今日の最高気温が4℃ってマジか、冷凍庫並みではないか…
今回は妙に筆が進みましたので早期投稿です。
ウェイル君のスケジュールは大体が把握出来た。
つまるところ、彼は機械いじりに専念する事が多く、専ら人のためにばかり働いている様子だった。
そうでない場合は、鈴ちゃんやメルクちゃんとのために時間を費やしているようでもあった。
その上で、例の人物達からとんでもない迷惑を被り続けてることになっていたのよね、彼も胃が痛くなるでしょうに。
そこで勧めたのが臨海学校に備えてのショッピング…だったんだけど…。
鈴ちゃんとメルクちゃんの間で牽制が始まっていた。
火花を散らしているけれど、それを見下ろすウェイル君は相も変わらずのんびりとしたまま。
「おっと…」
キャットファイトのついでに大喧嘩にならないかは心配ではあるけれど、ウェイル君は呑気に眺めているだけ。
「あら、どうしたの?」
「イタリア大使館からの連絡ですよ。
どうやら4日に来てほしい、と。
本国にアルボーレの修復の依頼を出していたけど、もう終わったらしく、受領してほしいそうです」
大使館からの召喚要請だったらしい。
端末を覗き込んで見てみるけれど、案の定その全てがイタリア語で記されているから私には全然読めない。
う~ん、まあいいか。
大使館からの要請とあらば断わる事も出来ないでしょうからね。
「ショッピングはどうするつもり?」
「大使館の周辺にも買い物が出来る場所が在るでしょうから、そこで済ませますよ。
日本の首都の大型ショッピングモールが楽しみではあったけど、まあいいや。
こらそこ、いつまで騒いでいるんだ」
生徒会室で騒ぐ二人に私もついつい笑いが込み上げてきた。
見ている感じでは正に子供の喧嘩、仲が良いんだか悪いんだか。
その間に体を割り込ませて仲裁しようとするウェイル君は、なんだかんだで良いお兄さんなんだろう。
思えば私と簪ちゃんの仲違いの解消の時にも巻き込む形で間に立ってもらっていたわね、あの時には苦労をおかけしました。
そういえば、その分の恩返しの一つもしていなかったわね。
色々と裏で手を廻してあげたり、バックに立つことで護衛もしていたけれど、あまり役に立ってなかった気もするし。
よし決めた!
「学園外部へ外出する際には、代表候補生、もしくは専用機所持者を同行させるように言っておいたのを覚えてるかしら?」
「………ああ、言ってましたね」
嘘おっしゃい、そのポヤンとした顔は忘れていたでしょう!
忘れてたのなから素直に「忘れてました」と言いなさい!
叱ったりしないから!
「それで、何ですか?」
「ショッピングの際には私が同行するわ。
私は東京の地理やショッピング出来る場所には詳しいのよ?」
そう、これが今の私のやり方。
鈴ちゃんはともかくとして、メルクちゃんはこの国の事にそんなに詳しいことはないでしょうから同行できる人物が求められる。
そこで私の出番というわけだった。
「どうするメルク?」
「う~ん、本当に頼りになるんでしょうか…?」
もうちょっと優しい言葉はないのかしら、この兄妹は?
「私も同行するつもりだから、必要無いと思うんだけどなぁ」
鈴ちゃんも冷たい…もう嫌、泣きたくなってきた…。
「まあ、居ないよりはマシか」
三人揃って酷過ぎじゃないかしら!?
「あのねぇ、君達!
先輩にはもうちょっと敬意と言葉遣いを改めなさいな!
さっきから言いたい放題にも限度ってものがあるでしょう!」
そんな感じで7月3日の放課後の生徒会室は騒ぎっぱなしだった。
寮の部屋に戻ってからも虚ちゃん相手に愚痴を言ったり、紅茶を飲んで気分を落ち着かせてみたり、色々と心労って溜まるものよね。
「それで、ウェイル君と一緒にショッピングですか。
まるでデートみたいですね」
「デ、デートって…鈴ちゃんにメルクちゃんも居るからそんなんじゃないわよ。
それに虚ちゃんは弾君とはお近づきになれたの?」
「わ、私はその…メールで遣り取りをするくらいには…」
あーあ、この幸せ者め。
今はもう夏だというのに、春を満喫しちゃってるわねぇ。
私には未だにその春が来ないというのに…。
簪ちゃんに悪い虫が寄ってこないことを祈りたいけれど、そういうお相手は居るのかしら?
