超次元ゲイムネプテューヌ-DIMENSION TRIGGER-   作:ブリガンディ

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遅くなってすみません!
ここからまた少しオリ回挟みます。

キャラのリクエストで士官学校五人組、ハクメン、セリカ、スサノオ、カグラのリクエストをいただきました。出せるように努力したいと思います。

お気に入りが50超えました。登録ありがとうございます!これからも頑張って行こうと思います。


12話 尊き平穏

「とりあえずは買えたな・・・。パソコン」

 

「帰ったら初期設定とその他諸々やりますよ♪」

 

女神の心得の一件からものの2日。せっかくだから何か物を買おうってことで、プラネテューヌの電気屋で、俺はネプギアに手伝ってもらいながらどうにかパソコンを買い終え、プラネタワーへの帰路へ付いた。

この後は初期設定等をやるらしいので、勿論ネプギアに手伝ってもらうことになっている。CD-Rも一緒に買わされたのは少し気になるが・・・。

 

「是非ともよろしくお願いします。ネプギア先生」

 

「せ、先生だなんてそんな・・・。でも、頼まれたからには頑張りますよ!」

 

俺がネプギアの後ろに先生を付けて頼んでみると、顔を少し赤くしながらあたふたし、その後は張り切るような笑みを見せる。

何故ネプギアに手伝ってもらっているかと言えば、「私だとお金のこととか度外視しちゃう」とネプテューヌの自己申告からだ。

ただ、初期設定の方は参加してくれるみたいだ。こっちも手伝ってくれればいいのにと言おうとしたが、ネプテューヌの性格を理解していた俺はあっさりとその言葉を呑んだ。

俺自身、資金はクエストでそれなりに稼いではいるが、限度はある。この辺は体力と相談したりする必要があるから仕方ない。場合によっちゃあ移動だけでも相当時間が掛かる。

 

「おい、アレ見ろよ・・・」

 

「おお!『紅の旅人』じゃん!初めて生で見たわ・・・」

 

「その旅人を万全な状態にした女神候補生もいる・・・」

 

「なんか悪いな・・・。やり過ぎたみたいだ・・・」

 

帰る際もやっぱりというか、色んな人たちから注目の的になってしまっている。女神じゃないのにエンシェントドラゴンとかそんな辺のバケモン呼ばわりされやすいモンスターを倒せる俺のせいだ。

後、度々女神たちと行動を共にしていることから、「女神様のボディーガードも兼ねてんじゃね?」とかって言う噂も立つことがある。やめてくれ。俺はそんなんじゃないから・・・。

こんだけ見られてたら色々と気にし過ぎるんじゃないかと感じた俺は一度ネプギアに謝る。

 

「これくらい平気です。でも・・・良かったですね、ラグナさん・・・。みんなに受け入れてもらえて・・・」

 

「確かに、それは言えてるな」

 

ネプギアは平気どころか俺に賛辞をくれた。

実際、俺が前に自分のことを話した際に、『死神』と呼ばれていたことを話して以来、何かと心配してくれていたのだ。

本当に、こういう時に気を遣ってくれるネプギアはありがたい。正直心の支えにもなっているので、感謝してもしきれないくらいだ。

俺たちが話しながら歩いていると、人が段々と集まってきた。大体は俺のせいだ。ネプギアの話題はそれに釣られてのものに近い。

 

「人が集まって来ちゃいましたし、ちょっと急ぎましょう・・・」

 

「ああ。そうしよう」

 

ネプギアの案に俺は反対することなく、足早にプラネタワーへと帰って行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「戻ったぜ」

 

「お帰り~っ!じゃあ早速始めようかっ!」

 

プラネタワーに帰って来て、ネプテューヌに迎えられた俺たちは早速俺が使っている部屋に移動する。

今俺の部屋にあるのは、元からあったベッド、机、着替えを入れる為にある縦長のクローゼットと非常に殺風景極まりない状況だった。

そしてこの殺風景な部屋に、今日からパソコンという名の模様が入ることになる。ちなみに、パソコンはプラネタワーへの持ち込みが大変すぎることからノートパソコンにしている。

早速机の上にパソコンを置き、パソコンを買ったときに付いてきた充電ケーブルと、一緒に買ったマウスをそれぞれの端子に繋ぐ。そして、早速電源を入れてみる。

電源のボタンを押してから少し間をおいて、俺の眼前に電子画面のモニターが現れた。

プラネテューヌのノートパソコンの多くは、モニターに当る部分が実体では無くなっている。そのため、何もしてない時はキーボード部分しかないという、極めて特殊な作りになっている。

しかし、そのおかげで持ち運びは楽だし、スペースは食わなくなるという利点も生み出してる。しかし・・・実体じゃない電子画面どころか、それをマウスじゃなくて指でも操作できるようにしてるって・・・プラネテューヌの技術力は頭一つ抜けてるな・・・。俺はそんな技術者たちの努力に感心した。

 

「おおっ!?びっくりした・・・」

 

「ああそっか・・・。ラグナは画面が付くとこ見るの初めてだったよね。

いやぁ~、わかるわかる・・・。私も初めて画面つけた時は驚いたよ・・・。プラネテューヌの技術者は世界一ィィィッ!って思わず言っちゃったよぉ・・・」

 

「・・・これを過大評価のし過ぎだって言えねえのがまたすげえんだよな・・・」

 

「プラネテューヌの人たち、他の国と比べて向上心とか凄いですからね・・・セキュリティだけはあまり進み具合良くないですけど」

 

