ヒビキが今いるのは第22層。
キリト達と別れてもうかなりの月日が経った。
ヒビキが何故22層に居るのかはあるクエストをクリアするために居る。
現在最前線は25層だが、22層にしかないクエストも当然存在する。
その中には全SAOプレイヤーを含め1回のみクリア可能というクエストもあった。
ヒビキはそれにたまたま当たり、クリアしようとしている。
クエスト内容は『森林エリアの中で一際大きい巨木の茸を採取して渡す』という物だった。
特に危険なモンスター等も出ず、すぐにクリアが出来た。
「目的の物取ってきましたよ」
「おお!そうか、ありがとう。礼と言っては何だがこれをお主に託そう」
クリア報酬は『錆びた剣』と呼ばれる所謂ゴミアイテムだった。
しかし錆びていて使えないだけであり、錆びを取れば使える可能性はあるが・・・今までも同じようなクエストが各層にもあって報酬も一緒なのだが錆びを取っても店売りやゴミ武器など散々なアイテムでありゴミアイテムと言われても仕方が無かった。
ヒビキもそれを見て「はぁ・・・」とため息を出すほど。
とりあえずヒビキはフードを被って日の光りを避けるように深く被った。
「とりあえず、宿に行くかな・・・」
ヒビキはひとまず圏内エリアへ入り、宿を探していると。
「ちょっと!止めてよね!」
広場にて大声を出す人が居た。
女の子を男が3人で囲んでいる状況だ。
自分であれば傍観するが今回は場合が場合だった。
何故なら女の子は良くしっているユウキだったから。
「良いじゃんかよ~、一緒に俺達と狩ろうぜ?」
「そうだそうだー、パーティーのが安全だから!」
「いやーだ!ボクはパーティーに入らないって言ってるでしょ!」
「へぇ~君ボクっ子なんだ~、可愛いね~」
とユウキが男3人に囲まれパーティーの勧誘がされていた。
もしユウキが喜んで参加していたら何とも思わなかっただろう。
しかし嫌がっているユウキを無理矢理パーティーに入れようとする行為にヒビキは苛立っていた。
そしてヒビキはユウキを助けるべく男3人に話しかけた。
「なぁ、嫌がってんじゃん、それぐらいにしとけよ」
「あぁ?別に嫌じゃないだろ?な?」
「入らないって言ってるじゃんか!」
「ほら、嫌がってる、なっさけねぇな無理矢理じゃないと誘えないなんて」
「何だとぉ?てめぇ、やるか?ここで」
そういうとリーダー格の男はヒビキに対してデュエルを申請した。
SAOでのデュエルは3種類ある。
《初撃決着モード》《半減決着モード》《完全決着モード》とある。
SAO内で良く使われるのは《初撃決着モード》だ。
残り二つはデスゲーム開始後、HPを0にする可能性が出るようになり使われなくなった。
ヒビキは《初撃決着モード》を選択したのち、デュエルに承諾する。
そして回りのプレイヤーは見物だと思い集まって来る。
「ふん、くそガキがいきがんじゃねぇぞ!」
「黙ってろ、能無しが」
3、2、1とデュエルが開始され、BattleStartと表示され、ヒビキは即効で動いた。
相手の使う武器は片手剣で自分と違うのは盾を持っていること。
ならば真っ正面からは戦うだけ無駄と判断し、ヒビキは隙を伺っていた。
「ほれほれ、どうしたぁ!避けてるだけじゃ終わらねぇぞ!」
と男は片手剣を振り回すもヒビキには掠りもせず、それに苛立っていた。
ヒビキの狙いは相手の判断力を劣らせる事。
苛立てばその分冷静な判断が出来なくなるのを利用し、最大の隙で一気に終わらせるつもりだった。
「しゃらくせぇ!これで沈めぇ!」
と大きく斜め振りかぶったそれは片手剣スキル《スラント》だった。
ヒビキはここが勝機だと思い、《スラント》を弾くべくヒビキは《レイジスパイク》を発動させて男のソードスキルを弾き返した。
