くノ一の魔女〜ストライクウィッチーズ異聞   作:高嶋ぽんず

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くノ一の魔女〜ストライクウィッチーズ異聞 三の巻 その十八

 カレー港。

 自分は、なぜか大道芸をやっていた。

 飛んできた薪を一刀の元に切り、返す刀で割る。腕自慢の大男を柔でもって制する。手裏剣で缶を打つなど。

 扶桑刀を使った芸が観客をわかせ、それがまた観客を呼ぶ。

 そして、飛んでくる投げ銭、やんややんやの喝采とリクエスト、腕自慢の挑戦。

 おかしい。

 軍資金はあるのに。

 ただ、食料を買いに来ただけなのに。

 本当に、どうしてこうなった。

 

 事の起こりは一時間前、遅めにとった昼食後の午後二時にさかのぼる。

「ブリタニアのフィッシュ&チップスは本当に不味いな」

 自分は、ブリタニア流の不味いフィッシュ&チップスを無理やり水で流し込み、胃もたれしそうな腹具合のまま食堂を後にした。手頃な食堂が、あいにくとブリタニア人用のそこしかあいてなかったのだ。

「げっぷ」

 抑えようとしたがげっぷが漏れてしまう。

 そうして、食料関連の卸と市の場所は教えてもらったわけだし、そっちに向かうかと、人混みの中、腹を撫でながら歩こうとしたその時である。

「おら、とっとと乗れ!」

「うるせぇ、わかってんだよボケ!」

 明らかに事件性を感じさせる声が聞こえてくる。

 食堂の左隣の路地からだ。

 周囲の人間は厄介ごとに関わりたくないのだろう。知らぬ存ぜぬで無視を決め込んでいた。

 死ぬかもしれないしな。当然だろう。

 だが、自分はウィッチである。

 力ある人間がやらなければならない義務がある。

「不味い飯の腹ごなしにゴミ掃除と行くか」

 自分は、散歩でもするかのように気軽な足取りで声が聞こえた路地へと入って行く。通行人が、さすがに自分のような女の子が関わりに行くのはまずいと思ったのだろうか。

「やめろ、君みたいな女の子が係わり合っちゃあいけない」

 と、背後から、いかにも港で仕事をしてます、という風体の大男が声をかけて止めに入ってくれた。

「大丈夫だ。こう見えても、自分はウィッチなんだ」

 後ろを振り向いて、ニコッと笑い、周囲を魔法陣の青い輝きで照らしながら、使い魔であるムササビの耳と尻尾を出した。

「あ、ああ、ウィッチのお嬢さんだったか」

 まぁ、扶桑皇国陸軍の軍装は着ているか

今は階級章なんかは外してるしな。

「うむ。止めてくれたこと、感謝するよ」

 耳と尻尾を戻して後ろ手に手を振りながら、路地へと足を進める。

 すると、ものの十メートルほど先が右への三叉路になっていて、そこでなにやらやっているようだ。

「なにをしているか!」

 自分は、三叉路の入り口に立つと同時に、誰何の声を上げた。

 そこでは、二人組の男がどうやら鍵をかけていなかっただろう倉庫に入り込み、でかい麻袋をふた抱えして逃げ出そうとしていたところだった。

 一瞬あっけにとられた彼らだが、すぐに我を取り戻して持っていた麻袋を自分に投げ出してくるが、片手でそれを受け流して、

「やめておけ、ウィッチに見つかったのだ。大人しく捕まったほうが得策というものだ」

「うるせぇ! 耳も尻尾も生やしてないウィッチがどこにいる!」

 二人が一緒になって襲ってくるが、自分は彼らのテレホンパンチを捕らえて、そのまま後ろへ投げ飛ばす。

 派手に吹っ飛び、建物の壁に背を打ち付けてそのまま気絶してしまった。

 相手がネウロイではなく、ましてや人間ならば、ざっとこんなものだ。

「お前たちごときなぞ、魔力を使うまでもないよ」

 そう言って、路地から表通りに出たら、驚いたことに人だかりができていた。

「な、なんなんだこれは」

 

 それから、自分は彼らに根掘り葉掘り問いただされ、忍者だというと鼻で笑われたのでそれを証明するために手裏剣を打って見せたらさらに人だかりができて、気づいたらこうなってしまった。

 気絶した泥棒は、自分が色々人だかりに揉まれている間に警察が連れていったらしい。

 そして、この投げ銭である。

 本当に、これからどうすればいいんだ。

 




このまま描き進めたら、自分的にズルズル長くなりそうだったのでここで投稿させていただきました。

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