初めてその画面の出方を見た俺は驚いた。ネプテューヌは同調し、当時の感想まで述べてくれる。俺のはネプギアたちのパソコンと比べ、幾分か新しいタイプだが、ネプテューヌの興奮具合は容易に想像できる。

ネプテューヌの言葉で過大評価し過ぎかと思う人もいるかもしれないが、前途の通り、ゲイムギョウ界でプラネテューヌの技術力は頭一つ抜けてる為、他国が吸収しようと必死だったりする。

ただし、そんなプラネテューヌにも、ネプギアの言う通りにセキュリティが弱いという割と致命的な短所があったりするので、今回はラステイションで買ってきたセキュリティソフトでカバーする。

セキュリティの強化は今後の課題として、それでもここまでの技術力を獲得したのは、紛れもない技術者たちの努力だ。恐らくは『スペースを取ってしまう問題を解決したい』とか、『実体がないけどタッチできたら凄いよな』とか言った好奇心から来る努力だったのだろう。

俺の努力は『サヤを取り戻す』、『大事なものを護る』、『苦しんでいるやつを助ける』と言った、目の前で何が起きてるかを見てどうするかの努力だが、それでも努力している・・・あるいはしていたことは変わらない。俺は改めて努力することの良さを再確認した。

 

「やること忘れてた・・・そろそろ初期設定に入ろっか」

 

「おう。えーっと・・・」

 

ネプテューヌに促され、俺は説明書を開いて睨めっこを始める。正直なところ、電子機器は全く触ったことねえから解らねえことだらけだ。だからこそ今回はこの二人から手伝ってもらうことになった。

 

「・・・パーソナルネーム?どういうことだ?」

 

「起動時に出てくる名前のことですね・・・えっと・・・ここなんですけど」

 

・・・早速解らないところ一つ目出現。ネームっつうからには名前なんだろうけど、何をすればいいのか解らなかった。

そんな俺に気づいたネプギアは予め写真に納めておいたパソコン起動時の画面を見せてくれる。パスワード入力画面ではあるが、確かに名前らしく『Purple Sister』と真ん中に表示されていた。

 

「・・・なるほど。その部分を自分で決めればいいのか・・・。サンキュー、ネプギア。

・・・そうだな・・・。それならこうするか」

 

俺はネプギアに軽くお礼をいい、少し悩んでから『Ragna』と打ち込んだ。

ゲイムギョウ界では『死神』、『ラグナ=ザ=ブラッドエッジ』ではなく、『紅の旅人』と呼ばれることはあれど『一人の人間』、『ラグナ』として生きるからこれでいい。

無論、これで向こうの世界での罪が消えるわけでもないから、そこをはき違えるつもりはない。

パーソナルネームを決めた俺は次に出身国を決める。これは現状プラネテューヌなので、プラネテューヌで確定させる。

 

「メールアドレスは確かこれだったな・・・」

 

俺は登録を済ませた時に付いてきた登録通知書に書かれているメールアドレスを確認する。一応後でも設定できるそうだが、どうせならここでやってしまおう。

 

「そう。それをメールアドレスの欄に打ち込めばいいから」

 

「よぉし・・・やってみるかぁ・・・」

 

俺はキーボードで書かれていたメールアドレスを打ち始める。

ただし、普段みんながやっているように、ブラインドタッチだとか、指十本全部を使うといった器用なことは全く出来ず、紙とキーボード、そして、画面の三つを順番に見ながら片手で、尚且つ指一つで打つという非常に情けない絵面になっていた。

 

「ああ・・・なんだろう・・・本人がやるべきなのは分かってるのに、無性に交代したくなるこの感じ」

 

「・・・ヤバい・・・。自分のこの無様な打ち方が凄く情けねぇ・・・」

 

「さ、最初は仕方ないですよ・・・。まだまだこれからですから、頑張りましょうね?」

 

パソコンを使い馴れてる人にとって、ドがつく初心者を見るのはあまり良くないらしい。手際が悪すぎて自分と変われって言いたくなるそうだ。

事実、俺が下手くそであることは変わりないのだが、悲しくはなる。それと、ネプギアが励ましたつもりの言葉が追い打ちに感じてしまったのは間違いなく無様さを味わった直後だからだ。

その後も不慣れ故に手間取ることはあったが、どうにか初期設定を終えることができた。

 

「よし・・・。とりあえずここまでできたな・・・」

 

俺は一安心した。全く持って初めてかつ、向こうの世界で電子機械等は一切学んでないので、正直なところ不安だったからだ。

俺の場合、教会で暮らしていた時は畑仕事の手伝いとか、木製の椅子の直し方だとかを覚えて、『あの日』の後は戦い方と統制機構が何をやってたかとかを学んでいた。

その後はサヤを助ける為の度に出たが、その際に書物なんざ何も触れなかったため、その後は新しい知識は入らなかった。勿論電子機器も例外じゃない。

生活の色んな所に術式が関わるあの世界じゃ進化も止まっちまったんだろうな・・・。俺は目の前の超進化したとも言えるパソコンを見て少し悲しく思った。

 

「さてさて・・・。じゃあ、設定が終わったところでソフトのインストール・・・の前に、リカバリーディスク作りますか」

 

「・・・リカバリーディスク?」

 

「パソコンに何かあった時、初期の状態に戻すときに必要になるディスクのことですよ。

今回、CD-Rも一緒に買ったのは、リカバリーディスクを作る為なんです。パソコンを買ったときに付属しているならいいんですけど、付属してない場合は自分で作ることになるんです。

ラグナさんが買ったパソコンには付属して無かったので、これから作りますよ」

 

「そうだったのか・・・」

 

