超次元ゲイムネプテューヌ-DIMENSION TRIGGER- 作:ブリガンディ
更新は大体1週間前後になると思います。
「へぇ。ここがギルドってところか」
「ええ。ここではいろんな仕事が舞い込んで来るから、ラグナにあったものを選ぶといいわ」
「なるほどねぇ・・・」
俺がゲイムギョウ界にやって来て数日後、俺はアイエフからギルドのことで簡単な説明を受けていた。
アイエフは黒い格好に青いコートを着ている。茶髪の髪をおろしていて、双葉の髪飾りを付けている少女だ。
ちなみに、蒼炎の書がこの世界でどんな影響が起こるかは、現在イストワールを中心に各国の教祖が力を合わせて調査している。
さて、そんなことは今は置いといて、目の前の事だ。俺にギルドのことを説明してくれているアイエフなんだが・・・。
「・・・あいつと声が似てるからまだ錯覚が起きるな・・・」
「もう、またそれ?失礼しちゃうわね」
まあ、格好はともかくとしてやっぱり声がどうしてもな。レイチェルに似てるからついつい気難しくなっちまう。
本当に悪いな。アイエフ・・・。俺もこんなに慣れないものだとは思わなかった。
「まあそんなことはさて置き、受付はこっちよ」
俺はアイエフに案内されてクエストを受けるために受付の所までいく。
そして、俺はここにくるのが初めてだと伝えると、登録するためにカードに必要事項を書かされることになった。
「(えーっと・・・ここでもこれだけでいいだろ)」
俺は名前の記入欄のところに『ラグナ』とだけ書いておいた。
この世界では皆名前が短い為、別に怪しまれることはなかった。
そして、登録が完了した俺は早速クエストを受けることにした。
採取系はこの世界に慣れてない以上無理だと判断して、簡単なモンスター討伐クエストを受けることにした。
「だ、大丈夫ですか?」
「ああ。大丈夫だ。こいつはそんなに攻撃的じゃないんだろ?」
受付の人は俺が片目がずっと閉じられていることもあって心配してきた。
今回受けたクエストはスライヌを複数討伐する内容で、スライヌ自体そんなに強くない(モンスター内で最弱クラスだという)ことはクエストの依頼文に乗っていた。
「それはそうですが・・・念の為誰かとご一緒に行ってくださいね?」
「あ、あぁ・・・わかったよ・・・」
流石に片目しか見えない奴が大人しい奴とは言え、いきなりモンスターと戦うのが不安なんだろう。俺は降参のポーズを取りながらそれに従うことにした。
* * *
「あっ!戻ってきた!どうどう?クエストは受けられた?」
「あぁ。受けてきたぞ・・・一応誰かと一緒に行けとか釘を刺されたが」
俺たちがギルドから出るとネプテューヌが訊いてくる。俺は簡単に答える。
「それなら、私たちがいるから心配はないですね」
「はいです!何かあったら私たちが助けるですよ!」
まるで自分たちに任せろと言わんばかりにネプギアとコンパが答える。
コンパは薄いオレンジっぽい色をした髪が癖っ毛っぽくおろし、『C』らしき字が書かれているカチューシャを付けている。
そして、ミニスカートにセーターを着こんでいる少女だ。
ネプギアは女神候補生。コンパはナース。アイエフは諜報員。そしてネプテューヌはプラネテューヌの女神・・・俺と行くメンバー過剰戦力が過ぎねえか?特に女神。
「よーし!それじゃあ早速行こーう!」
「おおー!です!」
ネプテューヌの行こうと言う声に、コンパはノリノリで答え、二人は歩き出していった。
「お姉ちゃん・・・今回はラグナさんの腕試しが主なのに・・・」
「まぁネプ子のことだから仕方ないわよ。ラグナも早く馴れてね?」
「ああ。努力するよ」
俺たちは苦笑しながら二人の後に続くのだった。
こうして俺のゲイムギョウ界での、ひいては人生初のまともな仕事が始まろうとしていた。
* * *
「あれがスライヌか・・・」
プラネテューヌから少し離れた木々が道を作ってるかのような場所に来た。
今俺たちの目の前には通行を邪魔するかのように、水色をした肉まんに顔と犬の耳が付いたどこか愛嬌のあるモンスター、『スライヌ』が10匹程いた。