「ともかく、明日は私はウェイル君と一緒に外出してくるから」
「判りました、お気をつけて」
そんな遣り取りをした後、PCを使って外出届を申請しておく。
ウェイル君ももう出しているでしょうし、その点は心配しないでおく。
メルクちゃんも一緒に居るでしょうから、その点の書類処理は終わらせている筈。
どこか一つ抜けているような彼をプライベート方面でもしっかりと支えているんだろう。
そんなことを思いながらその日は早めに寝ることにした。
そしてその翌朝
「お嬢様、起きてください」
「う、ううん…今何時?」
「早朝の5時過ぎです」
起こすにしても早過ぎじゃない?
せっかくの土曜日なのよ、もう少しゆっくり寝させてよ…。
「隣室のウェイル君達ですが、すでに外出の準備を始めたようです」
「…準備が早過ぎるんじゃないの…?
それにしても虚ちゃんもよく気づいたわね…」
「物音が聞こえましたから」
まさかこの時間から訓練でもするのかしら?
せっかくの休日なんだから朝くらいゆっくりすれば良いのに…。
「仕方ない、こっちも準備に入りましょう」
外出の予定だから制服ではなく私服をクローゼットから引っ張り出す。
七月に入ったんだもの、折角だし夏らしいお洒落でもしてみようかしら?
「そうね、このワンピースドレスにしようかしら?
あ、でもこっちのパンクなスタイルも…」
「早くした方が良いですよ、時間は待ってくれないですから」
「ちょっと、慌てさせないで!」
キィ、と廊下側から音が聞こえた。
どうやらもう二人は部屋を出たらしい。
「私も急がないと!」
ワンピースの上からボレロを羽織って、足音が向かう先には…あ、もう日課なのかしら…?
こんな日にも拘らず早朝から訓練をしているらしい。
メンバーは…まあ、いつもの人員が揃ってるみたいね…。
ウェイル君とメルクちゃんは当然として、鈴ちゃん、ラウラちゃんにシャルロットちゃん、そして簪ちゃんと専用機所持者が勢ぞろいしている。
付け加えて、ティナちゃんも来ているようだわ。
一人だけ訓練機を使用しての参加らしい。
「まったく、今日は外出の予定を入れているのに、忙しないわね…」
早朝訓練はもはや日課、放課後の訓練もほぼ同じく、後は疎らにではあるけれど夜間訓練に勤しむこともある。
彼の実力はその賜物なんだろう。
後は頼まれれば、機械の修理に勤しむことも。
やっぱり彼、自分の時間をあまり持とうとしてないんじゃないのかしら?
仮にそうだとするのなら、今日は誘って正解だったわね。
早朝から続く訓練は8時まで続いた。
それから食堂で食事を済ませて正門にて彼を待つこと少し…
「…誰?」
そこに現れたのは見覚えのない人物だった。
黒いカッターシャツの上から革ジャケットを羽織った茶髪の男性がそこにいた。
え?本当に誰?
そしてその傍らには同じく茶髪の女の子がおそろいの姿で彼の腕にしがみついていた。
「いや、誰って…俺ですよ」
鼻先にまで流れる茶髪を持ち上げ、サングラスを上げると、見慣れた表情がそこには見えた。
そこでようやくその人物が誰なのかが理解出来た。
「え?…もしかしてウェイル君!?」
傍らの女の子もサングラスを外すと、アイスブルーの双眸がこちらを見つめてくる。
こっちはメルクちゃんらしい。
彼女の茶髪の上に乗せられた帽子の頭頂部からはネコの耳らしきシルエットが見え、チラチラと揺れている。
二人そろって愛猫家みたいね。
「何処かの誰かのせいで名前がバレて、テロリストに命を狙われる身になったんだ。
外出する際には必ず変装するように言われているんですよ」
「私としてはやりすぎだと思うんだけどね…。
その眼鏡だってレンズに何か細工を施してるんじゃないの?」
「ああ、外から見れば瞳の色が変わって見える細工が施されているんだ。
偏向グラスってあるだろ、あれの応用で、作るのに苦労したよ…」
しかもお手製…、時折ウェイル君の技術が分からなくなる。
FIATの技術力っていったい…?