またわからない単語が出てきたので、思わず訊いたタイミングでネプギアが説明してくれる。どうやらリカバリーディスクは付属してるとは限らないようだ。つまりは、あると思い込んで無かったらそれの為だけに戻んなきゃなんねえってことになる。

さっきCD-Rを買わせたのはそれが理由か・・・俺はようやくCD-Rを買わされた理由を理解できた。

 

「まあ、とりあえず一枚目からやってみよっか」

 

「一枚目・・・?」

 

「画面を見てごらん?」

 

俺はネプテューヌの言葉に疑問を持って訊いてみる。するとネプテューヌに言われたので画面を見てみる。

そこで俺は気がついた。真ん中に出てきた作成するからディスクがどうのこうのと言ってる文の一番後ろに(1/4)と書かれていることに。

 

「これ・・・要するに四枚やるってことか?」

 

「おおっ!よく気づいたっ!まあ、四枚やるとは言っても・・・ディスクを入れてでき上がるまで待って、終わったら新しいのを入れるだけだから心配することはないよ」

 

「そうだったのか・・・安心したぜ・・・」

 

俺はてっきり何か必要な操作を四回もやんなきゃいけないのかと思ってたので、一瞬絶望したが、ネプテューヌの言葉を聞いて安心した。

そうと分かればやるだけだ。俺は早速ディスクの一枚目を入れ、リカバリーディスク一枚目の作成を始める。とは言っても、後は待つだけだが・・・。

 

「ああ、そうだった・・・。ネプギア、こっからしばらくすること無くなっちゃうし、今のうちに準備してきちゃいなよ」

 

「あっ、もうこんな時間・・・。二人とも、また後で」

 

ネプテューヌに言われたネプギアは自分のNギア一度時間を確認する。結構な時間になってたらしく、ネプギアは一度部屋を後にした。

 

「何の準備するんだ?」

 

「まあまあ、それは後でのお楽しみだよ」

 

「それならいいが・・・。とりあえず、前みたいにゲームやってたら知らねえうちに凄い時間が経ってた・・・みたいなのは簡便してくれよ?」

 

「あー・・・流石に今回ばっかりはそんなことしないよ・・・」

 

俺が訊くとネプテューヌがはぐらかしたので、最悪な事態は避ける為に釘を刺しておく。

するとネプテューヌが冷や汗を掻きながら否定するので、そんなことは無いみたいだ。

前に『蒼炎の書』が再び起動できるようになった直後から女神の心得の一件の間に、一度このようなことがあったのだが、その時は午後一から晩になるまでゲームに付き合う羽目になった。正直アレは疲れる。ゲーム等に慣れがない俺は尚更だ。

 

「それにしても、ラグナがこっちに来てからもう一ヶ月かぁ・・・。いやー、意外と早いもんだよねぇ・・・。」

 

「ああ・・・。そういや、もうそんなに時間が経ってたんだな・・・」

 

俺が初めて皆に会ってからもう既に一ヶ月。その間に過ごした時間は不思議なくらいあっという間に過ぎていった。

向こうの世界の時より時間が圧倒的に短く感じるのは、この世界での生活を楽しいと思っているからなんだろうな・・・。そう俺は感じた。

楽しいと感じる時間が殆ど無く、取り戻すために必死だったあっちの世界の生活と、この先の未来を考えることもでき、大切な人たちと楽しい時間を過ごしているゲイムギョウ界での生活・・・。向こうの世界のことを知っているから、なおのことゲイムギョウ界をいい世界だと感じられるのだろうか?それはまだわからない。これから見つけて行くでいいだろう。

 

「あの時は皆がざわつくから、何があったんだと思って結構焦ったんだ・・・」

 

「・・・知らなかったとは言え、マジで悪かった・・・」

 

「アハハ・・・。気にしないで大丈夫だよ。それに・・・ラグナと会ってからは今まで以上に毎日が楽しいし、寧ろお礼が言いたい気分だよ」

 

「そうだったのか・・・」

 

俺は改めて謝罪する。ネプテューヌは責めることはせず、寧ろお礼を言ってきた。

うーん・・・。騒ぎになりかけたってのにお礼を言われるってどういう事なんだろうか・・・?俺は少し困惑した。

そう言えば、俺がゲイムギョウ界に来たのは、和平を結んだ日だったんだよな・・・。ネプテューヌと話して俺は思い出した。ルウィーで読んだ資料には争いの歴史も載っていたことに。

気がつけば一枚目が終わっていたので、二枚目と入れ替え、二枚目の作成を始める。

 

「そういや、俺が来た時はゲイムギョウ界で和平を結んだ日だったけどさ・・・。何で和平を結ぼうってなったんだ?」

 

俺はせっかくだから今のうちに訊いておこうと思った。楽しいことを覚えようとは思っているが、こういう大事な話を聞くのを忘れちゃいけないとも思っていた。

 

「ああ・・・そのことか・・・。結構長くなるけど、大丈夫?」

 

「その辺は大丈夫だ。特に問題はないさ」

 

「・・・分かった。じゃあ話すよ。それまでどうしていたかを・・・」

 

それから俺はネプテューヌから、ネプテューヌの目の前で起きたゲイムギョウ界での出来事を聞いた。

初めて四女神が対面した時は、自分たちのつまらねえプライドで敵対宣言をすぐにしたこと。この時はネプテューヌも例外では無かったらしい。

その後は各国の女神がそれぞれの手段でシェアの奪い合いが始まったこと。他国に出向くことも度々あったらしく、出向いた先で女神同士が鉢合わせてその場で戦う羽目になったこともあったみたいだ。

 

「マジか・・・そんなに仲悪かったのか・・・」

 