タオが見たら「美味しそうな肉まんニャス!」とかって言って食いに行きそうな気がしてきたぞ・・・。
「とりあえず私たちはここで見てるわ。ヤバそうだったらすぐに行くから」
「お手当の準備は済ませておくです」
「おう。すまねえが頼むぜ」
俺は二人に礼をいい、少しだけ左肩を回しながら前に出る。さて、右側が見えねえから右側から倒して行くか。反時計回りに動けばスライヌを視野に入れ続けやすいはずだ。
左肩を充分に回したら左手で剣の柄を握る。
「あの、ラグナさん」
「ん?」
俺がいざ飛び込もうかと思ったその時、ネプギアに声をかけられて俺は柄を握ったままネプギアがいる方を振り向く。
「えっと・・・その、頑張ってください」
「おう、任せな!」
ネプギアが見せるその笑顔に、俺はニッとした笑みを見せて答えた。
よし。んじゃあ行くか。俺はスライヌの方に向き直り逆手持ちになる形で剣の柄を握り、抜刀はしない状態で構える。
そして姿勢を低くして、足に力を入れ、力強く踏み込んで一番右側にいるスライヌに向かって走り出した。
「うぉりゃっ!」
充分に近づいた俺は遠心力を上げるために右に一回転しながらスライヌ目がけて、剣を抜刀しながら右から斜めに振ってぶった斬る。
俺が斬ったスライヌは一撃で光となって霧散した。
「これならやれるな・・・」
案外脆いもんだな。好戦的じゃないスライヌは反応も悪いらしく、危害を加えられてようやく反応するらしい。これくらいの相手なら図書館相手にするより何倍も楽だな。
俺がそんな風に考察をしてたらスライヌが反応しだし、群れに襲いかかった俺を撃退・排除せんと近くの奴から俺に近づき始めた。この様子だと近くにいる奴から倒した方がいいな。
さて、ここからが本番だ。俺は剣を構え直して、一番近くにいるスライヌに向かっていき、手に持ってる剣を振った。
* * *
「へぇ・・・結構やるじゃない」
右上半身がまともに動かない状態で複数のスライヌ相手にかなり余裕を持って戦えているラグナを見てアイエフは感心する。
ラグナは近づいてくるスライヌを斬り、刺し、時には蹴りを入れてから斬り、確実に数を減らしていた。
「まさか片腕であれだけ戦えるなんて・・・私たちが聞いてた話より厳しい生活してたのかなぁ?」
「ラグナさん・・・すごい・・・」
以前、図書館こと『統制機構』にラグナが反逆をしていたことを聞かせてもらっているが、どれほどの規模だったかを想像するだけで恐ろしくなる。
ネプテューヌはラグナの反逆した規模が気になり、ネプギアはラグナの戦い方を呆然としつつも見ている。
「これなら、ラグナさんが怪我をすることはなさそうですね」
コンパはラグナの戦いを見て安心した様子で言う。他の三人も笑みを浮かべて頷いた。
「だりゃっ!」
ラグナが最後の一匹に剣を上から振り下ろしてスライヌを二枚におろすと、そのスライヌは光となって霧散した。
周囲には何もいないため、この世界におけるラグナの初戦闘は勝利に終わった。
「よし。終わったな」
ラグナは剣を納刀し、皆の所へ戻る。
「お疲れ様。どうだった?戦ってみて」
「ああ。右側が見えねえのは厄介だが・・・アレだと弱すぎて問題にならなかったよ」
ラグナは苦笑交じりにそういう。どうやら右目が見えないにも関わらず、手ごたえが無さ過ぎたようだ。
「何がともあれ、怪我がなくて良かったですぅ」
「そうだねー。安全第一って言うしね」
「この手合いの仕事に安全も何もねえと思うが?」
ネプテューヌの言葉にラグナはツッコミを入れる。周りが特徴的な人たちばかりだったラグナはどうもツッコミに回りがちである。
「あっ。そうだった。モンスター退治は安全じゃないや・・・そしてそのツッコミありがとう!」
「何がありがとうだ!」
そして、自分たちのやりとりがおかしくて、皆して笑った。
「さて、じゃあそろそろ戻りましょうか。報告するまでがクエストだからね」
アイエフの言葉に促されて、皆はプラネテューヌに帰りだした。
「あの、ラグナさん」
「ん?」
俺はネプギアに話しかけられ、そっちを振り向く。
「クエスト、成功して良かったですね」
「ああ。そうだな・・・」
