超次元ゲイムネプテューヌ-DIMENSION TRIGGER-   作:ブリガンディ

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どうにかアニメ6話を終わらせることができました。


42話 事故の連発する一日

「まさかあんな形で役に立つとは思わなかったよ・・・」

 

「頼んでみて正解だったわ・・・。ああ、もうっ!お姉ちゃんの事を隠し撮りしてるなんて許せない!絶対に捕まえてやるんだから・・・!」

 

隠しカメラがあることが判明したので、ネプギアたちは電波逆探知機を使いながら犯人を追っていた。

まさか持ってきた隠しカメラが犯人捜索の役に立つとは思ってもみなかったので、彼女たちに取ってはある意味大収穫であった。

 

「それで・・・どこだか分かった?」

 

「待ってて・・・後ちょっとだから・・・。あっ、この先みたい」

 

ネプギアが持っている電波逆探知機の反応からして、このまま進めば辿り着けるであろう廃墟施設だった。

 

「よし・・・それなら早速行くわよ」

 

場所が分かれば後は行って捕まえるだけ。そう考えたユニは全員に促す。

その場にいた女神候補生、ラムダとニューの二人は頷いてくれたものの、ピーシェは例外に一人だけ座り込んでしまった。

 

「・・・どうしたの?」

 

「ぴぃ、おなかすいた・・・」

 

問いかけるネプギアにピーシェは空腹を訴えた。彼女たちはラグナやセリカ等、事ある度に食事を抜くことがあったので然程でもないが、一般の人でしかも子供のピーシェは話が違ってくる。

 

「あっ、そう言えば食べてないね・・・」

 

「でも、ここじゃ作れない・・・」

 

「いやだーっ、おなかすいたのー!」

 

ニューも思い出したようにそれに気づいたが、あまり気にしていない。

ラムダは料理を作ろうと考えたものの、そうなると一度引き返す必要性が出てきた。

そうなると我慢できないピーシェが駄々をこねるので、全員は顔を見合わせることになった。

しかし、ロムとラムはこれができるかもしれないと感じて、二人でそれを実行することにした。

 

「私はもうお姉さんだから、お腹空いても我慢できるよ?」

 

「私もお姉さん・・・♪」

 

ロムとラムが考えたこと、それは自分たちが我慢できると言えばピーシェも対抗馬として我慢を宣言するのではないだろうか?と言う考えだった。

これは外見上の年齢が近い二人だからこそ、効果を見込めると踏めた物であり、仮に二人がネプギアやユニのような見た目なら効果は薄かっただろう。

 

「・・・ぴぃもおねえさん!」

 

その思惑は成功し、ピーシェはどうにか我慢を宣言して立ち上がってくれた。

 

「じゃあ、我慢できるね?」

 

ラムが確認を込めて問いかけるとピーシェは無言でうなずく。

これによって改めて一行は移動を再開することができるようになった。

 

「二人ともありがとう」

 

「同じ小さい子がいると意識できる・・・そう言うことなのかしら?」

 

素直に礼を言うネプギアと二人を見て考えるユニ。

ユニの考えていることは正解で、ロムとラムも自分たちだからできるかもしれないという行動だった。

改めて歩きだそうとした瞬間、ネプギアたちは何かを感じて空を見る。

すると、そこには同じく廃墟施設を目指しているであろうネプテューヌたちの姿があった。

ちなみに、ラグナは『クサナギ』を装着したノエルに、ハクメンはナインに、セリカはミネルヴァに運んでもらっている。

 

「お姉ちゃんたちもあっちに飛んでってる・・・どうしたんだろう?」

 

「仕事の方でお話ししてたけど・・・どうしてだろ?」

 

この時、目的は違えど同じ犯人を追っていることをネプギアたちは知る由も無かった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「この奥か・・・」

 

廃墟施設にある一つの扉を見てラグナは呟いた。

 

「ええ。それじゃあみんな、行くわよ?」

 

肯定しながらノワールが全員に声を掛ける。

全員が頷いたのを確認してから、女神四人でその扉を壊して中に入った。

 

「動かないで!手を上げてゆっくりとこっちを向きなさい!」

 

