超次元ゲイムネプテューヌ-DIMENSION TRIGGER-   作:ブリガンディ

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何とか早めに書き終えることができた・・・。

確認してみたけど字数今回すげえ増えてました(笑)。
1万字超えてる・・・。


5話 ラグナ、ルウィーへ

ルウィーに向かう途中、俺はアイエフとコンパに様子を見てもらいながら、少し攻撃的なモンスターと戦っていた。

様子を見てもらう理由として、両腕が動くようになったからとは言え、まだ右目は見えないから万が一の時があったらフォローしてもらうためだ。

ちなみに、アイエフとコンパはルウィーに出掛ける予定だったので、俺もついていく形で共に行動している。

今回のモンスター討伐はちょっとばかし寄り道がてら付き合ってもらってる。返事二つで了承してくれたもんだから正直ありがたかった。

 

「おぉりゃっ!」

 

俺は最後の一匹に対して両腕を使って剣を上から真っ直ぐに振り下ろして叩っ斬る。

モンスターは光となって霧散した。

 

「ここで打ち止めか・・・」

 

俺は一通りモンスターを倒し切ったので周囲を見回して、モンスターがいないことを確認できたので、剣を腰に下げ直す。

この時柄は右側に出るようにした。また右腕で触れるようになったんでな。

 

「わりいな。ルウィーが遠いっつうのに付き合ってもらって」

 

「大丈夫よこれくらい。にしても見違えるくらいに動きがよくなったわね・・・。

右腕が動くようになったからかしらね」

 

「ははっ。違いねえな」

 

実際のところ、右腕が動くようになったのは大きかった。

右腕が動くようになったおかげで重心のバランスは非常に取りやすくなり、剣を振った時のフォロースルーも簡単になった。

皆に負担をかけることは減るから一緒に戦う際に動きやすくもなるだろうな。それと・・・

 

「これなら、ケガをしないで済みそうですね♪」

 

そう。安全第一って思考を持ってたわけではないが、傷を負って心配させる確率だって下がる。

この回復具合なら、もうじき右目も見えるようになって、誰も心配させることなく単独行動ができるようにもなるな。

 

「さて、さっきも言ったけど、ルウィーまで結構遠いし、そろそろ行きましょうか」

 

「はいです」

 

アイエフに促され、俺たちはルウィーへの道を進んだ。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「すげえな・・・道が一気に白くなってやがる・・・」

 

「ルウィーを行き来するときは毎回見ることになるから、早めに馴れるといいわ」

 

ラステイションを経由してルウィーへと続く道を進んで行くと、途中から道が一気に白くなっていた。

ブランたちは他の国へ行くときに毎回この光景を見るのか・・・。俺としてはちょっと面倒である。

そういや、俺が窯を破壊した後の場所は環境崩壊の影響で雪が降り止まなくなっていたな・・・。ルウィーは毎回雪が降ってるわけじゃないが。

あの時は窯とサヤのクローンである素体を破壊するのが正しいと思って行動してたが、今は結構酷いことをしたなと思ってる。

なんたって、一般の人に被害を被らせるからな・・・。あの時の俺は間違いなく力の使い方を間違えていたな・・・。

過ぎちまったことは仕方ないが、これからは使い方を間違えないようにしよう。俺の蒼炎の書は『護るため』の力だからな。

さて、湿っぽい話は一度切るとして・・・ルウィーへ近づくたびに段々と空気が冷えていくのが分かる。

俺は夜とかも一人で行動してたりするから意外と平気だったりするが、アイエフやコンパの格好を見ると少し不安になって聞いてみたくなった。

 

「ところでお前ら、その格好で平気なのか?」

 

アイエフはコートを着てるとは言え、脚のほとんどが出ているし、コンパも上着の確かにセーターなのだが、肩が出ている。俺だけ首から上くらいしか出してないので、俺が異常に感じてしまった。

 

「ええ。全然平気よ。」

 

「ルウィーは思ったより寒くないですから、普段の格好でも平気ですぅ」

 

「ま、マジかよ・・・」

 

