超次元ゲイムネプテューヌ-DIMENSION TRIGGER-   作:ブリガンディ

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またもや異様に長くなってしまった・・・。

今回、ラグナとハクメンの一対一による会話とは言いましたが、そのための前置きがすげえ長いことになってしまいました・・・(汗)。

今回、あまり語られない部分等に触れるので、独自解釈のタグを追加させていただきます。
この時タグの文字数限界が来たので、CENTRAL FICTIONのタグは外しておきました・・・。
これが物凄い文字数圧迫になっていましたよ・・・(泣)。

追記

この度ライチとアラクネのリクエストを頂きました。
出せるよう努力したいと思います


19話 共に前へ

「じゃあ早速・・・乾杯っ!」

 

『乾杯っ!』

 

時刻はすっかり夜。やると言ったら皆の行動は早く、プラネテューヌの教会でもうハクメンの歓迎会が始まった。

ハクメンが特に反対しなかったのもあって、問題なく開けた。まあ、ロムとラムに悪いと思ったのが大半だろうけど・・・。

 

「しかし・・・こうしてお前とまともにこんな時間を過ごせるとは思っても見なかったよ・・・」

 

「其れは私も同感だ・・・。何せ、今まで戦い続けて来ていたのだからな・・・」

 

俺とハクメンはお互いに率直な感想を述べる。

今まで敵対してたはずの俺たちが、今はこうして団欒できる日が来ていた。

それはこの世界での俺の生き方が影響したのだろうか?それともこいつらが俺に与えてくれたものだろうか?それはわからないが、この新しくできた時間は嬉しいものだと思う。

 

「お二人とも・・・少しお伺いしたいのですがよろしいでしょうか?

先ほどハクメンさんが話していた『蒼の男』と『ラグナ=ザ=ブラッドエッジ』の二つについてなのですが・・・」

 

「ああ・・・そういや後で話すっつってたな・・・」

 

イストワールに聞かれて俺たちは自分たちが出した単語のことを思い出した。

じゃあ早速・・・と行こうと思ったが、ロムとラムがハクメンと話したそうにこっちを見ていた。

 

「・・・ハクメン・・・。俺が話しとくから、お前はあいつらに付き合ってやったらどうだ?」

 

「・・・御前の言いたいことは分かるが、此れは重要なことだ。少し待ってもらうしかあるまい」

 

二人の心境を感じ取って、ハクメンに促して見たが、今回は譲らなかった。

まあ・・・あいつらが二日間ずっと我慢していたのも分かるが、『蒼の男』に関しては大分大事になるからな・・・。

 

「御前たち・・・話が終わったらそちらに行く・・・。暫し待たれよ」

 

「「はーい!」」

 

ハクメンの一言に、二人は元気よく返事をする。その間はブランが二人の相手をするようだ。

ちなみに、この話に参加するのは俺とハクメン、そして教祖たちだ・・・。セリカはこう言った深いところまでは知らない身である為、後々皆に教祖を介して伝えて行く形になる。

肝心な主役が話し込んでしまうのはいかがなものかと思うかもしれないが、先にこっちは済ませておかないといけないことだった。後、こういう時に教祖の皆には手間掛けてすまん。俺は心の中で謝罪した。

 

「さてと・・・まずは簡単な『ラグナ=ザ=ブラッドエッジ』の方から話すか・・・。

俺の着ているコートと、この剣が『ブラッドエッジ』・・・まあ、暗黒大戦の時にいた俺のものだな。

それを使って反逆をしていたら、俺の名である『ラグナ』と『ブラッドエッジ』のコートと剣を使っていたことからついた名なんだ」

 

「そうか・・・過去での君の行動が今の君に繋がった・・・そういうことだね?」

 

「ああ・・・俺の暗黒大戦時代での行動は『ブラッドエッジ』として師匠に伝えられたよ」

 

「そうか・・・『ブラッドエッジ』としての御前の名を最初に知ったのは猫だったのだな」

 

俺の話で『ブラッドエッジ』の由来をハクメンは再確認した。

あの時の俺は、停止時間を作るための答えを見つけた・・・。それが正解なんだろう。それのおかげでセリカが無事なんだ・・・それならそれでいいさ。

レイチェルの提案に乗った俺が暗黒大戦時代に行き、その後師匠に『ブラッドエッジ』として伝えられた。

このコートと剣を受け取った時、俺は「重い」と感じた。師匠にはそれを感じたなら合格とは言われたが、まだ未熟だったな・・・。

そして、その時に渡したコートと剣は今の俺に受け継がれた・・・。それでいいだろ。因果とかそういう話は解んねえ・・・。

 

「ラグナよ・・・もう既に他の者から名を聞いてるかも知れぬが、セリカ=A=マーキュリーに御前の本当の名を、御前自身で伝えておくのだな。

彼女は御前の名を知りたがっていたからな・・・。既に知っていたとしても、御前から伝えると良いだろう」

 

「・・・そうだな。今度、ちゃんと伝えるよ」

 

ハクメンに促され、俺は頷いた。

エンブリオ(あの中)』にいた時も、結局重犯罪者されてるってしか言えてなかったからな・・・。今度こそちゃんと伝えないとな。

 

「さて・・・もう一つは『蒼の男』・・・でしたわね。これはもう一つのアナタの呼び名ですの?」

 

「確かにもう一つの呼び名だ・・・。何でその呼ばれ方してんのかは推測でしか話せねえが・・・『蒼炎の書(ブレイブルー)』が『蒼の魔導書』だった時からごく一部の奴に言われてたから・・・多分、『蒼の魔導書』の所有者ってことだと思う」

 

(いや)・・・それは違うぞ。ラグナ、御前は『蒼の門』を覚えているな?」

 

チカの質問に俺は非常に曖昧な答え方をすると、それをハクメンが否定し、俺に門のことを訊いてきた。

 

「ああ・・・それは覚えているけど・・・それと何か関係あるのか?」

 

「『蒼の男』というのは・・・『蒼の守護者』としての御前を知っている者の呼び名だ・・・」

 

「『蒼の守護者』・・・それと『蒼の門』・・・。なるほど・・・そういうことか・・・」

 

確か前に、『エス』って女の子に『蒼の男』が何だの、真の『蒼の守護者』が何だのって言われてたな・・・。

それが理由だったんだな・・・俺が『完全なる可能性』に至ったからこそ、『蒼の門』を託された・・・そういうことか。

それに・・・俺のことを『蒼の男』だなんて呼ぶのは大抵、ナインやレリウスと言った『理』の外にいる奴らだけだしな・・・。それなら納得だ。

 

「・・・『門』・・・ですか?後、『守護者』というのは・・・」

 

「ん・・・ああ・・・。『蒼』のことからしっかり話すべきだったな・・・」

 

イストワールが混乱してる様子を見て、俺は頭を抱えた。

俺たちの世界による『蒼』のことをしっかり話しておかないと、その『蒼』に関する話はまるで分らないからな・・・。俺は反省した。

 

「そのようだな・・・。ならば『蒼』の事から話そう・・・。『蒼』というのは・・・」

 

ハクメンは教祖たちに『蒼』のことを話す。実のところ、ハクメンとの対決が決まったがのと、『黒き獣』の危険性を考慮した緊急会議もあって、『蒼』のことは今日まで話せていなかった。

確認するが、『蒼』は創造と破壊を司る根源の力・・・俺たちの世界における、あらゆるものの根源であり、『全ての可能性を可能にする力』だ。

それは境界の力が回帰する根源・・・。人の意識、『記憶』の回帰する場所でもある。

また、使いこなせれば全ての事象干渉を退ける『外周因子』にもなるし、世界全部を変えられる程大規模な事象干渉も行える。

そして、『蒼炎の書』を使って、俺はあの世界を去る際に『悪夢』を消し去って、『可能性』という名の希望ある世界を与えた・・・。

 

