超次元ゲイムネプテューヌ-DIMENSION TRIGGER- 作:ブリガンディ
R-18アイランドの入場審査が終わり、一行は道なりに歩いていた。
一応審査さえ終わってしまえば問題無いので、女神たちは変身を解除していた。
「それにしてもさぁ・・・島に入ったのはいいけど、どこへ行けばいいんだろうね?」
しかしながら、まともに地図などが見当たらなかったので、どう進んで行けばいいかが解らないでいたので、ネプテューヌは尋ねるように呟いた。
残念なことにこの場に答えを持ち合わせている者はおらず、一先ず道なりに歩いて行くしか無かった。
「はいはいはぁ~い。道に困っているなら、案内担当をさせてもらっているこのリンダさんにお任せあれ~!」
その後も暫く歩いているものの、結局それらしい場所に辿り着かないので困っていたところ、緑色の髪をした女性・・・リンダがタイミング良く現れてくれた。
ラグナやハクメン、ネプテューヌは初対面であるから問題無いかと思われたが、実はネプギアとノワールがこの女性を知っていた為にそうは行かなくなる。
「あっ!あなた・・・!」
「この前ルウィーにいた、誘拐犯の一人っ!」
「んな・・・!?」
ノワールとネプギアによって自分が誰だか露呈してしまって、スムーズに案内ができなくなったこともあってリンダはたじろぐ。
また、誘拐犯だと判明したことにより、ネプギアと四女神が敵対心を持った目を向けた。
「テメェ、うちの妹たちを酷い目遭わせてよくもまあ戻って来れたなぁ・・・!」
「まっ・・・待って下さい!そのまま攻撃だけは勘弁してくださいよっ!?」
ブランの剣幕にやられたリンダは慌てて距離を話しながらジャンプし、そのまま綺麗な土下座をする。
流石にそんな姿勢まで見せられたら、妹に手を出されたブランですらさえ一度その姿勢を凝視してしまう。
「自分、もう心を入れ替えたんです・・・!今はもう真人間で、こっちで真面目に切り盛りしてるんです!だからどうか、命だけは・・・!」
『・・・・・・』
リンダは土下座の姿勢を崩さないまま必死に弁明する。
その姿勢と必死の弁明は確かに信じたくなるものであるのだが、ロムとラムを誘拐したという前科がプルルートを含む女神たちに信用を与えない。
しかし、そんな中唯一動き出したのはラグナだった。彼は何も言わないままリンダの傍まで歩み寄る。
誰か一人が近づいてくるのが分かったリンダはダメかと思って思わず目を瞑るが、彼女が予想していたものはいつまで経っても来なかった。
「・・・アレ?」
「お前が反省してんのは良く分かったよ。だから顔上げな」
おかしいと思ったリンダが顔を前に向けると、そこには左手を差し伸べるラグナの姿があった。
そのラグナの姿に殆どの者が首を傾げている中、彼の境遇を理解しているハクメンと『少女』の影響でラグナとの接点が一層深くなっていたネプギアは、ラグナを信じて事の行く末を見守ることを選んだ。
「だ、大丈夫なんですか?向こうの皆さんあんな感じですけど・・・」
「大丈夫だ。実際、俺も元々は
『・・・・・・』
「・・・ほぇ?みんなぁ、ど~したのぉ~?」
リンダへの回答を聞いた瞬間、ラグナの取った行動の意味を理解した女神たちがそこでハッとして俯く。
唯一事情を知らないプルルートは全員に尋ねるも、真剣に聞いているハクメンとネプギア、そしてラグナの境遇を改めて知ることになって暗い顔になった女神たちの耳にその問いは届かなかった。
「そんな俺が、こうしてまともな道に戻れたんだ・・・。お前だって戻れるさ」
「・・・あ、アンタ・・・」
妹を助ける為とは言え、言い逃れできない程の悪行を重ねたラグナも、ゲイムギョウ界で時を重ねていく内に真っ当な道に戻れている。
であるならば、人攫い一回程度なら簡単に更生できるだろうとラグナは考えていた。そして、そんな救いの手が目の前に来たのに驚き、リンダはまじまじと彼の左手を凝視してしまう。