「やっぱり仲悪そうに思えない?まあ、しょうがないか・・・。ラグナが知ってるのは和平結んだ後だからね」

 

正直なところ、今のあいつらを見たら信じられなかった。今は皆して仲がいいからだ。

 

「そういや、ネプギアたちはどうなんだ?和平結んですぐに仲良くなんのは難しいだろうし・・・。最初から仲良かったのか?」

 

俺は疑問に思ったので聞いてみた。四女神の仲が悪くても、候補生たちはそうでもないかもしれないという期待と、候補生も例外じゃないかもしれないと言う不安に駆られたから、ここで解決させておきたかった。

 

「うん。ネプギアたちはすぐに仲良くなってたよ。最初は敵対するかもしれないから縁を切るべきって言おうとしたけど・・・。結局言えなかったんだ・・・。なんか、この子はヘンだから一緒に遊んじゃダメ!とかって言う、幼稚園児のお母さんみたいに偏見まみれのことを言いたく無かったからかな?」

 

「そうか・・・。でも、それを言わなかったおかげで、あいつらはあんなに仲がいいんだし、それで良かったんじゃねえの?俺は少なくともそう思う」

 

話を訊いた感じ、この四人がアレよこれよとやってる合間に仲良くなってたんだろうな。

恐らくは妹までを巻き込みたくは無かったんだろう。俺はそれを十分に理解できた。それは、俺が女神だとしたら、ジンとサヤに俺の方針を強要するようなもんだ。絶対にやりたくねえ。だからこそ、俺はネプテューヌの判断を肯定した。

 

「ラグナがそう言ってくれるなら良かったよ・・・。えっと・・・その後なんだけど・・・」

 

その後、そんな敵対宣言から始まった、武力混じりのシェアの取り合いっつう、くだらねえことを続けている内に、自分の国にいる国民が暗い空気を纏ってると感じたネプテューヌは、イストワールの提案で、女神にどうして欲しいか、国民にこっそりと聞いてみることにした。

これができたのは、当時、仕事をする際は基本変身をしていたことが起因する。そのため、ネプテューヌは変身する前の姿で国民に聞いて回った。コンパとはアイエフに出会ったのはこの時らしい。

意外にもすんなり二人と仲良くなれたネプテューヌは、二人に今やっていることを話してみる。その結果、二人が手伝うといったので、途中から三人で聞いて回ることになった。更に、その後ネプギアも手伝うと言ってくれたので、最終的には四人で回ることになった。

そして、三人で回っている際に、ネプテューヌが争うのをやめようと思うきっかけになった出来事が起こる。とある男性に聞いた時のことで、その男性は闘病中の息子さんを一人持っていた。しかし、病に負け始めてるとのことで、その時ネプテューヌたちの前で泣きそうになりながら男性がいった言葉がこれだ。

 

―あんなくだらないことに力を入れるくらいなら、私の息子を助けて欲しいものです・・・。それが叶わないなら、せめて争いをやめてもらいたい・・・。女神様は、国民を護る存在なのに、何故国民を傷つけることをするのか・・・私には理解できません・・・。

 

それはその男性の切実な願いと、的を得た疑問だった。

ルウィーで本を読んだ直後は気がつかなかったが、今話を聞いてみると女神の概念とその女神たちがやってきたことの矛盾がよくわかる。

国民のためと思ってやったことは、国民のためになっていない。それを聞いた時の絶望や喪失感はただ事ではないだろう。

 

「あの時は何で気づけなかったんだろうって思ったよ・・・。解ってるつもりで解ってなかったんだね・・・」

 

ネプテューヌは自嘲するような表情で言った。その表情から相当ショックを受けたことが伺える。

 

「あの直後、いーすんのところに二人を連れてって、私が女神だってことを話したよ。その証拠に変身を見せたら二人とも凄い驚いてたよ」

 

「それは無理もないだろうな・・・。俺も結構驚いたしな」

 

正直なところ、『ムラクモ』じゃないことが分かって安心した方がデカいけどな。またニューとの時のようなやり取りをすんのは疲れる。まあ、必ずしもそうって訳じゃあないんだけどな・・・。

そして、そこからネプテューヌはどうにかして和平を結ぶために奔走した。

自分の足でラステイションへ行き、ルウィーへ行き、リーンボックスへ行きと・・・。とにかく残った三人に納得してもらうために自分の考えを話した。

話をした結果、どうにかして和平を結ぶことをこぎ着けることができ、今に至るとのことだった・・・。

 

「ああ、そうだ・・・。ラグナにはまだ話して無かったよね?私たちが条約結んだ時のスピーチなんだけど、誰が言うのかをどうやって決めたか」

 

「確かに聞いて無かったな・・・。結局どうやって決めたんだ?」

 

暗い空気を変えようとしたネプテューヌは明るい顔を作って話を持ち出した。この時の作り方はすげえ自然だった。

和平を結んだことは確かに知っているが、どうやって決めたかなどは一切聞いて無かった。せっかくだから聞いてみることにした。

 

「実はあれ・・・じゃんけんで決めたんだ。で、私が勝ったから、私がいうことになったの!ぶいっ!」

 

「・・・はぁっ!?じゃんけん!?」

 

ネプテューヌが笑顔でピースするのに対し、余りにもしょうもない決め方に、俺は思わず素っ頓狂な声を上げた。

 

「何で、そんな決め方にしたんだ・・・?」

 

「えっと・・・。

また戦いで決めるって言った時は、長くなって終わらないのと、せっかく和平前まで持ってきたのに台無しになるから却下で・・・。胸の大きさで決めようなんて言った時は、ブランが暴走したから没になって・・・」

 

