ソードアート・オンライン ~幻剣と絶剣~   作:紅風車

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約束した楽しみは突然に

クリスマスから二日後。

響夜は冬休みを満喫していたとき、木綿季とあることを約束していたのを思いだした。

 

「なあ、木綿季」

 

「ん~?どうしたの?」

 

「デート・・・しようか」

 

「ふぇっ!?」

 

木綿季は唐突に言われ変な声を出してしまう。

 

「明日にしようか、もうすぐ大晦日で忙しくなるからな」

 

「う、うん」

 

「んじゃ、今日はもう寝る。明日忙しくなるからな」

 

「分かった~、おやすみ響夜」

 

「ん・・・おやすみ木綿季」

 

先に響夜が寝てしまい木綿季は暇になる。

だが明日のデートで木綿季はどうするか悩む事となる。

 

「う~・・・どうしよう・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

木綿季が目を開けると時間は11時。

昨日は緊張してあまり寝れていなかったため、長く寝ていた。

そして隣を見ると響夜の姿がない。

 

「んう・・・もう行っちゃったのかな・・・」

 

木綿季はベッドから出て洗面所へと向かうと顔を洗った。

鏡にはボサッとした紺色の長い髪が写されている。

蛇口を捻って水を出すとそのまま顔を洗う。

 

「わぷ・・・ぷはぁ・・・」

 

 

「よしっ」

 

ささっと洗うと部屋に戻って響夜から間借りしたタンスから着ていく服を探す。

 

「ん~と・・・これかなあ・・・」

 

着ていく服を選んで、着ると上から厚めのコートとマフラーも着た。

 

「これで良いかな・・・」

 

カバンに持って行く物を入れて、部屋の電気を消すと神楽の部屋に入った。

中は暗く、カーテンは閉めきっていた。

 

「ん・・・ねぇね。どうしたの?」

 

「響夜と少し遊んでくるね」

 

「ん・・・デート楽しんでね。場所は時計台公園だから」

 

「あう・・・うん・・・」

 

「行ってらっしゃい」

 

家の事を神楽に任せると木綿季は家を出る。

待ち合わせは時計台の公園となっているので、そこまで歩いていく。

 

「ん~・・・」

 

木綿季がこうして一人で家を出て歩くのは久しぶりだったりする。

普段は響夜と一緒なので新鮮でもあった。

なぜ響夜が一緒にいようとしたのかはすぐに分かってしまうが。

 

「おーい、そこのお嬢ちゃんー」

 

「んう?」

 

「君、一人?もし暇なら俺と一緒に遊ばない?」

 

「あ~・・・えっと~・・・」

 

「お願い!もしでいいからさ!」

 

響夜が危惧するのは木綿季がぱっと見で可愛いということ。

それゆえにナンパ系が多くなるのだ。

 

「ごめんなさい!ボク待ち合わせしてるんです」

 

「待ち合わせの人って女の子?それならその子も一緒で良いよ!」

 

「と、とりあえずごめんなさい!」

 

木綿季はナンパ男から逃げるように時計台公園へと急ぐ。

しかしどうしても木綿季を誘いたいのかナンパ男は木綿季に付き纏う。

 

「ねぇねぇ!」

 

「あ~う~・・・」

 

「君って名前何て言うの?教えてよ!」

 

木綿季の走る速度は段々早くなる。

奥に時計台が見えてきて響夜が待っていた。

 

「ん・・・誰だ、あいつ」

 

すると時計台公園にいる響夜に見つけてもらえたのか木綿季はほっとする。

 

「ねぇってば!教えてくれても良いじゃんかぁ~」

 

「おーい、何してんだー」

 

「響夜!助けて!」

 

「・・・あ?」

 

響夜はナンパ男を睨みつける。

珍しく前髪をあげているため、鋭い眼光がナンパ男を襲う。

 

「お、お前!俺の獲物に~!」

 

「獲物とか知らん。こいつは俺の彼女なんだが・・・なんか文句でもあんのか?」

 

「お、覚えてろー!」

 

下っ端台詞を吐いてナンパ男は走り去っていく。

木綿季もそれを見て安心したが、響夜に抱き着いている状態だった。

 

「・・・木綿季さん、周りの目があるんでそろそろ・・・」

 

「え?・・・あ・・・」

 

公園ということもあり、周りはカップルや子供が沢山いた。

響夜は抱き着かれて嬉しいが周りの目があって恥ずかしいので木綿季を離して手を繋いだ。

 

「これで良いだろ?」

 

「うん!」

 

「そんじゃ行くぞ。木綿季」

 

「は~い!」

 

少し変な事が起きたが難無く木綿季と響夜のデートが始まった。

響夜はある程度考えて行動するが、今回はいきあたりばったり。

つまりは考えなしで動くことにしている。

なぜならば木綿季は高級店などはあまり好きではない。

その点を考えて適当に回って行く方が木綿季としても楽しいと考えた。

 