「絶対に戻れるさ。要は心の持ちようなんだからよ」
「あぁ・・・。あ、ありがたいです・・・!アタイ、頑張ります・・・!」
「おう。お前がちゃんと戻れることを祈るよ」
ラグナに許されたリンダは堪らずラグナが差し出していた左手を両手でがっちりと掴み、己の意思を伝える。
この時意識していた一人称を忘れて地が出てしまっているが、そんなことを気にする者は誰もいなかった。
自分の決めたことをラグナに応援され、リンダは思わず涙を流す。そして、この涙を忘れず頑張ろうと思うリンダなのであった。
流石にここまで様子を見せられれば、女神たちは誰もリンダのことを責めようとは思えなくなっていた。
「ブランよ。例の写真はあるか?」
「あるけど・・・どうするの?」
「事を円滑に運ぶ為だ」
頃合いだと判断してブランに問いかけると問い返されたので、ハクメンは迷うことなく理由を告げる。
「分かったわ・・・それならこれを使ってちょうだい」
「感謝する」
ブランはアイテムパックにしまっておいた写真をハクメンに渡し、それを受け取ったハクメンはそのまま二人の下まで歩いて行く。
「話が済んだ所で一つ聞きたいことがある。この島に、此のような施設は存在するか?」
「ん・・・?あぁ・・・!それはシャボン玉生成装置ですね・・・。これがどうかしましたか?」
ハクメンが出してくれた写真を確認したリンダは、それの正体を答えながら問い返す。
自分たちが予想していたものと大いに違っていたので、ハクメンは一瞬固まる。
「そうか・・・。我らはこれが大砲では無いかと思って調査に来ている。念の為確認させて貰っても構わんか?」
「分かりました。そう言う事ならご案内させていただきます。こっちですよ!」
ハクメンはすぐに事情を説明するとリンダは承諾して案内を始めてくれる。
それを見た一行は、彼女を信じてついていく事にした。
* * *
「こっちにはモンスターも特にいたりしねぇんだな?」
「何せ観光地域ですからね・・・。念の為にモンスター退治できる人を雇っているんですけど、その人たちが『暇すぎて腕が鈍る、これじゃ給料泥棒だ』と嘆くくらいですよ・・・」
シャボン玉生成装置の場所に向かう途中、ラグナはリンダにモンスターの事を聞いてみて、戦闘する可能性が極めて低い事が判明して一安心する。
それにはハクメンも同じで、ラグナの手を借りるようなことは無いと安堵できたのだ。
これで残りは着替えるまで耐えれば終わりだなとラグナとハクメンは気を和らげるが、実はまだ予断を許さない状況である。
「・・・・・・」
「ほぇ?ギアちゃん~。どぉしてラグナの事を見つめてるのぉ~?」
「実はなんですけどね・・・」
現にネプギアは、先ほどから全て左手でどうにかしようとするラグナの事が依然気になっていた。
そんな様子に気が付いたプルルートがネプギアに問いかけると、彼女は自分が見つめている理由をひっそりと話した。
「確かに~・・・。こっちに来てから、右手を全然使ってな~い」
「そうなんです。だから、訊いてみたいんですけど、あの様子だとはぐらかされそうで・・・」
ネプギアに言われたことでプルルートもそのことに気がつく。
そして、ネプギアがどうしたいかを告げて迷っていると、プルルートも少し考える。
「じゃあ~・・・どさくさに紛れて見ちゃえば良いんじゃないかなぁ~?運頼みになっちゃうけどぉ~・・・」
「何らかのアクシデントに期待するような形になっちゃいますけど・・・。それしかなさそうですね・・・」
しかしながら、方法があるだけ大分前向きに考えられるとネプギアは思っていた。
これで何も方法が思いつかない場合、後でこっそり聞こうとしても今のラグナなら簡単にあしらってしまうだろうから、本当に取り付く島もない可能性があった。
「着きましたよ。これがシャボン玉生成装置です」
