超次元ゲイムネプテューヌ-DIMENSION TRIGGER-   作:ブリガンディ

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今回からアニメ11話に入ります。


56話 変わらない団結

朝早く、己の右腕に妙な違和感を感じたラグナは普段よりも早くに目を覚ました。

 

「・・・どうなってんだ?」

 

ベッドから起き上がって右腕を見つめて見れば、何やら抑えられていたモノを無理矢理引き出されているような感じがしていた。

明らかにおかしいと感じたラグナは、イストワールやネプテューヌに確認を取ろうと思って部屋を出て、普段皆で集まる部屋に移動する。

しかし、その部屋には誰もいなかったので、今度はシェアクリスタルが置かれている部屋に移動してみることにする。こんな判断ができるのもプラネテューヌならではであった。

部屋を開けてみれば案の定、ネプテューヌとネプギア、そしてイストワールの三人がシェアクリスタルの前で何やら話し合っていた。

 

「もういたのか・・・。何かあったのか?」

 

「あっ、ラグナ!丁度いい所に・・・。実はいーすんの持ってるコレとシェアクリスタルを見て欲しいんだけど・・・」

 

「実は、今まで最下位だったはずの我が国のシェアが、信じられない勢いで伸びてたんです」

 

「シェアが増えた証拠に、シェアクリスタルが虹色に輝いているんです」

 

ラグナが問いかけてみると、ネプテューヌが二人に続きを回し、イストワールは曲線を描いて急激に上昇したシェアエナジーの折れ線グラフを見せてくれ、ネプギアに催促されてシェアクリスタルを見て見れば、確かに虹色の輝きを放っていたのである。

 

「なるほどな・・・。そんな勢いで伸びていたから、『蒼炎の書(こいつ)』から無理矢理力を引き出されるようなモノを感じたのか・・・」

 

ラグナは三人から話を聞いて、己の中にあった違和感を解消することができた。

また、ラグナの証言を聞いた三人が、それなら確かにおかしいと顔を見合わせた。

 

「ネプテューヌさん、ネプギアさん。何かシェアを一気に集められるようなことをした覚えはありますか?」

 

「いや?最近は何もしてないよ?こんなに跳ね上がるなら、それこそエディンとの戦いが終わった直後とかの方が自然じゃないかな?」

 

「私のことは表向き出ていないから、それを解決してもあまり変わらないですね・・・」

 

イストワールに確認を取られた二人は、自分の思いつく限りでシェアが一番大きく変動しそうなことを上げてみるが、どちらも的違いだろうと結論が付いた。

これによって明らかに自分たちがやっていないことが判明し、この場にいた四人は嫌な予感を感じるのだった。

 

「となると・・・あいつらの可能性がありそうだな」

 

「シェアの収集装置はもう壊したはずだけど・・・もう一個持ってたとしたら納得だね」

 

ラグナがまず初めに考えたのは、テルミら同盟の仕業だった。

確かにシェア収集装置を使ったことのある彼らが、どこか別の場所でもう一度使うという可能性は十分にあり得る話であり、ネプテューヌも自然と納得できるものだった。

そこまで考えて、ネプテューヌ「あっ」と声を上げた。

 

「・・・どうしたの?」

 

「プラネテューヌのシェアがこんなに上がってるってことは、他の国はシェアがその分落ちちゃってるんだよね?他のみんなが大変な思いしてるかも・・・」

 

「あっ・・・!」

 

ネプギアに問われたネプテューヌが答えれば、イストワールもそれに気がついてはっとする。

元々シェアエナジーはどこかの国が上がればどこかの国、あるいは上がった国以外全ての国が下がるシーソー的なものになっている。

つまり、これだけプラネテューヌのシェアが上がった以上、他の国が急激にシェアの低下を起こしているのは想像に難くなかった。

 

「・・・結構ヤバそうか?」

 

「これで他の皆が狙われたら大変だし、助けに行かないと・・・」

 

ネプテューヌに答えてもらったラグナは確かにそれは大変だと理解する。

しかし、ここでネプテューヌたちが行った場合、この国の守りが一気に少なくなるのでそれも危険ではないかとラグナは考えた。

 

「いや、行くなら俺が行こう。普段から外で回ってる奴が行けば自然に見えるだろうし・・・。ついでに住んでる人たちの様子も見ておくよ」

 