私も鈴ちゃんも溜息を一つ。
その技術力を活かすも殺すも彼次第ではあるけれど…少なくとも悪用させないように細心の注意を払っておかないといけないわね。
それに関してはメルクちゃんと鈴ちゃんが居れば大丈夫だろうけれど。
だけど、彼が『生きているから』というだけで命を狙おうとするテロリストからは守り続けなければいけないわね。
「それに、変装する最中の姿も見られないようにしないといけないから細心の注意を払わないといけないからな、殊更に疲れるんだ…」
「それはご愁傷様。
でも今日は思いっきり羽を伸ばしましょう
それじゃあ、出発しましょうか。
あ、私もウィッグとか着けた方が良いかしら?」
そんな世間話をしている間にもメルクちゃんと鈴ちゃんはウェイル君の腕をつかんだまま威嚇しあっていた。
もういい加減にしなさい!
「いや、サングラスはこっちが良いかな…?」
ウェイル君は呑気に懐からインテリ系の丸レンズのサングラスを出してみたり…どうやら浮かれた気分みたいね…まあ、いいけど。
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結局、その後は出発時間を15分程遅らせることになった。
楯無さんの一言で、私もウィッグを着用する方面で話を強制的に進められ、プラチナブロンドのそれを着用することになったけど…。
「なんか…へんな感覚ね…髪を染めたわけでもないのに…」
髪の手入れといえば、私はそこそこにしていた。
代表候補生を目指していた頃は、自分の時間なんてそれこそ最低限度にしていたから、オシャレとか試してもいなかった。
だから多少は枝毛とかも見つかったりしてた。
この学園に来てからはティナがそういった方面で世話を焼いてくれて、今では髪は常にサラサラ、毎日ブラッシングまでしているほど。
オシャレ…にはまだ程遠いけれど、今日の服装もティナがコーディネートしてくれている。
あの
その張本人は私のファッションコーディネートをした直後にどこかに飛び出して行ってそれっきりだけれど、どこ行ったのやら。
まあ、滅多にしないオシャレに関してはウェイルは気付いてくれている様子は見受けられない。
ちょっと不機嫌になってきた。
これが一夏ならこのまま背中に飛びついたりするんだけど、未だに確信を持てない以上はそこに関しては自重しておく。
「ウェイルとメルクのウィッグはイタリアから持ってきたの?」
「ええ、そうですよ。
ヴェネツィアから出発する直前にお姉さんが用意してくれたんです」
「俺が『髪を染める』と言ったら両親が顔を青ざめさせてまで必死に止めるくらいのゴタゴタになった事が在ってな…」
わぁ、家族内で波乱万丈だわぁ…。
「メルクも錯乱して『自分が髪を脱色する』とまで言い出して母さんが泣いて止めて…」
とんだ迷惑を被っていたらしい。
最悪の場合は一家離散も考えられるパターンになってそうだわ…。
「そこで、お父さんによる妥協案としてウィッグを使うことになったんです」
妥協案が出ても根本的解決に至っていないのだから私としても頭が痛い。
そんな事態を招き寄せた人は本当に極悪人だわ、どこの誰なのかしら…あ、あの暴力女だったわね。
「やっほ~!」
モノレールのホームにはティナが居た。
その隣には…簪とラウラとシャルロットが居た。
私も変装みたいな事をしてるのに一発で気付くなんてね。
理由を訊いてみれば「なんとなく、そんな気がした」と返された。
「珍しい組み合わせね、ティナ」
「モノレール前で鉢合わせになったのよ。
ボーデヴィッヒさんが水着に関してかなり無頓着だったみたいでね」
「その言い方は心外だ」
コイツのことだからそれこそスクール水着とか用意してそうな気がする。
「で、僕とティナでコーディネートしようって話になったんだよ」
「その…私は巻き込まれて…この後に本音も来ると思うからそれで一緒に行くってことになったの」
だいたいはそんな流れらしい。
簪は…多分、断れなかったんだろうなぁとは思う。
その点に関しては同情しておこう。
「ティナ達はどこに買い物に行くの?」
「『お台場』って場所よ、そこにおいしいスイーツも、最先端ファッションだってあるって聞いたから!」
また遠い場所を選んだわね。
でも、ショッピングを考えてるなら場所は悪くないかも。
「外泊届も提出しているから満喫する予定よ。
おっと、モノレールが来たから話は後にしましょうか」
モノレールに乗り、本土側にたどり着いたころには10時を過ぎていた。
イタリア大使館がある場所は東京の港区、ここからは暫くは南方向に向けて電車を乗ることになる。
ウェイルとメルクはイタリア語で何か会話を楽しんでいるようにも見受けられ、ちょっと気に食わない。
ティナたちは電車やバスを乗りつないでのお台場へ直行。
行ってみたいけど、それは夏休みにでも考えてみようかな、なんて。
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臨海学校という学園外での特殊環境というものを想像してみていた。
学校とは行っても場所は旅館、そしてすぐそばに海が広がっているということからも俺としては楽しみにしていた。
なんといっても海!やる事といえばやはり『釣り』だッ!