「『蒼』については以上だ・・・」

 

「・・・『可能性を可能』にか・・・『不可能を可能』にではなく・・・」

 

「ああ・・・例えば、誰かの『病弱を治せる可能性』があったら、それを可能にできるって言った形だ・・・。

逆に、『何の補助も無しに宇宙空間で呼吸できる可能性』がないのであれば、その時はそれを可能にはできない・・・そんな感じだ」

 

ケイの呟きを聞いて俺が答える。上手く説明できた解らねえが、皆が頷いたので、大丈夫なのだろう。

とは言え、これだけでは終わらないのが問題だ。残りは『蒼の門』、『蒼の守護者』だ。

 

「じゃあ、次は『蒼の門』と『蒼の守護者』だな・・・結構面倒なことになるけど、大丈夫か?」

 

俺が訊くと、四人は同時に頷いた。つまりは大丈夫ということだった。

 

「よし・・・じゃあ、話すか・・・『蒼の門』のことだが・・・」

 

俺は『蒼の門』のことについて話し始める。

『蒼の門』・・・それは『蒼』へと至る『境界線』であり、理の外へと至る場所だ。

その門を開けるのは『眼』の力を持つノエルだけ・・・。いや、今は『蒼の門』を託された『蒼の守護者』である俺も開くことができるんだったな・・・。

ただし、そこは認められた者しか入ることができず、『蒼の境界線』に至ったのは俺とテルミだけ。そして、真なる『蒼』を手にしたのは俺一人だった。

 

「一応・・・『蒼の門』についてはこんなところだな・・・。んで、『蒼の守護者』はその『蒼の門』を守るための存在なんだ・・・」

 

「なるほど・・・そうなりますと、ラグナさんが『蒼の守護者』になったのはいつ頃ですか?」

 

「えっと・・・俺が『完全なる可能性』に至った時だから・・・どの辺だ?」

 

ミナの質問には俺ですらタイミングが解らずに混乱してしまう。

少なくともアマネ=ニシキに宣言した後であることは解るんだが・・・。

 

「御前が『あの少女』の片割れを救った時・・・恐らくはそこで認められたのだろうな・・・。

奴を『殺す』ことはできず、さりとて奴を止めるならば『倒す』しかない・・・。誰もがそう思っていたところを御前は『助ける』という方法で止めて見せた・・・。

御前の中にある『可能性』を認めるのであれば、其の行為は十分すぎるからな」

 

「なるほど・・・確かに、それなら納得だ」

 

ハクメンでも推測にしか過ぎないが、俺もそれで納得できた。

確かに、『冥王イザナミ(サヤ)』は『死そのもの』であるから『殺せない』・・・。そして、今までは俺含む全員が止めるためには『殺す・倒す』と言った方法しか思いつかなかった。

だが、『エンブリオ』でナインと約束をした俺は『助けて』止めることを選択し、実際に『冥王イザナミ(サヤ)』を救って見せた。

それならば俺が『可能性を提示した』と判定してもおかしくはない。

 

「・・・ん?ちょっと待てよ・・・」

 

俺は話している最中に一つのことに気がついた。それは『蒼の門』のことだ。

 

「・・・どうかしましたか?」

 

「これは憶測だけど、俺が『蒼の守護者』としてこの世界にいるのなら・・・『蒼の門』があるかもしれねえ・・・」

 

『・・・!?』

 

イストワールの質問に答えた瞬間、四人の教祖は絶句する。

・・・無理もない。もし『蒼の門』があったのなら、この世界にも『蒼』はあるし、ゲイムギョウ界の根源も『蒼』になる・・・。

そうなれば、ゲイムギョウ界で信じられていたモノが実は別物だったって言う緊急事態に陥る。できることならそれは避けたいことだが・・・。

 

「『蒼の守護者』たる御前でも解らないのか?」

 

「憶測でしかねえからな・・・。誰かが誤って辿り着いちまったりしたなら、行けるかもしれねえが・・・」

 

仮にあったとしても、その実例を知らないから何とも言えないが、そいつを追い出す為に呼ばれるだろうことは推測できる。

ただ・・・行き方解んねえのに戻り方解るかと言われたらそんなことは無い・・・。

 

「まあ、とは言ってもあくまでも憶測だからな・・・あったらあったでその時だ。今は考えなくても良いだろ」

 

「ええ。アタクシとしてもその方がいいと思いますわ・・・。今ここで考えたところで、答えは出そうにないもの」

 

俺の言葉にチカが同意する。俺自身、こういう細かかったり、複雑だったりするのを考えるのは苦手だ。

だからあったらあったでその時・・・。俺はそれでいいと思う。

 

「そうですね・・・なら、『門』の方は時間がある時探すとして、無理はしないようにしましょう」

 

「その方がいいね・・・。元々、女神たちには本来の仕事があるんだ・・・それを放棄してまでやることじゃない」

 

「こちらも誘拐騒動から日が浅いので、暫くは無理ができませんからね・・・」

 

「リーンボックスの方も、人手が足りないから他に割くことはできませんものね・・・」

 

イストワールの提案に各国の教祖たちは賛成する。

急なことなのに、探そうと思ってくれただけでもありがたいと思う。

 

「さて・・・話が纏まったところで、今回はここで切り上げましょう。

皆さん、お二人のことを待ち遠しくしていますからね」

 

イストワールが話しながら皆の方を見るので、俺とハクメンもそっちを見る。

すると、ロムとラムを筆頭に何人かが手招きをしているのが見えた。

 

「確かに、俺たちもそろそろ行くべきか・・・。

ああ、最後に一つ確認だが、『蒼炎の書』の侵食ってどうなった?なんか、さっき体が軽くなったんだが・・・」

 

「はい。実はですね・・・」

 

俺が『蒼炎の書』のことを訊くと、イストワールは小さいモニターを二つ出してくれる。

 

「私もプラネテューヌのシェアが使われた痕跡があったので調べて見たんですけど・・・。どうやら、シェアエナジーによって侵食が浄化されたみたいなんです。

他にも、ラグナさんの中に宿ったシェアエナジーは、プラネテューヌでのシェアを基準に、『蒼炎の書』を強化する役割も持っています。

以後の『蒼炎の書』はシェアエナジーで強化できて、侵食に関してはシェアエナジーが相殺するので、外的要因が無い限りは『蒼炎の書』によって『黒き獣』になることは無くなりました。」

 

イストワールが出したモニターの内一つは『蒼炎の書』の侵食率で、今日まで相当ヤバかったはずなのに、今はすっかりゼロになっている。

もう片方のモニターは『蒼炎の書』とシェアエナジーの照らし合わせのものだった。こっちもこっちで、シェアエナジーを貰った分能力の上昇値が増えていた。

 

「なるほど・・・じゃあ、俺は知らねえうちに『ソウルイーター』でシェアエナジーを貰ってたって訳か・・・。

そうなると、ハクメンが俺を『正義の代行者』って呼んだのも・・・」

 

「その通りだ・・・女神たちは此の世界に於いて『正義』を成す・・・。

それならば、女神たちの力の源であるシェアエナジーを授かり・・・女神たちに協力する御前は、正しく『代行者』であろう」

 

「ハハッ・・・それなら確かに俺は協力者であって、『代行者』でもある存在だな」

 

俺が言いかけたところをハクメンが答え、俺はその答えに納得する。

これ以外にも、『ソウルイーター』で何らかのモノを取り込んだって言えば・・・ラムダの『イデア機関』と、『エンブリオ』で『資格者』の『願望(ゆめ)』を喰らってた時だな・・・。

それと同じようなことを、まさかゲイムギョウ界(こっちの世界)に来てまでやるとは・・・。本当に何があるか解ったもんじゃねえな。

 

「ただ、外的要因が気がかりだな・・・。その外的要因って、やっぱり・・・」

 

「『片割れ』だろうな・・・」

 

俺とハクメンの持っていた意見は一致していた。

俺たちの言う『片割れ』の名は『ν-13(ニュー・サーティーン)』・・・。『次元境界接触用素体』の一人であり、サヤを元にして造られたクローン三人の内の一人でもある少女だ。

ニューの目的は俺と融合し、『黒き獣』となって世界を壊すこと。俺の『蒼炎の書』は『黒き獣の躰』であるのに対し、ニューは『黒き獣の心臓』だ。

また、ニュー俺以外に無関心で、俺と殺し合うことも望んでいる・・・。正確には俺と殺し合いをした上で『黒き獣』になることだろうか・・・?