そしてすかさず第二撃を男の足に攻撃してデュエルの決着をつけた。
「何だ・・・と・・・この俺が負ける?」
「冷静な判断力を失ったお前の負けだ、潔く認めとけ」
「くそっ・・・おい、おまえら行くぞ」
そういうと男達はどこかに立ち去った。
ヒビキもこれで大丈夫だろうと思い、立ち去ろうとするも。
「ねえ!待って!」
「・・・なんだ」
「その・・・助けてくれて、ありがとう!」
「阿呆か、助けたいから助けただけだ・・・じゃあな、ユウキ」
ヒビキはその場に居るのが気まずくなりすぐに路地に移動した。
ユウキは最後の言葉でポカーンとしていたが、すぐにヒビキだと気づくと追い掛けた・・・が、ヒビキが入っていった路地には誰もおらずヒビキは居なかった。
(ヒビキ・・・だよね?今の・・・。ボクの名前を知ってる人なんてまだそんなに居ないし・・・)
ユウキはまたヒビキに会えて嬉しかったが、共にどこかに行ってしまったヒビキにしょんぼりとした。
一方ヒビキは、ユウキからすぐに逃げた後、カグラの元に来ていた。
カグラはヒビキ専門の鍛冶屋となっていた。
少なくともNPCよりは良いため、武器などもカグラに頼っていた。
そして今回カグラの所に来た理由がさきのクエストで手に入った『錆びた剣』の錆び取りのために来ている。
「カグラ、この武器の錆び取り出来るか?」
「うん、出来るよ。素材ある?」
「あー・・・ちなみに何が必要なんだ?」
ヒビキは実は初めて錆びた剣を入手するため、必要な素材が分からなかった。
それにより素材が分からずカグラに必要素材を聞いている。
「宝石・・・みたい」
「・・・ちなみに何の宝石」
「ルビー、サファイア、エメラルド、トパーズ、アメジスト、ダイヤモンドが5コずつないと出来ない・・・かな」
「あー、あるからやってくれ・・・痛いが」
ヒビキは渋りつつもカグラに必要素材を渡した。
SAOでの宝石は入手手段があまりない。
それに結婚指輪を作るときには必要となるのが大量の宝石なのであまり使いたがらない者が多いがヒビキはソロプレイヤーであり素材は腐るほど持っている。
「ヒビキ!これみて!」
錆び取りが終わったのかカグラははしゃぎ気味でヒビキに見せる。
「ん?何々」
「ヒビキが持ってきた奴、多分当たりだよ!」
「えっ・・・マジで?」
「うん!待っててね、武器鑑定してみる」
カグラは早速錆び取りが終えた武器を《鑑定》スキルで武器の情報を見てみた。
「この武器は『ファンタジア』・・・英語でFantasia。和訳で幻想曲って意味だね。フィンランド語でファンタジーって意味もあるよ」
「へえ・・・性能は?」
「少なくとも魔剣クラスの性能かな?ヒビキが持ってる武器より全然強いと思うよ」
というとカグラはヒビキに武器を渡し、ヒビキにも見せた。
ヒビキはそれをアイテムストレージから出して実際に手に持った。
「そんなにも重くもなく、軽くもないな・・・良い武器だな、これ」
「ほんと?なら良かったぁ~」
「なんでそんな安堵してんの」
「だってゴミ武器が出たら私のところ使ってくれないと思って・・・」
「バーカ、ずっと武具点検はお前にやらせてんだ、そんな程度で来なくなるわけないだろ」
とヒビキは言ってカグラの頭を撫でた。
カグラもその言葉を聞いて嬉しいのかニコニコしており、頭を撫でられて猫みたいになっている。
「んふ~、これからもご贔屓にね?ヒビキ」
「あいよ~、んじゃ俺はもう行くぞ」
「うん、頑張って来てね」
カグラから応援も貰ったヒビキは新たな武器『ファンタジア』を装備し、試し切りをしようと迷宮区に向かった。
しかしその道中、また見知った少女を見た。
ヒビキはユウキに見つかる前に早歩きをして25層の迷宮区に向かった。