「そうだね・・・それなら、私たちは国内を見ておくよ。女神のみんなに連絡して、こっちでも何か考えとくよ」

 

それ故に、ラグナは自分から行くことを選んだ。いくら団結力が上がったとは言え、流石にここまでのシェア変動が起きた今、ネプテューヌたちが直接行くのは少々危険だろう。

幸いにもその提案はネプテューヌが受け入れてくれたので、この話は長引かないで済んだ。

 

「そのほうが良さそうですね。では、ネプテューヌさんは他の女神の皆さんに連絡をお願いします。ラグナさんは早速調査をお願いできますか?」

 

「分かった。それじゃあちょっと行ってくるわ」

 

イストワールに頼まれて、それを承諾したラグナはすぐに移動を始めるべく部屋を後にして外へと移動した。

 

「じゃあ、私も連絡取りに行ってくるよ。ネプギアは後で対策考えるのを手伝ってもらえる?」

 

「うん。私にできることなら任せて。いーすんさん、また変化があったら教えてもらえますか?」

 

「はい。二人ともよろしくお願いしますね」

 

イストワールに見送られながら、二人も部屋を後にした。

それを見送ったイストワールも、もう一度国内の情勢を調べ直すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「・・・と言う訳なんだけど、最近何かそうなるようなことあったかな?」

 

シェアクリスタルが置かれている部屋を出て早々、自室に戻ったネプテューヌはパソコンを起動して各国の女神たちと連絡を取っていた。

現段階で判明しているのは、プラネテューヌのシェアが急激に上昇すると同時に、各国のシェアが劇的に低下していたこと。ラグナは『蒼炎の書』から無理矢理力を引き出されるようなモノを感じたことの二点だった。

また、推測できる状況としてはマジェコンヌらの同盟が、何らかの方法でプラネテューヌにシェアを集めたいことであり、エディンとの戦いの結果が遅れて反映されたと言う説も確かにあったものの、それなら、苦労しているのは全員同じである為、ここまで差は付かないと判断を下された。

プラネテューヌで起きた出来事のみでは判断が難しい為、こうしてネプテューヌは他の女神たちに何かあったかを聞いてみることにしたのだ。

 

「こっちは特に無いわね・・・。ラステイションでも、その同盟の説が一番強くなりそうね」

 

「ルウィーもそうなりそうね・・・。この期に及んでプラネテューヌの策略なんて思えないから」

 

「リーンボックスも、同盟によるものと仮定すると思いますわ。ただ、一つ気になるのですが・・・」

 

ベールが言いかけたので全員が一度聞き耳を立てる。もしかしたら自分たちが見落としている所に気づいているかもしれないからだ。

 

「仮に同盟の仕業だとして、どうしてプラネテューヌにシェアを集めたのでしょう?それが気がかりですわ・・・」

 

『なるほど・・・』

 

ベールの話を聞いて確かに、と三人は頷いた。

どうして彼らがプラネテューヌにシェアを集める必要があったのかを皆で考えてみたところ、一つの回答にたどり着いた。

 

「もしかしてだけど・・・仲間割れを誘ってるんじゃないかしら?」

 

「・・・否定したいところだけど、確かにあり得そうね」

 

ノワールが出した回答を、ブランは肯定したくは無かったが、納得せざるを得なかった。

また、それはネプテューヌとベールも同じであり、プラネテューヌを選んだのは、仲間意識の強いネプテューヌの居ない場所にシェアを送ると失敗する可能性が高いからだろう。

しかしながら、ネプテューヌのみならず、全員が仲間意識を強く持っている今では殆ど効果を出さずに、彼女らに警戒体制を作ったり、対策を作り上げる準備の時間を与えてしまう結果になっていた。

とは言え、彼女たちの気づかぬところで最後の準備をするのも目的に入る為、そちらの点では成功と言えるだろう。

ここまで纏め終えて、彼らの思惑通りに行かせない為に対策を作り上げるべく考え込んだところ、ネプテューヌが一つ提案を思いついた。

 

「じゃあさ、私のところはシェアが一位になった記念で何かイベント開いてみるから、その間に調査をしてみようよ。みんなに手伝ってもらえば何か手がかり見つかるかもしれないし」