そういやブランも肩思いっきり出してたな・・・。

お前らなんでそんなに寒さの耐性高いの?俺が低いのか?ゲイムギョウ界に来てからまだ日が浅いせいでこういう状況になると時折混乱する。あと何回こういうことが起こるんだろうな・・・。

 

「ルウィーに着いたら上着を買うかどうするか聞こうと思ったけど、その様子なら平気そうね」

 

「ああ。俺は平気だ。そういや、最初はやっぱり教会に行くのか?」

 

「はいです。ラグナさんが来るなら案内してほしいって頼まれてるですぅ」

 

俺は別に寒いとは感じなかったので、上着の増加は避けることにした。多分買っても着ないだろうしな・・・。

俺はそのままルウィーに付いたときどうするかを訊いてみる。そうすると今回はコンパが答えてくれた。

 

「おお・・・律儀なこった」

 

ルウィーの教祖、西沢ミナは礼儀正しいな。俺は感心した。

 

「おっ、見えて来たわね・・・ラグナ、あれがルウィーよ」

 

「あれがブランの治める国、ルウィーか・・・」

 

アイエフが指さす方を見ると、そこにはルウィーの街並みが見え始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

俺たちはルウィーに来て真っ先に教会に向かい、今は教会のドアの前に来ていた。

 

「あっ、ラグナさん。教会に入ったら上に気を付けるですよ?」

 

「・・・上に気を付ける?」

 

上に危ないもんでもあるのか?それだとしたら一旦直した方がいいんじゃねえか?俺はコンパが言った言葉の意味が分からず不安になる。

 

「すぐにわかるわ。とにかく入りましょう」

 

「お、おう・・・」

 

アイエフに促され、俺はとりあえずドアノブに手をかけてドアを開けた。

教会の中に入って、まずは人がいるかもしれないから前を確認。まだ人はいなかった。

人がいないことを確認して、俺は一度上を見る。何かが少しずつ近づいてくるのが分かる。

そして、それがはっきりと見えてくると俺は近づいてきているものを見て焦る。

 

「うおぉっ!?」

 

俺の眼前に迫ってきているものは分厚い本だった。俺は慌ててそれを両腕を使って白刃取りのようにキャッチした。

危ねえ・・・もう少しで意識が飛ぶところだった・・・。

 

「ね?言ったでしょ?上に気をつけろって」

 

「だ・・・誰がこんな質の悪いことをやるんだ・・・?」

 

「大体予想はつく・・・というより、そんなことをやる子がルウィーには一人しかいないですぅ」

 

コンパ・・・それ笑顔で言うことじゃねえよ。つか、笑顔で言われて余計に怖えよ・・・。

俺は本の分厚さに啞然としてたため、即座に声を出してツッコむことはできなかった。

 

「あれぇ?ミナちゃんかと思ったら違う人だったぁ・・・」

 

「違う人だった・・・」

 

上から声が聞こえ、ぱたぱたとした足音が二つ聞こえてくる。

そして、少しすると目の前にあった階段から一人の幼い女の子が降りてきて、それに遅れる形でもう一人の女の子が降りてきた。

 

「あっ、誰かと思ったらラグナさんたちだー・・・って、ラグナさん右腕動くようになったの!?すごーい!」

 

「っ・・・ホントだ・・・右腕が動いてる・・・(おろおろ)」

 

俺の右腕が動いてるところを見るや、ピンクと白を基調にした防寒着に、帽子を被っている薄茶色の髪を伸ばしてる幼い女の子、ラムがはしゃぐように反応をする。

それに対して、薄茶色のショートヘアーをして、ラムと同じ格好をしているが、ピンク色の部分を水色に変えた格好をしているロムは、ラムと対照的に一歩後ろに下がって少し怯えてる。

 

「そっか・・・ロムはまだ馴れねえか・・・」

 

「大丈夫だよロムちゃん。ラグナさん、『いい人』だから」

 

どうやら俺が『死神』と呼ばれていたことを話した時から少し怯え気味らしい。俺は右手を使って頭を掻いた。

あの時は正直に話すしか無かったとは言え、少し申し訳ないことをしたなと思う。

その分、今は関係ないと言わんばかりに普通に接するラムを見ると少し安心する。ラムはすんなり俺を『一人の人間』として受け入れてくれたみたいだ。

しかし・・・『いい人』って聞くとタオのことを思い出すな・・・。

あいつ、新しい世界じゃ何やってんだろ?また腹すかせて倒れたりはしてねえよな・・・?もう肉まんは奢ってやれないからな。自分で何とかしろよ?