「此れか・・・確かに大砲と謂う事では無さそうだな。見た目で勘違いされた以上、其の改善はいるやも知れんが・・・」
「なるほど・・・見た目の改善ですね。分かりました。自分からも伝えておきます」
ハクメンは問題になるものが一切ない事を把握してから改善点を告げる。
それを聞いたリンダは反論することなくメモを取り、その旨を伝える事を宣言する。
「さて・・・お騒がせした上で何も無かったことだけど・・・このまま帰る?」
「う~ん・・・せっかくだし、遊んでから帰らない?こんな場所滅多に来れないし、バチは当たらないでしょ?」
「さぁんせぇ~い♪あたしも遊びたい~♪」
「(プルルートさん・・・もしかして、気を遣ってくれたのかな?)」
ノワールの問いにネプテューヌが答えると、真っ先にプルルートが賛成した。
そのノリの良さにネプテューヌが喜ぶ一方、ネプギアはラグナの右腕を知るために時間を作ろうと考えてくれているのではないかと考えた。
「(それなら乗った方がいいのかな・・・?でも、他の人はどうなんだろ?)」
この三人だけしか賛成反対を出さないなら、自分が賛成することであっさりと勝負が決まる。
しかし、問題は他の人たちが案を出した場合だ。ラグナは間違いなく反対するはずなので、残りがどうなるかである。
「そうですわね・・・私も、せっかくですから楽しんでもいいと思いますの」
「そうね・・・今日くらいなら別に構わないと思うわ」
「「・・・・・・」」
ブランとベールが賛成したことで半数が賛成してしまった事に気が付き、ラグナとハクメンは顔を見合わせた。
ハクメンは『スサノオユニット』の影響で特に表情は解らないのだが、ラグナに至ってはかなりの冷や汗を流していた。
「こうなってしまったが・・・御前はどうする?」
「まぁ・・・ここは流れに任せるしかねえのかな」
ハクメンに問われてラグナはきっぱりと諦めることを選択した。最早何事も起こらないのを祈るばかりである。
「私が反対しても意味無さそうだし、そうしましょうか・・・ラグナたちはどうするの?」
「ああ。俺たちも同行させてもらうよ」
ノワールの問いにはラグナが口で答え、ハクメンは首を縦に振って答える。
「(あっ、これどの道行くことになるパターンだ・・・)」
ネプギアは流れが出来上がった事に安堵する。
そして、ネプテューヌに問われたところに賛成したので、これで話は決まった。
「よぉし話は決定!それじゃあ案内頼んでもいい?」
「はいはい~、楽しめる場所ですね?それではご案内させていただきま~す」
リンダが先導するように歩き出すので、女神たちはそれについていく。
「なるようにしかならねえか・・・」
「後は、何も起こらぬ事を祈るのみだ」
「(この島にいる内に、疑問が晴れればいいんだけど・・・)」
諦め半分に彼女たちの後ろをついていくラグナとハクメンの更に後ろを、ネプギアは考えながらついていくのだった。
* * *
「さぁて、ここのロックは、と・・・」
女神たちが調査に、それ以外のメンバーがプラネタワーの屋上にいることですっかりと警備が薄くなってしまった事を好機に、アノネデスは電子ロックの解除を試みる。
プラネテューヌが元々セキュリティ関係にそこまで強くなかった事もそうだが、電子ロックの部屋を選んだのが運の尽き。スーパーハッカーとして名を馳せているアノネデスが相手では大した役割を果たせていなかった。
そして、解除に成功したアノネデスはあっさりと牢獄の外に出て、思いっきり伸びを一回する。
「出たのはいいけど・・・このままだとすぐにバレちゃうし仕方ないわね・・・」
アノネデスは自分が外に出る為だと言い聞かせて、自身が身につけているパワードスーツをアイテムパックにしまい込む形で解除する。
するとそこには特徴的な色をしたパワードスーツ姿の存在は無く、代わりに端正な容姿をした若い男性がいることになった。