とまあ・・・あの世界でニューと出会った大体の人にとって、共通の認識がこんなところだ。

俺もそうなのかと聞かれたらそれは違う。俺にとってはいろんな奴に利用されるだけ利用されて、自分に残されたのがそれしかないと思ってる・・・。

俺の事だけが全てで、残りは全てが憎いだとか、邪魔だとか・・・そういう風にしか捉えられなくなっちまった・・・とても可哀想な奴だ。

助けることができたかと思えば、最後にテルミに利用されちまったからな・・・。本当に、最後まで救われない奴だった。

 

「・・・『片割れ』?確か、以前にそんなことを言ってたね・・・」

 

「ああ・・・今は気にしなくていい。そいつはゲイムギョウ界(こっち)に来てねえからな・・・」

 

四人が心配したので、ニューがいないことを話すと教祖たちはホッと胸をなでおろす。

ただでさえハクメンと『黒き獣』で騒動があったんだから、これ以上面倒ごとを増やしたくねえよな・・・。

 

「さて・・・じゃあ今度こそ行こうか。何かあったらまたその時に話そう」

 

「はい。それではまたの機会に」

 

短く会話を済ませ、俺とハクメンは今度こそ皆の下に移動する。

 

「遅ーいっ!何を話してたって言うのさぁ?」

 

「悪いな・・・『蒼炎の書(こいつ)』のことと、ハクメンがさっき言ってたことで話し込んでたんだ・・・」

 

「『蒼炎の書(それ)』の侵食は・・・もう大丈夫なの?」

 

ネプテューヌに咎められ、俺は右腕を軽く上げながら詫びる。

そこから立て続けにブランに聞かれて、俺はそれを待っていたのが自分でも自覚せざるを得ないくらいに口元を緩めた。

 

「・・・朗報だ。『蒼炎の書(こいつ)』の侵食はきれいさっぱり無くなってた。

イストワールが言うには、シェアエナジーを貰ったおかげらしい。ついでにそのおかげで強化もできるらしい。おまけに侵食の相殺付きだ」

 

俺がどうなったかを簡単に説明すると、皆の顔が明るくなる。なんだか、随分と待たせてしまった感じがあるのは俺だけだろうか?

 

「ということは・・・『黒き獣』になる可能性も・・・」

 

「ああ・・・。外的要因ってのさえなければもう平気だ・・・」

 

『ラグナっ!(兄さまっ!)』

 

「って、うおぉっ!?」

 

ネプテューヌの問いに俺が「平気」ってところまで言い切った瞬間、『ネプギア』とセリカ。そしてネプテューヌの三人が抱きついてくる。

その勢いに押し負けた俺は頭から思いっきり倒れ込んでしまった。

 

「よかったぁ・・・。兄さまがもう、『黒き獣(あんなもの)』にならないのが分かって・・・本当に・・・」

 

「うんっ!私も、ラグナが勝手にどこか行かないって分かって良かったよ・・・」

 

「こないだの言葉が台無しになった気がしなくも無いけど、ラグナがもう大丈夫と分かれば無問題だよ~っ!」

 

「っててて・・・お前ら、何だって藪から棒に・・・。けど、心配掛けたな・・・もう大丈夫だ」

 

三人がそれぞれ満面の笑みで言うのを見て、俺は頬を緩ませる。

こいつらの笑ってる顔を見ると、最近は帰ってきた感じが増している気がする。

 

「・・・・・・」

 

「あはは・・・ミネルヴァに言われちゃった・・・」

 

「ミネルヴァ・・・今日だけは許して?今度メンテナンスのこと訊いてあげるから」

 

「・・・・・!」

 

ミネルヴァは「落ち着け」みたいなことを言ったのだろうが、ネプギアの「メンテナンス」という言葉に勝てず、高速で頷く。

・・・でも大丈夫か?前にも言ったがココノエ製だぞ?反応兵器が何だのとか言ってたよな?プラネテューヌの技術者頑張れよ・・・。

 

「・・・此の者たちはいつもこうなのか?」

 

「流石にこうまでは行かないわね・・・」

 

「でも・・・いつも仲良し・・・♪」

 

「確かにあの四人の仲もいいけど・・・私たちの方が仲良しだもん!

ね?ロムちゃん、お姉ちゃんっ!」

 

「うん・・・♪仲良し♪」

 

「二人とも・・・」

 

ハクメンの問いにブランが苦笑交じりに答えると、ロムがついでの答えを出す。

すると、今度はラムが対抗馬に出て、ラムの言葉を聞いたロムが笑顔で同意して、ブランは恥ずかしさ交じりに嬉しくなり、二人の頭を撫でる。

 

「御前たち三人も・・・家族と過ごすその時間を大切にすると良い・・・。

その時間は、ラグナと私がもう二度と得ることの出来ぬ・・・幸福な時間だからな・・・」

 

「・・・ええ。失いそうだったものを、みんなが取り返してくれた・・・。だからこそ、私はこの時間を手放さないわ」

 

ブランの表情が優しい笑みに変わり、それにつられる形でロムとラムも満面の笑みになる。

ハクメンの言葉を聞いて俺は一瞬硬直してしまったが、どうにか立て直す。

俺はその大切な時間を一度・・・ハクメンに至っては二度も失ってしまっている・・・。

だからこそ、ブランにはその時間を失ってほしくない・・・。今まで敵対していた俺たちにの中にある・・・確かな同じ想いだった。

 

「あの・・・そっちがいいなら、せっかくだから訊きたいんだけど・・・。ハクメンが言ってたツバキ=ヤヨイって・・・どんな人だったの?」

 

「あっお前らちょっと悪い・・・どうする?これは俺が決めていいものじゃねえし・・・」

 

ノワールは手を上げて恐る恐る訊いてきた。普段な面のあるノワールでも、ハクメンのことを考えたらそこまでがっつりと踏み込むことはできなかった。

俺は一旦押し倒されたまんまだったので三人に降りてもらい、起き上がってハクメンに顔を向ける。

表向きしか知らない俺なんかよりは、長く接していたハクメンが決めた方が良いだろう。

 

「・・・そうだな・・・。ならば、少し話すとしよう。ラグナよ・・・お前も、自分の知る限りのツバキ=ヤヨイを話すと良い」

 

「解った・・・。ならそうさせてもらうよ」

 

ハクメンは少し悩んだのち、話すことを決めた。そして、俺とハクメンでツバキ=ヤヨイのことを話し始める。

俺たちの初対面の印象として、『ハクメン(ジン)』はドのついた箱入り娘。俺にとっては真面目な奴だが融通の効かない奴だった。

俺の場合、既にテルミの策略にハマってたせいなのもあるんだろうけど、とにかく頭が硬かい奴だと感じた。

ただ、幼少の頃に出会った『ハクメン(ジン)』にとっては近い歳の奴と話す機会がなく、どこか寂しそうにしていた少女だったようだ。

俺を始めて見たツバキ=ヤヨイは「俺の存在がジンやノエルを狂わせた」と思い、逆恨みって言うのか八つ当たりって言うのか・・・そんな感情を持っていた。

正直疎ましいと思っていたが、ジンを慕っている気持ちは本当だったから、そこまで言わなくても良いだろうとは思っていた。

また、ハクメンが話して分かったこととして、ハクメンが『ジン=キサラギ』として生きていた時、あいつの秘書はノエルじゃなくてツバキ=ヤヨイだったらしい。

 