「さて、木綿季。俺は考えなしで動くわけだが・・・どこか行きたいとこはあるか?」

 

「えっと~・・・行きたいとこあったけど思い出せない・・・」

 

「ん、そうか。んじゃまずはご飯食べるか」

 

「分かったー」

 

12時で一度お昼ご飯を先に食べることにして、近くのファミレスに寄った。

 

「いらっしゃいませ、人数は二名様ですか?」

 

「はい、そうです」

 

「分かりました、それではこちらに」

 

スタッフに案内され、テーブルに座るとすぐに注文を入れる。

 

「お客様、ご注文はございますか?」

 

「俺は炭焼きハンバーグとグラタンで。飲み物はホットミルクティーで」

 

「ボクは・・・ドリアとシチューで。飲み物はこの人同じで良いです」

 

「かしこまりました。以上でよろしいですか?」

 

「はい」

 

「では、失礼します」

 

注文を済ませると木綿季はテーブルに頭を乗っける。

 

「おにゃかすいたぁ~・・・」

 

「今頼んだろ・・・まぁここの料理は量があるから木綿季でも満足出来ると思うぞ」

 

「ホント!?やったー!」

 

「餓鬼かよ・・・」

 

ご飯にここまで喜ぶ者など木綿季ぐらいだろう。

それほどまでに木綿季は食べることが好きなのだ。

少し待つと注文した料理がやってきた。

量がかなり多く、普通の大きさの数倍はある。

 

「すごい・・・!」

 

「ここは値段の割に量があってお腹が膨れるんだよ。木綿季にもちょうど良いと思ってな」

 

「いっぱいだ~!んじゃいただきまーす」

 

「おう。いただきます」

 

響夜は食べる速度が早く、木綿季よりすぐに食べきったがお腹がパンパンだった。

しかし木綿季はまだ食べていた。

響夜より量が多かったようだ。

 

「美味しいか?」

 

「うん!でも・・・響夜のご飯のがもっと美味しいよ!」

 

「・・・ありがと」

 

響夜は幸せそうに食べる木綿季をずっと見ておく事にした。

ここまで嬉しそうに食べてもらえれば料理人としても嬉しいかぎりなのだろう。

作ったのはファミレスのシェフだが。

 

 

 

 

 

ファミレスを出て、次に二人が向かったのはゲームセンター。

木綿季の希望によるもので、とりあえず行くこととなった。

 

「そういや木綿季ってこういうの出来んの?」

 

「・・・で、出来るよ?」

 

「ならやってみるか?お金は入れてやるから」

 

「じゃあ・・・やってみるね」

 

木綿季が選んだのはUFOキャッチャー。

響夜がお金を入れると木綿季が操作をする。

だが木綿季はゲーセン類のゲームをあまりやったことがないため、苦手だった。

響夜はあえて木綿季にやらせている。

 

「あっ!・・・あ・・・」

 

「惜しいな。後すこしだったのに」

 

「う~・・・」

 

後すこしで取れそうだったが仮にもゲーセンのゲームは景品が取りにくくされている。

木綿季は頑張っていたが、やはり難しいのだ。

 

「あれが欲しいんだろ?取ってやるから見てな」

 

響夜は昔の友人と良くゲーセンで遊んでいた。

その時の勘を頼りに木綿季がとろうとしたぬいぐるみを取る。

そして追加で百円を入れると木綿季が神楽にあげた真ん丸白オバケに王冠がついた物を掴み、景品取り出し口に放り込む。

 

「昔ゲーセンは良く行ってたからな。なれてる」

 

「う~・・・ボクが取りたかったなぁ~」

 

「初心者でも上手い方だぞ。まず掴むのが難しいからな」

 

響夜はぬいぐるみ二つを取ると木綿季に渡した。

内一個は神楽用に。

 

「ほれ、木綿季が取りたかった奴だろ?」

 

「うん・・・ありがとう」

 

「そう落ち込むなっての。まだまだあんだから他のゲームで俺より取ってみな」

 

「む~・・・分かった」

 

「よし!んじゃ次行くぞ!」

 

「わわっ、待ってー!」

 

響夜は木綿季とどれだけ景品が取れるか勝負することにした。

結果的には木綿季が勝ったのだが、響夜のは誰かにあげるような物ばかり。

もっぱら神楽にあげるものばかり取っていたが、木綿季にもあげるのはあった。

 

「響夜の方は・・・ぬいぐるみ過多じゃない?」

 

「そういうお前はお菓子取りすぎだろ・・・」

 

響夜は大量のぬいぐるみやゲーム箱。

木綿季は袋沢山に入ったお菓子が詰まっていた。

 

「・・・さて、そろそろ時間やばいし帰るか」

 

「もうそんな時間?」

 

「俺達このゲーセンで数時間は潰してる。今18時だぞ」

 

木綿季は自分の携帯を見ると、表示された自分は18時20分。

家には神楽がいるため、晩御飯を作ることも考えて19時前後には帰っておきたいのだろう。

 

