くノ一の魔女〜ストライクウィッチーズ異聞   作:高嶋ぽんず

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この小説はpixivに投稿していたものの再投稿になります。


くノ一の魔女〜ストライクウィッチーズ異聞 二の巻 その六

「初美少尉、偵察任務お疲れ様です!」

 自分が基地に戻ると、まだ軍に入隊して間もないだろう、初々しさの残る一等兵がやってきてカールスラント式の敬礼をしてきた。

 どうやら、フィルム受け渡しを誰が行うかくじ引きか何かで決めてるらしく、何度かフィルムの補充のために戻ってきたが、その度に受け渡しの兵士は違っていた。

「ご苦労様です。これが最後の空撮になります」

 ポーチから、撮影したフィルムを出して手渡す。新人君を緊張させないよう、つとめて柔らかい言葉遣いで話した。

 以前、新人の兵士にいつも通りの対応をしたとき、怖がられた経験があるからだ。特に怒っていたわけでもなくいつも通りだったのだが、普通の人には怒っているように聞こえたらしい。

「はい、確かに受領いたしました!」

 手渡したフィルムは、これから大至急で現像され、オティーリアが連れてきたカールスラント軍情報部アプヴェーアの分析官が、写真を精査するという。

 オティーリアいわく、その結果によって、自分が単騎で爆撃に行くか、スツーカ大隊を呼ぶかが決まってくるそうだ。

「は、初美少尉!」

「なに?」

「お願いがあるのですが、よろしいでしょうか」

 妙に決死の覚悟を感じさせる顔で訴えてくる。

「すぐにできることなら構わないけど」

さすがにそこまでの覚悟を無碍にはできない。

「しゃ、写真をご一緒願えないでしょうか!」

 そのセリフと同時に、あたりにいた兵士達もざわ、とどよめいた。

 同時に、ああ、そういうことかと納得する。

ちょっと考えて、

「今はもう暗くなってるから露出足りないし、わざわざフラッシュをたくのももったいない。だから、明日の朝なら構わないけど」

「は、はい!かまいません!ありがとうございます!」

「ああ、お名前は?」

「は、はい!ザシャであります!」

「では、ザシャ一等兵、明日〇九〇〇時に中庭で」

「感謝致します!初美少尉!」

「うん。それじゃ、フィルム、よろしくね?」

「……はい!」

 ザシャ一等兵は、一拍おいて返事をする。

 あ、こいつ自分がなんのために来たのか忘れてたな。

 

「ん、朝か」

 備え付けの目覚まし時計が自分を起こしたのは、朝の七時のことだった。

 結局昨日は、長時間飛行しつづけた疲労と魔力を使い果たしていたことが重なり、シャワーを浴びると早々にベッドへと倒れこんでいた。

いつ眠りに入ったのかもわからない疲れっぷりだった。

 幸い、写真の精査には数日の時間がかかるとのことで、その間は休養に充てられる。一晩寝れば魔力はそれなりに快復するが、さすがに体力はそうもいかない。十全の状態に戻して、爆撃にのぞみたかった。

 ともかく自分は、大きく伸びをすると洗面所に向かって顔を洗い歯を磨いて朝食をとり、新聞を眺めて情報収集をすると、時間は九時前になっていて、自分は木刀片手に急ぎ気味で中庭にでていた。

 それはもちろん、ザシャ一等兵との約束を守るためだ。

 しかし、ある程度予想していたが、さすがにこれには言葉を失った。

「自分は、ザシャ一等兵と写真を撮ると約束はしたが、貴君らはなんだね?」

 中庭には、十名ほどの新兵が集まっていたのだ。

「噂のくノ一ウィッチである初美少尉との記念撮影に、ザシャ一人だけとは無体な話です!」

 一人が声をあげ、つづいてそうだそうだ、とザシャを除く新兵がそれに続いた。

 いや、自分は貴君らの上官なのだが、そこは分かっているのかね、まったく。

 やれやれとあきれながら、

「はぁ。わかったわかった。全員ならべ。これ一枚きりだぞ?」

 そう言って、自分を中心にして記念写真を撮らされたのだった。


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