「お前の時はノエルじゃなくてあいつだったのか・・・」

 

「・・・奴は優秀で良き者だった・・・」

 

俺の知らないことだったので、素直に驚いた。

同時に、俺と違う事象ではノエルがいない。ニューとの予定調和も避けられない・・・。そんな事象であることを再確認した。

素直に驚く俺とは違い、ハクメンの声音が暗いものに変わっていく。それが何を示唆するか、今の俺達には十分すぎることだった。

その後、俺がカグツチに行くという知らせは、俺と同じ事象にいたジンはノエルから直接情報を受け取ったが、『別のジン(ハクメン)』は別ルートで知ってしまったらしく、結局俺を追ってカグツチへ行くことは変わらなかったらしい。

そして、ハクメンのいた事象では、ツバキ=ヤヨイはニューの攻撃からジンを庇って死んでしまった・・・。

更に追い打ちをかけた事実として、『ハクメン(ジン)』の目の前で俺とニューは窯に落ちる。それを追った『ハクメン(ジン)』は俺たちが『黒き獣』になる瞬間を目撃したことだ。

窯を渡って暗黒大戦時代に飛んだ時、体が動かなくなっていて、『スサノオユニット』にその身を投げてまで戦う道を選んだことで、今に至るのだった。

 

「あっ・・・ごめんなさい。こういう時に訊く話しじゃなかったわね・・・」

 

「否、良い・・・。此れは私の身勝手さが招いた事だ・・・」

 

気を悪くしたノワールは謝り、ハクメンはそれに対して左手を出して平気だと主張する。

その為、ハクメンは『黒き獣』の元の存在である俺とニューを滅することに躍起になっていたのだ。

そして、ハクメンはツバキ=ヤヨイを護れず、教会暮らしの時唯一頼れる存在であった俺を奪われた無力感に苛まれることになった。

 

「じゃあ、それからハクメンさんは今の姿になったんですね・・・」

 

「その通りだ・・・。私がこの姿になり、力を求めたのは己の弱さを認められなかったからだ・・・。

力を求めた理由であれば、確かにラグナに近いものだ」

 

ユニの言葉にハクメンは答え、そこに「最も、力の使い方は大きく違うものになったがな」と付け足す。

確かに俺も、教会で頼れるシスターが殺され、ジンは利用され、サヤを連れていかれた『あの日』ほど無力感を感じたことは無かった。あんな想いをしたくない・・・それはハクメンが『スサノオユニット(このトンでも)』を身に着けてまで戦おうとするのに近い。

使い方が違うというのは、俺の場合が『大事なものを護る』、『助けられる奴を助ける』為にと前を向いて使うのに対し、ハクメンは『己の罪を雪ぎ続ける』、『過去の惨劇を繰り返さない』と何かと後ろを振り返るものだからだろう。

それを聞いた皆は言葉を失った。無理もない・・・ハクメン個人かと思えばジンのもう一つの姿だったのだけでも衝撃は十分だし、更にはその悲惨な過去にも驚きしか無いだろう。

 

「・・・ラグナ。私があの世界で、ラグナと最後の晩に話したこと・・・覚えてる?」

 

「ああ・・・。覚えてる。俺たちの世界を助けて欲しいって言う前に、セリカは自分たちのいた世界が好きだって・・・言ってたな」

 

俺はその話のことを思い返す。

セリカはあの時、ナインにとっては何度も自分を苦しめた世界であっても、セリカにとっては俺たちの時代が来た数だけナインたちが必死に護った世界だった。

だからこそ、セリカは自分の大切な人たちが懸命に生きているあの世界が好きだったんだろう。

多分、セリカは自分の発言とハクメンの過去・・・この二つを照らし合わせたことで、自分の結論が揺らいでしまったんだろう。

 

「でもな・・・セリカ。ハクメンの過去を知ったからって、お前の意見が変わるかって言われたら違うぜ。

あの時、セリカはナインやハクメンが何度も守った世界は自分にとっては誇りだって言ったろ?」

 

「ラグナ・・・でも」

 

「その男の言う通りだ・・・セリカ=A=マーキュリーよ。

御前の持っていた世界に対しての見識を・・・他人の過去一つで変わるものではあるまい」

 

大方推測ができた俺はセリカに言葉を投げる。セリカはまだ食い下がるが、セリカの見識を揺らがせてしまった本人のハクメンが俺の言葉に続きを入れる。

 

「・・・ハクメンさん・・・」

 

「あの世界は、ナインにとっては何度も御前を苦しめる最悪の世界・・・。

私にとってはツバキ=ヤヨイを護れぬ後悔が続く世界で、ラグナにとっては何度も『あの少女』を奪われ、其れを取り戻すために足掻く試練の世界だったとしても・・・。

御前にとっては、大切な人たちが何度も奮闘し、其の者たちの努力の証が確かに存在する誇らしい世界であることは変わりない筈だ・・・」

 

「・・・!」

 

ハクメンの言葉を聞き、セリカは目を丸くする。

確かに、色んな人にとって辛い世界だったかもしれない。だがそれでも、セリカからすれば何度も大切な人たちが皆のために戦い、勝ち続ける世界だった。

 

「ナインや私を含め、暗黒大戦の頃から御前を知る者達に、御前にそう思って欲しいと思う者など居ない・・・。

其れだけは覚えておくのだな・・・」

 

「ハクメンの言う通りだな・・・。

セリカは自分で『辛いことや悲しいこともあったけど、それを無かったことにしたくない』って言ってたの・・・忘れちまったか?」

 

「二人とも・・・。うん。そうだね・・・私が間違ってたみたい」

 

俺たちがセリカに伝えたことが幸いし、セリカは考えが固まる。その表情は晴れやかなものだった。

 

「やっぱり、私はあの世界のことが好き・・・それはこれからも変わらない・・・。

心配させちゃってごめんね。それと、気づかせてくれてありがとう」

 

セリカは俺たちに謝罪とお礼を述べる。

セリカが出した結論は今までと変わらない、自分の大切な人たちが頑張った世界が好きだというものだった。

 

「気にする必要はない・・・。御前に暗い顔は合わぬからな・・・」

 

「そうだな・・・。セリカに何かあって、ナインにぶちのめされたらたまんねえからな・・・」

 

「アハハ・・・確かに、お姉ちゃんならやりそうだよね・・・」

 

ナインのネタを振ったことで、俺たちは三人で笑う。そのネタを知らない皆は啞然とするだけだった。

 

「さて・・・ラグナよ。我らが共に歩むことが決まった以上・・・一対一で話しがしたいだが、構わぬか?」

 

「いいぜ。俺もそうしたいと思ってたところだ・・・。悪いな皆・・・ちょっと席外すわ」

 

「いいけど、早めに帰って来てよ?」

 

ハクメンの提案を呑んで、俺は皆に一言声をかける。するとネプテューヌから一言ご注文が入った。

 

「分かった・・・早めに戻るよ。じゃあ、行くか」

 

俺は二つ返事でそれを受け入れ、ハクメンと共に一度この場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「さて・・・ここならいいだろ。戻るつってもすぐ近くだし」

 

「そうだな・・・。確かに此処なら良いだろう」

 

俺たちが移動した場所は、プラネテューヌの教会の裏庭だった。

裏庭に立ってるデカい木の所まで歩いて、俺はその木に腰をかける。ハクメンも同意して、俺が腰をかけた所の丁度反対側に背中を預ける。

 

