特別支援学校。
これが響夜や木綿季、明日奈、和人などSAO被害者が通う学校だが家庭的な事情などの理由で学校に通うことが難しい者にも入学が許可されている。
当然、学校であるためテストはあるのだが・・・。
「・・・眠い」
「寝てばっかじゃテストの点取れないよ~?」
「だって習ったとこ聞いてもなぁ」
「響夜って高校卒業してるんだっけ・・・」
「和人や明日奈に聞いたんだよ、俺が居ないからか木綿季が寂しそうにしてるって」
「あぅ・・・」
「高校修了証は貰ってるがSAO被害者を利用して入学した。木綿季に会えるし、暇ではなくなるしで都合よかったしな」
「そっかぁ・・・」
「まぁ、そんなに気になるなら明日奈の期末テストの点数で競ってもいい。確か明日奈って学年トップだろ?」
「うん、すっごく頭良いんだよ~」
「よし、まずはその頂点から引きずり落とす」
「あはは・・・」
そんな会話が教室の隅で交わされていた。
明日奈には聞こえていなかったがどこか寒気がしたという。
「明日奈、どうかした?」
「ううん、何でもないよ。ただ寒気がしただけ」
「そうか、なら良いけど」
昼休みの時間になり、響夜と木綿季が弁当を食べていた。
神楽は家で引きこもっているため登校していない。
「さて・・・木綿季は勉強するのか?」
「うん、じゃないとボク馬鹿だから・・・」
「木綿季の為なら教えてやっても良いけど」
「うーん・・・じゃあお願いして良いかな?」
「条件付きでな?」
「ふぇ!?」
まさかの条件付きと思わなかった木綿季は変な声を出してしまう。
響夜もニヤニヤと悪い顔を浮かべていた。
「木綿季が全学級中10位以内の成績が取れたらデートにでも連れていってやろうか?」
響夜がデートと言った瞬間、木綿季の中で何かが弾ける。
「取れなかったら・・・?」
「お泊り禁止」
「やぁぁだぁぁぁぁぁ!」
「後々の事を考えても成績は良い方がいい。特にお前は下手すると和人にすら負けるらしいじゃねぇか。俺と同じ・・・とは言わんから10位以内には入ってみろ」
「うぅ・・・分かった・・・」
「あと、テストが終わって点数が公開されるまではお泊り禁止だ。これは裕子さんにも承諾してもらってる」
「うぇぇ・・・」
「俺の家に来ても中には入れてやらんからな。それが嫌なら頑張って良い成績を取りな」
「分かった・・・」
「取れたら・・・そうだな、デート以外にも考えておくか」
「頑張る!」
響夜の言い方に乗せられた木綿季はまんまと引っ掛かる。
響夜自身は別に構わないが木綿季の将来を考えると成績は重要なのでお泊りをしにくる暇があれば勉強させることにしたのだ。
「んじゃ俺は寝転がって来るから。テスト終わるまでイチャイチャも禁止だかんな」
「ふぇぇ・・・」
「終わったら思う存分していいからな」
「うん・・・」
木綿季はその日から必死に勉強することになった。
各教科のスペシャリスト・・・明日奈、和人、珪子、里香などにも協力してもらうこととなった。
「ねえ木綿季。響夜は?」
「響夜なら屋上だと思うよ。寝転がってくるって言ってたから」
「木綿季を置いて何してるのかしらね・・・?」
「ボクのためだから怒らないであげて?」
木綿季に言われ里香は響夜に対する怒りを静めると木綿季の問題を見ていく。
所々間違ってはいるが壊滅的ではなかったのが救いだった。
すると木綿季の携帯が振動する。
「ん・・・?あ、お母さんからだ・・・もしもし?」
『木綿季?今何をしてるの?』
「学校だけど・・・」
『響夜君が言ってきたわよ?木綿季のテストが終わるまで家に泊まらせないって』
「全学級中10位以内が条件って言われたよ、だから今勉強してる」