「そりゃあ没になるだろうな・・・」

 

一つ目の提案が却下されたのはわかる。和平前だってのに人に不安を煽るし、女神たちはシェアに左右されなければ力は対等なため、ほぼ勝負がつかない。

二つ目は・・・ベールが完全に自分有利どころか、勝ち確定みたいなもんだから選んだだろそれとしか思えなかった。俺が変身した姿を見たのはネプテューヌとノワールだが、大方ベールが勝つのは変わらなかったんだろうな。

 

「そうやってあーでもないこーでもないって言ってた時に、じゃんけんならみんな平等だし、すぐに終わるからってことで採用されたんだ」

 

「・・・ああ、うん・・・。確かにそれならじゃんけんが一番まともだな・・・」

 

ゲームはベールが圧倒的有利かつ、大事なことをそんなので決めるなって話だが・・・。じゃんけんアリならそれもアリだったんじゃねえか?まあ平等にやりたいなら無しか・・・。

さっきも言った通り戦いは和平前だから却下で、胸がどうこうも論外。だからじゃんけんでと・・・。何故か納得できてしまう俺がいた。来たばっかりの俺だったら絶対に納得できなかっただろう。

 

「で、遂に条約を締結させたんだけど・・・言うこと言い終わったらみんながざわついてるもんだから、何があったのかと思ったら、ボロボロのラグナがいたわけさ・・・。

あの時は流石に焦ったよ・・・。ラグナが名乗った時表情が死にかけの人みたいに見えたからさぁ・・・」

 

「・・・マジで?」

 

「マジで。あくまで表情からだけどね」

 

ネプテューヌがサラッととんでもないことを言ったので思わず聞き返した。そして、その回答は肯定だった。

俺はなんだかすげえ申し訳ない気持ちになった。

 

「ホントに済まねえ・・・あん時は騒がせたな・・・」

 

だからこそ俺は謝る。

あの後、ネプテューヌたちの対応のおかげで俺はこうして真っ当に生きていられる訳だが、一歩タイミングが早かったり遅かったりでもした場合、俺は誰かに気づいてもらえるまでぶっ倒れているか、和平妨害を図った犯罪者の疑惑で捕まった可能性すらある。

前者だろうと後者だろうと、今ほどいい待遇は絶対に得られなかったし、ましてや『蒼炎の書』が再起動して、また万全な状態で動くことすら叶わなかっただろう。今の状態は正に奇跡の連続によるものだった。

 

「どうなるかとは思ったけど・・・今は元気にやってるし、私は大丈夫だよ。むしろお礼を言いたいくらいだもん」

 

「お礼・・・?俺にか?」

 

ネプテューヌの返答に疑問を持った俺は聞き返した。

 

「うん。だって、みんなでこうして仲良くできたの、ラグナに会えたおかげだから!ラグナがいなかったら、こんなにも上手く行かなかったと思うんだ。

妹たちはともかく、私たちは敵対してたからさ・・・。ラグナが来てくれたから、私たちあの時みんなで仲良く話せたと思うんだよ・・・。

だから・・・ありがとう、ラグナ。ゲイムギョウ界(この世界)に来てくれて・・・」

 

「ネプテューヌ・・・」

 

ネプテューヌから告げられたのは、心からの感謝の言葉だった。

俺がゲイムギョウ界に来た日、恐らく皆は、少しでも早く俺の体を万全に戻す。少しでも早く俺がゲイムギョウ界に馴れるようにと始めて同じ目標で動いたのだろう。

その結果、ライバル意識や対抗心は残ってたとしても、俺を中心に皆で輪を広げることができたんだろう・・・。であれば、俺は皆の助けになれたと言えるだろう。

だが、ここで忘れていけないのは助けられたのはゲイムギョウ界(ここ)にいる皆だけじゃない。

 

「俺が皆の為になれたんならちょっと嬉しいな・・・。

でもよ、ネプテューヌ。助けてもらったのは俺もなんだよ。お前らに会えたからこそ、『蒼炎の書(ブレイブルー)』をまた使えるようになったし、新しい生き方も見つけられたんだ。

ありがとうな。ネプテューヌ・・・。お前があの時気づいてくれたから、今の俺があるんだ・・・」

 

「ラグナ・・・」

 

ネプテューヌが心からの感謝を告げるなら、俺も同じく心からの感謝を告げる。

これは紛れもない俺の本音だ。これがもし、ネプテューヌたちではなく、他の人だったらどうなってたんだろうか?今ほど充実した生活は送れてないだろう。

 

「それと・・・和平結んだ後しかこの世界を実際に見てねえけど・・・。いや、だからこそなのかもしれないな・・・。

俺はこの平和な時間がとても大事な物なんだと思う・・・。そんで俺は・・・この大事な時間をこれからも護っていきたいんだ・・・」

 

「うん・・・私も護っていきたい・・・。だって、せっかくみんなで作った和平なんだもん」

 

俺は今ある世界を見て感想と、今後の決意を告げる。ネプテューヌも同じ気持ちだった。

 

「なら、同じ思いを持つ者同士、これからも頑張って行こうぜ。ネプテューヌ」

 

「・・・うん!これからもよろしくねっ!ラグナっ!」

 

俺が右手を差し出すと、ネプテューヌは右手で取った。

俺たちはこれからも共に歩み、共に戦うだろう。俺たちはその第一歩を改めて踏み込んだ。

 

「お姉ちゃーん。準備終わったよー」

 

ネプテューヌと手を取り合って数秒後、ネプギアから声が掛かる。いつもみんなで集まってる部屋の方だった。

 

「はーいっ!じゃあラグナ、お昼にしよっか!」

 

