超次元ゲイムネプテューヌ-DIMENSION TRIGGER- 作:ブリガンディ
「・・・・・・」
ラステイションの教会付近にある庭園で、ユニは湖を見ながら落ち込んでいた。
湖の水は綺麗な状態であるため、その落ち込んでいる表情がハッキリと写されていた。
「(どうすればお姉ちゃんに認めてもらえるのかな・・・?)」
ユニはノワールのことを尊敬していて、ノワールの力になりたいと思い、努力をしていた。
しかし、その努力の結果は余り良い方向には向いてるとは言えなかった。
今回のように、ユニはノワールのためになろうと仕事を手伝っている。仕事を手伝い、自分の努力を認めて貰いたいと言う願望も混ざってはいるが、自分が尊敬する姉の為に力になりたいという気持ちは本物だった。
そして、今回の努力の結果は、ノワールの冷たい言葉によって、ユニの中で虚しいものとなってしまったのだ。
ノワール自身は「今の結果で満足せず、もっと精進して欲しい」という期待があるが、ユニの「自分の努力を認めてもらいたい」と言う考えとはすれ違う結果となってしまっている。
後どのくらい努力すればいいのか?どのような結果を出せば姉は満足するのか?考えても答えは出てこなかった。
ユニが考えている間に何者かが来たのか、水面で休んでいた鳥たちは音を立てながら一斉に飛び去っていった。
「・・・?」
特に脅かすようなことなどをしてないのに鳥が飛んで行った音が聞こえたので、ユニはそちら側を見やる。
「ネプギア・・・」
自分のことを追って来たのだろうか?湖の向こう側にネプギアがいた。
* * *
「ごめんね。お姉ちゃんがお話の邪魔しちゃって・・・」
「いいの・・・。お姉ちゃんはいつもアタシにはあんな感じだし・・・お姉ちゃんより上手くやれないと、褒めてくれないみたい・・・」
ネプギアを自分の隣に招き入れ、ほとりに座るところがあったので隣合って座る。そして、ユニはネプギアに自分の悩みを話してみることにした。
どうやっても姉が納得のできる成果を出せない。それが、姉の期待に応えたい。自分の努力を認めてもらいたいユニにとっての悩みの種となっていた。
「そんなの・・・無理に決まってるのに・・・」
「ユニちゃん・・・」
ユニは自嘲した顔になる。その表情をみたネプギアは言葉を失う。
「アタシ・・・変身だってまだできないのに・・・」
「それは私やロムちゃん、ラムちゃんだって同じだよ・・・。私なんて、それが原因でラグナさんにかばわれちゃったし・・・。
ラグナさんの『蒼炎の書』が動かなかったら、私は今頃・・・」
「あっ・・・ごめん。アタシ・・・」
つい言ってしまった。そう感じたユニはネプギアに謝る。
ラグナがネプギアをかばったことは、『ネプギアが『蒼炎の書』の再起動をさせた最大功労者』として扱われたため問題なかったものの、本来であれば、『女神が一般人に助けられる』というのはあってはならないことである。
ゲイムギョウ界での女神にかかる影響は大きく、もし、一般人が女神をかばったなど言う事実が伝わった場合、『女神の助けになれる凄い一般人がいる』では無く、『一般人に助けられる弱い女神がいる』という認識をされてしまい、シェアの急激な下降に繋がってしまう。
ラグナからすれば『ネプギアのおかげで『蒼炎の書』を使えた』のだが、ネプギアからすれば『自分の未熟さがラグナに傷を負わせてしまった』になる。
それが理由で、ネプギアは話しながらも段々と落ち込んでいったのだ。だが、ネプギアはただ落ち込むだけではなかった。
「でも・・・私、決めたんだ。私を護ってくれたラグナさんに恩返しするためにも・・・大事なものを護れるように強くなるって・・・」
「ネプギア・・・」
言葉を続けるネプギアの表情から暗さは無くなり、明るさと意思の強さが現れてきていた。
自分の大事なものを護る・・・。それは、ラグナの方針であり、ネプギアにもそうなってほしいという願いでもある。そして、ネプギアは『蒼炎の書』が再起動して以来、ラグナのような『護るため』の強さをほしいと思っていた。
そんなネプギアの姿を見たユニは呆然とする。
「(自分なりのやり方か・・・今のアタシには、何ができるかな・・・?)」
姉に隠れて特訓ならできそうか?ネプギアの言葉を受けて、ユニも考え出した。
「でも・・・やっぱり、変身はできるようにはしたいな・・・。女神候補生だし」
ネプギアは最後はこうなってしまい、締まらないような言い方をしてしまって照れるような笑みになった。
ネプギアが照れたのを見たユニは微笑する。