その部屋にいた影は抵抗不可能と判断して、座ったまま椅子を回転させてこちらを向いた。

全身ピンク色をしたパワードスーツのような姿を見て、女神たちはともかく、ラグナたちは頭にクエスチョンマークが浮かんだ。

 

「あなたね?ハッキングを行った犯人は!?さっさと答えなさい!」

 

急かすように問い詰めるノワールの声を聞いてから、パワードスーツは溜め息をした直後立ち上がり、変な身体の動かし方をする。

 

「あは~ん!そんな他人行儀な喋りかたしないで~・・・アタシのことは、アノネデスちゃんって呼んで?」

 

『・・・はぁッ!?(ええっ!?)《・・・何!?》』

 

ラグナとナインとナオト、ノエルとセリカとラケル、ハクメンの順に同じセリフで驚きを示す。

面喰ってしまうのも仕方がない。こんな喋り方をしてるパワードスーツの声は紛れもなく男だったからだ。

 

「オカマさん!?その見た目なのにぃ!?」

 

「あ~ら失礼ね・・・心は誰よりも乙女なのよぉ?これでもれっきとした人間だもの」

 

ネプテューヌの驚いたセリフを心外そうに咎めながら、アノネデスは自分の持っている論を話す。

素顔を晒すのが嫌いなのかどうかは定かではないが、一先ず外見のことは触れないでおくことを決めた異世界組だった。

 

「お、お姉ちゃん!?この人を捕まえに来たんだから、倒しちゃダメだよっ!」

 

「いいから離しなさいッ!あいつはセリカに取って毒よッ!」

 

「早まるなナインよッ!ハッキングの修復が可能かも知れんぞ!?」

 

「ああ、クソッ!何かありゃすぐこれだ・・。ミネルヴァ、済まねえがナイン止めるの手伝ってくれッ!」

 

「・・・・・・!」

 

「ちょっと・・・ラグナも何を言って・・・ミネルヴァも実行しないで止まりなさいッ!何でラグナの命令アッサリ聞いてんのよ!?」

 

「ミネルヴァはセリカを護る為のものでもあるしな。それならセリカが信頼している俺の事を聞いても何にも違和感ないだろ?」

 

ブランが後ろを見て見ればやはりと言うべきか何というか、後ろでナインが暴走していた。

それをミネルヴァと言う最終手段を使い、ナインの両腕をガッチリと抑える事でどうにか話を進められる状況に持ち込めた。

実際にゲイムギョウ界でも早々、セリカが変な所へ行こうとしたのを止めたと言う前科もあるので、ミネルヴァはラグナの頼みなら別に問題ないと言う判断を下すようになっていた。

そう言われてしまえばナインも反論することができず、歯嚙みしながらうめき声を上げるだけだった。

 

「ナインっていつもああなの?」

 

「セリカちゃんに悪影響を与えるなら、誰にでもああなりますわよ?」

 

私も気を付けませんと・・・。ナインの過保護っぷりには流石のベールも警戒せざるを得なかった。

前に一度、セリカ絡みでナインを怒らせた時は自分が国のトップであることを改めて説明しないと止まらなかった。

しかし、それでも小一時間に渡ってナインからお怒りの言葉を受けていた為、彼女がどれだけセリカを大切にしているかは嫌でも伝わった。

 

「あらら。それはアタシも気を付けないと・・・黒焦げになっちゃいそうね?」

 

「あんたなんか今すぐ黒焦げどころか灰にしてやるわよッ!」

 

「ナイン、早まるなと言っているだろうッ!貴様も止まらんかッ!」

 

アノネデスの一言にすら反応するナインを見て、まさかのハクメンですらアノネデスに制止を求めるレベルになっていた。

それ程までにナインの荒れ具合が顕著になっていた。ラグナやナオトは飛び火しかねない状況に冷や汗を流していた。

 

「脱線しててやりづらいわね・・・。それで?犯行を認めるの?認めないの?どっちなの!?」

 

「ふふ・・・生で見るノワールちゃん・・・やっぱ可愛いわ。想像以上よ♪」

 

ノワールが無理矢理話を進めようとすると、アノネデスの呟いた発言に顔を少し赤くしながら、少しだけ体が震えるのを感じた。

 

「な・・・気を逸らそうったって・・・」

 

