くノ一の魔女〜ストライクウィッチーズ異聞   作:高嶋ぽんず

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くノ一の魔女〜ストライクウィッチーズ異聞 二の巻 その十二

 自分を焼き尽くそうとしていた小型ネウロイが一瞬のうちに全滅したのは、最初のビームが自分のシールドに弾かれた時だった。

 噴煙たなびかせたフリーガーハマーのロケットがその爆風で大多数を破壊し、残った小型ネウロイは銃弾の雨がとどめを刺した。

『初美さん!無事ですか!』

『私に戸隠流剣術教えてくれるって言ったじゃないですか!』

 鍾馗より優速のストライカーユニットを差し置いて一番に来るなんて、ずいぶん無茶したじゃないか。

 自分は、死ななかったことに安堵する暇もなく、半ひねりして下を向くと扶桑刀を抜きはなち、

「いやあああああああっ!」

 気合いとともに大型ネウロイの先頭を行くX-4型へ向けて急降下し、ビームをかいくぐりながら切り裂く。そして、その抵抗を借りてX-4の表面を撫で斬りにしていき、露出したコアに手裏剣を打つ。

「無茶したな、二人とも」

 上昇し、二人と合流する。二人の鍾馗のマフラーは、咳き込むように煙を吐き出していた。

「雰囲気だして自己犠牲なんて、初美さんらしくないです」

「いや、わりと自分は簡単に命を張るがな」

 佐々の誤解を一言で切って捨てる。

「ええっ!」

「ああ、佐々は初美さんと作戦行動をとったことが、あまりないから知らないんですね。この人、割と簡単に命を投げだします。生きるつもりがないのかなんなのか」

 はぁ、と大川はため息まじりに言った。

「おかげで、この人とロッテを組むウィッチは苦労し通しです」

「自分の命一つで勝てるなら、安いものだと思うのだがな」

「まったく、そんな人だとは思いもよりませんでした。扶桑陸軍からあなたを借りて、少し教育する必要があるかもしれませんね」

 上空から、ウィーゼ少佐の声が聞こえてきた。

 ストライカーユニットを見事に操り、ふわりと私たちの側にやってくる。

「うぐ」

 言葉が詰まる。

 何も言い返すことができない。

「私達ウィッチは、人間の盾であり剣です。その私達が自ら死を選ぶというのは、世界の死を意味します。よく覚えておきなさい、初美少尉」

「了解しました」

「少佐、A隊全員到着しました」

 レッシュ少尉が、残りのA隊全員を引き連れてやってきた。

「よし。総員、攻撃開始!」

 少佐の号令一下、全員が一つの弾丸となって 大型ネウロイへと突入する。

 ネウロイの攻撃も同時に開始された。

 ウィッチそれぞれが奴らの攻撃を回避し、シールドで防ぐ。

 レムケ少尉が、ビームをシールドで受け止めるのではなく、シールドを手のひらに載せるように作り出し、斜めにして受け流していた。

 なるほど、面白い。傾斜装甲と同じ原理か。ぜひ参考にさせてもらおう。

 大川がフリーガーハマーの斉射を行い、ロケットを追いかけて佐々が突っ込んでいく。ロケットはネウロイの装甲を叩き割り、コアを露出させて、そこを佐々が扶桑刀で叩き斬る。

 自分は、レッシュ少尉と視線を合わせ、うなづきあって二人が撃破したその向こうにいるネウロイへ向けて、彼女とともに加速、左右に分かれて両側から斬りつけ、コア諸共両断した。

 他のウィッチたちも、空に航跡雲をたなびかせながらネウロイへと挑みかかり、撃破していく。

 もちろん、無傷というわけにはいかなかった。

 何人かがビームを受け止めきれずに吹き飛ばされ、ユニットに変調をきたして戦線から退くよう命令されるウィッチはいた。

 それでも、《クバンの獅子》の指揮のもと戦い抜く。そして、

「これでお終いです」

 少佐が、最後のネウロイの表面に立ち、MG42を突きつけて弾丸よ尽きよと言わんばかりに撃ちまくった。

 弾丸が当たるたびに装甲が砕け、剥げ、ルビーのような輝きを放つ正二十面体のコアが露出する。そして最後の一発がコアに突き刺さり、崩壊した。

 

 その後、少佐に入った連絡によると、B隊もA隊と同じく合流したネウロイをなんとか撃滅に成功したという。そして、スツーカ隊と陸戦ウィッチ隊は隊長の指揮の元、各々の役割を果たした。

 これにより、セダンに点在するブラウシュテルマーは全て破壊され、《ぎっくり腰》作戦は成功したことになる。

 もちろん、無傷とは言わない。B隊はもちろん、スツーカ隊にも陸戦ウィッチにも、ストライカーが破壊されたり、シールドを貫かれて負傷したウィッチはでてしまった。

 この作戦を最後に、引退するウィッチもいるだろう。それは、陸戦ウィッチはもちろん、ただでさえ少ない航空魔女にとって大きな痛手だ。

 それでもだ。

 この地は人類がネウロイから奪還した初の土地であり、記念すべき場所だ。

 そして、この地に作られることになる第506統合戦闘航空団は、この場所を守護するという、なにより重要な役割を持つ。

 政治的、外交的な綱引きの綱となり、困難な道のりを歩むことになるのは仕方ないことだろう。

 自分も、これからその綱を引っ張る任務をおってパ・ド・カレーに向かう。その事に対して個人的に思うことはあるが、これが忍びというものだ。割り切らなければならない。

 

 ああ、それから。

 扶桑に帰ったら、自分の雇い主であるちょび髭メガネの川股少将は、個人的に問い詰める必要がある。

 自分をここまでいいように使ったあいつには、それだけの代償を支払わせるのだ。

 覚えてろよ、あの野郎。




くノ一の魔女、二の巻、これにて完結です。
pixivでは、初美はパ・ド・カレーに向かいペリーヌと出会っていろいろして……るのかなぁ。ちんたら話が進まない状況? です。
書いてる本人は楽しんでるのですが、読者様がついてきていただけるかどうか。

なお、現在この小説を同人誌にしようと校正をかけている最中ですが、なかなかこれが難しくて大変です。

追伸
感想、お待ちしております。

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