 

「ん?ラグナ、どうかしたの?」

 

「別に。ちょっと向こうにいたやつのことを思い出してな・・・」

 

「どうやら無事に到着したみたいね」

 

アイエフに聞かれて俺は思考を現実に戻す。

そこに俺たちが話してたのが聞こえたのか、奥の部屋からブランが出て来ていた。

ブランは薄茶色のショートヘアーに白い帽子、それに白いワンピースみたいな格好をしている少女だ。

だが・・・ルウィーがそんなに寒くないとは言え、何で雪国でそんなに格好してられんだ?肩は出てるし、脚に至ってはほとんど出てるし・・・。マジで平気なのか?ブラン?

 

「おう。ちょうど今だがな」

 

「皆さんいらっしゃいませ。それとすみません・・・

本当は案内だけで済むはずでしたが、この二人がついていくと言って聞かないので・・・」

 

「大丈夫ですよ。そのために私たちが来たんですから」

 

ミナもブランの後からやって来て、挨拶と謝罪をする。なんでも、本当はブランと俺だけでルウィーを回らせるつもりが、ロムとラムがついていくと言って聞かないんだそうな。

ちびっ子の面倒見る教祖って大変だな・・・俺らも最初はこんな感じでシスターに迷惑かけてたのだろうか?いや、よそう。シスターは俺たちを安心させてやりたかったんだから・・・。

 

「すみません。本当にありがとうございます」

 

ミナはそう言って頭を下げる。こんなに普通な雰囲気纏ってる教祖は初めてみたぞ・・・。

イストワールはなんか性格に見た目が追いついてないし、ケイは仕事命みたいな印象を受けるし、チカはもう格好が危ない店の人みたいな感じだし・・・。

 

「それでは皆さん、私はこれで」

 

そう言ってミナは一つお辞儀をしてから奥の部屋に戻って言った。ミナは仕事に戻るようだ。

 

「ええ。また後でね・・・さて、ここで話しているのももったいないし、スケジュールの確認をするわ。

まず、ロムとラムの面倒を見ながらまずは周りを見て回る。その後は図書館へ言くわよ」

 

「わかったですぅ♪」

 

ブランが今日の俺たちの行動を教えてくれる。ちなみにここで言う図書館は『世界虚空情報統制機構(図書館)』ではない。

これは統制機構があの世界にある魔導『書』の殆どを独占管理してることが気に食わない、もしくは統制機構に反発してるやつらの呼び方だ。

もちろん、サヤを利用して実験をされてた以上、俺も反発していた人間に入る。関係ない一般兵士のやつらには悪いがな。

 

「・・・?ラグナ、あなたどうかしたの?」

 

「え・・・?ああ、悪いな。ちょっと『図書館』って単語にいい思い出がなくてな・・・」

 

ブランに聞かれ、俺は慌てて思考を現実に戻す。よせよせ。もうサヤは助けたし、こっちに統制機構はいねえからな。

全く、せっかく新しい生活したんだから、つまんねえ考えはよそう。

 

「そうだったのね・・・。さて、時間がもったいないからそろそろ行きましょうか」

 

「はーい!」

 

ブランの促しにラムが真っ先に反応する。俺たちは教会を後にする・・・かと思えばそうは行かなかった。

 

「っと・・・その前にラム。あなたはその本を戻して来なさい」

 

「はーい。あ、ラグナさん。持たせっぱなしでごめんね」

 

「そうだったな・・・。ほら、ちゃんと戻して来いよ?」

 

ブランに言われ、ラムは俺から本を受け取る。

 

「うん!・・・ってあれ?ロムちゃん。この本どこに置いてあったっけ?」

 

「こっちだよラムちゃん。ついてきて(きりっ)」

 