 

ネプテューヌの提案は、同盟たちがネプテューヌが持っている思考の変化に気が付かなければ時期もあって釣り餌にはとても効果的になると思える。

それは名案だし、戦争になってしまったので国民たちが久しぶりに楽しめるイベントとしては中々良いものである。

表向きにも良い案であった為、ここでノワールが同盟をおびき寄せる為にももう一つの提案を上げる。

 

「いっそのことだけど・・・私たちがシェアの影響で仲違いをするフリをするのはどうかしら?その、あえてあっちの思惑に乗るって言う意味で」

 

「それは問題ないけど、やるなら私たち四人だけがそうなっているようにする段取りにしましょう。他のみんなには伝えるだけで、フリをしている時だけ付き合ってもらうようにすれば問題ないはずよ」

 

「それが良さそうですわね。この通話が終わった後すぐ、身近な人たちからその旨を伝えていきましょう。遠出をしている方がいたら、見かけ次第伝えてもらう方針で良いでしょうか?」

 

「うんっ!それじゃあ、イベントの内容とか決まったらその時はまた連絡するね」

 

ノワールの提案は諸刃の剣に見えるかもしれないが、やるだけの意味があると判断されたことで採用されて、全員に伝達を行いイベントの内容が決まり次第また連絡に落ち着いた。

―二度あることは三度あるとも言うけど、三度目の正直で終わってくれると良いなぁ・・・。通話を終了した後部屋を後にしたネプテューヌはそんな希望を抱いていた。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「(モンスターの数がいつもより少ないな・・・。シェアエナジーの量が影響してたりすんのか?)」

 

プラネテューヌを出てラステイションに向かう傍ら、道中のモンスターの数が明らかに少ないとラグナは感じていた。

人々から得る信仰によって、信仰してくれる人たちに守護を与えるという結果がモンスターの数(ここ)にも反映されていたのだろうか?バイクで走り抜けるラグナの中にはそんな疑問が浮かんでいた。

何やらモンスターもこちらを警戒して、見かけ次第すぐに距離を取ってしまうので一々迂回することも無く最短ルートでラステイションまでたどり着いてしまった。

 

「なんかモンスターの様子がおかしかったんだが、何かあったか?」

 

「さあ?詳しくは解りませんが、プラネテューヌのシェアが影響しているんでしょうね・・・」

 

ラステイションに着いたラグナは、早速交通管理を行っている男性に聞いてみたが、彼も詳しくは分からないものの推測は自分と近いものだった。

 

「そっか。ありがとうな」

 

答えてくれただけでもありがたいと感じたラグナは、礼を言って国内に入っていく。

ラグナが国内を見て回った見解としては、一応ネプテューヌらプラネテューヌの女神への批判等の声は聞こえなかった。

何でも、「最も大変な女神同士の戦いを請け負ったのだから、こうなっても仕方ないだろう」というのが、ラステイション国内にいる人々の声だった。こう言われればラグナも納得できた。

ラステイションにいる人たちは女神が結果を出すことを望んでいる人が多いので、今回大きな結果をだしたネプテューヌに向けて一時的に信仰が変わっていると考えれば案の定この国は自然と思えた。

 

「(自然にそうなるような信仰のしかたに変えられてんのか?もしそれだったら判断が付かねえが・・・)」

 

ラグナはそれがまさかとは思いたいが、もしそうだった場合はとてもではないが判別が付かない状況になるので、それだけは勘弁願いたかった。

見た限りではそう見えないのでまだ良いのだが、どこかにテルミらが隠れているかもしれないので油断はせずに近くを歩き回ってみる。

 

「あっ、ラグナさん。ここにいたんですね・・・」

 

「お?ノエルたちか・・・何かあったのか?」

 

ラグナが暫く歩いていると、ノエルら三姉妹に遭遇し、ノワールから伝言を預かっていたノエルが、女神たちの会議で決まった事をラグナに伝えた。

会議で決まった内容としては、四女神のみで仲違いをしているフリを演じることと、同盟たちをおびき出す為、国民たちが久しぶりに楽しめるように、プラネテューヌはシェアが一位になった記念としてイベントを開くことが決まったのが伝わった。

 