「嘘じゃないわよ?アタシは本気よ?ホ・ン・キ♪」

 

ノワールの反論に先回りする如く、アノネデスは答えながら右手の指を鳴らす。

すると、今まで何も無かった暗闇の部屋に、いくつもの電子画面が浮かび上がってきた。

ただのデータだけだったらまだ良かっただろう。しかし、問題は全てノワールが写っていることだった。

 

「なああぁぁああっ!?」

 

「こんな写真とか撮っちゃってごめんなさ~い♪」

 

「あっちもこっちも・・・全部ノワールだ!?」

 

ノワールは顔を赤くしながら動揺し、アノネデスは手を大に広げながら高らかに告げる。

それをみたネプテューヌもその写真の数に驚くのだった。

何せ仕事中の姿から食事中の姿。果てには着替え中や入浴中といったかなり際どい姿の物すらあった。

 

「アタシ、ノワールちゃんの大ファンなの!ノワールちゃんのこと何でも知りたくなって、つい出来心でやっちゃったのよ~!」

 

わざとらしく頭をポカポカ叩くその姿に一行が啞然とする。

ちなみに、ラグナとハクメンは二人係でナインの暴走を少しでも抑えるべく、セリカに断りを入れて目と耳を防がせてもらっている。

 

「ら、ラグナ?ハクメンさん?これじゃあ何が起きてるか分かんないよぉ~・・・」

 

「すまんセリカ・・・ナインの暴走を抑える為なんだ・・・」

 

「暫しの間、我慢を頼むぞ・・・セリカ=A=マーキュリー」

 

「ごめんねセリカちゃん・・・私も見ているしかできない・・・」

 

困っているセリカの声を聞いても、三人は詫びながら我慢してもらうしかなかった。

純粋な女の子にこの仕打ちをするのは、余りにも罪悪感に駆られる行為だった。

 

「し、写真はどうでもいいのよ!私が聞いてるのはハッキングのことで・・・」

 

「じゃあ、これは?」

 

「ああ!?ノワールがお裁縫してる!」

 

ノワールが言いたいことを遮り、再びアノネデスが指を鳴らす。

すると今度は何やら衣装を作っているノワールの姿があり、ネプテューヌが再び驚きの声を上げる。

 

「ああ・・・。俺、この世界の人間じゃなくて本当に良かった・・・」

 

《そうね・・・。間違いなく福田がこんな感じで晒上げるでしょうね》

 

ラケルに肯定されたナオトは「考えたくもねえぇぇぇええ!」と絶叫を上げた。

余りにも想定した事態が恐ろしすぎたのだ。

 

「え・・・ええそうよ!私って意外と家庭的でね・・・」

 

「あら?あの衣装、何処かで見覚えが・・・」

 

「無い無い!絶対に見覚えなんてないからっ!」

 

ネプテューヌの声に狼狽しながら答え、ベールの疑問にこれまた焦りながら否定するノワール。

何やら必死に隠そうとしているのは目に見えていたが、何を隠したいのかがラグナやノエルは解らなかった。

 

「って、そういうのじゃなくて!私は・・・」

 

「そういうのじゃないって言うなら・・・こう言うのかしら?」

 

「なああぁぁああぁぁああああぁぁあああっ!?」

 

ノワールがもう一度問いただそうとすれば、先程と同じように指を鳴らしてアノネデスが新しく写真を写しだし、ノワールが絶叫する。

その写真はアイドルの物だったり、格闘ゲームのキャラクターの物だったり、何処かで見覚えのある姿だったりと様々なだった。

しかも、新しく出された全ての写真で、ノワールは楽しそうにノリノリでポーズを取っているのだ。

 

「ああ・・・コスプレかぁ・・・。全部良く取れてるじゃん!」

 

「なるほど。こんな趣味があったのね・・・」

 

「あの衣装、見覚えがあると思えば四女神オンラインの・・・」

 

ネプテューヌは純粋にそのクオリティに関心を示し、ブランはノワールの趣味を知って満足そうにし、ベールは自分の中にある疑問が晴れて嬉しそうにした。

しかし、ノワールからすれば堪ったものではなく、頭を抱えながら顔を赤くして大慌てしていた。

一方、ただ啞然としていたラグナ達だったが、一つの写真を見て大慌てすることになるのだった。

 