本来はもう少し目を盗んだりしてから解除するのだが、プラネテューヌの監視カメラは電子ロックの解除と同時にウィルスを送って一時的にダウンしてもらっているので、その心配は無かった。
「さて・・・早いとこご退散しちゃいましょうか」
普通の人が見れば嫌でも意識せざるを得ない程の容姿ではあるのだが、アノネデス自身は己の姿を忌み嫌っているので少しの時間でもこちらの姿を晒す事はしたくない。
その為、安全圏で再びパワードスーツを纏った姿になるべく、アノネデスは素早く行動を始めた。
* * *
「さて、着きましたよ。ここがR-18アイランドで最も賑わっているスポット・・・その名もヒワイキキビーチですっ!」
「お・・・おおぉぉぉぉおおおっ!?」
リンダに紹介されたスポットであるヒワイキキビーチの風景を見た瞬間、ネプテューヌが驚いたのも無理は無いだろう。
ネプテューヌだけではなく、ほぼ全員が驚きを露わにしていた。
「な・・・何みんな・・・は、はだ・・・」
「ぜ、全員裸だぁ・・・!」
「なんて開放的なのでしょう・・・!」
ノワールが顔を赤くしながら口をパクパクとさせ、ネプギアとベールは少し興奮気味に己の感想を口にする。
一応、裸で行動している人たちの大切な部分は謎のヒカリソウと言うものが守ってくれているのだが、彼女たちはそこで気が付いた。
「ハクメン、貴方は大丈夫だと思うけど・・・。見過ぎて倒れるなんて勘弁して欲しいわ」
「ら、ラグナさん!あんまり見ちゃダメですよ!?」
「「・・・・・・?何の事だ?」」
『んな・・・!?』
ブランとネプギアがそれぞれに注意喚起をしたものの、こういったことへの欲が恐ろしい程なまでに薄い二人は何が言いたいのかがさっぱりわからずに首を傾げる。
その余りにもあんまりな反応を見せつけられた一行は、驚いて体を滑らせてしまう。もちろんそこにはリンダも混ざっていた。
「ど・・・どうしてこうも二人は無頓着なのぉ?」
「この二人・・・こういう事にはいつもあんな感じなんですか?」
「そう言えば・・・こう言った色沙汰に興味を向けただなんて話しは聞いた事がないわ・・・」
ネプテューヌの肩を落とした声を聞いたリンダが訊いてみると、代わりにブランが答えてくれる。
それを聞いたリンダは意外に思った。ハクメンは見た目通りだからまだ納得できるが、色んな人と会話している姿が散見されるラグナがそう言った事に無頓着だと言うのには特に驚かされた。
「流石にヒカリソウを使って・・・とかいうことを勧めたりはしませんけど、ここでラグナさんの気を惹くことが出来れば、チャンスはあるかもしれませんよ?」
『そうか・・・それだ!』
リンダの提案を名案だと感じた四女神が揃って口にする。
彼女たちが純粋にラグナにそう言った事に興味を向けられるならやる価値はあると意気込んでいる中、プルルートとネプギアは違うことを考えていた。
「チャンスできたみたいだしぃ~、頑張ろぉ~ねぇ~?」
「・・・!はい、頑張りましょう!」
プルルートの優しき呼びかけに嬉しくなったネプギアはガッツポーズを取る。
そして、彼女たちが何を意気込んでいるのかがさっぱり解らないラグナとハクメンの二人は、ただ首を傾げるのだった。
* * *
ネプテューヌたちがヒワイキキビーチで意気込んでいる時間帯とほぼ同刻、プラネタワーに居残りしているメンバーは屋上に水着姿で集まっていた。
彼女たちも彼女たちで、一時の休息ということで即席のプールを準備していたのである。
残念ながらナインだけは山積みの仕事を片付けなければならない都合上、リーンボックスに戻っているので、何か異常があったら誰かが代わりに向かうと言う事で話しは纏まっている。
「さぁ、準備できたわよ!」
「わーい、ぴぃ、いちばーんっ!」
