くノ一の魔女〜ストライクウィッチーズ異聞   作:高嶋ぽんず

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この小説はpixivに投稿していたものの再投稿になります。


くノ一の魔女〜ストライクウィッチーズ異聞 二の巻 その五

 ル・ジェンヌという基地は、戦時基地として緊急で作られたため、実のところそれほど大きくはない。

 ストライカーユニットの補給基地といった意味合いが強く、陸戦、空戦問わずストライカーユニットがまるでアリかハチのように出入りしているような基地だ。

 つまり、ここはまだ破壊された巣の影響が色濃く残っている場所なのだ、ここまでネウロイ一機も見つけずにやってこれたのは、案外運が良かったのかもしれない。

 そんな中、自分は一日の休暇で溜まっていた疲れを取り、ル・ジェンヌ基地より飛び立とうとしていた。今日一日で可能な限り地上の様子を写真に移し、一日休暇を入れて爆撃へと向かうことになっている。

 いくら自分の固有魔法である《迷彩》が、魔力の消耗が低いとはいえ、セダン上空にいる間はずっと使いっぱなしなのだからさすがに持たない。

 さらにブラウシュテルマーの爆撃も行わなければならないというのだから、休暇をいれなければ身がもたない。

「管制室。こちら初美少尉。只今よりセダン周辺の調査に向かう。発信許可を送られたし」

 カメラを肩から下げ、腰にはMP43を携えた自分は、スツーカを履き発進許可を求めた。

『こちら管制室。了解した。五分後の発進だ。準備されたし』

「こちら初美少尉。了解した」

 肩から下げた軍用リリーや交換用フィルムを収めたポーチなどを再確認し、発進準備を進めていく。

『初美少尉、発進されたし』

「了解した。発進する。オン,マリシエイ・ソワカ」

 摩利支天の真言を唱え、発進促成装置のストッパーを外すと、スツーカは装置から解き放たれる。庫内から出るとゆったりとした速度で空へと上がっていく。

 ネウロイの巣がなくなり、人間の支配圏が大幅に広くなってきたとはいえども、巣が破壊されてからまだ一ヶ月とたっていない。

 だから、まだ陸戦、空戦問わずにネウロイが潜んでいることに変わりはなく、偵察目標地点はさらに危険だ。

 ル・ジェンヌ基地上空を過ぎると、

「初美少尉より管制室。これより固有魔法《迷彩》を使用する。無線の使用が不可能になるため、偵察終了まで連絡は取れない。それから、五分以内に基地上空を離脱するが、それまでは注意されたし」

『了解した』

 と、一応連絡を入れて《迷彩》を使用する。

 ぅん……と、小さな空気のうなりがおきる。これで、出力にもよるが電波の類は結界がほぼほぼ吸収することになり、体が迷彩色に覆われる。エンジン音も多少だが抑えられるはずだ。

 確認のため無線で基地を呼び出してみるが、電波障害の雑音が聞こえるだけだ。

「よし」

 頷くと、スツーカを五千メートルまで上昇させ、予定空域まで到達するととりあえず周囲を確認した。目視する限り、周囲にネウロイは確認できない。

 そうしてカメラを持ち出した。一応中判なので、それなりの拡大にも耐えられるだろう。

 高度を保ったまま撮影を続けていき、一通り撮影を終了したら基地へと戻る。

 途中、何度かネウロイを視認したが、自分に気づくことはなく、時々あの耳障りな声をあげながらあたりを周回しているだけだった。

もちろん自分から手を出すことはせず、懐中時計を取り出して時間を確認し、場所を含めて記憶すると、報告書にまとめるために写真を一枚撮って後にする。

 ともかく、これを何度か繰り返した。

 結局、自分は陽がかげる寸前まで粘って偵察を終了したのだった。


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