超次元ゲイムネプテューヌ-DIMENSION TRIGGER- 作:ブリガンディ
ここからラグナとハクメンの決着を書いていきます。
ロムとラムの騒動が終わって二日・・・。お面野郎の言っていた三度目の朝がついにきちまった。
あの二日間でやったことは、『蒼炎の書』による侵食具合の確認。『イデア機関』の状態チェック。自身の体調管理。やり残しがないように回り損ねた場所を回ったりなどをした。
そして、朝起きて見たが、体調は悪くなかった。体を起こした俺は皆で普段集まる部屋に行って、ネプギアが作ってくれていた飯を食った。
ちなみに、俺だけ朝起きるのが遅く、皆はもう先に貸切にしておいたプラネテューヌにあるアリーナで待っているようなので、ここにいるのは俺とネプギアだけだ。
「ごちそうさん。美味かったよ」
「・・・・・・ラグナさん」
「・・・ん?どうした?」
俺はいつもと変わらない口調声音で礼を言う。それを聞いて、少し間を置いてからネプギアが俺の名を呼んだ。
その声音から不安そうにしてるのが良く分かる。
「大丈夫ですよね・・・?ちゃんと帰ってきますよね・・・?」
「・・・やっぱり、不安なのか?」
「はい・・・あの時からずっとそうで・・・」
ネプギアはお面野郎から『黒き獣』のことを聞いて、プラネテューヌに帰って来てからずっと俺がいなくなる可能性に不安を抱いていた。
何でも、「自分は大丈夫だと信じているが、自分じゃない誰かがずっと怖がっている」んだそうだ。
現状、その正体が何なのかはよく分からないでいた。イストワールに訊いてみても、大した成果は得られなかった。
お面野郎が何か知ってそうな気もするが、前にはぐらかされたから訊くのは難しいだろう。
「(ネプギアじゃない、俺のことを『兄さま』って呼ぶ誰かか・・・)」
向こうの世界の事も考えるならサヤと『
そのため、皆に「サヤがいるかもしれない」だなんて簡単に話すこともできないし、仮に話したとしても信じてもらえないだろう。八方塞がりだな・・・。俺は目の前の状況に頭を抱える。
「・・・ラグナさん?どうかしましたか?」
「いや・・・ちょっと考え事だ」
「今日のことですか?」
「それもあるが・・・今は違う方を考えてた」
正直なところ、ネプギアには上手く説明のしようがない。話し方が明らかにサヤのものになるのだが、本人は自覚がない・・・というかその時だけ乗っ取られているような状態である以上、そのことを無理に話せない。
もう一つのお面野郎の方だが、それもそれで勝てる見込みが薄い。『エンブリオ』の中では楽に勝てたが、ここはその『エンブリオ』じゃないし、『蒼の魔導書』が『蒼炎の書』になってはいるものの、お面野郎がこっちに来て少しばかり力を取り戻している。
だからといって、諦めるつもりはさらさら無いのも事実だ。俺は夢の中に出てきた、見つけてくれと頼んできたあの女の子を見つけてやらないといけないし、真っ当な生活も続けてえし、何よりも生きて帰って皆を安心させてやらなきゃいけねえ。
そう考えがまとまった以上、今はやれることをやるべきだと考えた。俺自身、そこまでに頭が回る方じゃないから変に行き詰るくらいなら後回しにした方がいい。すぐに答えてくれそうな奴はお面野郎くらいだが、あの状況じゃ答えて貰えそうにないから今は誰もいないしな。
「・・・ごめんなさい。そのことは私もよく解ってなくて・・・」
「ああ・・・悪かった。無理に考える必要はないさ・・・俺が気になっただけだから」
ネプギアの沈んでいく表情を見て、俺は手振りをしながら答える。
ここでこれ以上、この話題は出さない方が良いだろうな。俺はそう思って何か話題を探す。
話すとすれば、後は今日のことになるんだろうか?少なくとも、俺から『黒き獣』のことは話さない方が良いだろう。それだけは確かだ。
「(・・・セリカと似たようなパターンをやるか・・・?)」
俺は暗黒大戦で停止時間を作ったときのことを思い出す。
その時俺は、セリカに俺が帰ってくることを納得させるためにコートを渡した。実際は取りに戻れなかったが、それは『あの日』の惨劇を受けた俺が師匠から譲り受けるという形で受け取ってる・・・よくない流れなのは変わりないが。
・・・あっ、そういやアレは残ってたか・・・?アイテムパックに入れるのもったいぶってそのままにしてたから、無くしてねえといいんだが・・・。そう思って俺は着ている服にあるポケットを探ってみる。
「どうしたんですか?」
「お前に預けておきたいものがあってな・・・。えーっと・・・あっ、あった」
俺はいくつかポケットに突っ込んだ結果、何かが左手に引っかかったのでそれを取り出す。
「これ・・・持っててくれないか?シスターから貰って以来、大事にしてたものなんだ・・・」
「い・・・いいんですか?こんな大事なものを・・・」