「うん!」

 

ラムはロムと階段をさっき降りてきた階段を登って本を戻しに行った。つか、俺もついさっきまで本のことを忘れてた・・・。

そして、俺たちが教会から出たのは5分後のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

俺はルウィーの色んな場所を案内してもらいながらみんなとルウィーの街並みを歩いていた。

その歩いてる途中、俺たちの視界に建設中の施設が入った。

 

「あれはなんだ・・・?」

 

「あれは近いうちに新しく出来上がる遊園地みたいなものよ」

 

「なるほどねぇ・・・」

 

建設中って聞くとカグツチを思い出すな・・・。あそこはまだ『未完成都市』だったからな・・・。

 

「早く行きたいね、ロムちゃん!」

 

「うん。わたしも楽しみ♪」

 

ロムとラムは顔を見合わせて笑顔になる。よっぽど楽しみにしているんだろうな。

本当に仲のいい双子だと思うと同時に、ジンとサヤが双子だったら俺らの教会での生活はどうなってたんだろうかと考える。

『あの日』の惨劇は俺が『サヤの方が小さいから我慢しろ』と言わんばかりにサヤに構うあまり、ジンの不満に気づけなかったからなんだろうか?

そうだったとしたら、あいつらが双子の場合、俺は同じくらいにあの二人に構ってやれたろうか?

確かに俺はサヤの方を優先してたが、それはサヤが病弱だったのが大きいし、仮に双子だったとしてもサヤの方が病弱なら結局変わらないんじゃねえか?

 

「ラグナ・・・アンタ本当に大丈夫?なんか難しい顔が増えてるわよ?」

 

俺の表情に気づいたアイエフが不安になって訊いてくる。どうやら顔に出てたみたいだ。

ああ・・・なんかダメだな今日。ルウィー(こっち)に来てから昔のことばっかり思い出しちまう。

 

「何か悩んでることがあったら話してほしいです。話すだけでも変わるですよ?」

 

「わりい・・・ちょっと、弟と妹のことを思い出してな・・・。

シスターに会うまで・・・親がいなかった俺たちの中で一番上だったのは俺だったから、それまであいつらが頼れるのは俺しかいなかったんだ・・・。

しかも妹の方が病弱だったのもあって、妹の方ばっかり相手してたら、弟の方が疎かになってたんだ・・・。

あいつらがケンカしたら妹の方・・・。そのせいで弟の方は俺と妹に不満を溜めこんじまった・・・。

だから・・・あの二人が仲良くしてんのを見てたら・・・俺は兄貴としての役割を全うし切れて無かったんじゃないかって思うんだ。」

 

こうまで心配されたら話した方が楽だろう。コンパにも促され、俺は話して見ることにした。

思い返して見ると、ジンに兄貴らしいことしてやれて無かったんだな・・・俺。我ながらに情けねえ・・・。

 

「ラグナ・・・貴方・・・」

 

俺の話を聞いたブランは何って声をかければいいかわからない顔をしていた。

ああ・・・ちょっと不安にさせちまったかな?

 

「ブラン・・・お前は妹二人を大切にな・・・。俺みたいにはならないでくれ・・・。

これは・・・ちょっとしたことって後回しにしたら、取り返しのつかないことになっちまった・・・三人兄妹のバカな兄貴の願いだ」

 

俺はブランの左肩に右手を置いてそういう。

多分、この世界に来て、俺の事情を話してから久しぶりにこんな真剣な顔をしただろう。

 

「うん・・・わかった。あの二人はちゃんと護るし、面倒もみるわ」

 

ブランはそう言って穏やかな顔を見せた。俺はそれを見てこいつなら大丈夫だと安心できた。

 

「あれぇ?ラグナさん、どうしたのー?まさか、お姉ちゃんに告白したのー!?」

 

「したの・・・??」

 

「えっ?いや、そんなことじゃないよ・・・」

 

ロムとラムに聞かれて、俺はブランから手を離し、二人の元まで歩み寄って、二人の頭に帽子越しで手を置いた。

 

「ひぅっ・・・(びくっ)」

 