「ん?昼・・・?」

 

俺が詳しく訊こうとしたら、腹の虫がなった。そこで俺は昼の意味を理解した。

 

「そういうことか・・・あの時言ってたのをもうやったのか・・・早いもんだな」

 

「うん!そういうことだから、行こっ!」

 

俺が『蒼炎の書』を再起動できた夜に言ってた飯の案件はもう実現できるなんて頑張ったな・・・。少し楽しみになった。

俺たちはいつもみんなで集まる部屋に移動した。

 

「そう言えば全然作業進まなかったね・・・」

 

「確かに、すっかり忘れて話し込んでたな・・・」

 

移動する途中、俺たちは作業の途中だったことを思い出して二人して笑った。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせしましたー♪」

 

俺たちが部屋に入ると、ネプギアが笑顔で迎えてくれた。

 

「初めてだから自信ないですけど・・・」

 

「おおーっ!美味しそうにできてるーっ!」

 

テーブルに並べられてる料理を見てネプテューヌが興奮気味な声を上げる。こいつのテンション高いのはいつものことだが、今回はいつも以上に高いと感じた。

白いご飯と目玉焼き、それに合わせて適量のコロッケとレタスが人数分置かれていた。ネプギアは初めてだから自信がないとはいうが、サヤの殺人料理を食ったことのある俺ならなんてことはない。普通によくできてると思っている。

 

「・・・・・・」

 

「え、えっと・・・ラグナさん?」

 

俺は料理の方は確かに見たのだが、どうしてもネプギアの方に目が行ってしまう。

その理由はネプギアの格好にあった。実は今、ネプギアは普段の格好の上にエプロンをつけた状態だった。

俺は予想よりも凝視してたらしく、ネプギアが困惑した笑みを見せる。

 

「いや、その・・・似合ってると思ってな・・・」

 

「えっ?似合ってるって・・・ああ、そんな・・・」

 

俺が率直な感想を述べると、ネプギアは顔を赤くしながら照れた笑みを見せる。

真面目な女の子が頑張ったところを褒めてもらったら照れるか・・・。すげえ似合ってるなと俺は感じた。

 

「ああ、なるほど・・・。ノワールが口説いてると勘違いしたのはそういうことなんだね・・・。うん、私も今分かったよ」

 

「えっ?何のこと?」

 

「ほら、ラグナが『蒼炎の書』を使えるようになったからパーティー開いたときあったでしょ?

その時ユニちゃんとどう話したかを思い出してごらん?」

 

「えーっと・・・あっ・・・そういうことか・・・」

 

ネプテューヌの言ったことが解らずに聞き返すと、思い出せと言われたので思い返す。

すると、俺は確かにユニに率直な感想を述べたらユニの顔が真っ赤になり、ノワールが勘違いしていたのを思い出した。

無自覚って色々と怖えんだな・・・。俺は新しいことをまた一つ学んだ。

 

「あの・・・そろそろ食べてはどうでしょうか?せっかくの料理が冷めてしまいますよ?」

 

「ああ、そうだったね・・・じゃあ食べようか!」

 

イストワールの提案に従い、俺たちはそれぞれの席に座ってネプギアの作った飯を食うことにした。

 

「いただきまーすっ!」

 

「いただきますっと」

 

ネプテューヌは元気よく食べ始め、俺は普通に食いはじめる。

 

「びゃあああっ、うまいいいっ!美味しいよネプギアっ!」

 

「ホント?良かったぁ・・・」

 

「(そんなにか・・・)」

 

ネプテューヌが過剰表現する。それを聞いたネプギアはホッと胸をなでおろす。

コロッケを取って止まっていた腕を動かして、俺は食ってみた。普通に美味かった。

 

「ラグナさん・・・どうですか?」

 

「ああ。美味いよ。初めてこれならよくできてるよ・・・」

 

「良かったね!ネプギア!」

 

「うんっ!」

 

ネプギアが訊いてきたため、俺は率直な感想を述べる。ネプテューヌの言葉に、ネプギアは笑顔で頷いた。

ここまでなら確かに何の問題もない、普通の会話だったのだが・・・。

 

「良かった・・・兄さまに褒めてもらえて・・・」

 

『・・・っ!?』

 

ネプギアの次の発言に俺たちは固まった。そして、俺たちは思わず顔を見合わせる。

 

「二人共・・・今、聞いた?」

 

「はい・・・ですが、ネプギアさんにお兄さんは・・・」

 

「ラグナ・・・ネプギアと何か話した?」

 

「いや、俺は何も話して無いが・・・どういうことだ?」

 

そう、ネプギアにはネプテューヌという姉はいても、兄は存在しない。

ネプテューヌが俺にこう訊いたのは、消去法で導き出されたことによるものだろう。生憎俺はそういったことは話して無いので外れだ。

 

「・・・?私が、何か言いましたか?」

 

「・・・えっ?ネプギアさん・・・覚えてらっしゃらないのですか?」

 

「・・・?特に何も言ってないとは思うんですけど・・・」

 

『・・・・・・』

 

更に、ネプギアが覚えてないことが疑問を拍車にかけた。

 

「ほ、ほら・・・アレじゃない?たまにはラグナのことをこう呼びたかったんじゃない?