ロッド、リール、ライン、ルアーの準備は万全、メルクと鈴だけでなく皆の釣り竿も完成した今、釣り場となる場所さえ探し出してしまえば、久々に釣りを満喫できる。
その瞬間が待ち遠しかった。
なんと言っても4ヶ月振りの釣りになるだろうか、初日には自由時間が丸一日計画されているから、久々に満喫しなければ。
釣りは良い、自分の内側と向き合える時間としても使え、心が鎮まる。
そうしてラインの先に居るであろう魚との駆け引き、あぁ、今から楽しみだ。
「だからってさぁ、なんで港区に到着した直後に釣具店に入店してんのよアンタは」
「女の子と一緒に来てるんだから、こういう場所にすぐに行こうとするのは流石にお姉さんもスルーできないわよ」
駅に到着した際に見つけた釣具店に入ろうとした矢先、鈴と楯無さんにジャケットをつかまれ即退店という流れになった。
ちらりと見ればメルクも苦笑いしている。
こうなったらこの店は諦めるほかになさそうだ………残念だ…。
「手にとってみたかったんだがな、店先に飾られているあのロッド…」
最新式の素材とカーボン繊維がたっぷりと使用されているという『雷撃ガマカツ』とやら…。
ジャケットを掴まれて引っ張られている以上はその牽引力に従う他に無く、やってきたのは大型ショッピングモールだった。
休日だからだろうか、人通りも非常に多い。
で、そこに辿り着いた先では
「これなんてどうかしら?」
「お兄さん、こっちはどうですか?」
メルクと鈴による水着の選出に俺が起用されるという理解も常識も倫理もぶっ飛んだ事態に陥っている。
俺がなぜ、女性用の水着の選出に頭を捻る事になるのか、首を傾げても答えは出ない。
だけどまぁ、頼られている以上は少しは役に立っておかないと甲斐性の欠片も無いとか思われてしまいそうだ。
「そうだなぁ…」
先程からとっかえひっかえばかりさせてはいるが、売り場に並んでいる女性用の水着の数はまるで…見渡すばかりの花畑のように色とりどり。
正直に言うと、居心地が非常に悪い、こんな所に男一人居るだけで他の女性客の視線が針の筵の如くだ。
だが、人目のある臨海学校だ、悪い意味で目立つのは宜しくないだろう。
なら、俺が何か見繕うか。それで納得してもらおうか。
「これなんてどうだ?」
俺が至極適当に指さした先に設けられていたマネキンには…………
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お兄さんが選んでくれたのは、鈴さんにはタンキニといわれる類のもの、私はセパレート仕様の水着でした。
選んでくれたのは嬉しいですけど、なんというか、どちらもスポーツ仕様のそれに近いような感じがします。
何と言うか、もっと可愛いものを選んでもらえたら良かったなぁとは思います。
鈴さんもそれを考えているのか苦笑いをしている。
「ふぅん、ウェイル君って過保護なのねぇ」
楯無先輩もそういってクスクス笑ってました。
その張本人は大胆なビキニを購入してましたっけ。
「夏休みにはこれでウェイル君を悩殺してみようかなぁ♡」
などと埒外な事を言っていたから何が何でも阻止しないと…!