「確かに変身はできるようにはしたいわね・・・。まぁ、その中でも最初に変身できるようになるのはきっとアタシだけどね」
「うん!私だって負けないんだから!」
ユニは完全に調子を取り戻し、最後は自信ある表情で言うことができた。ネプギアはそれに笑顔で答える。
「大丈夫かどうか心配で追ってみたけど・・・その様子なら大丈夫そうだな」
二人が話していた途中、後から声が聞こえたので振り返る。そこにはラグナがいた。
「えっ!?ら、ラグナさん、いつからいたんですか!?」
「ほぼ最初からだが・・・どうした?」
「「な・・・・・・・」」
ラグナをみて焦りながら訊くネプギアに対して、ラグナはいつもと変わらない様子で答える。
それを聞いた二人は自分たちの会話を思い出し、恥ずかしくて顔を赤くする。何故か?それは自分たちが話題に上げた人物が目の前にいるからだ。
「ど、どどど、どうしようユニちゃん!?ラグナさんに思いっきり聞かれちゃったよぉ!?」
「ア、アタシに言われても困るわよ!というか、何で盗み聞くようなことしてるんですかっ!?」
「あー・・・。なんかその・・・悪かったな。驚かせちまって・・・」
ネプギアは涙目になりながらユニに訊く。それに対してユニはいい回答が出せず、顔がまた少し赤くなる。
ラグナはその二人の様子を見て謝罪の言葉を述べた。
「でも、ネプギアが自分で考えてその考えに至ったなら俺はそれでいいさ・・・。
強くなろうって思うのはいいけど、大事なのは強くなった後その力をどう使うかなんだ。
俺はちゃんとした理由がなかったから、ただ力を振り回す羽目になったよ・・・」
ラグナはただ闇雲に『蒼の魔導書』を使っていた頃の自分を思い返す。
自分がセリカに出会うまで、ラグナは自身の得た力の使い方を考えておらず、『他者からただ奪う』ように使っていた。
『統制機構への復讐』、『サヤを取り返す』、『ユウキ=テルミを打つ』。といった『目的』こそはあれど、『力の使い方』はまだハッキリとしていなかった。
今では『護る、助ける』というハッキリとした理由を持って力を行使しているが、それでもその前に自分が犯した罪が消えるわけではない。だが、ラグナはその罪から逃げずに、向き合った上で護るために力を使う。それは今後も変わらないだろう。
「ラグナさん・・・」
「だからネプギア・・・。お前はその気持ちを忘れないでくれ。その気持ちのまま強くなろうとすれば、きっと今より強くなれるから・・・」
「・・・はい!ありがとうございます。ラグナさん」
ラグナは自分の右手をネプギアの左肩において頼むように言う。ネプギアは笑顔で受け入れて、礼まで言う。
絵に書くような優等生ってこいつのようなことを言うんだろうな・・・。ラグナは微笑ましく思った。
ただ、今回ラグナが二人を追った最大の理由は、『蒼炎の書』を起動してからネプギアがどうなったかというよりは、ユニを励ますためにあった。
だがそれも、自分が様子見している間にほとんど大丈夫な状態になってしまっていた。それなら自分にできることはこれだろうか?そう思ったラグナはユニを見据える。
「ここだけの話なんだけどよ・・・。俺は今では大分マシな戦いができるようになってるけど、正直言って、俺はすげえ筋が悪かったから、今みたいになるのにかなり時間を使っちまったんだ・・・」
ラグナは自分の過去を話すことにした。ラグナは元々武術に関して才能があるかと言えば、あるとは言い切れなかった。
数年の修行を終え、いっぱしの実力が身についた後は統制機構の支部を回って窯を幾つか破壊し、『死神』と呼ばれるようになったが、『蒼の魔導書』の制御はかなり不安定だった。
イカルガで『蒼の魔導書』無しに自分より強い相手に出会い、力の使い方を考える時間を与えられてようやく制御ができるようになった。
「それでも俺が諦めなかったのは、妹を助けたかったからなんだ・・・」
「・・・・・・」
『あの日』の惨劇で連れ去られてしまった妹のサヤを助け出す。その一心でラグナは師である獣兵衛の修行を最後までやりきった。
その後も、『蒼の魔導書』の使い方を考え、護るため、助けるために使うことを決めた。
ラグナの強さはそう言った努力を重ねてできたものだった。『蒼炎の書』が使えない、尚且つ隻眼の状態でモンスターを倒した話を聞いた時、ユニは才能かと思っていたが、それは違ったことを知って呆然とする。
「諦めなければいつかはその努力が報われる日が来る・・・。そう思うから諦めないで続けるんだ・・・。
今は届かなくても、いつかは届く・・・。俺みたいな奴でも、無理だと思ってた妹を助けることができたんだ。