「ところで・・・話すっつっても何を話すんだ?」

 

「・・・・・・」

 

俺が早速本題に入ろうとしたが、ハクメンは黙り込んでいた。

 

「・・・どうした?」

 

「・・・兄さん(・・・)。僕は『ジン=キサラギ(・・・・・・・)』として、最後に一度だけゆっくりと話がしたかったんだ・・・」

 

「・・・!?」

 

ハクメンから聞こえる声は普段の低くくぐもった声ではなく、それなりに高く透き通るような声・・・。俺の弟であるジンの声だった。

流石にいきなりだったので、俺は思わず息を飲んでしまう。

 

「最後の一時って奴か・・・」

 

「・・・構わないかい?」

 

「ああ。いいぜ・・・。俺も今だけは、お前の兄貴として話をしよう」

 

「・・・ありがとう。兄さん」

 

『ジン』の頼みを俺は了承した。

今夜で完全に『ハクメン』として生きるための最後の決心をするなら、それに付き合おう・・・。姿が変わっても、俺の弟であることは変わらないからな・・・。

俺の返答を聞いて、『ジン』は俺に一言礼を入れる。

 

「まさか・・・この姿で再び兄さんと呼ぶ日が来るなんて、思いもしなかったよ・・・」

 

「俺もだ・・・まさかその姿からジンの声聞くとは思ってもみなかったな・・・」

 

正直なところ、お互いにすげえ驚いていることだった。

『ジン』はもうそう呼ぶことができないと思っていた事から、俺はまさか『ジン』である頃の声が出るとは思ってなかったからだ。

 

「えっと・・・お前のがその声で話すのってカグツチ以来・・・なんだよな?」

 

「ああ・・・。僕が『ジン=キサラギ』として最後にいたのはカグツチだからね・・・。

・・・正確には、暗黒大戦時代でアルカード家にいた時が最後だけど、あの時はもう体はボロボロだったからね・・・」

 

ということは、『ハクメン』が『ジン=キサラギ』として人と話すのは、実に90ぶりということになる。

それだけの時間、こいつは自分を殺し続けていたんだ・・・。どれだけ辛い道を選んだんだろうか?それは想像するだけでも苦しいものがある。

 

「ノエルがいない時の俺たちって、カグツチで何をしていたか・・・詳しく聞いてもいいか?」

 

「・・・ああ・・・。多分、この事は兄さんには話して置くべきだと・・・僕は思っていたからね」

 

さっき話していたのにも関わらず、再び訊くのは悪いこと承知で俺が聞くと、『ジン』は承諾してくれた。

 

「そうだね・・・カグツチでのことなら・・・ツバキのことを中心に話そう」

 

『ジン』は敢えて自分の首を締める話を選んだ。それだけ大切な人であったことは想像に難くない。

 

「僕がカグツチに行く前は、ツバキが僕の秘書官として傍にいたんだ・・・。十二宗家の者が秘書官にいるのは相当例外的な事だけどね」

 

「そうだったのか・・・」

 

俺の知る限りでの十二宗家なんて、カグラ、ジン、ツバキ=ヤヨイの三人しかいないが、それでも俺の知る頃だと、カグラは衛士の最高司令官。ジンは脱走したとは言え英雄として称えられいる。

・・・ツバキ=ヤヨイは既に強制拘束(マインドイーター)喰らった後だったけど、それでも秘書官ということは無かった。

それを踏まえると、ノエルがいない世界におけるツバキ=ヤヨイは相当特殊な立場なんだろう。

 

「俺の方のジンは、ノエルから直接俺がカグツチに向かっていることを知ったみたいだが・・・お前は違うんだよな?」

 

「ああ・・・。僕の方はツバキから『ラグナ=ザ=ブラッドエッジの捜索』の命令は来ていない。

だけど、さっきも言った通りで結局、別の所で兄さんのことを知ってしまったよ・・・」

 

結局のところ、ジンが俺を追うのは予定調和なのかも知れねえな・・・。ナインがクソッタレって言いたくなるのもよくわかるよ・・・。

何回『ジン』は目の前で大切な人たちを失えばいいんだろうな・・・俺がサヤを連れていかれた時の無力感もそうだ。もう終わったとは言え、やっぱりきついものはある。

 

「その後・・・僕は兄さんに追いついて、カグツチで戦った・・・。僕はその時兄さんに負けたんだけど・・・。

負けた時に、ツバキが僕のところまでたどり着いたんだ・・・。それで、その場には兄さんと兄さんにやられた僕がいたわけなんだけど・・・」

 

ジンは一度ここで前置きを作った。多分、俺の予想を上回る答えが出てくると思う。

 

「ツバキは・・・武器を持っていない非戦闘員であるにも関わらず、兄さんに立ち向かって行ったんだよ・・・。僕を護ろうとしてね」

 

「・・・はぁ!?武器も無しに挑んだ!?」

 

『ジン』から出てきた言葉に俺は焦りしか出てこなかった。仮にも『蒼の魔導書』を使って窯を壊してる奴相手に素手で挑むって・・・。

『ジンを護る』ためと聞いてある種尊敬はするが、馬鹿だとしか言えない。

 

「あいつ・・・大丈夫だったんだよな?」

 

「ああ・・・。兄さんは一度もツバキに攻撃を加えなかったからね・・・。

ツバキに剣を抜けと言われても、兄さんは非武装を理由に剣を抜くどころか、攻撃をせず避けるだけに留めたんだ・・・」

 

「確かに・・・俺も武装してない奴斬ったりすんの嫌だからな・・・」

 

『ジン』の回答に俺は納得する。何でわざわざ非武装の奴を気づ付ける必要があるんだ?テルミじゃねえんだぞ俺は・・・。

 

「武器を持ってないことを理由に兄さんは攻撃をしなかった・・・。

あの時はただツバキに逃げて欲しいと思っていたけど、今ならわかる・・・。兄さんは最初からツバキを見逃すつもりでいたんだ・・・。

気づける人は殆どいないけど・・・それは兄さんの中にある優しさの一つだった・・・。僕はそう思うよ」

 

「・・・そんなもんか?」

 

「そういうものさ」

 

『ジン』にそう言われるものの、俺にはイマイチ実感が湧かなかった。

どの事象にしろ、ジンをぶっ殺すつもりでいたことは変わりねえだろうからな・・・。

だが、実際には俺もジンを見逃した。理由はニューを精錬が終わらねえ内に破壊するためだった。

 

「・・・兄さんに負けた後、そのまま統制機構に戻っていれば良かったのに、僕は兄さんをまた追いかけた・・・。

そこで・・・あの『片割れ』と対面する兄さんを見た・・・」

 

「俺の時は先にノエルがいたが・・・そうか・・・。」

 

ノエルは俺を追っての行動だったが、先にニューと遭遇していて、しかも殺されそうになっていた。

あと一歩遅けりゃ死んでいたと考えると、間に合って良かったと改めて思えた。あいつが死んじまってたら、俺は他の事象と同じく『黒き獣』になっていた。

 

「僕はその中に割って入る形であいつに挑んだけど、簡単にあしらわれたよ・・・。

そして・・・大した障害が無くなったと見るや、奴は兄さんを封じて融合を始めた・・・」

 

『ジン』の声音が落ち着きを無くしだす。この後の結末は聞いたが、『ジン』にとっては辛いことだろう。

 

「ついでと言わんばかりあいつが僕に止めを刺そうとした時・・・ツバキは僕を庇って・・・ッ!