「お、おい!ナイン、ハクメン!アレ『零式・イザヨイ』じゃねえか!?」

 

「・・・!?ちょっと噓でしょ!?何でアレが存在してるの!?」

 

ラグナが指さすとナインが驚愕する。

ノワールのコスプレであろう写真の内一枚は色違いであれど見事に『零式・イザヨイ』を纏ったツバキのものと酷似していた。

白の布地と金色をした金属品などが黒を基調としたものに、武器として使われる槍と腰部付近に浮いている武器の刃の色こそ赤に変わっているものの、根本的な姿形は見事にそっくりだった。更に普段はツインテールにしている髪までも、今回の衣装に合わせてポニーテールに変えているのだから尚更だ。

更に質の悪いこととして、ノワールとツバキの体格が殆ど変わらないので、この写真に写っているノワールを別人ですと言えばあっさりと信じることができそうなくらいだった。

 

「えっ!?な、何!?私何かマズい事でもしたの!?」

 

「黒の女神よ・・・『十六夜』を造った訳ではあるまいな?」

 

「あ、アレはコスプレの為のハリボテ衣装よ!?戦闘力とかそういうの一切無いからね!?」

 

ナインとラグナの慌てっぷりを見たノワールも焦り、ハクメンの問いには全力で否定する。しかもこの際ノワールは弁明に必死でコスプレを認めてしまっている。

それを聞いて三人はホッとする。今日この時ほど慌てた事は無かっただろう。

 

「ええっと、アノネデスさん・・・だよね?取りあえずその写真だけしまって貰えないかな?ラグナたちが収集つかなくなっちゃうから・・・」

 

「そうね・・・これだけは混乱招きそうだから、後で削除しないとね」

 

「お願い・・・その写真だけは今後の為に消しておいて・・・」

 

ラグナたちが慌てていた事で塞がれていた耳と目が自由になったセリカがアノネデスに問いかけてみる。

流石にアノネデスも何か訳アリだと感じたので、承諾してその写真だけ表示を終えさせた。

ついでに削除するのは名残惜しいが本気で考慮している。流石に命を投げ捨てるのは早いと感じているからだ。

また、ノワールはアノネデスにとんでもないことを公開させられているのにも関わらず、懇願するレベルにショックを受けていた。

 

「ああ・・・無情だなこれ・・・」

 

《ナオト・・・『よく刺さる包丁』には気を付けることね?》

 

「・・・アレは事故だろうがッ!マジで一瞬死ぬかと思ったからなッ!?てか今その話してる場合か!」

 

ナオトは過去の光景を思い返して冷や汗を掻く。

あの時はハルカに何でそれを持っているのかと訊く余裕すらなく、ラケルが止めなければ死んでいた危険性すらあった。

 

「・・・?コスプレ?ラグナ、コスプレってわかる?」

 

「いや、俺は知らねえな・・・。ノエルは何か知ってるか?」

 

「ええっ!?わ、私も知りませんよ!?」

 

セリカがラグナに振って、ラグナがそれを否定しながらノエルに振る。

するとどうして自分に振るんだと思いながらノエルはあたふたしながら否定する。異世界組はこう言うことに疎いので、ただ着替えて何かしているとしか思えないのである。

 

《あら?それならナオトが・・・》

 

「勝手に言うんじゃねえ!てかもういいだろその話!?今一番被害被ってんの俺じゃなくてノワールさんだからなッ!?」

 

「嫌あああああぁぁぁああっ!見ないでええええぇぇぇえええっ!そして今ぶり返さないでええええぇぇぇえええっ!」

 

ナオトはフォローする為にラケルの言葉を遮ったのだが、それによって思い出してしまったノワールが更に絶叫を上げる。

どうやら逆効果だったようだ。

 

「あらら~?取り乱すノワールちゃんも可愛いわね~♪」

 

「ああもう・・・こうなったら!」

 

アノネデスがおちょくったことが皮切りとなり、堪忍袋の緒が切れたノワールが変身する。

 

「こうなったらあんたの事を盗撮罪で牢屋に送り込んでやるわっ!」

 

「あら?それはいいんだけど、本当にいいの?アタシが離れると、この写真全部ばら撒かれることになるけど」

 