ネプギアが笑顔を見せてくれる。ラグナはそれに対して穏やかな笑顔で返した。
俺がネプギアをサヤとダブらせたのはなんだろうか?ラグナは考えたが、今は置いておくことにした。
だが、ネプギア含め、俺を受け入れてくれた大切な人たちを、ラグナはこの手で『護りたい』と思う。それだけは確かだ。
* * *
「終わったぞ」
「・・・本当に討伐できたんですね・・・」
俺はギルドに戻ってクエストが完了したことを報告する。担当の人は信じられないかのような顔をしていた。
「まあ、今回は相手が相手だったからな。案外大したこと無かったよ」
「私も目の前で見てたけど、助けなんて必要なかったわよ」
俺の言葉にアイエフが続けて信憑性を高めてくれる。
「そうでしたか・・・ともかく、これでクエストは完了です。また受けようと思ったらこちらでお伺いします。それでは、お疲れ様でした」
「さて、行きましょうか。みんな待ってるだろうし」
「ああ。そうしよう」
俺たちはこの場を後にして外に出る。これで俺の人生初のまともな仕事は終わった。
「あっ!戻ってきた!アイちゃん、ラグナ、今日この後みんなでラグナの初クエスト成功祝いしようと思うんだけどどう?」
「私は構わないけど、ラグナはどうするの?」
「初クエスト成功祝いねぇ・・・」
俺たちが外に出るや否、ネプテューヌから提案が出る。俺の初クエスト成功祝いって・・・子供じゃああるまいし・・・。
だが、断ろうとは思えなかった。寧ろ俺は初めてまともに働いたしいいかと言う思いが強かった。
「そうだな。せっかくだし、やろうか」
だから俺は提案を呑むことにした。
これからは『死神』としてじゃなくて、『ラグナ』という一人の人間として生きるんだもんな。これくらいはいいだろう。
「じゃあ、早速食材を買いに行くですよ!」
「わーい!やった~!」
俺が賛成すると、コンパとはネプテューヌは歩調を少し早め、先に進んでいく。
オイオイ・・・いくらネプギアとアイエフがいるからってさっさと行くなよ・・・。俺はまだ場所を把握しきってねえのに・・・。
「お姉ちゃん・・・またクエスト出発の時みたいになってる・・・」
「やれやれ。これじゃあ誰のお祝いだかわかったもんじゃないわね」
「全くだな・・・」
俺たちは苦笑しながらゆっくりと歩き出した。
どうやら俺は早くもこの状況に慣れてきたみたいだ。
「なあ、ネプギア」
「はい、何ですか?」
クエスト帰りとは違い、今度は俺から話しかけてみる。
あっ、やべえ・・・話しかけてみたのはいいけど言葉を考えてなかった。我ながら情けない。
俺は言葉を探して、一つはっきりと伝えられることがあったので言うことにした。
「真面目に働くって、こんなに気持ちがいいもんなんだな・・・」
「ラグナさん・・・本当に良かったですね」
今まで無賃乗車だの食い逃げだの、窯を『殺して』町一つの環境を破壊するだの散々なことをやってきたが、それがどれだけの悪行かを。
また、真面目に働くのがどれだけいいことかを、俺は今日理解した。
「おーい、何してるのー?おいてっちゃうよー?」
「急がないと日が暮れちゃうですよー?」
ネプテューヌとコンパの声が聞こえ、俺たちは声の方を見る。いつの間にか結構離れていた。
「アンタ達が速すぎるのよ!
・・・早く行きましょ。本当にあの二人だと本当に置いて行きかねないわ」
「そうですね。少し急ぎましょう」
俺たちは急いで二人の後を追った。仕事終わったってのにドタバタしてるが、これも悪くないな。
「(シスター・・・俺はこっちで今度こそ真っ当に生きてみるよ。今まで心配させて悪かったな)」
俺は一人心の中で、育ての親であるシスターに謝罪と生き方の宣言をした。
そして、俺たちの夜は俺の初クエスト成功祝いによって騒がしく、あっという間に過ぎていった。
そう言えばラグナが右上半身使えない状態で戦うのってCPのシナリオで2回しかないんですよね・・・(ジンとアズラエル)。
戦闘描写はもう少し細かい方がいいのか、それとも大雑把の方がいいのか迷いますね。
オリ回はもう少し続くと思います。
ラグナが蒼炎の書を使えるようになるまで後何話くらい使うだろ?(笑)