「なるほどな・・・。取り敢えず、それは候補生や俺らも全員共有する情報ってことか」

 

「はい。他にも、暫くの間外を回るのは私たちが中心になるみたいです」

 

「ああ。俺がネプテューヌに提案したのがそのまま通ったのか・・・」

 

一先ずネプギアたちがそんなことしなくて済むと分かって一安心するのと、自分たち異世界組が中心になって外回りをすることになるのは予想通りだなと感じた。

そうであるなら、バイクによって移動速度が速く、人手の多いプラネテューヌに居住している自分が主軸になった方が良いだろうなとラグナは考えた。

ナインは常日頃多忙な一日を過ごしていたり、セリカはミネルヴァ無しでは戦闘力が皆無である為、リーンボックス組は厳しい。

また、ハクメンは移動速度や体力的な意味では全く問題ないが、ハクメンが動き回るとルウィーには異世界組がいなくなるので無理にやらせる訳には行かない。

そして、最後にラステイションの三姉妹だが、こちらはニューの戦闘力が失われてしまっているので非推奨である。

この他にも、現状『蒼』を保有しているのはラグナとネプギア、こちらは『眼の力』ではあるがノエルの三人で、この中で唯一足が軽く、立場に縛られないのはラグナ一人だからである。

 

「教えてくれてありがとな。他にも何かあったら教えてくれ」

 

「わかりました。ラグナさんも気を付けて」

 

「おう。お前らも程々にな」

 

「分かった。程々にする」

 

「ラグナ、頑張ってね」

 

三人に見送られながら、ラグナはラステイションを後にしてルウィーの状況を確認するべく再び移動を始めた。

 

「(ラステイションはあまり怪しい感じしなかったが、ルウィーはどうだろうな・・・?)」

 

ラグナが移動しながら考えていると、久方ぶりに右腕が妙な重みを感じた。

何が起こったのかと思ったラグナが右腕をちらりと見やれば、己の右腕が蒼い炎のようなものに包まれていることに気が付いた。

それはすなわち、誰かがこの世界に来たという証拠だった。

 

「(幸いにも進行方向だし、ついでに確認してみるか)」

 

今回も例のごとく自身に近い場所で起きたことなので、ラグナは一度そちらに向けて進路を変更した。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・?」

 

自身の頬に冷たい何かが当たっているのを感じた女性はゆっくりと目を開けて起き上がる。

地面は雪で覆われており、冷たいと感じたのはそれが理由であることと、ここが見知らぬどこかであることは分かった。

 

「眼鏡は・・・大丈夫みたいですねぇ」

 

自身のかけている眼鏡に汚れ等はついてしまっていないかどうかを確認してみたところそれらは無かったので一安心する。

この他にも、事象兵器(アークエネミー)雷轟(らいごう)無兆鈴(むちょうりん)』が手元にあったことも大きい。

これがあれば戦闘が苦手な自分でも、ある程度までなら脅威を追い払えることができるし、自身が得意とする錬金術を組み合わせれば必要な物も作り出せる。

そこまでは良いのだが、肝心な疑問が解決できていない。

 

「ここ・・・どこでしょうかぁ?」

 

確か自分は最後、『窯』の中に沈む事を選んだ仲間を見送った後、あの世界から消え去ったはずである。

であればここは死後の世界なのかと考えたが、如何せん自身の体がハッキリしすぎていることと、大地を踏みしめている感覚が確かにあるので、そうだと断定できないのが悩みであった。

また、もし自分が生きているのであれば、周りが雪に覆われていてどこだかわからないのはかなり問題である。

 

「このままではいけませんね・・・。どこか人がいる場所に・・・。・・・?」

 

このまま過ごしているといずれ飢え死にが待っていると確信した女性は、すぐに移動を始めようとしたが、何かの音が聞こえてその判断を保留する。

暫く周りを見渡してみると、何やらうっすらと影が見える場所があったので、彼女はそちらを注視する。

少しずつ影の形がハッキリしてくると、その影の正体が見覚えのある人物であることが判明して驚くことになる。

 

「・・・ラグナさん!?」

 