「はいぃっ!?」

 

変身を終えたノワールが斬りかかろうとした時、アノネデスの言葉を聞いて驚愕しながら制止する。

 

「いや~・・・本当は独り占めするつもりだったんだけど、ノワールちゃんで埋め尽くすのも楽しそうじゃない?」

 

「悩みどころですわね・・・こんな写真が公開されたら・・・」

 

「恥ずかしくて表を歩けないわね・・・」

 

「まあいいんじゃないー?このノワール超可愛いしー・・・」

 

アノネデスに問われて愕然するノワールに対して、他の女神は呑気に構える。

 

「・・・こいつら何で呑気なの!?」

 

「私も理解に苦しむ・・・」

 

一方、ラグナはその女神たちの反応に驚いてハクメンは頭を抱える。

完全に異世界組置いてけぼりの動きだった。そのせいでセリカやノエルはポカンとしてしまっている。

 

「いいわよ・・・やってみなさい・・・!その代わりあなたの命はないわよっ!」

 

「ノワールちゃん、そっちの子が混乱招きかねないって言ってた写真残ってるけどホントに大丈夫?」

 

「ぐっ・・・!」

 

ノワールは剣を突きつけ直すものの、アノネデスの一言で止まらざるを得ない。

アノネデスも確かに消すつもりでいたが、流石に時間を貰えなかったのは不味いので時間稼ぎにこうして手を打ってみたのだが、案の定大成功であった。

その為アノネデスはノワールが止まった一瞬の隙を付いて画像を削除した。後は自分の目的を果たす為に場所を移すだけである。

 

「さて・・・時間作ってくれてありがとうね。お礼にこれをプレゼントするわ!」

 

アノネデスは礼を言うと同時に無数のディスプレイをノワールたちに飛ばす。

ノワールたちは当然のようにディスプレイを次々と打ち払っていく。

しかし、全てのディスプレイが光となって消滅する頃には既にアノネデスは裏口であろう場所から出ようとしていた。

 

「そうそう。写真をばら撒くのはウソだから安心してね♪それじゃあバイバ~イ!」

 

「バイバ~イ♪またお話ししようね~♪」

 

「って、逃がす訳無いでしょう!?今後の為にも今すぐ消し炭にしてやるわッ!」

 

去っていくアノネデスに手を振って笑顔で見送るセリカに対し、ナインは憤怒で顔を歪ませながら転移魔法で追撃を試みる。

 

「あっ、ちょっと待て・・・!」

 

ラグナが制止しようとする頃にはもう遅く、ナインは転移魔法で移動をしてしまった。

 

「お、おい・・・アレヤバくね?死人も出るし、下手すっとここ火災事故起きるぞ?」

 

「す・・・すぐに止めないと・・・!ああでも、本気で怒ってるナインさんの相手って・・・」

 

怒り狂ったナインによる被害を想像したナオトが危機感を促し、そのナインを止めることが相当厳しいことが解っているノエルが動揺する。

また、ハクメンもハクメンでナインが相手にしたくない筆頭の状態になってしまい、頭を抱えることとなった。

そしてハクメンが頭を抱えた直後、近くで何らかの爆発に似た音が聞こえる。

 

「きゃああああぁぁぁああっ!?」

 

「そこで止まりなさいッ!今すぐ黒焦げにしてやるからッ!」

 

その直後、アノネデスの悲鳴とナインの怒号が聞こえる。

どうやらナインはあっさりと転移魔法で先回りに成功したらしく、アノネデスの姿を見るやすぐに火の魔法を放ったようだ。

 

「ちょ、ちょっと・・・アタシが一体何をしたって言うのよ・・・?アナタに被害は出してないと思うけど?」

 

「セリカに被害があんのよッ!」

 

「ひぃぃっ!?」

 

アノネデスの問いかけなど聞く耳を持たず、ナインは容赦なく二度目の魔法を放つ。

恐らく自身の近くを掠められたであろうアノネデスは再び悲鳴を上げる。

 

「全く、そんな意味の分からない喋り方をして・・・!セリカに悪影響を出さない為にも、どっちにしろ修正してやるから覚悟しなさいッ!」

 

「待って!ちょっと待ってってば!嫌ああああああああっ!」

 