『響夜君の家には行っては駄目よ?彼が木綿季の為にしてくれているんだから』
「うん・・・」
『それじゃあね、勉強頑張りなさい』
木綿季は電話を切ると一度体を伸ばす。
そしてまたやる気を出して勉強に励んだ。
明日奈達も余裕があれば教えていたため躓く部分がほとんど無かった。
「ここも正解。さすがだね木綿季は」
「ふふん、頑張って響夜を見返すんだぁ~」
「ならもっと勉強しないとですね」
「う・・・が、頑張るよ」
こんな光景がテストの日まで続くのだろうと思うと木綿季は少しげんなりする。
その間にも響夜は屋上で高校の教科書でテストの範囲を何回も見返していた。
「ここと・・・ここも重要か。後は・・・」
ノートにテストで出されそうな問題や、単語を書いていく。
また、過去問なども漁って問題を絞っていく。
「ん、とりあえずはこれで良いか」
響夜は持参していたノートパソコンにノートに纏めた内容を打ち込んでいく。
問題も自分なりに考えて、最低限のヒントだけを残していく。
響夜が作っているのはテスト前日に木綿季に渡す予想問題集だった。
一度高校を修了している響夜は自分の経験で出てきた問題も一応入れていく。
授業中寝ているがそれは事前にある程度分かっているのと予習をしていることが大きかった。
「さて、問題集は出来たし前日にこれを渡すか」
解答用紙もしっかり作り、答えの紙も作成する。
この様子を見ているとただの教師である。
「・・・ねむ」
響夜は眠気をなんとか散らすと詩乃の事が気になった。
一応高校を中退し、この支援学校に来ることが決まっている。
だが日程的にテストが終わってからでないといけないためそれまで詩乃は響夜の家で寛いでいる。
「帰りにケーキでも買っていくか。神楽も食べたいだろうし」
学校が終わってからの事を考えつつ、問題集作成を終えると時間はもうすぐ授業が始まる時間だった。
「戻るか」
響夜はノートパソコンとノート、教科書などをかばんに入れると自教室へと戻って行った。
教室へと戻ると木綿季の席の周りには明日奈達が勉強を教えていた。
「ん、まだやってたのか」
「響夜!あんた何してたの!」
「うるせぇっての・・・木綿季そこ違うぞ」
「へ?でも明日奈が合ってるって・・・」
「いや・・・そういう意味じゃなくて答えの記号が無い」
指摘された問題を見返した木綿季は急いで答えに記号を書いた。
響夜もかばんを机にかけると腕を枕にして寝始める。
「響夜君、木綿季に勉強教えてあげないの?」
「俺の勉強方法じゃ確実に木綿季は覚えれん。ていうか常人離れしてるらしいから明日奈達とかが教えてあげたのが全然覚えれる」
「ちなみにどんな方法なの?」
「テスト範囲の教科書を開いて流し読みしてるだけ。それだけで単語系は覚えれるから計算系とかは実際に計算するけどな」
響夜の勉強方法を聞いて明日奈や和人達は苦笑いする。
確かに流し読みする人の勉強方法は相手を選ぶ物だったため教えれない理由もなんとなく察したのだった。
「一応お前らにもやってほしい問題あるからそれを前日にでも渡すよ。木綿季は絶対やっとけ、テスト問題ほとんど予想しまくったから」
「うん、分かった」
「問題?」
「俺が過去問、教科書の範囲、プリントなどで先生が重要部分にしてるのを全て問題にした。それやってみてほしいんだよ」
響夜が出す問題集に興味があるのか全員頷く。
それを見聞きすると響夜は本格的に寝始めた。
「・・・木綿季、絶対に10位以内入りなさいよ」
「そうだよ、響夜君の為に」
「うん!絶対に入ってみせるよ!」
木綿季の運命・・・?が決まる期末テストまで残り一週間。