僕とテストとAクラスのあの娘   作:KuromeBright

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祝!連載一周年!(と言っても一周年の日はとっくに過ぎてる)

この作品を書き始めて早一年。自己満で書き始めたこの作品も気づけば多くの読者様に支えられていました。作者は相変わらずの駄文で更新もガバガバですが、これからも作者とこの作品をどうぞよろしくお願い致しますm(_ _)m

そして!一周年を迎えた今回は遂に如月ハイランド編最終回!作者、今回冗談抜きで砂糖を吐きかけました(笑)書いてる側なので自分なりのイメージで楽しめるってのもあるんですけどね。駄文ですが皆様にもこの気持ちが伝わってほしいと切に願います(笑)

それではどうぞ!


互いの気持ち

明久side

「ねえねえ、おかしくな〜い?」

 

突然聞こえた客席からの声。そこにいたのは今日やたらと縁があるチャラいカップルだった

 

「アタシらも結婚するんだけど〜、そんな高校生なんかよりもアタシらがやった方がよくな〜い?」

 

「そうだな、おい司会、俺らが代わりにやってやるよ」

 

《いえ、これは特別なサービスですので・・・》

 

「あぁ!?俺達がやってやるって言ってんだよ!こっちはオキャクサマだぞコルァ!?」

 

《あっ、ちょっと!》

 

司会のマイクを無理やりひったくるったく、何なんださっきから好き放題に

 

「それじゃ〜、アタシらが最後の問題出すから〜、それに正解出来たらアイツらの勝ち。外したらアタシらの勝ちってことで〜」

 

やりたい放題だな・・・待てよ、アイツらは気に食わないけどこれは問題を間違えられるチャンスなんじゃ?司会が変われば八百長は出来ない。ここは乗るべきか

 

「んじゃ問題だ。聞けやコラ!」

 

さぁ、どんな問題だ!?

 

「ヨーロッパの首都はどこだ?」

 

「「「・・・・・・」」」

 

「んだ?分からねぇのか?」ニヤニヤ

 

まぁ、分からないと言えば分からない。僕の記憶が正しければヨーロッパは国というカテゴリーでは無いはずだ。問題がそもそも不正解なのでその回答に正解も不正解もありゃしない

 

《・・・吉井さん、佐藤さん、おめでとうございます。お二人には最高級ウェディングプランを提供させていただきます》

 

「はぁ!コイツら問題に答えられなかったじゃねぇか!」

 

「この司会者バカなんじゃない!?」

 

Fクラスよりもバカな奴がいるなんて、世の中は広いなー

 

「それでは吉井さん、こちらに。佐藤さんはあちらの女生スタッフに同行してください」

 

僕と美穂さんはそれぞれ別の場所に案内され、式の準備に取り掛かった。用意されていたのはいかにも高級感のあるタキシード。着心地がよく、動き難いということも無い、っていうかサイズまでピッタリなのは何でさ。見た感じ数を用意してるわけでも無さそうだし・・・さっきのクイズ、というよりも今日1日のことを考えると予め僕達用に作られてた?いやでもそんな情報どこで・・・学園長(ババア)か!?あの妖怪め、僕達があのチケットを回収すると分かった段階で既に手を打ってたのか。となるここのプラン、学園長に乗せられてるみたいでいやだな、うん。会社の陰謀よりもあの人に乗せられてる事の方がムカつく

 

「吉井さん、彼女様も準備が整ったようです。そろそろ参りましょうか」

 

明久「え?あ、はいわかりました」

 

学園長に対するあれこれを考えてるうちに向こうも準備が出来たらしい

 

《お二人の準備が整ったようなので式を始めさせていただきます。まずは新郎、吉井明久さん、どうぞ!》

 

「さ、吉井さん、ステージへ」

 

「はいはいっと・・・す、すごい・・・!」

 

ステージへ上がるとそこはさっきまでのクイズ会場とはまるで別物だった。足元は一面スモークで覆われ、大量のバルーンとスポットライト、観客席も先程までとは違ってライブ会場のようになってる。力を入れてる企画なのは知ってたけどここまで豪華だとは・・・実際に式を上げたらいくらかかるんだこれ

 

《それでは新郎のプロフィール紹介を・・・》

 

そんなところまでこだわってるの!?ていうか僕のプロフィールなんか何処から仕入れて・・・また学園長か?それともスタッフに紛れてるお節介?達の誰かかな?

 

《体験版ですし面倒くさいので省略します》

 

流石に手抜き過ぎない?

