くノ一の魔女〜ストライクウィッチーズ異聞   作:高嶋ぽんず

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くノ一の魔女〜ストライクウィッチーズ異聞 七の巻 その四

 会議が終わると、自分を中心にして五〇二部隊員が輪を作っていた。明日、ともに翼を並べて戦う仲だ。少しでも交友を暖めておくにこしたことはないだろう。

「それでなおちゃん、あきらくんはどれぐらいできるんだい?」

「ひかるよりはやるぜ」

 管野の言葉を聞いて、雁淵は頬を膨らませた。どうやら中尉の一言は彼女の機嫌を損ねたようだ。

「管野さ~ん」

「事実だろうが。俺がお前のケツについたとしてもそれはかわらねぇ。お前はまだまだひよっこだ」

「それはそうですけど……」

 もう少し言い方ってものも考えてやるべきじゃないのかね、管野中尉は。そりゃあ、上官としてしめておかなければならない部分なのはわかるんだが、せっかく培ってきた雁淵の自信も失いかねないぞ。

「ともかく銃の腕は並みだが戦闘機動と剣の腕は人並み外れてる。そこいらの連中じゃまずかなわないだろうな」

 自分が空中で人型ネウロイを切り伏せたところでも見ていたのか。

「なにしろ《もどき》を空中でぶった斬りやがったからな。刀の腕とマニューバに関しちゃ信頼できる。太鼓判をおすぜ」

 同じく超接近戦での戦闘を幾度も経験している管野中尉だからこそわかるのだろうか。しかし、そうあからさまに褒められるとなんとも面映ゆいものだな。

「それは凄いですね」

 ロスマンさんが眉を上げて関心した。

「なるほど、隊長が初美さんをほしがるのもわかります」と、サーシャ大尉が得心したように言う。「これでさらに斥候役としても期待できるのだから、どの部隊でもほしがるはずです」

「僕としては、可愛い女の子が増えるのは大歓迎だよ」

 やれやれ、どうやらこの偽伯爵殿、中身は迫水中尉と 変わらずか。

「料理はできるんですか?」

 ジョーゼット少尉は、戦闘よりもそちらのほうに興味が向くのか。

「忍びの修行で、食べれものを作る技術は学んだが、美味しいものを作る術は学べなかったな。一応五〇一のリネット曹長から味噌汁の作り方やらは習ったが、あいにく料理を学ぶ時間がなくてな」

「それなら是非定ちゃんから習って下さい!」

 む、いきなり圧が強くなったな。

「定ちゃんの作る扶桑料理は凄く美味しいんです。だから、料理は定ちゃんから是非教えてもらって下さい!」

「ジョゼ……」

 誉められ慣れていないのか、若干照れ気味な下原少尉。

「わかった、機会があればそうさせていただくよ、ジョーゼット少尉」

「あきら、スオムスの前はどこにいたの?」

 これまで沈黙をたもっていたニパ――ニッカ・エドワーディン・カタヤイネン中尉が口を開く。

「そうだな……とりあえず、セダン、パ・ド・カレー、バクー、アフリカ、スオムス、そしてここだ」

「スオムスにいたとき、ハッセは私のこと何か言ってた?」

 ハッセ、ハッセ……ああ、ハンナ・ウィンド少佐のことか。

「いや、これといって聞いてはいないな」

「ちぇー」

 不満げに頬を膨らませる。

「おめぇはいちいち気にしすぎなんだよ」

 管野がごす、とニパの頭を小突く。

「いったいなぁ、管野。殴ることないじゃないか」

 頭を押さえながら管野をやぶにらみする。

 管野はどこ吹く風で気にしない。

「そうだ、《もどき》に意識をもっていかれそうになった人達全員に訊いておきたいのだが、いいだろうか」

 この際だから、《もどき》に洗脳されそうになったときの感覚を尋ねておこう。自分には固有魔法の《迷彩》があるのだから危険性はないはずだが、万が一ということも考えられる。《迷彩》なしで人型ネウロイと対峙したとき、なにがおきるのかわかっていれば何らかの対処もできるかもしれない。

「どんなことでしょう」

 サーシャ大尉がそう言った。

「《もどき》に意識を奪われそうになったとき、どんな感じがしたのか聞いておきたいのです。自分の《迷彩》もいつ通用しなくなるかわかりません。そのときのために参考にしたいと」

「そういや、あきらはあいつに意識を奪われたことがなかったんだよな」

 と、管野中尉。

「幸いと言っていいのか、《もどき》と遭遇したときは、すべて《迷彩》を使っていたときだからな。どういう状態になるのか知っておきたい」

「えーとですね、私の場合は軽く頭痛がして、ふと意識を失った感じです。気づいたら、《もどき》の隣を飛んでいました」

 これはルマール少尉だ。

「俺は、吐きそうになるぐらいの頭痛がしたな。あれはきつかった」

「私も同じですが、どうなるのか事前に耳にしていたので、堪えることができましたね」

 と、管野中尉とサーシャ大尉。

「なるほどな、全員強弱の差はあれど頭痛が共通点としてあるわけか。参考になった。感謝する」

 答えてくれた全員に頭を下げた自分だった。

 


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