それは昔、シスターからもらった銀の腕輪だ。サヤを助けるために修行をしてたらいつの間にかサイズが合わなくなってしまっていたが、それでもせっかくもらったものだからと俺は大事にとっておいたのだ。
俺はそれをネプギアに渡すことを決意する。それを両手で受け取り、その両手を胸元に持っていきながら、ネプギアは困ったような。少し悲しいような表情になる。
「大事なものだからこそ・・・なのかもな・・・。無くしたら大変だし、それを取りにいくためっていう・・・帰る理由も増えるしな」
「・・・ずるいですよ。そうやって渡されちゃったら・・・納得するしかないですよ・・・」
俺はなるべく穏やかな顔を維持したが、ネプギアは泣きそうな顔になってしまった。
・・・こういう時、女の子を泣かせねえようにするにはどうしたらいいんだろう?分かってる事とすれば、シスターが言う「約束を破らない」くらいだからな・・・。あまり今回は保証できないかもしれない。
だが・・・俺が諦めないためにも、やれることはやっておいた方がいいのかもしれないな。
「ネプギア」
「・・・え?」
俺は自分の右手を、ネプギアの左肩に優しく乗せながらネプギアの名を呼ぶ。一泊遅れてネプギアは顔を上げる。
「俺を信じろ・・・いや、俺を信じて待っていてくれ・・・。大丈夫。絶対に帰ってくるから」
例え相手がお面野郎で勝てる保証がなくとも、俺がいなくなることを不安がってる女の子の前で言わずにはいられなかった。
多分・・・最悪な言い聞かせ方をしてるかもしれない。ただ、そうでもしないとネプギアも納得してくれないだろうし、俺も前に進めない気がしたのは確かだ。
「・・・わかりました・・・絶対に・・・絶対に帰って来てくださいね」
「・・・ありがとう。ネプギア・・・」
ネプギアはしばらく考えてから、納得してくれた。正直なところ、頷いてくれたことには感謝しかなかった。
「・・・そろそろ行こうか・・・皆が待ってる」
「はい・・・ラグナさん」
時刻を見ると、そろそろお面野郎が
* * *
「待たせたな。今来たぞ」
「ラグナ・・・!・・・よかったぁ・・・行き道では何もなかったんだね?」
「ああ・・・一応何ともなかった。ネプテューヌも悪いな・・・セリカのことを任せちまって」
「いいっていいって・・・。ラグナには体調を整えて欲しかったから」
俺がネプギアと一緒にアリーナの中に入ると、入ってすぐのところでネプテューヌとセリカ、イストワールが待ってくれていた。
セリカは真っ先に俺のことを心配した声を出す。まあ、お面野郎と俺一人で出くわしてたらヤバかったのは確かだ。周りの人云々言っても止められる自信がない。
昨日、寝る前にネプテューヌから「セリカちゃんはこっちで道案内しておくから任せて」と言われたので、今回はお言葉に甘えさせてもらった。
セリカと一緒に動くと気分転換になる可能性は十分考えられたが、お面野郎との対決を前に決心が鈍りそうだから遠慮したいのもあった。
「ネプギア、今日はまだ大丈夫なの?」
「大丈夫と言えば・・・大丈夫かな」
ネプテューヌはネプギアのことを心配していた。ネプギアは曖昧に答えるが、いつまたサヤのようになってもおかしくないため、それは仕方ないのかもしれない。
ちなみに、アイエフとコンパ。更に教祖を含めて全員いる。特にコンパとアイエフに至ってはわざわざ休日貰って来てくれたらしい。それでも、心配してくれたことはやっぱり嬉しいもんだ。
「すみませんラグナさん・・・『イデア機関』のチェックは終わったんですけど、破損が酷くて動かせそうにありません・・・」
「・・・そうだったか・・・悪いな。俺の確認不足だってのに・・・」
テルミを『スサノオユニット』から引き剝がすときに左手を潰されていたので、やっぱりかと思えば納得できてしまう。あの時左腕は治ってはいたものの、内部の『イデア機関』は無理だったみてえだ。
セリカと一緒にいても平気だった時まで気がつかなかったから慌てて訊いたが、本当なら『蒼炎の書』と一緒に確認できたはずだ。
俺としてはこの無計画さと頭の回らなさをどうにかしたいと思っているが、まだ治ってないようだ。
イストワールは「いえ、何かあったらまた来てください」と言うが、戻ってこれるか不安なのもある。
そして、これを助長したのが、イストワールから告げられた『イデア機関』が動かないという点だった。
正直言ってこれはかなりヤバい事態だ。俺は『イデア機関』を主にノイズキャンセラーとして使ってはいるが、同時に『オーバードライブ』として自身の瞬間強化にも・・・『蒼炎の書』の侵食を抑えるためにも使っていた。
それが使えないということは、何らかの要素で『蒼炎の書』を封じられたらそれを払いのけることができず、瞬間的な強化も期待できず、『黒き獣』への侵食を抑え込むことも難しい。
・・・絶望的状況だ。いくら『蒼の魔導書』が『蒼炎の書』になったからと言っても、こっち来て強くなってるお面野郎が相手だと相当に厳しい。
「そういや、『
「それが・・・非常に言いずらいのですが・・・」
