くノ一の魔女〜ストライクウィッチーズ異聞   作:高嶋ぽんず

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この小説はpixivに投稿していたものの再投稿になります。


くノ一の魔女〜ストライクウィッチーズ異聞 三の巻 その十

「扶桑皇国陸軍欧州義勇兵所属、佐東健子准尉です。昨晩はご迷惑をおかけしました」

 執務室に着くなり、佐東が開口一番発した言葉がこれである。珍しく、きびきびとした言葉遣いに驚き、思わず彼女の顔を見てしまう。

「怪我はありませんの?」

 ペリーヌは、墜落について文句を言うよりもまず先に、無事かどうかを確認した。家屋に被害がないのだからというのもあるのだろう。

「はい、もちろんです。ネウロイに撃墜されたわけじゃなくて、ちょっとへまをして墜落したぐらいなら怪我なんてしませんよぉ」

 へらへらと笑いながら答える。

 どうやら、真面目だったのは最初の一言だけだったようだ。すぐ普段通りに戻ってしまった。緊張感があるのかないのか……。

「そ、そうですの。それで、これからの予定は?」

 佐東は、扶桑皇国のウィッチでは珍しい性格なので、ペリーヌは少々面食らってしまったらしい。

 彼女の表情は、まさに鳩が豆鉄砲を食ったようだった。

「とりあえず昼まで酒が抜けるのを待って、午後には帰らせるつもりだ。佐東、鹿の解体はできたよな」

 と、自分が今後の予定を説明する。

「あきらちゃんにたたき込まれたから、やりたくなくてもできるよぉ」

 ほんと一言多いな、こいつは。肝っ玉の太さでは、あの基地で一番なんじゃないか?

「中庭に下げてあるから、昼までにやっておけ。それがおわったら基地に帰投。それから、人前ではあきらちゃん禁止だ」

「了解したよ、あきらちゃん。それじゃ、解体してくるねぇ」

 そういって、まるで蝶のようにふわふわとした歩き方で出ていった。

 禁止と言ったそばからこれである。

「すごい方ですのね、佐東准尉」

「ああ見えて、哨戒の腕はいいんだがなぁ」

 腕を組んで、うーんとうなってしまう。

「ペリーヌならわかると思うが、自分は506の隊長が本決まりになる少し前、おそらく一ヶ月後にはここを離れることになる。そのあと、あいつを自分の後釜に据えようとおもっていたんだが、どう思う?」

「あの方、腕は確かですのね?」

「哨戒任務においては、昼夜問わずに折り紙つきだ。あいつ一人で二人ぶんの働きはする」

 断言した。

 佐東は、エースウィッチで戦闘技術も標準以上のものは持っているが、それ以上に哨戒がずば抜けていた。

 生来目の良さも一因なのだが、とにかく観察力が常人離れしていた。

 目付けのよさが並外れている。

 どうやら、固有魔法のおかげでもあるらしいのだが、本人があの調子なのでどんな固有魔法をもってるのか、本人もまわりもまったくわからないのだった。

「ただ、酒癖がな。酒乱ではないんだが、妙に気が大きくなりすぎて、色々盛大なポカをやりがちなんだ。で、営倉入りを何度かやらかして、次にやったら厄介払いにどこかのJFWに放り込むとか言われててなぁ」

「はぁ……JFWを問題児の矯正施設か何かだと勘違いなさってませんこと?」

 こめかみを抑えながら言った。

「イェーガー大尉とルッキーニ少尉を思い出すか」

 つい、喉の奥で笑ってしまう。

「宮藤さんやエイラさんもです! まったくもう」

「それで、どうする? 合格なら早々に扶桑陸軍へ所定の手続きを要請するが。まぁ、一度会っただけじゃ判断はできないだろうが」

「合格ですわ」

「は?」

 即答に言葉を失う。

「ですから合格と言ったのです。初美さんの眼鏡にかなったのでしょう?」

「確かにそうだが、いくらなんでも即決にすぎないか?」

「性格はその次で構いませんわ。パ・ド・カレーには、復興を手助けしてくれるウィッチが必要です」

 そんなことを言っていると、仮にウィッチが集まったとしても502のような愚連隊みたいになるぞ。

 まぁ、ペリーヌなら存外、まとめられるような気もするが。というより、予定されている506のウィッチに比べたら、大抵のウィッチは御し易いか。

「わかった。ではその旨を連絡しておこう」

 自分は、そう答えて所属基地へ無線で連絡を取るのだった。


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