 

「ま、そんなのどーでもいいわな」

 

「問題はアタシらが使えるかどうかだもんね~」

 

アイツらまだいたのか、しかも最前列に。ハッキリ言って迷惑だしいなくなってくれたほうがありがたい

 

《・・・他のお客様のご迷惑になりますので私語はお控えください》

 

「何?アタシらのこと?」

 

「まさか、俺らはオキャクサマだぜ?それに俺らがどう思うかが一番大事じゃね?」

 

「うんうん!リュータいいこと言うね!」

 

 

司会がやんわりと注意してもバカップルにはまるで効いてない。周りはイラつきを通り越して呆れ返ってるし、司会も諦めてる。宣伝目的がある以上揉め事を起こすわけにもいかないだろうし下手に強く出れないのだろう

 

《・・・それでは、いよいよ新婦の登場です!》

 

バカップルを遮るように少し音量を上げてアナウンスの言葉が終わると同時に、会場内のスポットが全て消えてスモークが一層濃くなる。ここまできて否応なしに緊張してきた。ドレスを着た美穂さんが出てくる。そう考えただけで心臓がバクバクしてる。様々な緊張に襲われる中いよいよその時が来た

 

《本イベントの主役、佐藤美穂さんです!》

 

一斉に輝きだすスポットライト、余りの眩しさに一瞬目を瞑ってしまう。そして再び目を開けると、そこには純白のウェディングドレスを纏った、普段とはまるで違う雰囲気の美穂さんが立っていた

 

明久「・・・・・・」

 

美穂「・・・・・・」

 

お互い、いつもとは全く違う姿の相手を見て言葉をなくし、ただお互いを見つめている

 

「・・・綺麗」

 

そんな中、ふと客席から零れた一言で僕は我に返った。僕のタキシード同様、美穂さんに合わせて作られているであろうドレスは皴一つなく、裾がギリギリ地面と擦れない高さになっており、ドレスとヴェールに隠された美穂さんはとても神秘的に見えた

 

美穂「あ、明久さん。私、その・・・似合ってますか?」

 

自信なさそうに尋ねる美穂さんの体は緊張からか少し震えていた

 

明久「・・・うん。とってもよく似合ってる、綺麗だよ」

 

美穂「!?・・・そう、ですか。よかったです///」

 

言った僕自身顔が熱くなってしまった。美穂さんも顔を赤らめて俯いている

 

美穂「・・・私、怖かったんです」

 

明久「?」

 

美穂「なんとなく感じてたんです。明久さんはまだ完全には心を開いてくれてないって」

 

明久「っ!?」

 

美穂「二人でいろんなことをして、たくさんの時間を過ごして、初めて会った時よりも明るくなった明久さんを見て、私は明久さんの側にいるんだって思ってました。・・・でも、最近気づいたんです。まだ私たちの間に距離があるって。明久さんはいつも笑顔でしたけど心の奥底ではまだ今の生活に躊躇いがある、そう感じました・・・それが私には怖かったんです。今のままじゃまた前のような明久さん戻っちゃうんじゃないかって。私の大好きな明久さんがどっか言っちゃうんじゃないかって――――」

 

そうか、美穂さんはそこまで僕のことを・・・

 

美穂「だから私、今回の件を学園長から聞いたときすごく嬉しかったんです。一生の思い出になるようなイベントなら少しでも明久さんとの距離を埋められるんじゃないかって。私の気持ちを全部ぶつけられるんじゃないかって。私は明久さんのこと、大好きなままでいたい、明久さんにも、同じように思っていてほしい。だから、だから・・・!」

 

今にも泣き出しそうな声で途切れ途切れに自分の思いを伝えてくる。美穂さんがここまで本心でぶつかってきているのに僕は未だにためらっている、恐れている。それでも伝えなきゃいけないことはある!

 

明久「・・・美穂さん。僕は――――」

 

「あーあ、つまんな~い!」

 

答えようとしたところで客席か大きな声が上がる。またあのバカップルだった

 

「そんなどうでもいい話聞きに来たわけじゃないんだけど~、さっさと演出だけみせてよ~」

 

「そうそう、お前らのことなんてどうでもいいっての」

 

「てゆーか、さっきからなんなの?訳わかんないことばっかいってさー。台本でも用意されてたのー?」

 

「まじかよ、それはウケるわー」

 

「純愛ごっこするならよそでやってよねー。そんなの見るために時間割いてるんじゃないんですけど?アンタバカなの?」

 

口々に文句を言い始める馬鹿二人、当然ここまで迷惑な奴らがいれば我慢できない人が出てくる

 

