲームの方に話題を変えて見ると、ネプテューヌが余韻に浸る。

やっぱり楽しい時間はいいものなんだろうな。ネプテューヌを見ると簡単にそう思える。

 

「ベール、すげえ強かったな・・・」

 

「しょうがないよ。ベールと一対一でゲームしたら勝てる要素ほぼないもん」

 

あの後ネプテューヌはベールにボコボコにされてた。見た感じ、ベールが異様に強かった。

ネプテューヌでアレなら俺は全部で完封負けだろうな。

 

「なんでかなぁ・・・私、主人公なんだよ?いくらゲームだからってボロ負けってどうかと思うよ」

 

「・・・敗北イベントとやらじゃないのか?数は多いが・・・」

 

と言うか、俺に言われても困る・・・。つか、主人公とかそういうこと言うって大丈夫なのか・・・?

 

「あっ、そうだ。ラグナの右目が治り始めてるなら、その内みんなでゲームやる時にも見るだけじゃなくて済むね!」

 

「そうだな・・・まあ、右目が治った記念で宴会とかの流れもアリな感じもするけどな」

 

「おおっ!それもそれでいいね!だったらみんなの分のプリン用意しなきゃ!」

 

「お前が食いたいだけなんじゃないのか?」

 

みんなで飯食った時も、ネプテューヌがプリンをコッソリ持ってきて食ってたのを見てたので、こいつのプリン好きの度合いはわかる。

そんな風に俺たちは話を弾ませて夕方の船旅をするのだった。




うーん・・・やっぱりゲームとかの中身は細かく書かない方がいいんでしょうかね・・・?
右目はまだ動かない予定だったんですけど、どうせ蒼炎の書再起動で動くし、その前触れ見せた方がいいと思ってこうしました。

BBCPのシナリオ、私的には『ラグナが主人公ならヒロインはセリカ』、『ノエルがヒロインなら主人公はカグラ』なんじゃないかと思う時あるんですよね。
そう言った意味では『強敵(とも)島』の『名ばかり主人公・ヒロイン組』、『真の主人公・ヒロイン組』ってあながち間違ってない気が・・・(笑)。

ギョウ界電鉄は桃鉄のパロとして使わせてもらいました。
私がゲーム自体始めてやったのが桃鉄だったので・・・(笑)。

そう言えばスリの銀次ってどんな時でもジャスト所持金の半額パクるんですよね・・・。
どんな技術してんだろ?億単位の金を浴衣の中にしまうって想像しただけでも大分シュールな光景ですよね・・・(桃鉄Vでの光景)。

次回かその次で蒼炎の書再起動に持って行けそうです。

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