才能が何だのって言うけど、最後はその目標や目的のためにどれだけ努力できるかなんだと俺は思う。結論を言えば、『努力は才能に勝てる』んだ」
これがラグナがサヤを助けるために奔走し続けた結果としてたどり着いた境地だった。
「
それは焦らなくていい・・・自分のペースでやるんだ。無理なペースでやって自分を見失ったりしたら大変だからな」
ラグナは話しながら、実際にそうなってしまったジンの従妹であり、ノエルの友達であったツバキ=ヤヨイのことを思い出す。
彼女の場合、命令違反によって指名手配を受けたジンとノエルを連れ戻そうとしたが、今の自分では届かないと判断して『封印兵装・十六夜』を使ったが、それでも二人には届かず、十六夜の代償により自身の目が見えなくなる。
さらにそんな状況で『帝』によって視界の光を取り戻され、「自分が新たな光になろう」と言われたことで統制機構の信仰を強めた。これにより結果的に帝たちの体のいい駒にされてしまったのだ。
ユニにはそんな風になって欲しくない。ラグナはそう願うのだった。
「ラグナさん・・・。なら、見ていてくださいね!アタシが自分なりのやり方で、お姉ちゃんに認められるところを!」
ユニはそれに対して、ウインクしながら自信を持って言う。どうやら完全に調子を取り戻せたようだ。
「わかった。もし、どうすりゃいいかわかんなくなったら話しに来な。口下手なりに相談には乗るからよ」
「・・・はい!」
ラグナが最後に出した助け舟がありがたく感じたのかユニは笑顔で返事をした。
そして、この直後にネプギアが持っていた多機能型携帯端末、『Nギア』に着信が入り、三人はラステイションの教会に戻ることになった。
* * *
「今回のモンスター退治は二ヶ所。ナスーネ高原と近くのトゥルーネ洞窟。どっちも難易度はそう高くはない・・・」
俺たちはラステイションからプラネテューヌへ行く方面の森の中を歩いている。
ノワールが言うには、女神の心得として書類からやらせてみたのだが、それなりに整理してた状態を散らかしてしまったそうだ。
そんなところにアイエフが「モンスター退治をしながら心得を教えるのはどうか」という提案が出た。
ノワールは『蒼炎の書』の稼働データも取れるから一石二鳥と判断して、国民から寄せられている依頼の内、プラネテューヌとラステイションの国境付近の依頼を二つ選んだ。
まあ、依頼を終えたら帰ってもらうつもりだろうな。最初みた時、ネプテューヌは「その足で帰れってことぉ?」と不満をこぼしたらしいが、行くとなれば結局いつもの調子に戻った。
そして今、ノワールが歩きながら依頼を説明してるのだが・・・。
「お姉ちゃん・・・」
「どうしたの?」
ユニがおずおずとした口調でノワールを呼ぶ。ノワールは振り向かずにそのまま聞く。
「誰も話を聞いてない・・・」
「・・・なぁっ!?」
ユニの言葉に驚いたノワールは慌てて後ろを振り向いた。
俺たちは今、先頭を歩くラステイションの姉妹。近くにあった木に腰をかけて休憩しているコンパと、気遣うアイエフ。そして、看板の周りにいるプラネテューヌの姉妹。合計三つのグループができ上がっていた。
・・・俺か?俺はラステイションの姉妹とプラネテューヌの姉妹の間らへんにいる。ああ・・・これじゃあ四つか。俺は自分の勉学不足や何やらを痛感した。
「ふぅ・・・疲れたです・・・」
「コンパ、大丈夫?」
コンパは看護師という都合上、平時は徒歩で長い距離を移動することは少ない。この休憩は長距離移動の不慣れさから来るものだった。
俺たちがルウィーに行った時は適度に休んでいたことと、疲労しにくい道を選んでいたこともあって、そこまで問題にはならなかったが、今回は足場が少し悪いため、疲れがくるのが早かったみたいだ。
ちなみに俺の場合、統制機構に捕まらないように移動する必要があったため、体力に関しては余程のことが無ければ平気だった。
「おおっ!これは有名な裏から見ると読めない看板っ!」
「お姉ちゃん。看板って基本そうだよ・・・」
ネプテューヌがわざとらしく驚くと、ネプギアは少し飽きれ気味に突っ込む。
「そうかな?ラグナの世界なら意外と珍しいんじゃないかなー?」
「俺の世界か・・・地面に突き刺さってるタイプの看板はほとんどなかったし、看板で裏が無いやつはそもそも見えないようにしてんのが殆どだったな・・・。
そう考えりゃこのタイプは珍しいな」
「おおっ!まさかの当てずっぽうが当たったやつ!?」
「え・・・!?珍しいどころかほぼ存在しないんですか!?」