ナインに取っては当然のことだが、アノネデスはどうしてナインが怒っているのかがわからぬまま次々と魔法を放たれ、必死に逃げ回る事になってしまった。

 

「あ・・・あのさ、私たち行かなくていいかな?物凄く行きたくないんだけど・・・」

 

「私も・・・できれば避けたいわ」

 

「ええ・・・彼は犠牲になりましたの・・・」

 

その剣幕を感じ取ったネプテューヌたちは行く気力を無くしていた。

しかもベールに至っては気が早い十字架を斬っていた。

 

「いやいや、行かなきゃマズいだろ!?情報得られなくなるし、俺らまで巻き込まれるぞッ!?」

 

「私が行けば止められるかも・・・!ミネルヴァ、お願い!」

 

「・・・・・・!」

 

しかし、このまま続けばこちらに被害が来るのが目に見えていたラグナは止めに行くことを選び、セリカは自分を賭けてミネルヴァに頼む。

ミネルヴァはセリカの無茶に付き合うこと自体慣れており、すぐにセリカを抱えて飛び出し、ラグナもそれについていく。

 

「な、ナインさん!?いくら何でもやり過ぎじゃ・・・」

 

「ユニ、そいつはノワールの事を盗撮してた犯人よ!」

 

「・・・!お姉ちゃんの事をですってぇ!?」

 

偶々見かけたユニが止めようとしたものの、ナインに言われた事実によって方針を変更。

変身を完了したユニと怒り狂ったナインの二人にアノネデスは追い回されることになる。

 

「ま、待ってこれ以上は死んじゃう・・・!本当に死んじゃうからっ!」

 

「・・・此れは不味いな」

 

「ま、マジでアイツが死んじまう・・・!急がねえとッ!」

 

「それに火災も事前に止めないと不味いもんねっ!?」

 

流石にアノネデスが大変なことになってきたので、ハクメンも音の聞こえる方へ走りだし、ナオトも遅れながら急いだ。

そして、残っていたノワール以外の女神たちは変身、ノエルも『クサナギ』の装着をして全員で音の聞こえる方へ急ぐのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「だ、大丈夫?どこか怪我とかしてない?」

 

「お嬢さんありがとうね。一応怪我はしてないから大丈夫よ」

 

夕刻、壁に寄りかかってくたびれているアノネデスが心配になってセリカは声を掛けた。

何せ怒り狂ったナインとユニに暫くの間追い回されてしまい、絶叫や悲鳴を上げたまま、普段運動をしない息切れが走り回って逃げた為、その疲労は尋常では無かった。

幸いどうにか軽傷だったので良かったものの、一歩間違えれば死んでいた。

現在ユニとナインはやり過ぎたことを咎められている。流石に説教とまではいかないが、あのまま続けばラグナたちを巻き込んでいたので、仕方ない面はある。

 

「ああ・・・時間みたいね。もし話したいなら、お姉さんには内緒でこっそりと来るのよ?」

 

「あはは・・・それはちょっと厳しいかも・・・」

 

セリカが重度な方向音痴であることと、ナインを心配させてしまうので迂闊にそんなことができないでいた。

前者に関して本人は自覚がないのだが、後者はナインが仕事どころでは無くなってしまうので、あまりやりたいと思えなかった。

アノネデスはナインの事を考えればそうだろうなと思い、そのまま連れていかれることとなった。

 

「何というか・・・あの人災難だったね」

 

「危なかった・・・」

 

ニューとラムダはアノネデスが全力で逃げている際、止めに行く事ができなかった。

ラムダはピーシェが巻き込まれ無いようにしたからで、ニューはそもそも戦えないので仕方がなかった。

 

「重要人物盗撮って・・・余計に罪が重くなんねえか?」

 

《まあ、彼の自業自得かしらね・・・。流石に最後は同情してしまったけど》

 

ナオトはアイツすげえ事してんなと感じ、ラケルは無茶をしたものだと感じていた。

どちらも良い意味ではない。いっそ清々しいあの姿はどこから来たのかと言う疑問が強かった。

ちなみに、ラケルの同情についてはナオトも同意している。

 

「結局ハッキング主は誰だったんだろうね?」

 

「訊く余裕すら無かったわね・・・」

 