ロムは一瞬怯えた反応をする。まだ警戒は解かれてねえか・・・。ブランは「早く馴れるように」とは言ってるらしいが・・・。

何というか、この辺は「月が落ちてくる」だとか言って泣いてたガキの頃のジンみたいだな。俺は懐かしく感じた。

 

「大丈夫だとは思うけど・・・お前らはちゃんと仲良くしろよ」

 

「「・・・・・・」」

 

俺が優しめな顔で頭を軽く撫でると二人は一瞬固まる。そして・・・。

 

「うん!わたし、ロムちゃんと仲良くする!」

 

「うん・・・♪わたしもラムちゃんと仲良くする♪」

 

二人は笑顔になってそれぞれの反応をした。

それを見て俺は安心できた。ブランにはああ頼んだけど、俺もできることをしていこう。悩んでたら手伝おう。

ブランがこの二人を『護る』のであれば、俺はそれを手伝おう。そう思うのだった。

 

「さて・・・ラグナ、もう気は済んだかしら?」

 

「ああ。心配かけて悪かったな。なんか話せてすっきりしたよ」

 

「・・・それは良かったわ。じゃあ、そろそろ次に行きましょうか」

 

「はーい!」

 

「はーい・・・♪」

 

ブランに促され、俺たちは次の場所に向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

俺たちは一通り回り終わり、今は図書館にいる。俺がこの世界の歴史や文化を学びたいと言ったからだ。

ルウィーの図書館は他の国以上に規模が大きく、大体の本が揃っていると言う。

ブランは「自分の読書好きが出たのかも」と言っていた。

 

「すげえ規模だな・・・」

 

「ここがゲイムギョウ界数ある図書館の中でも・・・一番多いわね」

 

俺はその施設の大きさに感嘆する。ブランが一番でかいと言うなら間違いないんだろうな・・・。

 

「ロム、ラム。借りたい絵本が見つかったら持ってきてね」

 

「はーい!ロムちゃん、行こ!」

 

「うん・・・♪」

 

「あっ、私は二人の様子を見て来るです」

 

ブランがそう言うと、二人は足早に絵本のある方へ向かっていく。

コンパも一言って、二人の後を追った。確かに図書館で大人数移動は良くないのは分かるが・・・。

コンパ、あの二人に追いつけるのか?あの二人妙にすばしっこいぞ?

 

「さて・・・歴史系の書物はこっちよ」

 

残った俺たちはブランに案内されてついていく。

 

「大体、この中からになるわね」

 

「な・・・なんだこの数・・・」

 

「図書館がでかいとこうなるのよね・・・」

 

歴史系の本棚を見てみると厚い本だらけだった。酷いとこれ何ページあるんだと言いたくなるような本もあった。

しかも届かないだろうからと言わんばかりに専用の階段っぽいのもあるし・・・。

その大きさを見てアイエフは頭を抑え、俺は呆然しながらも本を探し始める。

 

「ん・・・?これは・・・?」

 

探している内に、俺は一つ気になる本を見つけた。

タイトルは『ゲイムギョウ界とゲームの発展』と書かれていた。

歴史系の書物の中でも比較的薄かったので、とりあえず手に取ってみた。

 

「どう?見つかった?」

 

「ああ。とりあえず一冊だが・・・」

 

「そう。これは私からのお勧めよ」

 

そう言ってブランは俺に三冊程本を渡してくれた。

タイトルはそれぞれ、『ゲイムギョウ界各国の発展歴史』、『ゲイムギョウ界と女神』、『女神達の道』とあった。

 

「おお。助かる」

 

「貴方がそれを手にしていたのは意外だったわ・・・。それも勧めようと思ってたから・・・」

 

「取ったのが偶然これだったってわけか・・・」

 

実際のところ、俺は殆どの娯楽に振れたことが無い。それに対して、ゲイムギョウ界は娯楽が多い世界だ。

それなら尚更学ぶべきだと思って取ったのだが、ブランが勧めようとしてたんだし、良いのを選んだんだろうな。

俺たちは一度、図書館の真ん中にあるテーブルの、絵本が置かれてる場所に最も近い場所にある椅子に座ることにした。

 