俺の返答にネプテューヌは驚く。ネプギアも俺いたの世界の情勢を知って驚いた。俺いたの世界、地面に刺すタイプの看板は廃れたんだろうな・・・。
「ちょっとぉっ!」
「わ、わりぃ・・・」
俺たちのだらけっぷりをみたノワールはたまらずに大声を出す。みんなが「ん?」みたいな感じでノワールの方を見る中、俺は何で移動してたかを思い出してすぐに謝った。
今回ばっかりは俺にも非はある。誰も止める人がいないとこうなるのか・・・気を付けよう。俺は一人意識するのだった。
* * *
「いぃっ!?」
「歩くペースが落ちてる」
その後、ユニを先頭。俺、ノワール、ネプテューヌの三人を一番後ろにして歩くのを再開した。
ちなみにネプテューヌはノワールに木の枝でつつかれながら歩く羽目になっている。
「もう・・・ノワールってば真面目なんだからー・・・」
「悪い?」
ネプテューヌは茶化し気味に言うが、ノワールは真面目な態度で返す。
「でも・・・いつもそれだと疲れちゃわない?」
「このくらいならなんてことないわ。私はもっともっといい国をつくりたいの。私を信じてくれる人たちのためにもね・・・」
俺はノワールの言葉を聞いて、ノワールが持つ理念を聞いて、カグラのことを思い出した。
ノワールは自分を信じる人のために国を良くする。民たちが笑っていられる世界を作るという、自分の理想を叶えるために謀反を起こしたカグラとは、やり方こそ違えど、民たちのために奮闘する姿は同じだ。
俺の場合、エンブリオでは自分のことを投げ捨ててまで妹を助け出し、閉ざされた世界に可能性を与えるために戦った。
俺たちの考えは、範囲こそ違えど、人々のためになっていたことは変わらないだろう。
「そりゃあ、私もいい国を作りたいけど・・・楽しいほうがいいかな?」
「あなたは楽しみ過ぎなのっ!」
ネプテューヌの気楽そうな言葉に、ノワールはこれまた真面目に突っ込む。
・・・真面目なのはいいけど、真面目過ぎんのも困りものかもな・・・。その辺はよくわかんねえが、真面目さを言えば俺はネプテューヌ寄りだろう。シスターの畑仕事手伝うっつったのに昼寝してたりとかな・・・。
「あっ、そうだ!ラグナならどんな国がいいかな?」
「俺か?俺は・・・そうだな・・・」
ネプテューヌがいきなり俺に話を振ってくる。俺は少し考える。
話の流れ的に、今ある四つの国の中でって訳じゃないだろうな。もしそうだったら回答できない。どの国もそこにしかない魅力があるからな・・・。
「程よく楽しめて、治安がしっかりしてりゃいいかな」
『・・・』
カグラの理想の世界を俺なりに想像して出した答えがこれだ。
あいつの理想通りの世界ができたなら、民はみんな笑っているし、あいつの周りは多くの仲間や、信頼できる人に囲まれているだろう。
新しい世界であいつはどうしてんのかな?少し気になった。
僅かな時間での考え事を終えると、ネプテューヌたちが困惑していた。
「ん?俺・・・なんか変なこといったか?」
「い、いや!そんなことないよ!」
「ただ、予想以上に意識の高い回答が来たからちょっと驚いただけよ!」
回答の仕方が悪かったのか?そう思った俺は訊いてみたが、二人は慌てて否定する。
意識の高いか・・・。良かったなカグラ。お前の理想を良いと思ってるやつが俺の目の前にいるぞ。
「ただまあ。真面目に仕事しない奴が主導者なのは嫌かな・・・」
この2人の内どっち寄りかと聞かれれば、正直なところノワール寄りだ。
楽しみが欠けている生活をしてた分、ネプテューヌのように楽しい方がいいという気持ちもわかる。だが、上がまともに働かないならあっさり反逆されたりするだろうから、それは簡便だ。
「うっ・・・」
「ほら。ラグナもこういうんだし、あなたも頑張りなさい?」
俺の回答を聞いたネプテューヌは苦い顔をして、ノワールは自信を持った態度でネプテューヌを促すように言う。
俺たちがそんなことを話しているうちに、森が途切れ、その先から歓声が聞こえてくる。
ノワールはその声を聞いて先頭に進み出る。森の外には集落が広がっており、そこに住む人たちが手を振っている姿が見える。
「キャーッ!女神様よー!」
「ブラックハート様だわー!」
ここの村人たちはノワールへの信仰心が強いらしいな。確かに女神二人に手は振られているのだが、多くはノワールに向けてのものが多い。
「ああーっ!『紅の旅人』もいるー!」
「ホントだ!カッコいいーっ!」
と、俺を見た少年やお年頃の女の子とかが嬉しそうな反応を示す。
まあ、こうやって皆に認められるのは悪くないが・・・。お年頃の女の子たちに直接訊いてみたいことは一つあった。