「もうちょっと遊びたかったなぁ・・・」

 

「・・・そういや・・・あれ撮ってねぇな」

 

「なにを?」

 

「プリクラ撮るか?お前が良ければだけど」

 

「撮る!一緒に写ろ!」

 

「はいはい・・・」

 

ゲーセンで大多数の人が入るであろうプリクラに響夜は向かう。

機種は木綿季に任せて、荷物を一度置くと撮影場所に入った。

 

『準備が出来たら画面をタッチ!』

 

「準備良い?」

 

「良いぞ」

 

木綿季は画面にタッチして設定をする。

この辺は木綿季のが詳しいので響夜はノータッチ。

 

『それでは撮影を始めるよ!まずはお互いに写ろう!』

 

「響夜・・・手繋いで?」

 

「どうぞ、ご自由に。お嬢様」

 

木綿季は響夜と手を繋いで、抱き着いた。

それに響夜は驚くも仕返しとばかりに木綿季を抱き寄せて左手を繋がせて右手で抱き寄せている。

 

「きょ、響夜?」

 

「こうしろ」

 

「ふ、ふぇ?」

 

形としては響夜が抱き着いたようになり、そのまま一つ目が撮影。

そこからは響夜が主導権を握って木綿季を弄び、撮影が終わる。

 

「うにゅう~・・・」

 

「いやー、清々しいわ~」

 

「なんだか力を吸われた気分」

 

木綿季は疲れ果てているが響夜はキラキラしていた。

まるで響夜に何かを吸い取られたように。

 

「編集は木綿季が好きにして良いぞ。終わるまで外で待ってる」

 

「・・・側に居てね?」

 

「すぐそこにいるから安心しろ」

 

「じゃあやってくるー」

 

木綿季に編集を任せて響夜は外の椅子で木綿季を待つことにした。

響夜も出来るがそこは木綿季に任せる方が良いと思っての事。

木綿季を待っていると奥から女子高生が数名出てくる。

それは悪い意味で響夜が知っていた。

 

「あれ?時崎か?」

 

「・・・人違いだろう」

 

「いやその雰囲気・・・時崎だろ!」

 

「名字違うけどな。で、何の用だよ」

 

「お前・・・そんな喋り方だったか?」

 

「うっせぇ」

 

「んで時崎。お前今暇か?」

 

「悪いが暇じゃない。人待ちだ」

 

「へぇ・・・彼女でもいんの?」

 

「だったらどうする?」

 

「お前に彼女か・・・なんか良いじゃん」

 

響夜は知らなかったが、この女子高生も響夜に好意を抱いていた。

だが自分と響夜が釣り合わないとわかっていたのか言わなかったのかもしれない。

 

「響夜ー、出来たよー」

 

「ん・・・出来たか。で、お前らはどうすんの?」

 

「デートの邪魔をしたくないからあたしはこのままどこか行くよ」

 

「ん、そうか」

 

「・・・またな」

 

「・・・おう」

 

女子高生達と別れると編集スペースに入って、現像される写真を受けとった。

 

「ど、どうかな?」

 

「・・・へぇ。良いじゃん。俺はこういうの苦手だから嬉しいよ」

 

「やったぁ~」

 

「そろそろ時間だし、帰ろうか」

 

「うん!」

 

響夜は写真をカバンに入れると荷物を持ち上げる。

片手が空いていたので木綿季の手を繋ぐ。

 

「ねー、さっき誰かと喋ってたの?」

 

「ん?あ~、昔の知り合いだ。久々に会ったからな」

 

「ほぇ~」

 

「さて、帰るぞ。家に神楽がお腹をすかせて待ってんだ」

 

「うん!」

 

木綿季は嬉しそうにしながら響夜と一緒に家に帰った。

響夜はこっそりと黒い小さな箱を木綿季のポケットに忍ばせていたが。

 

 

 

それを遠くから先程の女子高生が見ていた。

 

「・・・あれは・・・紺野か・・・なんだ、あの二人だったんだな」

 

 

「・・・幸せになってよ。二人とも」

 

想い人にお似合いだった相手を見て涙を流すも、体を180度回転して響夜達とは逆方向へと歩いて行った。

 

 




はい、デート回でした。
内容?そもそも薄い内容ばかり書く作者には縁のない話ですね。
響夜がこっそりと入れた謎の箱・・・なんでしょうか、キニナルナー。

女子高生は直人に好意を抱いていた一人でした。
やはり名前が変わろうと雰囲気までは変わらない・・・のでしょうね。

木綿季はナンパとかかなり苦手です。
将来の相手がいるので響夜以外には男には興味が余りありません。
響夜も同様ですが。


次回は何を書きましょうか、詰まりかけです。
もう少し日常を続けてから次なる舞台に入りたいんですよね。
希望がもしあれば作者の技術次第で書く・・・かもです。

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