《なんですって!?さっきから好き放題してくれて、アンタら表出なさい!》

 

《ちょ、ダメだよ優子落ち着いて!》

 

《事情も知らない奴らにあんなこと言われて落ち着いてられるわけないでしょ!?》

 

堪忍袋の緒が切れた優子さんがカップルに食って掛かる。一方で僕は優子さん達と違って驚くほど冷静だった。状況整理のためまず声のした方へ顔を向ける。それがいけなかった

 

《あれ、花嫁さん?花嫁さんはどちらに?》

 

ほんの一瞬、目を離した隙に美穂さんはステージから消えていた。代わりにそこには先程まで身に着けていたブーケとヴェールが落ちていた

 

明久「・・・・・・。」

 

《吉井さん!吉井さんも一緒に探してください!》

 

明久「・・・ごめん、僕はこの後用事あるからパスで」

 

優子「ちょっと明久くん!?アンタ何言ってんの!美穂がいなくなったのよ?」

 

こんな事態になってしまい隠すことをやめた優子さんが食って掛かってくる

 

翔子「優子、行かせてあげて」

 

優子「翔子?なんでよ!」

 

翔子「大丈夫だから。吉井・・・気を付けて」

 

翔子さんには僕の用事が何なのかバレてるっぽいな

 

明久「ありがとう翔子さん、じゃ」

 

優子「あ、ちょっと!」

 

まだ納得の言っていない優子さんに申し訳ないと思いながら僕は外へと駆け出す。急いで片付けないともう一つの用事が間に合わなくなるな。

 

明久「さて『アイツら』は・・・あそこか」

 

辺りをぐるっと見渡すと思いのほか早く一つ目の目標を見つけられた

 

「さっきのやつマジで面白かったねー!」

 

「それな!流石にあれは勘弁だわー。まったく、貴重な時間を無駄にしちまったぜ!」

 

そんな会話が聞こえてきた。そうか、あれだけのことをしておきながらアイツらは何とも思ってないんだ・・・それなら僕も気兼ねなくやれる。さっさと済ませよう

 

明久「そこのカップルさん、ちょっといいかな?」

 

「ん?ねぇリュータ、コイツさっきの男じゃない?」

 

「だな。んで、その新郎サマが俺らになんのようだ、あ?」

 

バカどもがバカ面で詰め寄ってくる

 

明久「大した用じゃないんだけど、さ――――」

 

一拍の間を置いて、とびきりの笑顔で言う

 

明久「――――ちょっとそこまで、ツラ貸してもらうよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明久「待ってたよ」

 

美穂「明久さん・・・」

 

如月ハイランドの出口で待っているとかなり気落ちした様子の美穂さんが来た。俯いた顔の隙間から見えた目元は少し赤かった

 

明久「・・・帰ろうか」

 

僕が歩きだすと美穂さんは黙って後をついてきた。夕焼けに染まる川辺を駅に向かって、ただ黙々と歩き続ける

 

美穂「・・・明久さん」

 

明久「・・・何?」

 

 

美穂「私の思いって、ああやって笑われる程度のものだったんでしょうか」

 

バカップルに笑い飛ばされたことをずっと引きずっていたらしい。立ち止まった美穂さんの体は小さく震えていて今にも泣きだしそうだった

 

明久「美穂さん・・・ゴメン」

 

美穂「え?」

 

明久「僕は美穂さんの気持ちがおかしいとは思わない。笑いたい奴は笑わせておけばいい。ただ、美穂さんが笑われる原因を作ったのは間違いなく僕だ。僕が美穂さんにあんな風に思わせてしまっていたのが悪かったんだ。本当にゴメン」

 

深々と頭を下げる。そう、これは僕の問題だ。周りを、美穂さんを信じ切れず、前に進もうとしなかった僕が招いた出来事だ。美穂さんにはもうあんな思いをさせたくない。そのためにも僕は美穂さんの気持ちに答えなければならない

 

明久「美穂さんの言った通り、僕はまだ今の生活に躊躇いを感じてる。別に美穂さんのことが嫌いだとかそういうことじゃない。まだ怖いんだ、また大事な人を失ったら今度はどうなってしまうんだろうって」

 

そう、僕はまだ恐れている。今の満たされた生活を

 

明久「美穂さんといると毎日が楽しくて、幸せで・・・もっと美穂さんの近くにいたいと思った。でもそれが逆に怖かったんだ。あの日、君が僕を救ってくれた時、僕は前に進もうと決めた、誓った。でも無理だった。結局前には進めず、幸せを感じる度に過去が僕を締め付けて、そこから抜け出せなかった。家族の次は君を失うかもしれない。君が僕の中で大切な存在になればなる程、失った時が怖かった。だから僕は心のどこかで避けようとしていたんだと思う」