俺が気になって訊いてみると、イストワールは伝えるのが怖いかと言わんばかりに暗い顔をして、侵食具合のグラフを見せた。
それをみると、ここ最近で侵食具合が一気に進んできているのが分かる。いや・・・一気に進んだというよりはぶり返しと言った方が合ってるかもしれない。
どうやら初めて起動したときに「侵食の気配が全くない」と思ったのは大きな勘違いだったみてえだな。自分の判断の甘さが招いた最悪の結果だった。
「このままですと・・・良くて数回。最悪は一回が起動の限界です・・・それ以上起動してしまうと・・・」
その先を言うのが辛いのか、イストワールは黙り込んでしまう。ここまで話してもらえれば俺としては十分だった。
「そうなるとあと一回か・・・」
相手はお面野郎だから多く使えるとは思えない。お面野郎が相手だし負ければ死ぬ・・・となれば短い時間で全部を出し切る短期決戦しか残されていない。
そして、短期決戦になれば余力を考慮しない・・・つまりは『蒼炎の書』による侵食具合も考えられないので、俺はあと一回という判断を下した。
「あと一回って・・ラグナ・・・それ本当なの?」
「ああ・・・お面野郎が相手じゃ加減できねえ・・・」
ネプテューヌの質問には肯定したくなかったが、肯定するしかなかった。
自分でも情けないと思う。あの時ネプテューヌに気づいてもらえなけりゃ今の俺はいないって言うのに、恩人のネプテューヌに恩を返せてない・・・。これからどうなるか解んねえのに、何とも恩知らずな奴かと自虐してしまう。
「ねえ、ラグナ・・・。ハクメンさんとの戦い・・・本当に止められないのかな?」
「・・・無理だろうな・・・俺はともかく、お面野郎は聞かないだろうな・・・」
セリカの疑問に、俺は否定で返した。
お面野郎の頭の固さはよく理解している。自分が『悪』だと断じれば余程のことが無い限り倒しにいくのをやめない・・・これは『エンブリオ』でノエルと『
例外はノエルの精錬を反転させた直後の俺と、
・・・ん?ツバキ=ヤヨイを気に掛ける?俺はそこでお面野郎の正体の推測に入る。ツバキ=ヤヨイのことを気にするなら、割と絞り込みは効く。
士官学校で交流があったノエル。マコト。あのデカチチとその仲間たち。カグラ。ヒビキ・・・。
そして・・・俺の弟でもあるジン・・・。俺が知る限りではこんなところだろう。更にそこから一刀の剣であるならば、ジンかカグラの二人にまで絞り込める。
それならどっちなんだろうな・・・カグラにしては真面目過ぎるし、かと言ってジンにしては大人びてる気もするが・・・。
「ここにいたか・・・『黒き者』よ」
「っ・・・お面野郎か」
俺が考え事をしていると、いつの間にか後ろにお面野郎が来ていた。
お面野郎がここに来たということは、後は中に入って決闘をすることになる。
「・・・ハクメンさん・・・やっぱりやめない?私、ラグナとハクメンさんが戦うの・・・間違ってると思うの。
だって・・・顔を会わせなかったけど、一緒に『黒き獣』と戦ったでしょ?」
「・・・御前の頼みでも引くわけには行かぬ・・・。此れは私に課せられた使命なのだからな」
「・・・でも」
「そこまでだセリカ・・・。こいつの頭の固さ、それはよく解ってるだろ?」
「・・・うん」
セリカの頼みはお面野郎に拒否される。それでもと食いつくセリカは俺が止めたことで、渋々引き下がった。
・・・セリカが納得いかないのは分かる。何故って、セリカにとっては俺もお面野郎も『黒き獣』から世界を救った『正義の味方』。或いは、『黒き獣』に立ち向かい、怯えてるみんなに希望を与えた『勇者』だからだ。
だが、お面野郎にとって俺は『黒き獣』になる可能性を持つ、絶対的な『悪』。俺にとってのお面野郎は『自身の命を狙う脅威』になってしまう。
俺にとっての初対面の時から、俺たちはその認識のままずっと戦っていたからこそこうなってしまっている。
俺がもしお面野郎と同じ時代に生きていて、『悪』という認識をされていない場合はこんなことにはならなかっただろう・・・。
とは言え、これ以上ネプギアやセリカ・・・皆に不安がらせるわけにはいかないのも事実だった。
「・・・お面野郎。この戦いは確かに受けるが、俺たちが
「・・・どう謂う心算だ?」
「今のままだと『
俺は右腕を腕の高さまで持ってきながら答える。それを見たイストワールはお面野郎を見ながら頷く。
本当に今まで無茶をしすぎて、準備や相談を怠ったせいでこうなっている。以前アイエフに「頼ることを覚えろ」と言われたのにこれだ。本当に情けなかった。
それを聞いて、その場で沈んだ表情になる俺以外を見たお面野郎は一度その場で黙り込む。
「・・・良いだろう。此の戦いで・・・我が宿命を終わらせよう」
「待て待て・・・ここで『
お面野郎は納得してくれが、その場で『
「・・・ならば、決着はそこで付けるとしよう」
それを確認したお面野郎は『
「・・・行ってくる。わざわざ待っててくれてありがとうな」