「さて・・・読んでみるか・・・」

 

俺はまず初めに女神のことを知ろうと『ゲイムギョウ界と女神』を読み始める。

距離的に借りられないし、ロムとラムを待たせるわけにもいかないから、最も大事なところに絞って読み進めることにした。

その本には『女神は人々の信仰に寄って獲得できるシェアを、土地に還元する形で発展させる。

信仰によって手に入れた力を振るい、人々を護る存在である』と書かれていた。

また、『女神のシェアは人々から得ている信頼の証』とも記述されていた。

 

「(なるほど・・・超常的な能力はあるけど、信頼関係があってこそなんだな・・・)」

 

裏を返せば信頼関係がなきゃただの女の子になっちまうってことだな。

だから女神にシェアは大事なんだな。それで、俺が来るまでは互いに争うこともあったと・・・。

こりゃ一歩間違えたら俺のいた世界どころか、それ以上に荒れた世界になってたんだろうか・・・。

まあとにかく争いがなくなってなによりだ。そう思いながら俺は本を読み終え、次は『ゲイムギョウ界各国の発展歴史』を読むことにした。

 

「あっ、おねえちゃん。借りたい絵本決まったよ」

 

「決まった・・・(にっこり)」

 

「決まったのね。じゃあ出しに行きましょう。二人とも、ちょっと行ってくるわね」

 

「おう」

 

ブランの言葉に対して、適当な返事をしてそのまま読み進める。

コンパとアイエフが話しているが、集中してて全く耳に入って来なかった。

本題だが、読み進めると各国の状況が分かってきた。ザックリまとめるとこんな感じか。

 

プラネテューヌは全体的に高度な技術力を誇り、他国と比べ各施設の進化が早い。

浮遊する足場はプラネテューヌのみが完成させている。

ただし、国の規模の広さか、女神と技術者の思考が斜め上に行ってるのか、新しい物が増える割に、防衛系に関しては進歩が遅い。

しかし、それが理由で大人しいモンスターがプラネテューヌ内でのんびり過ごす姿を目撃できることがある。

後述になるが、この高い技術力が他国の助けになったこともある。

 

ラステイションは各国の平均とも呼べるような進化具合だった。

工業に関しては非常に早い段階で生産ラインを確立していたり、改良に余念がないなど、一日の長がある。

ただし、排気が多く、環境は各国の中でも非常に悪かったが、プラネテューヌから来た技術者のおかげで改善されている。

環境が改善された今は工業を筆頭に多方面かつ、安定した技術力を持つ。

 

ルウィーは魔法とかなり密接的な国で、伝統を守ると言う影響もあるのか、他国と比べて進化は少なめだった。

魔法のおかげで殆ど補い切れてるとも言える状態だった。

技術に関してはルウィーが他国より比較的寒い環境であるため、それに対応した物が多い。

 

リーンボックスは主に娯楽と軍事力が中心に伸びている。他国と離れているためか、他国の技術を使う機会が少なめ。

和平が結ばれたため、これからは軍事関係の伸びは減り、これからは娯楽を中心にすると推測される。

国内の自然が非常に多いのが特徴で、環境は非常に良い状態が保たれている。

他国の民が中々これないため、その対策にアイドルを用意している。

 

各国ごとに色んな特徴があるのがよくわかった。

これはまとめた感じ、『未来的』なプラネテューヌ。『現代的』なラステイション。『伝統的』なルウィー。『独自的』なリーンボックスと言ったところか。

今度自分でゆっくりと各国を回ろう。そう思いながら読み終え、次は『ゲイムギョウ界とゲームの発展』を読む。

 

「(そういやゲームに触れたことは無かったな・・・)」

 

そんなことを思いながら読み始める。家庭用、アーケード、携帯用と様々だ。

家庭用は現代のゲームはゲーム機ことハードと、そのハードで使うディスクのソフトがあればできるらしいな・・・。後はちゃんとケーブル繋ぐ場所。

アーケードはゲームセンターに置いてある、お金を入れてプレイするタイプ。

んで、携帯用は家庭用と似てるけど外に持ち運んで遊べる、バッテリー式だから、充電をする必要があるか・・・。

なんでそんな所から学ぶのかって?しょうがねえだろ・・・俺、こういうの見ないで生活してたんだし・・・。

今は当たり前のようにできるが、最初期の頃はソフトの入れ替えすら出来なかったんだそうな。

んで、その後は各国でそれぞれの発展を見せたらしい。ゲームの制作もシェアに関わるってんだから大変だ。

ハードの傾向を見るとラステイションが一番現実的なのは気のせいだろうか・・・?