だってラグナ、候補生のみんなと話してる時、義理の兄に見える時あるし・・・」

 

「えっ?あ、うん!そうなのっ!・・・ごめんなさいラグナさん・・・。余りにも唐突過ぎて・・・」

 

「ああ・・・そうだったのか・・・。まあ、たまにならいいか」

 

ネプテューヌが咄嗟に思いついたであろう発言に、ネプギアはすがるように乗っかる。

 

「すみません・・・ありがとうございます」

 

「いいけどよ・・・あまりそう呼びすぎないようにな?私事とかは別に問題ないけどよ・・・」

 

一昔前の俺なら斬りかかっていただろうが、今はそう呼びたいならそう呼んでも良いと思っている。

とは言え、ネプギアは女神候補生なので、流石に私事以外の時は控えてほしいが・・・。

 

「はいっ!そうしますね、兄さま!」

 

ネプギアは満面の笑みを見せた。まあ、納得してくれたなら良しとするかな。俺は一先ずこれでいいことにした。

 

「あ~あ~。兄さまだってさぁ・・・。もぉ~、私の妹まで取るのは簡便だよぉ~」

 

「なら、ネプテューヌさんがお姉さんらしく頑張る他ありませんね?」

 

「うわ~・・・いーすんずる~い。こんなの私が頑張るしか無いじゃんかぁ~・・・」

 

「あはは・・・お姉ちゃん、頑張ってね?」

 

ネプテューヌが俺に絡んで来るが、イストワールの言葉に参った様子を見せる。ネプギアもいつもの様子に戻った。

その後、俺たちの昼は特に何も問題なく進んだ。俺も表面上はいつも通りだったが、内面は気が気じゃなかった。

 

「(気のせいか?あの時・・・ネプギアから感じたのは・・・)」

 

それは、俺はネプギアが『兄さま』と俺のことを呼んだ時、俺はサヤの気配をネプギアから感じていたからだ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「よぉし・・・どうにか終わったね・・・」

 

時刻は夕方。ソフトウェアのインストールも終わり、これで俺のパソコンは全ての設定が完了した。

 

「あの時間でリカバリーディスクの作成、終わってると思ったんだけどなあ・・・」

 

「ご、ごめんねネプギア・・・私たち思った以上に話しこんじゃってて・・・」

 

本当はもう少し早く終わってたのだが、俺たちが二枚目が終わっていることに気がつかなかったが故に長引いてしまった。

ネプテューヌがいながら遅かったことで、ネプギアはネプテューヌにジト目を送っていた。

 

「ああ・・・今回はあの話を聞き出した俺が悪い・・・」

 

「いやぁ・・・私もついつい話し込んじゃったし、お互い様じゃない?」

 

そして、俺たちはお互いに謝り合う。俺たちは話に夢中になっていた。

というか、アレ待機時間に話す話じゃなかったな・・・聞こうとする話を完全に間違えてたわ。俺は反省した。

 

「ああ、そうだ。一応私たちオススメのサイトとかまとめた紙を渡しとくね」

 

「おお、悪いな・・・助かる」

 

俺はネプテューヌからメモが書かれている紙を受け取る。正直なところ何を調べればいいかわからないから、こういうのはありがたい。

 

「後・・・今日はこれでちょっとみんなで通話するから、インストールしてもらっていい?」

 

「ん?これでか?」

 

俺はネプテューヌが俺に渡したメモ書きの紙に書かれている一つの文に指を指す。

その文には「Nコード」と書いてあった。どうやらチャットと通話がいっぺんにできるアプリらしい。

 

「ん?これ初期のやつには無かったよな?」

 

「ああ、それインターネットからアプリをインストールするんだよ」

 

ネプテューヌから説明を受け、インターネットとやらで検索をかけて、インストールする。

そして、試しに起動してみる。そしたらメールアドレスとパスワードの設定をしろと出てきた。

 

「パスワードはこのアプリ用のか?」

 

「うん。何でも大丈夫だよ」

 

「なるほど・・・。じゃあ、こうだな」

 

俺はメールアドレスとパスワードを決めて次の設定に入る。名前を決めてくれとのことだった。

俺はとりあえずラグナと打っておいた。設定完了の画面が出てきたので、これで設定は完了だった。

 

「設定完了だね。じゃあ、私の連絡先打っちゃうね」

 

「分かった。頼む」

 

俺と席を変わり、ネプテューヌがキーボードで操作する。俺のあのクソしょぼい左右一本ずつではなく、しっかりとした指十本使ったブラインドタッチだった。

そして、少しして操作が完了したネプテューヌが席を立つ。

 

「よし、できた・・・。じゃあ、私は部屋に戻ってNコード開いて来るよ。

ラグナ、私から招待が来たら全部参加を押してね!」

 

「おう。分かった」

 

ネプテューヌはそう言って俺の部屋を後にして自分の部屋に向かっていった。

 

「私は参加の確認ができてから戻りますね」

 

「悪いな・・・助かるよ」

 

あの後、特にネプギアは俺のことを『兄さま』とは呼んでいない。あの場で堂々と言ったのが恥ずかしかったのだろうか?それにしては嬉しそうだったが。今のところはその瞬間に立ち会った俺。ネプテューヌ。イストワールの三人だけの秘密事項としている。他の人目の前でボロが出たら、時々そう呼ぶようになったで済ませることになった。

まあ、今はよそう。ネプギアが手伝ってくれるんだし、どうにかして操作を終わらせよう。

そう考えていたら、すぐに通知が来た。グループ名は『女神たちのお話場』と書かれていた。俺は言われていた通り参加をする。

そして、その直後に通話に参加するかどうかを聞かれたので、俺は参加を押した。

すると、新しく出てきた画面に、ネプテューヌの顔が移された。

 

「やっほーっ!聞こえるー?」

 

「おおっ!?おう。聞こえるぞ」

 

ネプテューヌの声が聞こえたので、俺は驚いてしまった。音量設定を忘れてたせいでかなりデカい声になってしまっていた。俺は慌てて音量を調整する。

 