「ラグナ、無理しないでね・・・」
「・・・善処はするよ」
ネプテューヌの頼みに、俺は自信なく答えた。お面野郎が相手な以上、無理しないといけないのは明らかだった。
さて・・・これ以上待たせるわけにもいかないし、そろそろ行こう。そう思って俺は歩き出す。
「ラグナさん・・・」
「・・・ん?」
「ちゃんと・・・帰って来ますよね?」
2、3歩歩いたところで、ネプギアに声をかけられ、俺はそっちを振り向く。
その表情は『サヤのような少女』もそうだが、ネプギア自信も不安にしていることが分かる。
「ああ・・・絶対に『それ』を取りに戻る。だから待っててくれ」
無責任な気もするが、俺が少しでも戻ってこれるようにするにはこう言っておいた方がいい。
だから俺は、ネプギアへ指さしながら穏やかな顔でそう言った。
「・・・わかりました。ちゃんと取りに来て下さいね?」
「ああ・・・任せろ」
今まで以上にない程絶望的な状況だが、やるしかねえ・・・。だけど諦めるつもりもさらさらねえ。
そう心で呟きながら、俺はお面野郎が入って言ったアリーナの中へと体を向ける。
「(絶対に見つけてやるから、待ってろよ・・・)」
名を知らぬ少女に向けて心の中で宣言しながら、俺は中へと入って行った。
* * *
アリーナの中はドーム状となっていた。中央が戦う者達の場で、その場のみ平面となっている。
平面が終わると、そこから先は階段状に観客席が連なっていて、中央を囲む形になっている。
ちなみに、中央の足場は草など何も無い。ただの硬い砂地であるため、その実態は闘技場と言った方が良いだろう。
今現在、中央広場の真ん中でラグナとハクメンが対峙していて、その他のメンバーは観客席の内一か所に纏まっていた。
「あいつがそのハクメンなのね・・・」
「なんだか、仮面をつけたお侍さんって感じですぅ・・・」
アイエフとコンパはハクメンを初めてみた率直な感想を述べる。
しかし、事情を知っているので、表情はいつものように気楽さを出してはおらず。真剣なものだった。
事実、ハクメンから発せられる圧は並では収まらず、アイエフたちにまで届いていた。
「(アレが本来の力を出せてないって言うなら、全盛期はどんなバケモンなのよ・・・?)」
ラグナから聞いた話を思い出し、アイエフは手に冷や汗を握った。
自分がラグナだとしてハクメン相手にシミュレートしてみるが、全くもって勝てる要素が見当たらなかった。
それ程、彼女たちにとってハクメンという存在は脅威に見えるのだ。幸いなことがあるとすれば、ハクメンの狙う対象にアイエフやネプテューヌが入っていないことである。
「・・・・・・」
「ネプギア・・・大丈夫?無理しなくていいんだよ?」
ネプテューヌはネプギアのことを気にかけていた。ハクメンと対面して以来、ネプギアの心境が不安定なっていたからである。
ここ二日間でもラグナのことを『兄さま』と呼ぶことがあり、その時のネプギアは『ラグナという兄に縋る一人の少女』のようだとネプテューヌは認識している。
今も周りの皆は話し込んでいるが、ネプギアはただ一人、中央にいるラグナに視線を向けて、自分の信じる人が目の前から消えないかどうかで不安な目をしていた。
「お姉ちゃん・・・うん。まだ大丈夫・・・まだ・・・」
「・・・そっか。大丈夫ならいいんだ」
そして、ネプギアの返事はどこか曖昧なものだった。ネプテューヌもそれ以上は踏み込まないほうがいいと判断して、この話を切り上げることにした。
「(うぅ~・・・最近暗い話や予定ばっかりだし、これが終わったらいい知らせが欲しいなぁ・・・。ネプギアのことも不安だし・・・)」
ネプテューヌは元々、普段の姿で暗い空気。重い空気などが苦手で、自身を『シリアスブレイカー』と称してその展開を破っていくことが多い。
だが、今回の場合はラグナの身が危険なこと。ハクメンの言い知れぬ威圧感。時折まるで別人のようになるネプギアの三つを前にそれを発揮できなかった。
「(ラグナさんのことだから、ちゃんと取りに来てくれると思うけど・・・)」
ネプギアはラグナのことを全面的に信頼しているが、ハクメンの強さを聞いた時から不安が残っているのは事実だった。
ネプギアは中に入ってからというものの、ラグナから預かった銀の腕輪を両手で持っていた。
「・・・あれ?ネプギアちゃん、どうしてそれを持ってるの?」
「持ってて欲しいって、ラグナさんに頼まれたんです・・・」
セリカがネプギアの持っている腕輪に気がついて声をかける。
ネプギアの回答を聞いたときに、やっぱりラグナはラグナのままだとセリカは安心した。それは自分が帰ってくるという約束で、ラグナは必ずそれを守る。
コートは残していってしまったが、それも違った形で受け取り、少し違った形で自分と再開する。自分の姉と約束した『ラグナ自身の妹を助ける』方法を見つけて助け出す。滅びそうな世界を助ける。