血だらけになったツバキを見て・・・あいつは・・・ッ!」

 

「そうか・・・お前がニューを憎む理由はそこにあったんだな・・・」

 

『ジン』が一気に声を荒げた。その先を言おうとして言葉を詰まらせるその姿は、他の誰にも見せなかった弱さだ。

『ジン』として話している『ハクメン』の背から感じ取るものが・・・俺は異常な威圧感から酷く悲しいものを抱えている感じになる。

こんな話・・・ロムやラムには聞かせいわけないよな・・・。俺も『ハクメン』ならこうしているだろう。

『ジン』や向こうのツバキ=ヤヨイがこうなってしまったのは何故だろう?考えても答えは出ないかも知れないが、俺も一つ・・・謝って置くべきことはあるな。

 

「悪いな・・・ジン。教会で暮らしてた時・・・サヤの相手ばっかりで、お前をほったらかし気味にしちまって・・・。

俺がもう少しお前の相手をしてやれれば・・・『あの日』あんなことにはならなかったのかも知れねえのに・・・」

 

俺が謝るべきことはこれにある。

ルウィーでブランに話した時もそうだが、俺はどこかでジンに教会で構ってやれなかったことを・・・ずっと謝りたかったんだ。

 

「いや・・・兄さんは悪くないよ・・・。

僕が我慢できないのが悪かったんだ・・・。サヤの方が下だし・・・僕は大して病弱でも無かったのに・・・。

そのせいで・・・僕は『ユキアネサ』に飲まれたんだ・・・」

 

「何言ってんだよ・・・。サヤの方が小さいからって言うけど、それでお前が甘えちゃいけない理由も。俺がお前をほったらかしにしていい理由も・・・。

そんなものはどこにもねえんだよ・・・。大体、あの歳でそんなことを頼む方が無茶ぶりなんだからよ・・・。

『ユキアネサ』に飲まれたのだって・・・俺がしっかりしてやれなかったせいだよ・・・」

 

俺の謝罪を聞いた『ジン』は自分の悪いところを挙げるが、俺は更にそれを遮る。

本当に・・・ちゃんと兄貴らしいことをしてやれなかったダメな兄貴だ・・・。俺は自分の情けなさを痛感すると同時に、妹を持つあいつらには俺のようになって欲しくないと願わずにはいられなかった。

『ユキアネサ』のことはこう言うが、そもそも精神の育ち切ってないガキに持たせようと企てた奴に非がある。

 

「本当に悪かったな・・・。兄貴らしいことをしてやれなくて・・・」

 

俺の表情は、ただただ暗くなる。

もう少し上手くやれなかっただろうか?サヤとジン・・・。この二人の喧嘩の時も、俺が仲直りを促したりできなかっただろうか?そんな後悔だけが拡がっていく。

 

「兄さん・・・。兄さんが本当にそう思ってても、僕は兄らしいことをしてもらった覚えはあるよ」

 

「・・・えっ?」

 

俺は『ジン』の言葉を聞いて、思わずそっち側に顔を向けた。

 

「覚えているかな?僕が風邪を引いていたにも関わらず外に出ていた時・・・。僕の熱に気づいて、真っ先に看病してくれたのは兄さんだったよ・・・」

 

「・・・!」

 

―ジンッ!馬鹿!お前、熱があんじゃねーかッ!何で今まで黙ってたんだよ!?

 

俺はその日のことを思い出した。無理してついてきたジンに気づいて大慌てで教会に戻り、ジンの看病に回ったことを・・・。

その日はサヤの相手をシスターに任せて、俺がジンの看病に回った覚えがある。

 

「あの時、僕はちゃんと気にかけて貰えてるって安心できたんだ・・・。

例えそのひと時だったとしても・・・普段サヤのことを気に掛ける兄さんが僕のことを見てくれていた・・・。それだけでも嬉しかったんだ・・・」

 

「ジン・・・」

 

それが『ジン』の紛れもない本心だとわかって、俺は少し安心した。

確かに、サヤと比べたらジンをほったらかしにしていたかもしれない・・・。だがそれでも、本当に僅かな時間でも、兄貴らしいことをしてやれたことはあったんだな・・・。

 

「そういえば兄さん・・・」

 

「どうした?」

 

「ここから見える夜空はいい景色だね・・・」

 

「ああ・・・。そうだな。そういえば、夜の楽しみの一つに・・・夜空を眺めるのがあったな・・・」

 

『ジン』と俺は話をしながら夜空を見上げる。

教会での夜はあまりできることが少なく、シスターと一緒に本を読むこと。皆で教会の近くの外で夜空を見る。

それくらいだったが、俺たちは楽しく過ごして、俺はそんな時間を些細なことではあっても幸福なものだと思っていた。

 

「僕とサヤにはもう一つ・・・兄さんの葉笛が楽しみだったんだ」

 

「・・・アレか・・・」

 

俺は教会で過ごしていた時に、セリカ(シスター)に教わりながらやっていたのが葉笛だった。

最初は全然うまく吹けなかったが、吹けるようになってからはジンとサヤに頼まれて時々吹いていたことを覚えている。

 

「できれば・・・兄さんの葉笛を最後に聴きたい・・・。それが『ジン()』の・・・最後のわがままだ」

 

「・・・いいのか?」

 

俺は『ジン』も頼みを聞いて思わず訊き返した。

しかも最後とまで言ってきやがった・・・本当にそれで良いんだろうか?俺は他に何かないのかと訊こうか迷う。

 

「ああ・・・。それで僕は、『ジン=キサラギ』しての自分に・・・今度こそお別れをするよ・・・。

これからは『ジン=キサラギ(この一時)』の記憶を胸に、『ハクメン』として生きていくよ・・・」

 

「・・・分かった」

 

しかし、『ジン』の決意が本物だったのがわかり、俺は辺りを見回して葉笛に最適そうな葉を探す。

葉笛に最適そうな葉を見つけた俺は葉の一部を切り取って、葉笛の形を作り上げる。

準備はできた・・・後は吹くだけだった。

 

「じゃあ、吹くぞ・・・」

 

俺は呼びかけ一度『ジン』に呼びかける。そして、『ジン』が頷いたのを感じたので、俺は葉笛を吹き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「一対一とは言ったけど・・・何を話すんだろうね?」

 

「恐らくは、今までことを水に流そうとしているのでしょけど・・・セリカちゃんは何かわかりますか?」

 

「うーん・・・。私もそうだと思うけど、何だか違う感じがするの・・・」

 

ラグナたちが一度席を外してから数十分。

ネプテューヌの振った話にベールが推測を立てながらセリカに訊くが、セリカの回答は確証を持てないものだった。

 

「でも・・・本当にそれだけならここまでかかるかしら?」

 

「あの二人は色々と事情が複雑だから・・・長くなってもおかしくはないわね・・・」

 

ノワールの疑問に、ブランは肯定で返した。

ラグナとハクメンの因縁は別の事象からやってきたハクメンが、事情を知らないラグナに戦いを挑んだ事から始まった。

初対面の時、ハクメンにとっては90年以上の因縁の相手ではあるが、ラグナにとってはいきなり現れた自分の命を狙うものにしか過ぎなかった。

その後はテルミ相手や、強制拘束(マインドイーター)を受けていたツバキを前に、意見の食い違いから戦った・・・。

『エンブリオ』では一度決着は後回しとして共に戦うことになったが、自分達とラグナの実力差の変動がおかしいことに気づいて一度対決。

原因が解ったため再び後回しにしていたが、ラグナが元の世界から去った為、決着はこのゲイムギョウ界まで引きずることになったのだ。

そして、決着はついてようやく和解を済ませたため、二人は初めてじっくりと話をする機会を得たのである。

 

「遅いなぁー・・・ねぇねぇユニ。ちょっとだけ見に行ってもいいかな?」

 

「気持ちは分かるけど、流石に今回はダメよ・・・。わざわざここから離れた以上、私たちの前じゃ話しづらいことだし・・・」

 

待つのが億劫に感じたラムはユニに訊いてみるが、ユニは大丈夫とは言わなかった。

 