プラネテューヌは突発的に特徴的なのが出てきたりするし、ルウィーはソフトがコストのかかるタイプを使うからそこで勿体無い経費が増えやすかったり・・・。

リーンボックスは大型な物が多くて収納が大変だとか・・・。どの国もどの国だな・・・。

 

「(・・・今度何か買ってやってみるか)」

 

住むところが決まったらその国のハードを買おう。読み終えると同時にそう決め、最後の『女神達の道』を読み始める。

 

「(そういや、こないだまで和平を結んで無かったんだよな・・・)」

 

大丈夫だったのだろうかと不安になりながらも俺は読み始める。

最初は女神は一人きりだったんだそうだが、途中から女神が四人体制になったみたいだ。

最初こそ仲が良かったものの途中から仲が悪くなって、時々争いが起きてたみたいだ。

んで、最後は今いる四人がこのままではダメだと思って和平を結んだってことか。

気づいたのはネプテューヌだろうか?なんとなくだがそんな気がした。

和平が結ばれる前から候補生のみんなは仲が良かったのが分かって安心もした。

せっかくできた平和なんだ俺もあいつらと一緒に護りたい。そう思うのだった。

 

「あのー・・・お客様」

 

「・・・ん?」

 

本を読むのに夢中になっていたら、一人の女性に声をかけられた。

ここの役員とかだろうか。

 

「俺・・・だよな?」

 

「はい。大変申し訳ございません。本日、閉館のお時間になったのですが・・・。

何かお借りして行くものはございますか?今の内でしたら受け付けますが・・・」

 

俺が確認のために聞くと俺に用があるのは本当だった。内容は閉館のお知らせだった。

まあ、また来れるかわかんねえから借りるのはよそう。

そこで俺は一つ気がついた。

 

「・・・マジで?もうそんな時間!?」

 

「本当よ・・・貴方、私たちが声をかけても気づかなかったもの・・・」

 

「凄く集中してたから、ちょっと声をかけづらかったですぅ・・・」

 

俺がビックリして聞くと、ブランとコンパが苦笑交じりに答えた。

なんかすげえ申し訳なく感じた。

 

「ああ・・・今回はいいや。またいつ来れるかわかんないし」

 

「わかりました。あっ、本の整理はこちらでやっておきますのでお構いなく」

 

「悪ぃな。助かる」

 

俺は役員の人に本を渡す。

 

「さて・・・じゃあ帰りましょうか」

 

ブランに促され、俺たちはこの場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「なんか悪ぃな・・・今日は色々手間をかけさせて・・・」

 

「それなら大丈夫よ。二人も楽しんでたから」

 

ルウィーの教会前で、俺たちは別れの挨拶を済ませていた。

 

「次にあう時は、ラグナさんの右目が治ってるといいね!」

 

「治るかな・・・?(じろじろ)」

 

「あ、あんまり期待しないでくれ・・・期待に応えられるかわかんねえ・・・」

 

ちびっ子二人に見つめられ、俺は降参のポーズを取った。

 

「まだどうして右目が動かないかはわからないものね・・・」

 

「プラネテューヌの方でもまだわからないから、いつになるかわからないですね・・・」

 

実のところ、俺の右目が動かない理由が全く分からない状態だった。

右腕があっさり動いたから右目もってわけにはいかないらしい。ちなみに右腕が動くようになった理由も不明だ。

 

「まあ、なるべく善処はするさ。治ったらいいなくらいに思っててくれ」

 

「そうするわ・・・さて、そろそろ日が暮れるしこの辺にしましょうか」

 