・・・俺のどこがいいんだ?どこがカッコいいんだ?ぶっきらぼうで計画性なし、おまけに口悪いし・・・。誰か説明してくれ・・・。
ちなみに、ノワールは手を振ってくれている皆に向けて手を振っていた。だが、そこでハッとするノワール。
「いけない!アクセス!」
何をするのかと思えば、ノワールの体が光に包まれる。つまりは変身だ。
「ええ~!?変身今やっちゃう~!?」
ネプテューヌはノワールのその行動に驚きの声を出す。俺も驚いていた。俺からすれば『蒼炎の書』を乱用してるようなもんだ。
そしてノワールは、少し癖のついた銀髪の髪をおろし、黒いレオタードの格好に変わる。これはノワールが変身し、ブラックハートハートになった姿だ。
「女神の心得その二・・・。国民には威厳を感じさせることよ」
ノワールは後ろを見ながらそう言うと、そのまま集落の方に飛んで行った。
「皆さん。モンスターについて聞かせてくれるかしら?」
「目の前で変身しても・・・威厳とか無くね?」
そんなノワールの様子を見て、ネプテューヌは飽きれ気味に突っ込んだ。
俺自身は、威厳ってそんなに大事だろうか?と、カグラの人物像を思い出しながら疑問に思った。
* * *
「ここがナスーネ高原ね」
「ええ。スライヌが大量発生して困っているのですわ」
俺たちはナスーネ高原に案内され、今はノワールが村人たちから起きている問題の説明を受けていた。
ナスーネ高原はのどかな高原地帯だ。何も無ければ見渡す景色はいいものなんだろうが、あちこちにスライヌがいるんじゃ台無しだ。
俺たちは今回、ナスーネ高原にて大量発生して、村人たちの通行の邪魔になったりして何かと悩ませているスライヌを掃討することになる。
「わかりました。お隣の国のネプテューヌさんとネプギアさん、ラグナさんの三人がが対処してくれるそうです」
「ねぷぅっ!?この流れでいきなり振るっ!?」
「私たちがやるんですか?」
「心得その三、活躍をアピールすべし」
ノワールの言葉を聞いて二人は驚く。それに対してノワールはニッとした笑みを見せて心得の一つを言う。
ちなみに、俺はそこまで驚きはしなかった。
「(ノワールのやつ・・・まさかな・・・)」
プラネテューヌのシェアを回復させるなら、ラステイションよりもプラネテューヌに近い、またはプラネテューヌとラステイションの間辺りを選んで、ネプテューヌたちの活躍を渡りやすくしたんじゃねえか?
そう俺は考えていた。もしそれが本当なら、ノワールは気を利かせてくれているな。そうであることを俺は祈った。
「広報用に撮影しといたげるね」
ユニはそう言いながら、ネプギアの右脚につけられていたケースから『Nギア』を取り出す。
「ありがとうユニちゃん。ああ、そうそう。撮影しながら『蒼炎の書』の稼働データも取るから、そっちも頼めるかな?」
「分かった。そっちもバッチリこなすから、アンタも頑張りなさい」
「うん!」
お礼を言いながら今回のやることに、『蒼炎の書』のデータ収取があることを思い出したネプギアがそれを頼むと、ユニは承諾してくれた。
ネプギアの方も、ユニの応援に笑顔で答える。やっぱり、この二人は仲がいい。こんな友人関係、俺にもできるだろうか?一ヶ月経ったとはいえ、生活環境がとてつもなく変わっているからいまいち自信を持てない。
「俺は途中から『
「ええ。了解よ」
俺が最初は起動しないことを伝えると、皆の代表としてノワールが返事をする。
「ええ~?兄ちゃん、『蒼炎の書』は使わないのー?」
納得してもらえたからぼちぼち始めようと思ったが、少年を筆頭に若い世代が納得いかない様子だった。
こっちの世界のちびっ子たちは予想以上に好奇心旺盛だな・・・。
「最初は使わないだけだよ。・・・ほら、アニメやゲームで物語の主人公が敵を楽々倒してったら面白くないだろ?」
俺はやれやれと思いながら口下手なりに言う。すると、俺に訊いた少年は「それもそうか」と納得してくれた。
アニメやゲームという言葉を咄嗟に出せたのは、ネプテューヌが俺を時々アニメ鑑賞やゲームに誘っていて、俺が付き合っていたからだ。
「話は済んだ?それなら、そろそろ始めて頂戴」
「あー、めんどくさいなぁ・・・。まぁ、スライヌくらいヒノキの棒でも倒せるもんね!」
ネプテューヌは愚痴をこぼしながらもすぐに軽めの準備運動を済ませ、二回のハンドスプリングから次の跳ねで数回の前宙をしながらスライヌの群れの前に立つ。
それを見た俺はすげえ運動神経してるなと思った。体が軽いと成功率高いんだろうか?