ホースの口から出てくる冷水でプールの水を入れ終えたアイエフが告げるや、真っ先にピーシェがそこへ走って飛び込む。
「あっ、ちょっと・・・!」
アイエフが止めようとするも時は既に遅く、ピーシェはプールの中に飛び込み、その勢いで水柱を短時間作り上げる。
その勢いの良さも手伝って、アイエフは思わず顔を腕で覆った。
「もう・・・飛び込んだら危ないでしょうに・・・」
飛び込んですぐに何も無かったかのようにはしゃぐピーシェを見て、アイエフは苦笑交じりに言うのだった。
流石にああやって楽しそうに遊んでいる彼女の姿を見ると、咎める気力も起こらないのである。
「わーい!プールだーっ!」
「わーい♪」
ロムとラムもプールが待ち遠しいかったらしく、彼女たちも走ってプールに入る。
一応、二人は先程の光景を見ていたお陰で、落ち着いてプールに入った。
しかしながら、一度プールに入ってしまえば楽しさが勝り、二人もプールで楽しそうに遊びだすのだった。
「プールね・・・。向こうは海だって言うから、代わりになるものと言えばこれね・・・」
そう言うユニ自身も黒を基調とした水着姿の状態で、表情こそ苦笑交じりに近いものだったが、内心楽しそうに呟く。
僅かな時間思慮に浸っていたユニは、眼前に飛んできた水を見て思わず目をつぶって顔を覆う。
覆った腕と、顔の一部に冷たいものを感じたユニが目を開けると、そこにはこっちで遊ぼうと言うかのようにロムとラムが手を振っていた。
「・・・やったわねぇ!」
それによって自分は大人しくしていようかと考えていたユニはその考えを捨て、彼女たちと一緒に楽しむ事にした。
《ナオト。貴方はいいの?》
「俺はいいかな・・・。こうしてるだけでも休めるし」
そんな彼女たちの楽しそうにしている声を聞きながら、ナオトはパラソルによって出来た日陰に置かれてあるビーチチェアーに横たわりながらのんびりとしていた。
ナオトはこう言った安息できる時間が好きなので、ゆっくりと休んでおきたいのもあった。
ピーシェがきて以来暫くバタバタしていたのもあり、こうして何もしないでいい時間は久しぶりにできたのである。
「ノエル姉、ノエル姉!ニューたちも行こうよっ!」
「ふふっ。分かったから、ニューも慌てないの」
ニューも楽しみで仕方なかったらしく、ノエルの手をを引きながらプールへと向かって行く。
始めてのことだらけで度々そうなることは分かっていたので、ノエルも微笑みながらついていく。
ちなみにラムダはプールには入らず、少し離れた場所ですターターとみんなの様子を見ていた。セリカもその隣でみんなの様子を微笑ましく見守っていた。
「(海か・・・戻ったら誰かと行くかな・・・?)」
―その前に戻れれば良いんだけどな・・・。楽しそうにしている皆の姿を見ながら、ナオトは一人自分の故郷を思い返すのだった。
* * *
待機しているメンバーがプールで楽しんでいる最中、調査に向かっているメンバーもヒワイキキビーチで羽を伸ばしていた。
ネプテューヌとノワールはビーチバレーで一対一の対決をしていて、ノワールの放った強力なスパイクをネプテューヌがレシーブしようとしたが、あまりの威力を前に失敗してしまい、勢いに負けたネプテューヌが背中から倒れ込む。
ブランは砂浜で城を作っていたところ、プルルートが砂で作った巨大なデフォルメネプテューヌを見て啞然としていた。
ベールはネプギアに日焼け止めを塗って上げていたが、途中で大切な部分に触れだしたので、ネプギアからストップを掛けられてしまった。
「このまま行けば・・・大丈夫そうか?」
「何も問題無く事が終わればな・・・」
彼女たちが楽しそうにしている傍ら、ラグナとハクメンは日陰で休みながら話していた。
女神たちにとっては調査が終わった以上、もう今回やることは殆ど残っていないのだが、彼らはラグナの右腕・・・すなわち『蒼炎の書』である言う実態を隠し通すと言う最後の戦いがあった。