「そうするか・・・じゃあなお前ら、また来るからな」

 

「はーい!またねー!」

 

「またね・・・♪」

 

俺たちはルウィーの姉妹に見送られてこの場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

俺たちはラステイションを抜けてプラネテューヌへ続く道を歩いている。時刻はもうすっかり夜だった。

 

「ラグナ、もう大丈夫?」

 

やはりと言うか、あれだけ顔に出てたのでアイエフが心配してくる。

 

「ああ、もう大丈夫だ。話してみてスッキリしたよ。心配かけて悪かったな」

 

「そう・・・それなら良かったわ」

 

「何かあったら、今度は早めに相談するですよ?私たちで良ければ、お話し聞くですから」

 

「悪いな。二人とも・・・」

 

今回は何かと申し訳ないことが多かった。次はこんなことにならんようにしないとな・・・。

ジンは何してんだろ?大勢の人を上手く導けてるのか?まあ、カグラたちがいるなら平気だろう。そう思うとまた気が楽になった。

 

「・・・アンタが向こうでどんな風に生きてたかは大雑把にしかわかんないけどさ。

こっちでは『リハビリ中の旅人』も同然なんだから、抱えすぎないで少しは気楽に生きてみなさいよ。

あの時、自分を改めたいって言ったでしょ?」

 

「ああ・・・そうだったな・・・」

 

俺はなんだか許された気分になった。

今までサヤを助けるために散々悪事を働いた俺も、異世界に来れば変わるんだな・・・。

少しだけ憑き物が落ちたかのような感覚がした。

 

「俺は殆ど頼れるやつがいなかったから、今日改めて思知ったよ・・・。

頼れる人の大切さとそのありがたさをさ・・・」

 

頼れるのはシスターや師匠くらい。

そのシスターは死んじまって、師匠とは基本的に離れて行動してたから、碌に他人に頼る機会なんてものが無かったのが原因なんだろうな・・・。

 

「はい。よく言えましたっと・・・。そういうわけでこれからはもう少し頼ることを覚えなさいよね?」

 

「お、おう・・・」

 

アイエフがさりげなくウインクしてきたので俺はビックリした。

なんか絵面的に違和感ねえか?150センチくらいの女の子から180超えの野郎が振り回されるって・・・。

普通身長差20センチ以内とかじゃないの?こう言う絵面って・・・。

 

「なんだか、アイちゃんがお姉さんみたいですぅ」

 

コンパはいつものマイペースな口調で言う。

・・・姉っているとどんな感じなんだろう?セリカに聞いてみるか・・・って何を考えてるんだ俺は!?

自分の思考にビックリして心の中で首を左右に振った。

 

「弟かぁ・・・それにしすぎてはちょっと大きすぎるけどね・・・」

 

「えっ?ちょっと待て。何でそんなノリノリなの?」

 

「でも、たまにアニメやゲームでも、上の身内よりも背の高い下の子とかいるから、そんなに問題なさそうですね」

 

「あぁ・・・それが姉と弟だと低身長をからかわれる姉か、低身長に見合わぬ振り回しを食らう弟かになるわね・・・。ちょっと面白そうかも」

 

「いやいや待てって!一体何の話だそれ!?」

 

コンパの言葉に乗るアイエフと、二人の会話についていけなくなる俺。なんつーかすげえシュールな感じだ・・・。

 

「えぇ?ラグナ、もしかして今までテレビ見てなかったの?」

 

「向こうでの俺のこと話しただろうがぁぁぁっ!!」

 

たまらず絶叫を上げるようにツッコむ。こんな感じで、俺は少しずつゲイムギョウ界に馴染み始めていた。




ちびっ子二人。一年中雪。『いい人』という言い方。『図書館』・・・。
と今回はラグナが自分のことを振り返る要素多かったですね。

蒼炎の書が再起動できたら本編に入るので、ギャグ系の展開を増やせそうです。

本の内容は上手く書けなかったよ・・・orz

今現在ブレイブルー側から誰かキャラを出そうか?ラグナは誰かとカップリングさせるかどうかを悩んでたりします。

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