まさかどこかもわからないところに、ラグナがいるとは思てもみなかった。更には自分の服装と同じ色をしたバイクに乗っていることもそれに拍車をかけていた。

誰かに行き道等を聞かなければ不味いと思っていたのだが、仮にラグナが知っているのなら最も気が楽だと感じた。

また、ラグナも自身を見て気が付いたのか、女性のすぐ近くでバイクを止めてくれた。

 

「トリニティか・・・」

 

「・・・!ラグナさんで間違いなさそうですね」

 

自身のことを知っていたので、女性・・・トリニティ=グラスフィールは安堵する。

ラグナもラグナで、トリニティがこちらのことを正しく認識してくれたことをありがたいと感じるが、確認しておきたいことと彼女を案内せねばならないことを思い出して気を引き締め直す。

 

「そういやトリニティ、こっちに来る前、自分に何があったかは覚えているか?」

 

「ここへ来る直前・・・ハクメンさんが『ユニット』ごと『窯』の奥深くに沈んでいくのを見送った後、静かに消えていったことですねぇ。ラグナさんにあの二人を任されて別れた後のことです」

 

「なるほどな・・・」

 

―それなら互いの持つ記憶に差は無いから安心だな。トリニティの答えを聞いたラグナは安堵する。

しかしながら、この時期に来たとなれば説明するのに中々苦労するだろうとラグナは感じた。何しろ自身とハクメンの接し方やネプギアのことなどでかなり驚かせ続けるのが目に見えていたからだ。

 

「取り敢えず話さなきゃいけないことは色々あるんだが、長くなるしここから人のいる場所まで移動するのは少し時間かかるから、取り敢えず移動しよう。後ろに乗ってくれ」

 

「わかりました。お願いします」

 

一先ずここで話し続けると互いの体に悪影響が出るのが目に見えているので、トリニティはラグナの提案を受け入れバイクの後部座席に乗せてもらう。

トリニティが乗ったのを確認したラグナは、安全と距離の短さでバランスの良い道を選んでルウィーまで進むことにした。

というのも、トリニティの体力がかなり低いことが影響していた。

 

「なるほど・・・ここはそういう場所なんですねぇ・・・」

 

ラグナはまず初めに、ゲイムギョウ界が現状どんな世界であるのかを話した。

事象干渉が存在しない。女神がいるのだが、それは人々と相互関係にある存在であること等々、話を聞いたトリニティは率直な感想を述べるのだった。

 

「他にも、こっちに来て変ったやつは色々いるんだ。俺はもう反逆なんかしてないし、ハクメンは俺への接し方が大分変ったな・・・。他にも、ニューは俺たちに救い出された後は自分がどう生きたいのかを考えながら楽しんで過ごしてたりな・・・」

 

「えっ?あ、あの・・・私たち以外にも来ている人がいるのですか?」

 

「ん?ああ、そういや言ってなかったな・・・今来てるのは、俺、セリカ、ハクメン、ナイン、ナオト、ラケル、ノエル、ニュー、ラムダ、テルミ、レリウス、そしてトリニティを入れた十二人だな」

 

「そ、そんなに来ているだなんて・・・」

 

トリニティが驚いたのは自分が言ってないせいでもあるし、そもそも自分ら以外来ているとは思えないので仕方ないことではある。

ラグナに教えてもらっている間は驚きながらも普通に聞いていたトリニティだが、少し落ち着くと複雑な表情になる。

 

「テルミさんも・・・こちらにいらしていたんですね・・・」

 

その名を聞いたトリニティは心持ち穏やかにはなれなかった。

自身がイシャナにいた頃、気にかけていた男子生徒が変わってしまったのにはテルミが一枚嚙んでいるせいである。

それ以外にも、『エンブリオ』にてようやくラグナが倒して終わったと思っていたら、この世界で普通に生きていると言う事実も大きい。

この他にも、ハザマがいないことは気がかりではあったが、厄介事を期待してはラグナたちが変身大変だろうと思い、その考えは捨て置くことにした。

 

「どうにも女神を倒したい奴らがいてな・・・。テルミとレリウスは、そいつらと手を組んでるから、女神たちのところで世話になってる俺らとは度々ぶつかってる」

 

こちらでは前の世界と比べて時間が短いのもあるが、未だに決着は付かず終いであった。

また、前回があまりにもあっさりとテルミたちが引いていったこともあり、何かデカい隠し玉を持っているとラグナは考えていた。

流石に何を持っているかまでは把握できていないものの、それが当たっていることはこの時知る由も無かった。

 