それら全ての約束を果たしていた。そのラグナであるからこそ、今回も大丈夫だとセリカは信じていた。
「なら大丈夫。ラグナを信じて待っててあげて」
「・・・はい。信じて待ちますね」
セリカの言葉にネプギアは頷いた。まるで兄のような頼れる人を信じて・・・。
「悠久の旅路・・・今度こそ終焉としてくれよう・・・」
そして、ハクメンの低くくぐもった声が響く。その声を聞いて、全員が中央に注目する。
ハクメンはラグナに向けてそう告げながら『
「テメェの言う悠久の旅路がなんだか知らねえが・・・。俺もそう簡単にくたばるつもりはねえよ」
対するラグナも右手で剣を逆手持ちに取り、右腕を引いた状態で構えた。
それを見るや、ハクメンは『斬魔・鳴神』を右手に持って、腰の高さまで持ってくる。
「・・・始まるのね」
その構えをみたブランが顔を強張らせる。そして、ハクメンの名乗りが始まる。
「我は『空』・・・我は『鋼』・・・我は『刃』!」
ハクメンを中心に起きる揺れは、ブランが初めて目の当たりにした時よりも大きいものだった。
それ程、ハクメンがラグナを打つことに執着していることが伺えた。
「えっ?揺れ・・・?」
「どこから起きてるの・・・?」
「・・・これは・・・あの殿方の気迫・・・ですのね」
その揺れを感じたノワールとユニが辺りを見回し始め、ベールは揺れの原因に気づいてハクメンを見据える。
「我は一振りの剣にて、全ての『罪』を刈り取り・・・」
揺れの間隔が短くなって地震のようになる。
そのことに気付き、一度その場に居合わせていたブラン、ロム、ラムの三人。全盛期のハクメンを知るセリカ。元の世界で何度もハクメンと対峙しているラグナ以外は全員が戦慄する。
「『悪』を滅する!」
そして、僅かな時間だけハクメンの髪が扇状に広がり、それと同時に揺れは終わる。
「我が名は『ハクメン』・・・!推して参るッ!」
「できるもんならやってみろ!このお面野郎がッ!」
ラグナの言葉を皮切りに、二人は同時に飛びかかるように相手へと向かって行った。
「(・・・兄さま。どうか帰ってきて・・・!)」
ネプギアの体を借りる少女は、ラグナの帰りを願わずにはいられなかった。
* * *
お互いが同時に飛び、お互いに自身の持っている武器を右から水平に、足元を狙うように体を回しながら振る。
互いの武器がぶつかり、すれ違うようにそのまま進み、俺たちも遠心力に身を任せながらすれ違う。
そして、同時に地面に足をつけた俺たちはすぐさま相手の方を振り向く。距離が離れていたため、俺たちは走って距離を詰める。
距離を詰めると俺は剣を下から上に振り上げ、右から斜めに振り下ろしの順で振り、お面野郎は『斬魔・鳴神』を上から下に振り下ろし、左から水平に振り払いの順で振るう。
一回目の攻撃はお互いの武器がすれ違うようにぶつかり、二回目の攻撃は俺の剣をお面野郎が受け流す形になった。
「「・・・・・・」」
二回の攻撃が終わり、俺は剣を持った右腕を引き、お面野郎は『斬魔・鳴神』の剣先を向けて、手に持っている右腕を引く。
その瞬間、俺たちを中心に地震のような揺れが起こる。その揺れが終わる瞬間に、俺は剣に黒い炎のようなものを纏わせて上から下に振り下ろし、お面野郎は『斬魔・鳴神』で突きを放つ。
今回の攻撃もすれ違うようにお互いの武器がぶつかり、お面野郎の攻撃は俺の後髪を掠め、俺の攻撃はお面野郎の顔あたりを掠めた。
後少しずれていれば、お面野郎の攻撃が俺の顔面に当たっていたことを考えたら冷や汗が出た。そして、あの時に感じた威圧感の強さが間違いじゃなかったことを確信する。
「お面野郎・・・向こうより強くなってやがるじゃねえか・・・。一体何があったんだ?」
「其れは私にも解らんな・・・『蒼の少女』が居るならば、話は変わってくるが・・・」
俺が率直に訊いてみると、お面野郎は意外なことに解らないらしい。
なら・・・奴の『観測者』は誰だ・・・?そんなことを考えていたら、お面野郎の左腕が飛んできて、俺は反射的に剣の腹で受け止めた。
「うおっ!?」
「余所見をしている暇があるのか?」
「・・・チィッ!」
俺は舌打ちしながら飛びのいて距離を取って体制を立て直す。
それを見て、お面野郎は俺を追わず、『斬魔・鳴神』を構え直した。
一泊を置いて、俺の方からお面野郎に向かって走っていく。
「
それを見たお面野郎は蒼い方陣を左腕に展開し、その左腕を前に出しながら肉薄する。
お面野郎に当たるタイミングに合わせて、俺は剣を右から斜めに振り下ろす。しかし、それはお面野郎の方陣に当たってそこで止ってしまう。
これはお面野郎のドライブ『斬神』による防御だった。
「な・・・!?しまっ・・・」
「うおぉぉぉッ!」
慌てて体制を整えようとするが、もう遅い。俺はお面野郎の左手に首根っこを掴まれた。
そしてそのまま、お面野郎は俺を地面に投げつける。
「グァッ・・・!」
背中から思いっきり地面に叩きつけられ、俺は思わず呻き声を上げる。