お兄さんは、その囁きが聞こえてしまっていたのか、一歩距離を開けていたから大丈夫かもしれませんけど…。
「お昼はここにしましょ」
そんな楯無先輩の一言で入る事になったのは一軒の和食料理店でした。
店に入ると、畳と呼ばれる敷物の上に座る仕様の店のようで、料理の香りだけでなく、畳の匂いも少しだけ香ってくる。
「ウェイル君は日本食は大丈夫かしら?」
「多分、大丈夫ですよ」
「このお店での支払いは私が受け持つわ、学園では多くの生徒達がお世話になっているんだもの。
少しは先輩として頼りにしてもらわないとね」
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私自身、ウェイル君には簪ちゃんとの不仲の解消を手伝ってもらったという大恩がある。
その分はキッチリと恩を返しておきたい。
勉強を見てあげたり、自主練を見てあげたりとしているけれど、その程度では返しきれるとは思ってはいない。
それに、私からすれば彼は護衛対象であり、極力目を離さないようにもしておきたい。
学園では忙しくさせてしまっているのもあるから、こういう時間で心身ともに休ませてあげようかな。
それに、ここは更識の指揮下のお店でもあるから信頼できる場所の一つ、外食で何か薬物を盛られたりとかは避けられるはずよね。
「美味しいですね…」
「だな、鈴、この料理って何て言うんだ?」
「『茶碗蒸し』よ、学園の食堂でも時折出されてたけど、食べてないの?」
「へぇ、『茶碗蒸し』、か…」
思った以上に好評だった。
けどまあ、メルクちゃんと鈴ちゃんは主に海鮮料理に関心を持っているらしい、港町育ちであれば、こういう方面に関心を持ちやすいのかもしれないわね。
そんな様子を見ながら私も焼き魚を一口、うん…とても美味しい。
「ウェイルとメルクはやっぱりシーフードが好みみたいね」
鈴ちゃんも私と同じ事に気づいたらしい。
彼女が言う通り、この兄妹、膳に乗せられた幾つもの料理の中でも、海鮮系統が載せられたお皿を真っ先に空にしている。
あんまりにも食事の様子が特徴的過ぎて笑いがこみあげてくる。
「はは、そうかもな…。
シーフードは確かに好みだよ、家でもそういった料理が多いから、つい、な…」
「私も、です」
「それでも、一週間に一回は食堂でミネストローネを美味しそうに食べている様子は見受けられたけどね」
「ははは、ミネストローネが何より好きな料理ですから」
それに関しては周知の事実、時折部屋からミネストローネに使われるトマトの香りが零れてくることがあるのだから。
付け加え、彼はその料理が大好物だと明言したこともあったけど、覚えているのかしら。
「ねぇメルクちゃん、その大好物のミネストローネのレシピを教えてもらえるかしら?」
「え、えぇ…」
「あ、私も!」
「鈴さんまで…」
その大好物、私としても興味深々なのよね…。
メルクちゃんは渋っていたけれど、どうやってレシピを引き出させようかしら?
この時、思いもしなかった。
この直後に、地獄が広がるだなんて…。
シーリア・ウェルディーヌ
誕生日 2月2日 28歳
国際テロシンジケート『凛天使』の筆頭。
出身はカナダ。
女尊男卑主義思想者であり、幾つもの女性利権団体とのコネクションを持つ。
自己中心的であり、享楽的な人物。
この時代にありがちな、織斑千冬の信奉者でもある。
カナダの空軍に所属していたが、搭乗者として配属された当日に同じ思想を持つ者達と共に、量産機『ラファール・リヴァイヴ』を全機強奪。
基地に駐留していた軍人を皆殺しにする事によって『凛天使』の旗揚げを行った。
その後は世界各地でテロ活動を行う。
後に自分達の活動を報道番組によって酷評され、そのコメンテーター一人を抹殺するためだけに大型都市一つを壊滅させ、灰燼に帰した経歴を持つ。
基本的に、自分達に従わない者に対して敵と判断し、対話よりも先に攻撃を放つという非常に危険な人物。
その為に、攻撃対象を絞る事も無いため被害は国も都市も問わず、老若男女を問わずに拡大する一方となっている。
また、歴史的、考古学的価値のある建造物すら問わずに破壊をも繰り返している。
民間人、軍人を問わず残虐な攻撃を平然と繰り返し、被害者数は数知れず、被害総額はすでに天文学的単位だが、本人は一切認知していない。
自分達の行いに対しては何の疑いも持っておらず、どれだけ残虐非道な行いをも、当然の事を成しているだけと考えており、被害者側の事は一切考えない。
現在は全世界国際指名手配にもされているが、神出鬼没であり、逮捕に至っていない。
ISを使用したテロ活動も行っており、被害は後を絶たない。
なお、テロ活動によって強奪した金銭は兵器調達の他に、豪遊に使われている可能性がある。
また、ISを使用したテロ活動を最初に起こした人物であり、その後も同様の行為を繰り返しているにもかかわらず、学園や世界で使用されている参考書にもその名や行いが記されていない以上、国際IS委員会とも繋がっているという噂がある。
本人の搭乗者としての技量は中の上止まり。
自分よりも強い相手とは決して戦おうとはせず、テロ活動中も、常に機体と火力性能と数にものを言わせた戦法を使用している。
自身よりも強い相手とは決して戦おうとはせず、自身よりも弱い相手を甚振ることを楽しむ節がある。