「私も手伝います。テルミさんを止めるなら、アレが使えるでしょうから・・・」

 

「そうだな・・・もうすぐで俺の向かってる場所に着くから、そこで詳しく話そう」

 

「わかりました」

 

話している内にルウィーの街並みが見えて来たので、一度話を打ち切って教会まで走り抜けることにした。

ルウィーは丁度除雪が終わった頃だったのか、特に足場を気にする必要が無かったので、普段よりも早くたどり着くことができた。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「まさか、御前まで此の世界に来るとはな・・・」

 

「はい・・・全くの予想外でしたぁ」

 

そして、ルウィーの教会についてすぐ、電子画面越しで今いる異世界組の全員と、ゲイムギョウ界で暮らしている女神とその身近にいる人たちと、トリニティは顔合わせすることになった。

まず初めに呆れ気味に驚いたのはハクメンであり、トリニティもこうなると思っていなかったので同意を示した。

何しろハクメンは己の躰となっている『スサノオユニット』を、トリニティの計らいで『境界』の奥深くに封印してもらい、トリニティはそれを見送ったあと元いた世界を一人静かに去っていき、世界の情勢を考えれば互いに二度と合わない方が望ましいとすら言っていたにも関わらず、こうしてまた再会したせいである。

この事情を聞いた他の全員は流石に笑えないものがあった。また、全員は異世界組の状況は詳しく話さなければならないのかと思ったが、ラグナから簡単に聞いているから後で確認程度で大丈夫な旨をトリニティが伝えてくれので、随分と気が楽になった。

 

「後は・・・テルミさんがいるとは聞きましたので、私がやることと言えばやっぱり・・・」

 

『ええ。トリニティには『刻殺しの刀(ヒヒイロカネ)』を作って欲しいわ』

 

ナインの口からでた『刻殺しの刀(ヒヒイロカネ)』が何か分からず、ゲイムギョウ界組が首を傾げるのが見えたナインは「後で話すわ」と伝えて我慢してもらうことにした。

他にも、今現在のシェアの状況や、テルミたちが仲間割れを狙っているなら敢えてそれに乗っかるという意図を伝えた。

そして、大体の話が纏まったので、最後に住む場所を決めることになった。

 

『そう言えば、ルウィーは今までハクメンさんしかいませんでしたね・・・』

 

「確かにそうね・・・。それと、その『刻殺しの刀(ヒヒイロカネ)』を作るのに時間が掛かるなら、ルウィーから移動しないですぐに始めた方が良さそうね」

 

ノエルの思い出したように言った一言もそうだが、『刻殺しの刀(ヒヒイロカネ)』が間に合うならそれに越したことはないだろうとブランは考えた。

当然それに反対する人はいなかったのと、トリニティが別に構わないと言ったので、彼女はルウィーで過ごすことが決まった。

 

『あっ、そうそう。『刻殺しの刀(ヒヒイロカネ)』を作った後なら、トリニティに遊んでもらうのは大丈夫でしょうけど・・・眼鏡だけは汚さないようにね?』

 

『・・・あっ!そうだった!二人とも、眼鏡だけは汚しちゃダメだよ?』

 

「「・・・・・・?分かった・・・?」」

 

解散の直前、ナインが言ったことをセリカが全力で肯定する。

それを聞いたロムとラムは困惑したものの、返事をした後ハクメンが何やら神妙な様子で頷いたので、眼鏡を汚さないように気を付けようと心に決めた。

ネプテューヌがまたイベントの企画考案に戻らなけらばならないため、全員が一旦解散という形になった。

 

「さて・・・じゃあ、俺はそろそろ行くよ。ルウィーとリーンボックスの国民の様子も見ておきたいしな」

 

「わかったわ。何かあったら連絡お願いね」

 

「おう。それじゃあな」

 

そして、ラグナも教会を後にして、ルウィーの街へ再びバイクを走らせるのだった。




色々考えた結果、ヒヒイロカネは必須モノだと判断したためトリニティがこのタイミングで参戦することになりました。大分遅くなったなと思います。

次回はこのままアニメ11話の続きに行きたいと思います。

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