「それじゃあっ!二人とも、行こっか!」
ネプテューヌはそう言いながら両腕を前に出す。すると、光の素子が形を形成するように集まり、ネプテューヌが使っている太刀が鞘ごと形を作る。太刀を手に取ったネプテューヌは刀を鞘から引き抜く。
最初見た時はどうやってんだと思ったが、このゲイムギョウ界ではアイテムパックという、そのパックの容量の許す限り、あらゆるアイテムを量子化してしまっておけるものがあり、ネプテューヌはそのアイテムパックから太刀を呼び出していた。
ちなみに俺もアイテムパックを持ってはいるが、武器は相変わらず自分の腰に下げている。ノエルならベルヴェルクを召喚していた時期もあったし、意外とすんなり行くのか?
少なくとも俺はまだ無理だ。戦うこと前提なら、いつでも手元にないと不安すぎる。
「うんっ!お姉ちゃん!」
話を戻そう。今はスライヌの掃討開始直前。ネプテューヌの言葉に頷いたネプギアはネプテューヌと同じくアイテムパックからビームソードを呼び出しながら飛び出す。
ネプテューヌの左斜め後ろの所まで来たネプギアは、光の素子が形成したビームソードの柄を両手で持ち、柄からビームの刃を形成させる。
「おう!」
俺も走ってネプテューヌたちの所に行きなながら、腰に下げてある剣を右手で引き抜き、逆手持ちで構える。
準備ができた俺たちはスライヌの群れに向かって一斉に走り出す。
その中で一番最初に動いたのはネプテューヌだ。ネプテューヌは一番手前にいたスライヌの元へ低空ジャンプをして飛び込む。
「てええいっ!」
ネプテューヌはスライヌの眼前に着地しながらも、刀を上から縦に振り下ろす。
その一撃によってスライヌは倒され、光となって霧散する。
「はああっ!」
ネプテューヌの左側で、ネプギアはビームソードを右から水平に振る。
それによってスライヌの一匹が倒される。
「おぉりゃっ!」
俺はネプテューヌの右側で剣を右から斜めに振る。
他の二人と同じで、俺もこの一撃でスライヌの一匹を倒した。
スライヌは元々とても弱いモンスターであるため、ちゃんと戦える人であれば基本、負けることはない。その証明としてっちゃぁ難だが、俺も右上半身が動かねえまんまスライヌ十匹相手にしても全然平気だった。
今回の問題は別にそう言う実力同行が問題なわけでは無く、その数の多さが問題になっていた。
「よーしっ!二人とも、一気に片づけちゃおう!」
ネプテューヌは活躍を見せるとなればやる気を出していた。
一度踏み込みの準備をすべく、ネプテューヌ牙突の構えを取る。
俺たちもそれに無言で同意し、ネプギアは右手に持ったビームソードを前に出して構え、俺も剣を持った右腕を引いて構え直す。
俺たちはそれぞれ三方向に分かれてスライヌたちに向かっていく。
「チェストォォッ!」
「本気で行きますっ!」
「叩っ斬る!」
近づききったところで、ネプテューヌは刀を左から水平に振り払い、ネプギアはビームソードを右から斜めに振り下ろし、俺は剣を右から斜めに振り上げてスライヌを斬る。
こうして俺たちは一気にスライヌを倒していく。
* * *
「(よし・・・これだけ取れば・・・)」
プラネテューヌの姉妹二人の動きをカメラに納めてたユニはこれで大丈夫だろうかと思い、ノワールの方を見やる。
ノワールはまだ納得していないのか、厳しい表情を続けていた。姉の満足行く基準はどのくらいなのだろうか?そう考えながら、ユニは撮影を再開する。
ユニたちの目の前では、スライヌの群れを次々と倒していく三人の姿が見えるが、それでもまだ数は多く残っていた。
「数が多いわね・・・」
「あいちゃん、私たちもお手伝いするです!」
「ええ。そうしましょう」
このままではキリがない。そう考えたアイエフとコンパは三人を手伝うべくスライヌの群れに向かって走り出す。
「あっ、ちょっと・・・」
その行動が見えたノワールは止めようとするが、そうするには既に遅く、二人はそのまま群れの所にたどり着いていた。
* * *
「でぇりゃぁっ!」
もう何匹斬っただろうか?計算とか得意じゃないから二十匹から先は数えてはねえが、かなりの数のスライヌを俺たちは倒していた。
幸いにも体力は余り消耗していない。スライヌが弱いから一匹に対して割く体力がとても少ないのが影響していた。
そろそろ二人に合流すべきか、それとも『
俺がそっちを見てみると、アイエフが暗器を使ってスライヌを数体切り裂いていた。
「大丈夫?手伝いに来たわよ」
「あいちゃん!こんぱ!よーし、これなら何が来ても百人引きだぜっ!」
アイエフの言葉を聞いて安心する。キリがないと思っていたから手伝いが来るのは非常にありがたい。
ネプテューヌは勝ちを確信したようなことを言う。
他にもアイエフの近くでは、ニッコリ笑顔でデカい注射器をスライヌに刺し、そのスライヌの一匹を倒しているコンパの姿があった。
いやいや、普通に怖えよその絵面・・・。美少女がデカい注射器でモンスター倒すってホラー過ぎるわ・・・。
ちなみに他の皆はそれが当たり前と思っているのか、何も反応を示さない。しいて言うなら「あの姉ちゃん戦えるんだ~」くらいだった。
・・・俺がおかしいのか!?クソッ誰か説明してくれるやつはいねえのか!?