 

美穂「・・・・・・」

 

明久「ゴメンね。僕は弱い人間だ。過去を受け止めて前に進もうとしたのに、結局まだ引きずられたままの臆病なやつ。アハハ、情けないよね」

 

自分で言いながらその情けなさに涙がでてくる

 

美穂「・・・明久さん「でも、」?」

 

明久「僕は美穂さんにそんな思いをさせたまま終わりたくない。僕にもう一度チャンスをくれないかな?美穂さんが救ってくれた僕の全てを、今度は君のために使いたいんだ。多分しばらくは迷惑かけちゃうと思うけど、僕は君と一緒に歩いていきたい。この気持ちに嘘はない。だから――――」

 

美穂さんに〇〇〇〇をかけて僕は、一世一代の大勝負に出る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美穂side

明久さんは自分の中にため込んでいたものを全て話してくれた。私が明久さんを思っていたのと同じくらい、いえ、それ以上に明久さんはわたしの事を思ってくれていた。思っていたからこそ私との距離感に葛藤していたんだとわかった。悩んでいたのは私だけじゃない、明久さんも同じだった

 

明久「僕は君と一緒に歩いていきたい。だから――――」

 

そう聞こえた瞬間、私はハッとした。気づくと私の頭に何かが乗っかっていた。これは・・・ヴェール?

 

明久「せっかくの体験だったんだからそれぐらい貰っておきなよ。それとさ」

 

次の明久さんのセリフが自然と頭に浮かんだ

 

明久「さっきの続き、やってもいいかな?」

 

予想通りの言葉が明久さんの口から紡がれた。そんなの、断る理由がないじゃないですか。私はコクンとうなづく

 

明久「ありがとう。それじゃ・・・僕、吉井明久は美穂さんと苦楽を共にし、生涯愛することを誓います。美穂さんは、僕を生涯愛し続けると誓ってくれますか?」

 

考えるまでもなく決まっている言葉をただ一言返す

 

美穂「はい、誓います」

 

明久「・・・それでは、誓いのキスを」

 

美穂「はい」

 

明久さんは優しい手つきでゆっくりとヴェールをめくりあげて

 

「「ん・・・」」

 

相手を包み込むようにそっと唇を重ねる。軽く触れる様な、とても優しいキス

 

『今までゴメンね。こんな僕を好きになってくれてありがとう』

 

そんな明久さんの言葉が聞こえた気がした。声を出せる状況ではないのだからきっと気のせいだ。でも

 

美穂「(そんな明久さんだからこそ、私は好きになったんですよ)」

 

そんなあなただから私はあなたと会えた、あなたを好きになった。私はそう思う

 

明久「み、美穂さん?大丈夫?」

 

美穂「え?」

 

明久「だって、美穂さん泣いて・・・」

 

美穂「あ・・・」

 

いつの間にか私の目からは大粒の涙がぽろぽろと零れ落ちていた。でも、これは悲しい涙じゃない。そんな嫌なものじゃない

 

美穂「ち、違うんです!これはその、うれし涙ですから・・・」

 

明久「そ、そう?それならいいんだけど」

 

もう、今泣かなくてもいいのに。泣き顔じゃこれから言いたかったことは締まらない。急いで涙を拭う

 

明久「そ、そろそろ日が暮れるね。帰ろうか」

 

美穂「明久さん!」

 

明久「うお!?み、美穂さん、急に大声出してどうしたの?」

 

紡げ、その言葉を

 

美穂「あ、あの、私・・・」

 

紡げ、泣き顔なんかじゃなくて

 

美穂「その、私・・・!」

 

紡げ、とびっきりの笑顔で!

 

美穂「私、今とっても幸せです!大好きです、明久さん!」

 

 

 

 

 




これで如月ハイランド編は終わりです!後半書いてるときに頬が熱くなるのを何度も感じました(笑)なんか、この二人にはほんと幸せになってほしい。そうなるようこれからも頑張ります!

ここまでのご愛読本当にありがとうございました!この作品はまだまだ続いていきますが(終わりませんよ!)次回はちょっと悩み中。話を進めるか閑話でも作るか、まぁ他の作品も書かなきゃいけないのでそっち進めながら考えますね

はい!ということで今回はここまで、これからも私KuromeBrightとこの作品をどうぞよろしくお願い致します!ではまた次回!(感想等お待ちしております)

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