「でも・・・気になる・・・」

 

「ロムちゃん。後で聞くこともできるから、今は・・・。・・・?」

 

「あっ・・・この吹き方・・・」

 

―今は待とう。そうネプギアが言いかけたところで、笛のような音がそれを遮る。

それは葉を使って吹かれている・・・優し気ある音色だった。

セリカはその笛を吹いているのが誰だかすぐに分かった。

 

「セリカちゃん。何か知ってるの?」

 

「うん・・・これは、私がラグナに教えたものなの・・・」

 

「セリカちゃんが教えたんだ・・・!」

 

ネプテューヌの質問にセリカは答え、ネプテューヌはその答えに驚きながらも納得した。

ここにいる皆はセリカがラグナのシスターであることを知っているため、特別違和感を感じたりはしなかった。

 

「・・・いい曲ね」

 

ユニの呟きに同意するかのように、皆はラグナの葉笛を夢中で聴く。

 

「(また・・・兄さまの葉笛を聴けるなんて思わなかった・・・。

兄さま・・・。今度は、私の前でも吹いてくれるよね・・・?)」

 

葉笛を聴きながら少女は一人、その笛を吹いている兄へと心の中で問いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「・・・こんなんで大丈夫だったか?」

 

「大丈夫だよ・・・。寧ろ、今まで中で一番良かったくらいさ」

 

吹き終わった俺が『ジン』に訊くと、『ジン』は称賛してくれた。『ここにいるジン』を送ってやれたのなら、それで大丈夫だろう。

 

「・・・これで思い残すことはもう無い・・・。

過去の僕(ジン=キサラギ)』としての『記憶』や『思い出』を胸に・・・これからは『ハクメン』として己の『罪』と向き合って、自分の『正義』を貫くよ・・・。

ありがとう兄さん・・・。そして、さようなら・・・」

 

「ああ・・・。さようなら、ジン・・・」

 

『ジン』は最後に別れの挨拶を済ませる。その声音は憑き物が落ちたような声だった。

それに対する俺は、別れを惜しむのが丸わかりになるかもしれないくらい、消え入りそうな声になった。

その挨拶を終えた『ジン』は一度深呼吸をする。

 

「さて・・・ここからは『ハクメン(・・・・)』として話をしよう・・・」

 

そして、『ジン』は『ハクメン』に戻った。いや・・・これは『ジン』という殻を破って新しい道を改めて踏み出したと言うべきかもしれない。

 

ラグナ(・・・)よ・・・。此れはルウィーで話し損ねた事だが・・・。御前の探している少女のことで、私が知っている僅かな情報を伝えよう」

 

「・・・『あいつ』のことか・・・。何を知ってるんだ?」

 

ハクメンが切り出して来た話題に、俺は思わず食いついた。

俺に見つけてくれと頼んできた少女・・・。その情報は是が非でも知りたいものであり、それを知っているならば相手が誰でも、どんなに些細な事でも良かった。

 

「其の少女自身が何処に居るか迄は解らぬが・・・。『少女の魂』の一部を宿している者は、御前の身近に居るぞ・・・。

御前は其の事について・・・心当たりは有るか?」

 

「俺の身近に・・・?・・・!まさか・・・いや、でも・・・」

 

俺はハクメンの回答に面食らった。そして、ハクメンに問いかけられた俺は身近にいる人たちのことを思い出していく。

そこで、一人の候補は絞り出せた。だが、まだ確証を持っていいのかどうかで揺れていた。

 

「まだ確証は持てぬか・・・。だが、まだ焦る必要は無い・・・。御前が確証を持ったのなら、其の者に問いかけると良い」

 

「そうだな・・・。確かに、まだ焦ることじゃねえな・・・」

 

ハクメンに諭されて、俺は一度落ち着くことができた。正直な話、ハクメンが協力的になってくれただけでも相当ありがたいことだ。

 

「ああ・・・それなら、俺からも一つ確認するが・・・。

ハクメンはセリカの体のことで何か知っているか?今の俺は『イデア機関』が死んでるにも関わらず、『蒼炎の書』が機能を失わねえんだ・・・」

 

俺は左手を上げながらハクメンに訊いてみた。

これはゲイムギョウ界でセリカにあってからずっと続いてる俺の疑問だった・・・。セリカと再開してからはこうしたドタバタが続いてたのもあって、俺はイストワールにそのことを話せていなかった。

 

「セリカ=A=マーキュリーの持つ『秩序の力』に変化が訪れたのだろうな・・・。

我らの使っている術式が別の形で使えているのと同じだろう・・・」

 

「そうか・・・確かに、俺の場合はシェアエナジーを応用してるな・・・」

 

この世界に来てから俺は、魔素の代わりに、親和性の高いシェアエナジーを使わせてもらっていた。

だが、俺は『蒼炎の書』が適合しなかった影響で、暫くの間術式が使えなかったことを思い出して、一つのことを思い出した。

 

「そういやハクメン。お前は最初から術式が使えたのか?」

 

「その通りだが・・・どうかしたのか?」

 

ハクメンに訊いてみると、案の定な回答が帰ってきた。

となるとここから先、俺たちの世界から誰かが来ても俺のようになることはないかもしれねえな。俺はそう結論づけた。

 

「俺の場合『蒼炎の書(こいつ)』が適合しなかったから暫く使えなかったんだが・・・。

ひょっとすると、魔素とシェアエナジーって親和性が高いどころ話じゃねえのかも知れねえ・・・」

 

俺は右腕を上げながら俺の身に起きていたことを話し、俺がイストワールに出してもらった結論と、ハクメンが普通に術式を使えた事から俺なりの答えを出した。

 

「・・・成程。御前はそう結論を付けたか。

此処からは私の推測だが・・・。シェアエナジーは、此の世界に於ける魔素なのだと私は憶測している」

 

「この世界での魔素か・・・」

 

俺の『蒼炎の書』についてはイマイチ納得できない物もあるが、ハクメンのことを考えれば確かに納得できることだった。

セリカは例外的に魔法である為、魔素には左右されないから関係なかった。

 

「だが、此の事も確証がある訳ではない・・・。近いうちに、あの司書から話を訊いて置くべきだろう・・・」

 

「ああ・・・そうだな」

 

俺たちの話はあくまで推測の域を出ないため、正確な情報はイストワールに調べてもらう必要がある。それまでこの話の結論は保留にせざるを得ない。

 

「・・・『あいつ』も『蒼の門』もそうだけど・・・この世界で探さなきゃなんねえもんはいくらでもあるみてえだな・・・」

 

「其の通りだな・・・。そして、我らはこれから共に同じ道を進み、同じものを探すことになる・・・」

 

俺は結論を出しながら木に腰を掛けてたのをやめて立ち上がり、ハクメンの居る方へ歩み寄る。

ハクメンも俺に同意しながら木に背を預けるのをやめ、俺の方に向き直る。

 

「改めて・・・これからよろしく頼むぞ。ラグナよ・・・」

 

「ああ・・・。こっちこそよろしく頼むぜ・・・ハクメン」

 

俺たちは改めて短く握手を交わした。さっきも握手はしたのだが、俺たちの間で改めてやっておきたかった。

 

「さて・・・そろそろ戻るか。皆待ってるだろうし」

 

「そうだな・・・。では戻るとしよう」

 

俺たちは来た道を戻り始めた。こうして隣同士で歩くのは今までになかったため、新鮮な気分になる。

 

「そういや、ハクメンはどの国を生活の基点にするか決めたか?」

 

「私はルウィーを基点にしようと思う。

・・・ノワールのことを気にしていないと言えば嘘になるが、其れ以上にあの三人の支えになれれば良いと思ってな・・・。

ブランであれば、話相手にはなれて、あの二人であれば、遊び相手にはなれるだろう・・・」

 

試しに訊いてみたが、ハクメンの心はもう決まっていたみたいだ。

・・・下手すると三人と一緒にいるハクメンが、一風変わった保護者みたいな感じになると思うのは俺だけだろうか?