まあいないだろうと諦め、俺はスライヌを倒しにさらに剣を振るう。
二人の加勢によって、俺たちのスライヌ掃討の速度は上がった。そして、数分する頃には辺りにスライヌが殆ど見えなくなった。
「きゃっ・・・!?」
完全にいなくなったかと思ったが、残っていたスライヌの一匹がネプギアの右耳を舐める。どうやらじゃれたいようだったらしいので、ネプギアはスライヌの気が済むまで、頭を撫でてやることにした。
周りにいるスライヌはかなり距離があるため、後は俺が『蒼炎の書』使って戦えば大丈夫だろう。そうすりゃネプギアにも危害はないはずだ。
そう思って俺が前に踏み出ようとした瞬間、大量のスライヌが斜面になっていた所の奥から、まるで待っていたかのように一気に湧いて出てきた。
「・・・え?(・・・は?)」
俺たちはそのスライヌの数を見て啞然とする。どうしてこんなに残ってんだ?そんな疑問が出たと同時に、スライヌの群れは一斉に俺たちに飛び込んできた。
・・・ヤべエ!そう感じた俺は咄嗟に右へとダイブするように回避する。それだけでは顔から地面に行く形になるので、それを避けるべく受け身を取る。
「危ねぇ・・・お前ら、大丈夫・・・っ!?」
俺はスライヌが降ってきた方を向いて皆がどうなったかを確認したが、俺はその光景に目を疑った。
目の前にはスライヌにとってはじゃれるの一環であろうこと。しかし、俺たちにとっては不健全なことが起きていた。
何が不健全かって言うと、それはネプテューヌたちが何匹ものスライヌに囲まれ、体のあちこちを舐められている・・・という、光景が俺の目の前に広がっていた。
「ひぁっ!?変なとこ触るなぁっ!」
「気持ち悪いですぅ・・・」
「そんなとこっ・・・入って来ちゃダメぇ・・・っ」
「あははっ!笑い死ぬっ!助けて・・・!」
「んなぁっ!?お前ら!?」
俺はあまりにも衝撃的な光景だったので固まってしまった。
アイエフは纏わりつかれる度にスライヌを投げ飛ばして抵抗しているが、コンパとネプギアは動けないでいた。
ネプテューヌに至っては、笑いの反動で寝返りを打ったりしていた。
どうする・・・?どう助けに行けばいいんだ?そう考えていると、ネプギアと目が合った。
「もう・・・っ・・・ダメぇ・・・」
早く何とかしねえと・・・。急がねばならないので、スライヌどものいる位置を確認していく。
今ネプギアたちを囲んでいる以外にも、さらに斜面の方に向かってスライヌの群れがいた。
こいつらがこれ以上ぞろぞろと来るようだと、助けることが困難になってくるな・・・。んで、その集まったスライヌたちがネプギアたちを・・・。そこまで考えて、俺は考えごとを放棄した。
「だぁぁ、しゃらくせぇ!とにかく全員助ける!」
そう決めて、奥にいるスライヌの群れの方に俺はデッドスパイクを放つ。
剣を下から振り上げることによってできた、黒い炎のようなものは地面を走り、進路上にいたスライヌたちを飲み込む。
進路上のスライヌが消えると同時に、俺の右手の甲に、倒したスライヌ一匹ごとに『ソウルイーター』の効果で三つの紅い球が吸収された。ちなみに、デッドスパイクによる紅い球はブラッドサイズと同じ大きさだ。
「だあー!お前らの魂、冥界へ送り返してやんよ!」
アイエフもブチキレて、自分に纏わり付いていたスライヌを放り投げるように引き剥がし、眼前に降って来たスライヌを暗器で斬りながら叫ぶ。
俺自身、結構目の前に意識が向いていたから気にしないで済んだが、もし普段の状況なら絶対ビビってたと思う。アイエフはこのセリフを悪そうな笑みを見せながら言ったからだ。
「ラグナ!とっとと叩き潰すわよ!」
「分かった!ユニ!『蒼炎の書』を使うぞ!」
「は、はいっ!」
アイエフの言葉に俺は同意し、ユニに『蒼炎の書』を使うことを宣言する。
それを聞いたユニが慌ててNギアを操作する。それを見た俺は、あの時のように右腕を自分の腕の高さまで持ってくる。