勢いが強かったのもあって、俺の体は僅かに跳ね、もう一度背中から地面に落ちた。
「ってぇな・・・ッ!?」
俺が体を起こそうとした時、お面野郎の左足の裏が目の前に見えたので、俺は慌てて体を左に転がしながら避けて起き上がる。
間一髪のところで間に合い、お面野郎が自身の左足で踏んづけた所は軽く地面が抉れる。それを見て、俺はまた冷や汗をかいた。
「この野郎ッ!」
俺は起き上がってすぐに剣に黒い炎のようなものを纏わせ、それを下から上に振り上げることでデッドスパイクを放つ。
「無駄だぞ」
「・・・やっぱりダメか・・・」
しかし、それはお面野郎が『斬魔・鳴神』を左から水平に地面スレスレで振って斬りはらうことでできる封魔陣に無効化されてしまった。
「どうした?貴様らしく無いぞ・・・?」
「・・・クソがッ!」
流石に本来のように戦えないことは知られている。だが、こういう時に煽られるとヤケになりかけ、俺はどうにか毒づくことで頭が真っ白になるのを防ぐ。
頭を横に振った俺は一度剣をしまい、左腕に黒い炎のようなものを纏わせてお面野郎に突っこんでいく。
それに対して、お面野郎は『斬魔・鳴神』の柄を前に出して突っこんでくる。つまりは紅蓮での対応を選んだ。
それらの攻撃は激しくぶつかり、俺たちは僅かに押し戻される。
「ブッ飛ばすッ!」
「
俺は右腕に黒い炎のようなものを纏わせてお面野郎に殴りつける。
対するお面野郎はこの攻撃をドライブによって気を乗せた右足で蹴ることで相殺する。
ここで問題なのは、俺の攻撃はここで終わるのだが、お面野郎にはもう一撃残されていて、今度は気を乗せた左足で俺の胴を蹴り飛ばした。
「ぐおぉッ!」
「貴様の力は・・・意志は・・・この程度ではあるまい・・・」
俺は背中から引きずられるような形で地面に倒れ込む。今の二回だけでも相当苦しいことになっている。
それを知ってか知らずか。または俺を焚き付けるつもりなのか。お面野郎は俺に煽るような形で語りかけてくる。
「お面野郎・・・ッ!」
お面野郎の狙いが分からない俺は軽く唇を噛みながら起き上がり、右手に剣を逆手の状態で取って構え直す。
「だったら・・・!」
俺はそのまま猛スピードでお面野郎に肉薄し、剣を上から下に振り下ろす。
お面野郎はその攻撃に対し、『斬魔・鳴神』を上から下に振り下ろすことで受け流して一度後ろに飛びのき、そのままでは俺の剣が届かない位の距離まで離れる。
「これでどうだッ!」
俺はすかさず左に一回転しながら剣を右から斜めに振り上げ、剣から血のような色をした鋏状の刃を飛ばす。俺がやったのはカーネージシザーだ。
その鋏がお面野郎を縦に切り裂こうとする瞬間に、お面野郎は左腕に紅い方陣を展開して防いだ。
「虚空陣・・・」
そこからすぐに、お面野郎はまるで居合をするかのように『斬魔・鳴神』を右側に引き、同じ方に腰を回す。
「・・・ッ!?」
俺はその構えを見て、一つのことを思い出した。
それは、俺がテルミを『スサノオユニット』から引き剝がし、誰もいなくなった『スサノオユニット』に入ったジンが『
―全ての者よ、目に焼き付けろ・・・。我が名は・・・
「雪風!」
―スサノオッ!
お面野郎が放つ雪風の動きは、その時のジンの攻撃する動作と完全に一致していた。
ということは、
「っ!?うおおぉぉぉッ!?」
反応が遅れた俺は慌てて剣で防ぐが、お面野郎の一閃した威力が大きすぎる余りに威力を発揮する殺し切れず、大きく吹っ飛ばされてしまう。
「ガァ・・・ッ!ぐぅぅぅ・・・ッ!」
「
俺は剣を地面に突き立て、無理矢理勢いを殺ながらどうにか体制を立て直す。
俺が前を見ると、いつの間にかお面野郎が物凄い速度でこっちに肉薄してきていた。
「
「グァ・・・ッ!」
お面野郎の左腕が俺の顎に打ち付けられ、俺は軽く宙に浮く。
「
「ぐおぉ・・・ッ!」
そこから素早く後ろに回り込んだお面野郎が俺の背に蹴りを当てる。
俺は呻き声を上げながら更に空高くに打ち上げられる。
そして、お面野郎は術式を応用した空中での跳躍をして俺の目の前に回り込んでくる。
「
「うおおぉぉぉ・・・ッ!?」
お面野郎は一瞬の溜めののち、術式の要領で左に一回転しながら気を乗せた『斬魔・鳴神』を上から下に全力で振り下ろす。
俺は辛うじて剣で受け止めるが、あっさりと弾き飛ばされ、地面に勢い良く叩きつけられてしまった。
「グゥッ!・・・っ!?」
俺がどうにかして起き上がると、そこには『斬魔・鳴神』を上段に構えているお面野郎がいた。
「斬鉄!」
「やべぇ・・・ッ!」
お面野郎が気を乗せた『斬魔・鳴神』を上から振り下ろし、そこから間髪入れずに俺の足元を狙って左から水平に振るう。
俺はその二つを連続で飛びのくことでどうにかして避ける。しかし、避けきったところでさっきまでのダメージが重なり、俺は思わず右膝をついた。
* * *
「クソがァ・・・ッ!」
「どうした・・・!?