その為、可能な限り休んだり、片手で済むようなことしかしないようにどうにかやりくりしていた。
彼女たちがもう上がろうと言えば残りは歩くだけで済むので良いのだが、これで何かやろうと誘われた時が問題である。
「一先ず、何かに誘われたら断るように努めよ。今回ばかりは致し方あるまい・・・」
「ああ・・・今回はそうするしかねえな・・・」
今回ばかりはビーチバレーだのなんだのと誘われても断るしかないだろう。
ここにいるのがセリカであった場合は『
異世界組はまだ大丈夫な人たちばかりだが、ゲイムギョウ界組はそうもいかないだろう。
「(取りあえず、このまま大人しく休んでいるか・・・)」
一応、自分の右腕は『蒼炎の書』によってどうにかなっていることは話しているが、その実態を見せたことは一度もない。
無理にそれを教えることも無いだろうと考えているラグナは、なるべく見せないように気を付けようと決める。
「皆さーん。冷たい飲み物をお持ちしましたよ~」
「おお!ごっつあんですっ!」
「あら、気が利くじゃない」
ラグナとハクメンが唸り、女神たちが遊んでいる最中、リンダは両手でトレイを持って人数分の飲み物を持ってきていた。
全員丁度喉が乾いていたようで、飲み物と聞いてそちらに集まる。
「・・・アレ?ハクメンさんは大丈夫なんですか?」
「私は飲食が出来ぬ身なのでな・・・」
全員が手にとって飲み始める中、ハクメンだけが一歩離れた場所で待機していたので訊いてみたが、それを聞いたリンダは少し気まずくなった。
すぐにハクメンが気にしなくていいと言ってくれたので良いのだが、これからは聞くときは相手の身をより考えようと思うのだった。
「ぷっは~っ!生き返るぅ・・・!」
「あっ、塩が入ってるなんて気が利くじゃない・・・」
「今日は結構暑いですからねぇ・・・塩分補給は大事ですよね」
一気飲みしたネプテューヌが少し大袈裟に言い、ノワールは飲んでからリンダの用意の良さを称賛する。
事実、今日のR-18アイランドは普段と比べて気温が高いので、熱中症対策として塩を入れたのは正解だった。
ちなみにリンダは飲食ができないと言ったハクメンが大丈夫か気になったが、その心配はいらなそうであった。
「・・・アレ?なんだろう・・・?」
飲み物を飲んだ直後、ネプギアは自身の体に何か異変が起きていることに気がつく。
何やら体が妙に熱くなったような感じと、言い知れぬものを感じて首元を抑えてうずくまる。
「ネプギア?どうしたの?」
「わ、わかんない・・・!けど、急に体が・・・」
「・・・?もしかしてですけど・・・」
ネプテューヌの問いに答えるネプギアの様子を見て、ベールは一つの可能性を考えた。
しかし、まだ確信に至れていないのは、この後何が起きるかが解らないからだ。
そして、ネプギアがうずくまるのが終わった瞬間、少々様子がおかしくなった。
「あ、あうぅ・・・何だか凄く恥ずかしい気分に・・・」
「・・・へっ?」
ネプギアがもじもじとしだしたので、ネプテューヌは思わず目を点にした。
その様子を見て、ベールは自分の考えが確信に至った事を悟った。
「この様子・・・R-18アイランドに伝わる禁断の薬である、羞恥心を増加させてしまう薬の効果ですわね・・・」
「な、なんでそんなに都合の良い薬なんて存在してるのかしら・・・?」
ベールの出した結論を聞いて、ブランは焦り半分にそう呟く。
また、その話を聞いたリンダはおかしいと思って自分の用意していた塩の入っているビンを確認してみる。
するとそこには、わずかながらにその薬が紛れこんでいたのだった。
「あっ・・・!すみません・・・どうやら自分の持ってきた塩のビン・・・その薬が僅かに紛れてたみたいです・・・」
「じゃあ、ネプギアは運悪くそれを引いちゃったってこと・・・?」
「自分の管理不足です・・・」