ネプテューヌの問いかけには回答の術が無かった。

ブランの言う通り、途中から収集がつかなくなってしまい、それどころじゃない状況になったからだ。

 

「まあ・・・どうにかなったし、後で聞いてみりゃいいんじゃねえの?」

 

ラグナの言った事は間違いではなく、実際その真相は訊いてみないと解らないのだった。

これ以上はやることがないので、もう帰るだけなのだが、ネプテューヌは隅っこでしょぼくれているピーシェを見かけた。

ピーシェは空腹であることと、自分の相手になってくれる人がいなかったことが重なり、不満と寂しさが混ざっている状態だった。

他の人と違って空腹に対する耐性は間違いなく低いし、幸い自分には空腹を満たす手段があったので、ネプテューヌはそれを行うことにした。

 

「ぴーこ、お腹すいたでしょ?これ食べる?」

 

ネプテューヌはアイテムパックにしまっていたプリンを見せる。

アイテムパックは品質保存の効果もあるようで、ピーシェを発見した日もネプテューヌはこうしてプリンを持ってきていた。

また、そのプリンは自分が食べると言わんばかりに「ネプの」と蓋に書かれていた。

 

「・・・・・・」

 

ピーシェはそのプリンと、一緒に用意してあったスプーンを受け取り、蓋を明けてから一口食べる。

 

「・・・!」

 

「美味しい?」

 

「うんっ!おいしいっ!」

 

空腹を我慢してたこともあり、ピーシェはそのプリンが一層美味しく感じた。

その為ネプテューヌの問いには満面の笑みで肯定し、そのまま笑顔でプリンを頬張るのだった。

 

「良かった・・・。ぴーこが満足してくれて」

 

ネプテューヌはそんなピーシェの様子を見守る。

その時は普段のようにお気楽な雰囲気は薄れ、代わりに年の離れた妹を見守る優しい姉の雰囲気があった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「あ、もしもし?例の子見つかったわよ・・・普段はプラネテューヌにいるみたい・・・」

 

『そうか・・・ところで、何故そこまで脱力している?』

 

「・・・死にかけたわ。あの魔女みたいな人に追っかけられて・・・」

 

プラネテューヌの牢獄にいるアノネデスは、幸い回収されないで済んだ通信機でレリウスに連絡していた。

余りにも脱力している声が気になったレリウスが問いかけると、アノネデスの回答で全てを悟った。

 

『成程・・・現場にはセリカ=A=マーキュリーもいたか・・・災難だったな』

 

「ええ・・・もう二度と追われるのはゴメンだわ」

 

流石にレリウスもアノネデスに同情を示した。

初対面であそこまで敵意を持たれて、殺意をむき出しに追われたら生きた心地がしないだろう。

 

『ともかくご苦労だったな。お前がそこを出られた時は報酬を受け取りに来るといい』

 

「了解よ。それじゃあまたね」

 

レリウスから労いの言葉を聞いてから通信を切ったアノネデスは壁に寄りかかって腰を落とし、くたびれた様子を見せた。

 

「(ああ・・・ようやく地獄から帰ってこれた感じがするわね・・・)」

 

アノネデスは牢獄にいると言うのにどこか安堵している様子だった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

時間も遅いので全員がラステイションの教会で止まることが決まった後、ラステイションの教会にあるベランダでユニとノワールは外を眺めていた。

今回の件もあって少し話し出すのが難しい状況だった。

ノワールは身内にバレたコスプレの話。ユニはアノネデス絡みで少々やり過ぎてしまったことだった。

アノネデスのことはノワールが代わりに鬱憤晴らしをやってもらえたと捉えているので、別に問題はないのだが、それでもユニは姉の迷惑になったかも知れないと考えると抱え込みかけな状態になっていた。

 

「ねえユニ・・・」

 

少しの間続いた沈黙を破ったのはノワールだった。その表情は寂しさを感じさせている。

 

「その・・・がっかりしたでしょ?あんな姿を見て・・・」

 