「へえ・・・こうやって通話できるのか・・・便利だなこれ」

 

「でしょでしょー?しかもこれでチャットもできるから、声出して話に参加できない人は通話に参加だけしといて、自分の意見はチャットで打つっていうのもできるんだ」

 

「なるほど・・・」

 

俺はこのNコードの便利さを改めて教えられた。これは凄いな・・・。これからの連絡が咄嗟にできるかもしれないのは大きい。

こっちでの生活には馴れてきたのだが、いかんせん連絡手段を十分に持ってない俺にとって、連絡手段の確保はありがたいものだった。

 

「ラグナさん、大丈夫そうですか?」

 

「おう。これなら大丈夫そうだ。ありがとうな、ネプギア」

 

「ラグナさんのお手伝いになれたなら何よりです。それじゃあ、失礼しますね」

 

俺がネプギアに礼を言うと、ネプギアは嬉しそうに返し、この部屋を後にした。

 

「そういや、このグループの名前見て思ったんだけど、このグループにいるのって俺らだけじゃないんだろ?」

 

「ああ、それならそろそろ来ると思うよ」

 

俺の率直な疑問にネプテューヌが答えた直後、さっきと同じ画面が新しく三つ現れ、それぞれにノワール、ブラン、ベールの三人の顔が移された。

すげえ。三人同時なんてことあるんだな・・・。

 

「どうしたの?こんなに早い時間から通話なんて・・・」

 

入ってきた三人の内、最初に口を開いたのはノワールだった。この言い分からして、普段はもっと遅い時間なんだろうなと俺は推測してみた。

 

「みんなは気が付いてる?新しくメンバーが追加されてたの?」

 

「なるほどね・・・一人新しく見覚えある顔が増えてると思えば・・・ラグナだったのね」

 

ネプテューヌの問いに真っ先に反応したのはブランだった。少し嬉しいような顔をしてるので、俺を歓迎してくれてるのだろう。他の皆も似たような表情だった。

 

「まあ・・・ラグナさん、パソコンをご購入なさいましたのね♪いつ頃、ご購入なされましたの?」

 

「今日の午前だ。設定とかはついさっき終わったばかり」

 

俺はベールの質問に対し、正直に答える。とりあえずこのアプリのこともそうだが、色々と慣れないとな・・・。俺はそう思った。

 

「まあそんなわけで、パソコン初心者のラグナに私たちで話しながら、オススメのアプリとかサイトを教えようってわけで開かせてもらったんだ」

 

「なるほど。そういうことね・・・」

 

ネプテューヌの説明を聞いてノワールが納得する。他の二人も首を縦に振って頷いていた。そして、四人は考え始める。

 

「そうね・・・ここはやっぱり、ニュース系や女神のブログとか・・・」

 

「ラグナ。せっかくだから、私はこのルメハンと言うSS投稿サイトをオススメするわ」

 

「ラグナさん!これを気にネトゲをやりませんか!?私のオススメは四女神オンラインですわ!」

 

ノワールが一般的なものを教えようとしてるのを遮り、ブランとベールが「絶対コレ!」と言わんばかりにオススメしてくる。

 

「ちょっと二人とも!ラグナはまだ初心者なんだから、ここは多くの人が利用するものを・・・」

 

「何を言いますのノワール!四女神オンラインは、今ゲイムギョウ界で一番多くの人が遊んでいるオンラインゲームでしてよ!?」

 

「ルメハンも、SS投稿サイトでは比較的入りやすい部類に入るわよ?」

 

「うーん・・・ベールのはともかく、ブランのは流石に今のラグナには早い気がするなぁ・・・」

 

ノワールが余りにも初心者度外視のオススメした二人を咎めようとしたが、二人はヒートアップした。

それを見ていたネプテューヌは気が遠くなりそうな声で感想を述べる。

 

「あっ、そうだ。もし、昔のアニメとかゲームに興味があったらマニアアーカイブを利用してみるといいよ。

ラグナが知るべき娯楽の多くは、大体そこで何とかなるからさ」

 

「な、なるほど・・・」

 

ネプテューヌはサラッと俺にオススメを紹介してくれた。

うん。ブランとベール(二人)よりは圧倒的にマシだ・・・俺を差し置いてみんなで白熱してるのを見て呆然しながら俺はどうにか返答した。

 

「ほら、白状しなよノワール~♪ノワールにだってピンポイントでオススメしたいのあるでしょ~♪」

 

「ば・・・バカじゃないの!?そんなのあるわけないでしょ!?」

 

「いいえ・・・!ある!絶対にあるはずよ・・・!」

 

「さあノワール・・・。自分に正直になりましょう・・・?」

 

「お、おい・・・お前ら?本来の目的忘れてね?」

 

気がつけば三人によるノワール弄りが始まっており、本来の目的が忘れ去られてそうに感じたので、俺は訊いてみた。

 

「あっ、気にしないでー。ノワールが弄られるのは、いつものことだから」

 

「・・・気にしないわけないだろ!つか、弄ってないでオススメ教えて欲しいんだけどぉっ!?」

 

ネプテューヌの意を返さないかのような回答に俺は思わず突っ込んだ。

仕方ないので、俺はネプテューヌにオススメされたマニアアーカイブを開いて様子を見て止めることにした。

俺の一日は女神たちと通話しながらあっという間に過ぎていった・・・。




ただの日常回で終わるかと思ったら途中ですげえ大事な話が入る形になりました。
少し無理矢理感あるかもしれません・・・。

今回は少し遅くなってしまったので、次はもう少し早く出せるように努力したいと思います。

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