観客席で見ている他のメンバーから見ても、状況はハクメンが圧倒していた。
そして、ハクメンは一つのことに気が付いて、ラグナが膝を付いているのにも関わらず、攻撃をしていなかった。
「これは・・・一方的ですわね・・・」
「ああ・・・ラグナは本来の状態を取り戻せてないのに、向こうは以前よりも強くなっている・・・。これでは見方次第では蹂躙とも取れるね・・・」
チカの呟きにケイが同意する。
片やラグナは『蒼炎の書』の使用制限、『イデア機関』使用不可能などの厳しい状態。
片やハクメンは特に悪い状況によるなるものはなく、元の世界よりも強くなっている状態。一方的になるのは必然だったのかもしれない。
「お姉ちゃん・・・。これ、本当にただの勝負なの・・・?どう見ても本気の戦いだよね・・・?」
「お姉ちゃん・・・怖いよ・・・」
「ロム・・・ラム・・・」
ブランは今回、この二人には「ラグナとハクメンが真剣勝負をする」と言い伝えていたが、戦いの空気に気づいてラムは不安になり、ロムは恐怖を感じていた。
その二人を見て、ブランは言葉を詰まらせるしかなかった。
「ハクメンさんは・・・一体何を待っているのでしょうか・・・?」
「恐らくは『
ミナの質問に、ハクメンが何を指しているかを理解していたイストワールが答えた。
イストワールの推測は、ハクメンは不利だというのにも関わらず、『蒼炎の書』を使わないことに苛立っているのだと考えていた。
だが、その答えは違っていた。
「あの世界で、『
私を退くために『
「・・・・・・お面野郎?」
ラグナはそこでハクメンの意図を理解し、ミナとイストワールもハクメンの問いかけを理解した。
つまりハクメンは、『黒き獣』になる可能性が足枷となり、本来の世界によるラグナの奮闘がこの世界で見られずに怒りを見せていた。
更にラグナは、今
―絶対にあきらめないで・・・。最後の最後まで『人』として・・・
それは、ラグナに『
ラグナはその言葉通り、最後まで『人』として足掻き続け、ついには自身の妹を救ったのだ。
そして、それは今でも変わらない。ラグナはこれからも『人』として足掻き、『夢に出てきた少女』を見つけるという『約束』を果たす。
「そうだ・・・そうだったな・・・何を迷ってたんだろうな俺は・・・」
それを思い出したラグナは体に鞭を打って立ち上がる。
立ち上がったラグナの目は先ほどまでの諦めかけていたものから、新たに足掻き、生き残り続けるために戦う強い意思を宿すものになっていた。
「俺は最後まで足掻く・・・!そしてッ!皆のところに生きて戻って・・・『あいつ』を見つけ出してやるッ!」
「あっ・・・!ダメ・・・!兄さま、止めて・・・!」
「ネプギア・・・!?」
そしてラグナは剣を地面に突き立ててから、右腕を自分の腕の高さまで持ってきた。それは・・・『蒼炎の書』を起動するための合図だった。
それを見たネプギアの中に宿る少女の魂は表に出て、ラグナに使用を止めてもらいたかったが、その声は届かず、ラグナは起動を始める。
ネプギアの変化に気づいたネプテューヌはそっちを振り向きながら名を呼ぶが、ネプギアはラグナの方へ完全に意識が向いていた。
「第666拘束機関開放・・・次元干渉虚数方陣展開!」
ラグナは『蒼炎の書』のロックを外し、右腕から蒼い螺旋が出始める。
しかし、その直後にラグナの足元から黒い炎のようなものも出てきていた。それは『イデア機関』無しでの『蒼炎の書』では限界が来ていることを表していた。
「ぐ・・・ッ!うおおぉぉぉ・・・ッ!」
―あと一回だけでいい!今は足掻くんだッ!ラグナは自分に言い聞かせて無理矢理な制御をする。
それを見ている全員は、ただラグナの無事を祈りながら見守る。
しかし、少女だけは違っていた。
「(いや・・・兄さまと離れたくない・・・ッ!でも、私は何ができるの・・・?)」
少女は自分のことを必死に助けてくれたラグナを、今度は自分が助けたかった。そのため、今ラグナのためにできることを必死に考える。
助けを待っていた頃の自分。今『ネプギア』として生きている自分。この二つの中にできることことを考える。
そして・・・少女は一つのことを思いついた。
「(自分でやる私はいいけど、これをやれば『お姉ちゃん』を巻き込んじゃう・・・)」
それはプラネテューヌのシェアを使った荒治療とも呼べるものだった。
しかし、それをやれば自分の姉であるネプテューヌを巻き込んでしまうため、『ネプギア』としての自分に躊躇いが走る。
「うおおぉぉぉおおおッ!」
「ラグナっ!」
「前まであんな事無かったのに・・・一体どうしちゃったわけよ・・・?」