ノワールが皆に隠れてコスプレをやっていた理由として、見られたら幻滅される可能性が極めて高いからだった。

常日頃から真面目に業務をこなしているノワールは、当然ながら国民から何事も真面目にこなす努力家の女神と言う評価が根付いている。

そんな印象を持たれている彼女のコスプレ写真がある日突然出回ったとしたら、国民たちはどのような反応を示すだろうか?それが怖かったのだ。

幸い、四女神はコスプレやっているなくらいで済み、異世界組は殆どの人がコスプレの知識を持たなかったので何かやっているなくらいで終わったのだが、一般の国民であった場合はそうもいかなかったかも知れないと考えると、どうしても恐怖を感じてしまう。

その他にもユニがどう思ったのかが解らないのもある。彼女にも普段から真面目な面しか見せていなかったので、彼女がどんな感想を持ったかが解らないでいるのが影響していた。

 

「その・・・嫌なら言ってくれてもいいのよ?それだったら・・・」

 

「ううん。そんなことないよ・・・」

 

ユニにもやめて欲しいと言われるかも知れない。そう思っていたノワールの不安は他でもないユニによって否定された。

実はノワールのコスプレに関して、ユニは否定の意見を持っていなかった。寧ろ工程である。

 

「だって、ああいうことができるって事は・・・それだけ仕事が早く終わらせられてるってことでしょ?それに・・・」

 

「・・・それに?」

 

「アタシがお姉ちゃんの仕事を手伝えるようになったお陰で、お姉ちゃんがああやって楽しそうにできたんだったらそれは嬉しいから・・・」

 

今まで殆どの仕事をノワール一人でこなしていたところを、ホームパーティーの一件以来少しずつユニも担うようになった。

それによってノワールが私事に時間を回せると言う結果が帰ってくるなら、自分の努力が実った形の一つと思えてユニも嬉しいのであった。

 

「だからやめないで・・・それに、アタシはお姉ちゃんの色んな姿が見れてちょっと嬉しかったよ・・・」

 

「ユニ・・・」

 

ノワールはユニのお陰で心の底から安心できた。

今まで真面目にやって来た人。それもかなり重役の人がいきなりこういった趣味に走ればそれを知った際にどんな反応をされるか解らない。

今回は国民に知られていないものの、身内に知られていた為どうなるかと思ったが、最も身近にいたユニが肯定してくれたので、一部の人に弄られる以外は一安心だった。

 

「・・・ぁぁぁぁあああ・・・!」

 

「・・・・・・声?上から?」

 

突然、少女と思われる声が聞こえ、ノワールとユニは空を見上げる。

すると、空を斬るような音とともに、薄い青紫色の髪をした小柄な少女が落ちてきていた。

 

「・・・えっ?噓でしょ?まさかだけど・・・!?」

 

「どいてどいてどいてえぇぇ~っ!」

 

ノワールはこの状況を見てデジャヴを感じていたが、案の定同じ状況だった。

違いがあるのは、落ちてきているがネプテューヌではなく、見知らぬ少女であることだった。

そして、無情なことにその少女は真っ直ぐこちらに近づいてきていた。

 

「の・・・のわあああぁぁぁああぁぁああああぁぁぁあああああっ!?」

 

そして、少女とノワールは激突し、盛大な土煙を上げた。

 

「あいたたた・・・」

 

「な、何があったんですか!?・・・って、えっ!?」

 

全員がその騒音が聞こえて慌てて駆け寄って来て、ネプギアが問いかけてみた。

しかし、煙が晴れて状況が分かった瞬間、ネプギアのみならず全員が驚くことになる。

 

『だ・・・誰!?』

 

「ね、ねえ誰かあの子知らない!?」

 

「い、いや!俺は知らねえぞ!?」

 

全員が驚いて即座にネプテューヌが聞くものの、ラグナに続いて次々と知らないと答える。

そうして全員が混乱している中、青紫色の髪をした少女は全員に向けて笑顔を見せた。




アニメ6話分終了に合わせてプルルートが加入しました。

ちなみに、ラグナたちが大慌てしたコスプレですが、CFのイザヨイ、07カラーが元になっています。見事に髪の色と目の色がほぼそっくりだったので、これは使うしかないと思って取り入れました(笑)。

勇者ネプテューヌの方はゲーム画面の一部を見ることができました。
アレを見た時にクリプトラクトみたいだと感じたのは私だけでしょうか?

恐らくは次回からこのままアニメ7話分に入ると思います。

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