 

「ルウィーか・・・。あの二人もそうだけど・・・ブランが俺みたいにならないように見てやってくれると、俺的には助かる」

 

「教会での暮らしをしていた頃の御前を参考にさせてもらうが・・・構わんな?」

 

「ああ・・・マジか。まあ・・・それで支えられんならそれでいいか・・・」

 

ハクメンの含みがあるような訊き方に押し負け、俺は諦め気味に受け入れる。

 

「けど、参考にするからにはしっかりと支えてやれよ?」

 

「無論そのつもりだ・・・。『悪』を滅する以外にも、あの三人を支えることに私は全力を尽くそう」

 

俺の脅し半分の問いかけにもハクメンは動じず、自分の決意を述べた。

その決意が本物だとわかり、俺は目の前にいる男がとても頼もしく思えた。

 

「私の事を気にするのは構わんが、御前もあの少女を必ず見つけてやるのだぞ?『蒼の男』よ」

 

「ああ・・・。もちろんだ」

 

ハクメンの言葉に、俺は二つ返事で返した。

そうして、教会の扉が見えたため、俺たちは話を終えて皆の下に戻った。

その後は何を話してたかとかを訊かれながらも、楽しく夜を過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「・・・まさか、御前と共に戦うのが此処まで早く来るとはな・・・」

 

「ああ・・・。俺もこんなに早いとは思っても見なかったぜ・・・」

 

あれから三日過ぎた。あれからセリカの体のことを訊いてみたが、解析結果はまだ出ていなかった。

一応、セリカに俺から『ラグナ=ザ=ブラッドエッジ』と言う名を伝えた時、セリカは「やっと本人からその名前を聞けた」と涙目になりながら喜んでいた。

一方で、女神たちからは「自分たちゲイムギョウ界の人々にとっては、『ラグナ』と言う一人の人間だ」と言ってもらえた。そこで俺は呼ばれたら呼ばれたでその時。何事もなければ『一人の人間・ラグナ』として生きることを改めて決めた。

また、プラネテューヌの技術者達の協力により、ミネルヴァのメンテナンス環境が遂に確率された。

このことにはセリカとネプギアを中心に皆で喜んだ。更に二人が言うにはミネルヴァが「体調管理ができるって素晴らしい」とかって言ってたみてえだ。

教祖たちから『蒼』や『蒼の門』のことが皆に伝えられ、最初こそ皆は驚いたが、結局仲間の為だと言ってなるべく探す時間を作ってくれるそうだ。

そして、今日はその昼過ぎ・・・ラステイションに出向いていた俺はハクメンと合流した。

そこからギルドでクエストを受けて、プラネテューヌとラステイションの間にある草原地帯にて二体のエンシェントドラゴンと対峙していた。

 

「『白き守護神』か・・・絵面的にはピッタリだな」

 

「私はあの者たちを支えながら『悪』を滅していただけなのだがな・・・」

 

ハクメンはこの短期間で、ルウィーの女神を支える『白き守護神』として称えられていた。

このことをハクメンは飽きれ気味に返すが、それでもゲイムギョウ界にとっては頼もしい女神の協力者が一人増えたと言う、とても喜ばしい出来事だった。

 

「さて・・・私はこの後あの三人とルウィーを回る約束をしているのでな・・・。早いところ始めるぞ」

 

「分かった。俺もプラネテューヌのメンバーと飯食いに行く予定あるし・・・さっさと終わらせるか」

 

ハクメンはルウィーの地理を完全に覚える為だろう。それと同時に四人で出掛ければ万事解決ってことか。

俺も俺で、皆にせっかくだから食べに行こうと誘われていた。そこで俺がとある中華飯店の名前を上げたら皆がそこにすると言ったので、今夜の飯はそこに決まった。

とまあ、そうやって楽しい話を上げても遅れてしまったら世話ないので、ハクメンの早く終わらせることには俺も同意する。

そして、ハクメンは『斬魔・鳴神』を抜き放って腰の高さまで持ってくる。

俺は剣はまだ抜かず、右腕を腕の高さまで持ってきた。

 

「我は『空』・・・我は『鋼』・・・我は『刃』!」

 

「第666拘束機関開放・・・次元干渉虚数方陣展開!」

 

ハクメンはいつもの前口上をしながら気を溜め、俺は右腕のロックを外していく。

ハクメンが言葉を紡ぐ度に大地は揺れ、俺の右腕と足元からは蒼い螺旋が現れる。

それを前に、二体のエンシェントドラゴンが硬直して俺たちを覗き込む。

 

「我は一振りの剣にて、全ての『罪』を刈り取り・・・『悪』を滅する!」

 

「『蒼炎の書(ブレイブルー)』・・・起動!」

 

ハクメンを中心とした大地の揺れが終わると同時に、ハクメンから気が溢れ、ハクメンの髪が扇状に広がる。

俺の右腕から蒼い方陣が現れ、足元の螺旋は天に昇っていく。

ただでさえ硬直していたエンシェントドラゴンどもは、この光景を目の当たりに動揺をしていた。

そして、前口上が終わったハクメンは『斬魔・鳴神』を牙突で構え、俺は右手で剣を引き抜き、逆手持ちの状態で右腕を引いた。

 

「我が名は『ハクメン』・・・推して参るッ!」

 

「覚悟しろよ・・・このトカゲ野郎がッ!」

 

俺たちは同時にエンシェントドラゴンへと向かって行った。

その後、二体のエンシェントドラゴンをものの10分もせずに倒したことがギルドに伝わり、俺たちがギルドに戻るや否、それを知っている人たちが呆然と俺たちを見たりしていた。




エンシェントドラゴンは投げ捨てるもの(暴論)。もう何かある度にエンシェントドラゴンをボン投げよう・・・。そんな思考が付き始めています(笑)。

前回あそこで切ったら今回のようなことになってしまいました・・・。
一対一の会話って言ったのに半分近くは歓迎会で使ってしまっています・・・。
更には一対一の会話とは言ってもハクメンとして話す部分が少なすぎるせいで、タイトル詐欺ならぬ予告詐欺で本当に申し訳ございません(泣)。
そして『蒼の門』とかになると何度も設定確認する羽目になる・・・(泣)。

ちなみに、言いそびれた事ですが、ラグナの銀の腕輪に関しては、ラグナのプロフィールにて大切な物に銀の腕輪と書かれていたので、そちらを拾いました。
葉笛に関してはアニメ版8話を見て使おうと思いました。どっちも特に経緯が書かれて無かったので、独自設定となりますね。

なお、風邪のことに関するネタはリミックスハート三巻目にて、ツバキに看病を受けているジンの回想です。

ハクメンの滞在先は迷った結果ルウィーを選びました。
ラステイションの方も中の人的にどうだろうかという提案もありましたが、ルウィーのメンバーとの方が関わりが良かったことと、「ロムやラムと一緒にいればハクメンもシュールな絵面でギャグパート参加できるんじゃねえか?」と言う極めてアホ臭い思考にて決定しました。
ラステイションを提案してくれた方には申し訳ございません。

さてさて、ブレイブルーのタッグバトルの方にて新キャラが発表されましたね。
今回は全員ブレイブルー枠。テイガー、マコト、ニュー、Esの四人でした。
マコトも出たことですし、ツバキにも参戦してほしいと思う次第です。
使うキャラはラグナで一人確定なんですけど、もう一人は悩みどころです・・・。

さて、次回から3話・・・と行きたいのですが、その前に一度マジェコンヌたちに焦点を当てた話を書こうと思います。

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