「な、何かお手当の手段は無いですかぁ・・・!?」
ラグナの必死にこらえてる声が大きくなり、セリカが思わずラグナの名を呼ぶ。
アイエフは嫌な汗をかき、コンパは持参している救急箱で、効果的なものを探し始める。
「(そうだね・・・。『お姉ちゃん』には悪いかもしれないけど、迷っていられない・・・!私はもう一度兄さまと心から向き合いたい!)」
そして、少女は迷いを捨てることを選んだ。『ネプギア』とネプテューヌには済まないことをしてしまうのは分かる。
しかしそれ以上に、今まで自分を助けてくれたラグナが苦しんでいるところを、見て見ぬふりをしたくなかった。
「・・・兄さまっ!」
そして、少女はラグナへ自分の考えていた荒治療を決行した。
決行した瞬間、ネプギアの体から紫色の光を放つ玉が現れ、それは一直線にラグナへと飛んで行った。
「え・・・っ!?」
「兄さま・・・負けないで・・・」
「ネプ子!?」
「ギアちゃんっ!?大丈夫ですか!?」
ラグナの元へと玉が飛んでいくと、ネプテューヌと『ネプギア』の体はすぐに影響が現れる。
二人は突然と力が抜けて倒れそうになり、アイエフとコンパが慌ててそれぞれを支えた。
そして、光の玉がラグナの右腕に吸収され、ラグナに変化が起こる。
まず初めに、ラグナの足元から出ていた黒い炎のようなものは、霧散するように消えていき、その代わりに新しく、ラグナの足元には蒼い螺旋がもう一つ現れていた。
『・・・!?』
「(・・・此れは・・・莫迦なッ!?そのようなことが有りえるのか・・・!?)」
皆はラグナの変化に驚きを隠せないでいる。普段は多少のことで動じないハクメンも驚いているが、皆とは理由が違っていた。
ハクメンは元の世界で、均衡を求める世界が、そのバランスを崩す力に対抗するために生み出した抗体としての力・・・『秩序の力』を持っており、ハクメンの場合は『悪』の気配が分かり、ラグナからは強い『悪』の気配を感じていた。
しかし、その紛れもない『悪』の気配を漂わせていたラグナは、先ほどラグナの元に飛んできた光の玉によって大きく変化した。
「(『黒き者』の中に・・・『正義』が融合しただと・・・!?まさか此れは・・・この世界に於いての・・・)」
ハクメンが見ていたラグナに宿る『悪』の中に、この世界にある『正義』が入り込み、ラグナの中にある『悪』と相殺を始め、新しい気配を生み出そうとしていた。
* * *
・・・体が軽い。喰われていくような感じもない・・・何があった?
俺は自身に起きたことへの整理が追いつかないでいた。今体感で分かることとしては、『黒き獣』への進行が逆行したことと、それに伴ってもう少し『蒼炎の書』を使うことができることだ。
何が起きたかはよく解んねえが、もし俺を助けてくれた奴がいるならば、そいつにお礼が言いたい。
さて、いつまでも解んねえことを気にするのは俺らしくもないし、そろそろ行こう。それと
「『
俺が宣言すると、俺の目の前にはいつもより大きな方陣が現れ、足元の螺旋が天に昇っていくような勢いになっていた。
その一瞬が終わり、螺旋と方陣が消えることで『蒼炎の書』は起動を完了し、地面に突き立てていた剣を引き抜き構え直した。
よし・・・。今度こそ
ツバキ=ヤヨイを気に掛け、士官学校のやつらと交流があり、刀を使う男で、落ち着いている時と荒げている時の声音の差が激しく、秩序を大切にするやつ・・・。それは・・・。
「オラ、ジンッ!掛かって来いよッ!!」
俺は『
あまり早く投稿出来てないのに凄い強引な感じになってしまったのは否定できません・・・。
CPの相殺演出、CTのラグナ編ストーリーの改造動画を参考にしてみましたが、改造動画を参考にしたら案の定、ハクメンがボコっていく感じになってしまいました・・・。
もう少しラグナの良いところが見たかったと思う方には申し訳ございません。
ちなみに、相殺演出っぽいのは、最初の三人称視点からラグナの視点に戻ってすぐの所になります。
ラグナはJC、6C、5C、ナイトメアエッジ2段目の順で。
ハクメンはJ2C、5C、6C、4Cの順で攻撃をしています。
本来の場合、ラグナのナイトメアエッジ2段目はヘルズファング1段目、ハクメンのJ2Cは2Cになっています。
意外と進行が早いので、ラグナとハクメンの決着は次の話で付いて、その後はこの二人が話し合う機会を作るかもしれません。
さて、2週間位前からブレイブルーの10周年記念サイトが出ていますね。
人気キャラの投票は皆様どうでしょうか?私はラグナにガンガン票を突っ込んでいる次第です(笑)。