ネプテューヌが「それなんてロシアンルーレット?」と呟くのをみて、リンダはすぐに頭を下げるのだった。
今回ばかりは本当に素で気がつかなかったのである。これを見たプルルートに「人はみんな間違えるし、次気を付ければ良い」と言う旨を伝えられ、リンダはその慈悲に涙するのだった。
「お、おいネプギア・・・大丈夫か?」
「ち、ちょっと厳しそうなので『あの子』と交代してみます・・・」
「・・・『あの子』?」
ネプギアの発言によって全員が彼女に注目した。
そして、目を少しの間閉じてからゆっくりと目を開けてみれば、その雰囲気から『少女』に変わった事が分かった。
「ふぅ・・・。あっ、これでもまだちょっとダメかも・・・」
「サヤ、少し休むか?」
代わってみたのは良いものの、あまり効果が無かったのでラグナが問いかけるが、寧ろ逆効果であった。
その『少女』はラグナの事を強く意識しているのもあって、水着姿をラグナに見られていると言う事で羞恥心が上がってしまった。
「に、兄さまに見られてる・・・。あぅ・・・」
「・・・ラグナよ。暫くの間は控えるのが良いだろう」
「ああ・・・そうする」
『ネプギア』の様子を見てハクメンがラグナの肩に手を乗せながら言うので、ラグナも少しげんなりとしながら受け入れるのだった。
* * *
それから少しの間、羽を伸ばしている間にようやくネプギアの飲んだ飲み物の中に入っていた薬の効果が切れたので、『少女』との交代を終えて休んでいた。
「大丈夫そうか?」
「はい。もう大丈夫です」
「そうか・・・それなら良かったよ」
あれから気がかりに思っていたラグナが訪ねてきたので、ネプギアが答えるとラグナは満足そうに頷く。
「ああ・・・隣いいか?」
「はい。どうぞ」
ネプギアに許しを貰えたので、ラグナは彼女の左隣にあるビーチチェアーに腰をかけさせて貰う。
ラグナの右腕がずっと気になっていたネプギアがラグナの様子を見た瞬間、彼女の求めていた回答が現れた。
ビーチチェアーに腰をかける時、ラグナはうっかり右手を出してしまっており、そこから人ならざる形と色をした右手が見えたのでネプギアは思わず顔を青くしてしまった。
「・・・?どうした?」
「ら、ラグナさん・・・その右手は一体・・・」
「右手・・・?・・・!」
そんなネプギアの視線が気になったラグナが問いかけたので、ネプギアが途切れ途切れに理由を答える。
己が右手を出してしまった事に気がついて、ラグナがやってしまったと言いたげな表情になった。
「参ったなぁ・・・どうしたモンか・・・」
ネプギアが大丈夫になり次第戻ろうと言う話で纏まっていたので、それを伝えるだけだと気を抜いていたのが完全に仇となった。
その為、これも全員に話すべきかどうかでラグナは頭をかきながら迷うのだった。
「あの・・・もし話しづらいのなら、私だけにでも大丈夫ですから・・・」
「ネプギア・・・」
間違いない。彼女は気遣ってくれたのだとラグナは察した。
しかしながら、ネプギア一人だけに抱え込ませるべきなのだろうか?ラグナは少しだけ考える。
「じゃあこうだ。後で一緒に話を聞いて欲しいやつと俺の部屋に来てくれ。詳しくはそこで話そう」
「分かりました。じゃあ、また後で伺いますね」
少し考えた結果、ラグナは妥協案を見つけてその旨を伝える。
もしかしたらダメかも知れないと考えていたが、そんなことは無くネプギアは承諾してくれた。
「悪いな・・・。ああ、そうだった。みんなもう戻るって言うし、そろそろ行くぞ」
「あ、もうそんな時間だったんですね・・・。すぐに行きます」
二人はビーチチェアーから腰を上げて皆の下へ戻るのだった。
薬の被害を受けたのがネプテューヌでは無くネプギアに変更。シャボン玉生成装置を見るのが先になっている等、今回は細部変更と言った形になっています。
アニメ8話分はギリギリ終わらなかったので、次回で終わります。