「第666拘束機関開放・・・次元干渉虚数方陣展開・・・!『
『蒼炎の書』のロックが外され、手の甲から蒼い螺旋が出て来て、少しずつ激しくなる。そして、俺の眼前に方陣が展開されると、螺旋と方陣が消え、起動が完了する。
「行くぞっ!スライヌなんぞ纏めて叩き斬ってやる!」
この後、アイエフは暗器で自分たちの近くにいるスライヌを、俺は剣を鎌に変形させ、付け根部の先端から鎌状のエネルギーを発生させた状態で斜面の方にいるスライヌを一気に倒していく。
俺たちはスライヌを掃討してる際、村人たちが啞然としていることになど、気づく余地もなかった。
「ネプテューヌ・・・もっと頑張りなさいよね・・・」
ノワールが飽きれ気味に言った言葉も気が付いてなかった。
* * *
「はぁっ・・・はぁっ・・・」
「はぁ・・・全くやれやれだ・・・」
スライヌの掃討がようやく終わった。アイエフは無茶をし過ぎて肩で息をしていた。
俺の場合、無茶と呼べる範囲のものではなかったので、肩で息をしたりはしていない。・・・アイエフが普段以上の動きをしたからだろうな。
ネプギアは大丈夫だろうか?そう思った俺は剣をしまいながらネプギアの元へ向かう。
「ネプギア、大丈夫か?」
「はい・・・何とか大丈夫です。すみません・・・また助けてもらって・・・」
「いや、アレはしょうがねえよ・・・。次頑張ろうぜ。な?」
「はい。そうします」
取りあえず安否の確認をする。ネプギアはまた助けてもらったことを苦笑交じりに言うが、流石にアレを一人でどうにかしろって無理があるよな・・・。
そういうこともあって、俺はなだめるように言う。俺の言葉でネプギアは納得してくれた。ひとまず無事でよかった。俺はそう思った。
「うう・・・しばらくゼリーとか肉まんは見たくない・・・」
ネプテューヌがへばっている所に、納得できない顔をしたノワールがやって来る。
それを見たネプテューヌは上半身を起こした。
「どうして女神化しないの!変身すればスライヌくらい・・・」
ノワールの言っていることを聞いて、不機嫌な理由はすぐに分かった。
女神たちは変身することで強大な力を使える。それを使えばスライヌ相手なぞ大したことが無いのはよくわかる。
俺が『蒼炎の書』を使わないどころか、右上半身動かない状態でも倒せるのだから、女神が変身してしまえば瞬く間に倒せただろう。
「まあほら。なんとかなったし・・・」
「他の人になんとかしてもらったんでしょう!自分でできることは自分でする!そんなんだからシェアが……」
ネプテューヌの気楽そうに言う言葉に対して、ノワールはさらに不機嫌になって言う。
流石にネプテューヌも居心地が悪く感じたのか、視線をそらす。
「精々休んどきなさい!後は私たちでやるから!
トゥルーネ洞窟に案内して!ラグナ、あなたも来れるわね?」
「ああ、平気だ」
これ以上は言わない方がいいかもしれないと判断したのか、ノワールは村人に案内を頼むことにした。
ノワールに来れるか聞かれた俺は、行けるのでノワールに大丈夫と伝える。
「分かったわ。ユニはネプギアたちを介抱してあげて」
「う、うん」
ノワールに言われたユニはすぐに行動に移った。
「よし・・・。じゃあ行ってくる」
「はい。ラグナさんも気をつけてくださいね」
「分かった。また後でな」
俺はネプギアと短い会話を済ませ、ノワールと共にトゥルーネ洞窟に向かった。
予想以上に三人称視点で時間を食った感あります・・・(汗)。
アニメ1話の内容は次回で終了になると思います。
なんだかんだ先生を書くのは楽しいけど、同時にすげえ文を書くのが難しいです・・・(笑)。
遅れましたが、ブレイブルーの新作の方でブレイブルー側から遂にノエルが来ましたね。
これでメイン三人が揃って一安心ですね。
また、私はルビーとペルソナの知識がゼロ、UNIもアーケードモードで得た知識しかないので、早めにつけなきゃなと思っている次第です。
バイトの量、少し減らさないとなぁ・・・(泣)。